アイキャッチ画像提供:Tailbeat 土井慧祐
アオリイカについて
特徴は丸みを帯びた胴と半円形のヒレ

アオリイカの外見的特徴は、透明感のある丸みを帯びた胴、その周りにぐるりと付いたヒレです。
姿かたちからコウイカの仲間に思われがちですが、アオリイカは閉眼目ヤリイカ科アオリイカ属に分類されるヤリイカの仲間です。
アオリイカはとても可愛らしくて美しく、釣り味も抜群なので釣りの対象としても大人気。
また、もっとも高級で美味しいイカの1つとしても知られています。
生息域は北海道から沖縄県の沿岸部

アオリイカの生息域は全国各地の沿岸部と広く、北海道から沖縄県まで分布します。
世界的に見てもアオリイカの生息範囲は広く、南限はニュージーランド北部、西端はハワイ、東端は南アフリカと広大です。
アオリイカは水温15℃以下で摂餌しなくなり、水温20℃を境にして卵の孵化率が急落するため、アオリイカにとっての適水温は20℃以上とされています。
3タイプのアオリイカが存在する

近年、日本近海には3タイプのアオリイカが棲息していることが明らかになってきています。
今後、分類に関する研究が進むと3種類に分けられるかもしれません。
今のところ、シロイカ・アカイカ・クアイカ(クワイカ)と通称されています。
シロイカ

シロイカは3タイプの中でもっとも生息範囲が広く、北海道から沖縄県まで生息します。
名前に白とつきますが、実際は褐色や黄色っぽい体色であることが多いです。
シロイカは最大で4kg前後まで成長し、産卵は水深20m以浅で行います。
アカイカ

画像提供:デラーコ
アカイカは5kg以上まで成長し、産卵水深は50mを超えることもあるとされています。
今の時点で分かっている生息域は、和歌山県から鹿児島県にかけての太平洋沿岸と沖縄県です。
体色は鮮やかな赤色を示すことが多く、釣り人からは“レッドモンスター”と呼ばれます。
クアイカ(クワイカ)

クアイカは他の2種と比べて小さく、150g程度で成熟するといわれています。
生息域はアカイカと類似するとされていますが、体が小さいこともあって注目される機会が少なく、謎多きイカといえるでしょう。
斑紋や目の上のエメラルドグリーンが際立ち、10m以浅のテーブルサンゴに産卵するとされています。
アオリイカの生態や最大サイズについて
雌雄の見分け方

アオリイカは背中の模様で簡単に雌雄を見分けられます。
白い模様が明快で線状を成しているのがオス(画像上)、白い模様が不明瞭で点状になっているのがメス(画像下)です。
寿命は1年、繁殖期は春から夏

アオリイカの寿命は1年と短く、繁殖期を過ぎると死んでしまいます。
アオリイカの繁殖期は地域によって大きな差がありますが、本州では5月から8月ごろが産卵期となる地域が多いです。
一方で、沖縄県では10~12月を除いては周年産卵が観察されます。
タイプによって異なる最大サイズ

画像提供:デラーコ
先ほどご紹介した通り、アオリイカの最大サイズはタイプによって異なります。
アカイカでは5kg以上、シロイカでは4kg前後、クアイカでは数百g程度が最大サイズです。
アオリイカの捕食行動

アオリイカは伸縮自在な2本の長い触腕を勢いよく伸ばし、生きた魚や甲殻類といった獲物を捕えます。
そして、捕まえた餌は短い8本の腕で器用に抱き込み、カラストンビと呼ばれる顎板(がくばん)を使って咀嚼するようにして食べるのが特徴です。
また、アオリイカは獲物のやや斜め上から攻撃を仕掛けることが多く、そのために視軸は水平よりやや下を向いていると考えられます。
アオリイカの視力と色彩感覚について
視力は約0.6

アオリイカの目は、ピントを調整できるカメラ目であり、構造的にはヒトの目に近いといえます。
ヒトは水晶体(レンズ)の形を変形させて焦点を合わせるのに対し、レンズを変形できないアオリイカはレンズを前後に動かすことで焦点を合わせているのです。
アオリイカの視力は0.6前後、視野は片目で180°(後方は見えていない可能性が高い)、視軸は水平よりやや下向きであり、鳥類以下の動物では珍しく両眼視による視差を使った“立体視”を可能にしています。
視界は濃淡の世界

画像はイメージです
一方で、アオリイカは見える色の波長が450~500nm程度(青色のみ)と狭いため、色覚は良くないとされています。
アオリイカから見た海中は、いわば“青色のみのグレースケール”のような世界といえるでしょう。
そのため、アオリイカは立体視とコントラストを識別する力を使って行動していると考えられています。
体色を変化させる理由

青色しか見えていないにも関わらず、アオリイカは色素胞と虹色素胞を使って体色を変化させることが可能です。
アオリイカが体色を変化させるおもな状況として、捕食行動、繁殖行動、逃避行動、および威嚇行動などが挙げられます。
アオリイカの釣れる場所と時期
釣り場を選ばない身近なターゲット

