世界最小のターゲット
数ある釣り対象魚の中でも、世界最小と言われるのがタナゴです。
この小さな魚を小さな仕掛けで釣る“唯一無二の世界観”にハマる人も多く、根強い人気を誇ります。
また、タナゴは見た目が美しい種類も多く、繁殖期の婚姻色には思わず見惚れてしまうほど。
本記事では、タナゴマニアの筆者がタナゴ釣りに必要なアイテムや釣り方を紹介するので、タナゴ釣りを始める方はぜひ参考にしてくださいね。
タナゴ釣りのシーズン
タナゴが釣りやすい時期は、水温が高くなって活性も上がる5月から9月頃までです。
気温が低くなると、タナゴが水温の安定する深場に移動するので釣りにくくなってしまいます。
溜まり場を見つけられると冬でもたくさん釣れますが、暖かいハイシーズンに入門するのがおすすめです。
タナゴの種類はいろいろ
タナゴ釣りの魅力は、“タナゴそのものの魅力”ともいえます。
タナゴは一種類の魚だと思われがちですが、じつにさまざまな種類のタナゴが日本に生息しており、それぞれ見た目も習性も異なるのです。
そのため、いろいろなタナゴを釣って“タナゴ図鑑”を作る楽しみがあるのもタナゴならでは。
ここではよく釣れる代表的な種類を紹介します。
タイリクバラタナゴ
外来種ながら日本全国に定着したタイリクバラタナゴは、いまや代表的なターゲットです。
4〜5cmの小型のタナゴで、繁殖期(4〜8月頃)になると鮮やかな虹色の婚姻色がでます。
口が小さいのも特徴で、エサをついばむようにして捕食するため、極小の鈎でもなかなか掛かりません。
それゆえにゲーム性も高く、小さなタイリクバラタナゴを狙うのにハマる人も多いです。
ヤリタナゴ
ヤリタナゴは、在来のタナゴの中でもっとも分布域が広い種です。
体系は細長く、小河川や水路などの流れがある場所を好むことが特徴。
産卵期の4〜8月頃には赤い婚姻色を纏います。
カネヒラ
在来のタナゴの中でもっとも大きくなる種がカネヒラです。
淀川水系以西の本州と九州北西部に生息し、水草が生えた場所を好みます。
フナに似た地味な見た目ですが、繁殖期になると魚体が青緑になり、ヒレもピンクがかって非常に綺麗です。
他のタナゴと異なり、秋(8〜10月頃)に産卵期を迎えるのも特徴。
アブラボテ
アブラボテは黒ずんだ体色が特徴的なタナゴです。
岐阜・愛知・三重にかけて広がる濃尾平野以西の本州、四国北部、九州北部などに分布。
産卵期は3〜7月頃で、重厚感のあるグリーンメタリックのような婚姻色が魅力的です。
なわばり意識が強い魚なので、飼育する場合は混泳に注意しましょう。
シロヒレタビラ
シロヒレタビラは濃尾平野や琵琶湖淀川水系、山陽地方、四国北部などに生息するタナゴです。
ヤリタナゴに似た見た目で、湖沼やため池、河川のワンドなど、流れの緩い場所に多くて消波ブロックや岩礁地帯などを好みます。
白と黒の婚姻色がとても綺麗で、ファンも多い魚です。
その他にも……
紹介した以外にも、地域によってイチモンジタナゴやマタナゴ、カゼトゲタナゴ、アカヒレタビラ、ゼニタナゴなどの珍しい種類もいます。
全国各地に生息する“ご当地タナゴ”を狙ってみるのも楽しみですね。
しかし、セボシタビラのように国内希少野生動植物種に指定され、許可なく捕獲・譲渡・販売・飼育が禁止されているタナゴもいるので注意してください。
タナゴ釣りの道具と仕掛け
ここからはタナゴ釣りに必要な竿や仕掛け、エサについて紹介します。
竿
長さ1m前後のシンプルなのべ竿で楽しめます。
ただし、足場が高くて水面まで遠いところでは、2〜3mの長い竿が必要になることも。
釣り場に合わせた竿を用意するか、竿の長さに合った釣り場に行きましょう。
仕掛け
タナゴ用の仕掛けが市販されており、セット仕掛けを購入すれば十分楽しめます。
ただし、鈎はなくなることもあるので、予備をいくつか用意しておきましょう。
タイリクバラタナゴなどの口の小さなタナゴを狙う場合は、専用の小さな鈎がおすすめです。
また、繊細なアタリをとるにはウキの浮力バランスも大切。ガン玉や板オモリで少しずつ調整し、ウキがギリギリ浮いている状態にしましょう。
浮力以上のオモリを打ってウキをゆっくり沈め、エサを落下させながら誘うのが有効な場合もあります。
エサ
専用の練りエサを使うのがポピュラーです。
人気のタナゴグルテン(マルキュー)は、水とエサを1:1の割合で混ぜて使います。素早く、丁度良いエサが作れるのでとても便利です。
市販品を買う以外にも、