画像提供:Tailbeat 土井慧祐
日本各地に生息するアオリイカは、釣り人にとって身近なターゲットの1つです。
堤防や漁港だけでなく、磯、サーフ、船からと、あらゆるフィールドで人気の釣り物になっています。
数狙いの秋

アオリイカ釣りのシーズンは秋と春に大別されます。
秋は夏に産まれたアオリイカが200~600g程度まで成長してくる時期です。
産まれたばかりのアオリイカは警戒心が薄く、初心者の方でも釣りやすいのが特徴です。
一方で、水温が低下する冬は深みへと移動するため、岸からは釣りにくくなります。
サイズ狙いの春

画像提供:Tailbeat 土井慧祐
春は産卵前の大型のアオリイカを狙える時期です。
秋のように簡単な数釣りとはいきませんが、釣れれば大型。
ただし、場所やタイミングがとてもシビアなので、ボウズと隣り合わせの釣りになります。
アオリイカの釣り方と仕掛け
エギング

制作:tsuki
もっともポピュラーになっている釣り方が、餌木(エギ)と呼ばれる疑似餌を用いたエギングです。
投げ込んだエギを海底近くまで沈めたら、鋭く2~3度しゃくり上げ、ゆっくりと落とし込みます。
アオリイカは鋭く動いたエギに興味を持ち、ゆっくりと落ちていくエギに抱きかかってきます。
▼エギングを特集した記事です
ティップラン

制作:tsuki
船釣りでは、重たいエギを使って深場を狙うティップランエギングが大人気。
岸沿いよりもアオリイカが多いポイントに行ける一方で、揺れる船の上で小さなアタリを取る難しさ(それが醍醐味でもある)もあります。
▼ティップランを特集した記事です
ヤエン

制作:tsuki
アオリイカは活きアジなどを使った餌釣りでも狙えます。
ヤエン釣法は、アオリイカが餌を抱いた後にヤエン(掛け針)を投入してイカを引っ掛ける独特な釣り方です。
▼ヤエンを特集した記事です
ウキ釣り(泳がせ釣り)

制作:tsuki
ヤエン以外にも、オーソドックスな泳がせ釣りでもアオリイカを狙えます。
青物狙いの仕掛けと異なるのは針。普通の1本針では掛からないので、アオリイカ専用の掛け針を用います。
▼ウキ釣りを特集した記事です
アオリイカの締め方と持ち帰り方
目の間の神経を突く

撮影:TSURI HACK編集部
アオリイカの締め方はとても簡単です。
目と目の間から胴側に向かって45°程度の角度でナイフを刺すだけ。体色が白くなれば成功です。
頭や脚の色が変わらない場合は、同じ場所から足先に向かって45°の角度で刺し直しましょう。
▼イカの締め方を特集した記事です
ジップ付き袋に入れてクーラーボックスへ

クーラーボックスにアオリイカを直入れすると、中が墨で汚れて掃除が大変です。
まずはクーラーボックスの底にペットボトル氷や保冷剤を入れ、その上に新聞紙などを敷きます。
締めたアオリイカはジップ付き袋に入れて、新聞紙の上に並べましょう。
真水に晒すと味が落ちる

アオリイカは直接水や氷に当てると身質が落ちてしまいます。
そのため、ジップ付き袋に入れてからクーラーボックスに入れる人が多いわけです。
また、調理する際もできるだけ真水に当てないようにすることで旨味を逃がさず食べられます。
アオリイカの旬と食べ方
アオリイカの旬は曖昧である

画像提供:Tailbeat 土井慧祐
アオリイカには旬という概念がなく、通年美味しく食べられます。
そのかわりに、大きさによって歯ごたえが大きく変わります。
大型になると身が分厚くなって食感が硬くなるため、とくに刺身で食べる場合は柔らかい小型個体を好む人も多いです。
刺身は甘みが強くて美味

提供:岩室拓弥
刺身で食べると甘みと旨味が大変強く、「イカの刺身の中ではダントツに旨い」という声も多いです。
釣ったばかりのアオリイカは歯ごたえが強く、コリコリとした食感を楽しめます。
1日ほど冷蔵庫で寝かせると、旨味と甘みがより一層引き立ち、ねっとりとした食感に変化します。
加熱調理でも旨い

提供:岩室拓弥
もちろん、アオリイカは揚げ物や焼き物、煮物といった加熱調理との相性も抜群です。
イカは加熱しすぎると硬くなってしまいますので、火を入れる時間には注意しましょう。
▼アオリイカの捌き方・料理を特集した記事です
釣って楽しく食べて旨い超人気ターゲット

画像提供:Tailbeat 土井慧祐
ご紹介した通り、アオリイカは食の面でも釣りの面でも古くから日本人に馴染み深いイカです。
そんなイカが、最近になって「3種類いるかもしれない」と分かってきたのだからおもしろいですよね。
ルアー釣りがお好きな方はエギング、餌釣り派の方はヤエンやウキ釣りに挑戦してみてはいかがでしょうか。
クレジット表記のない写真 撮影:山根央之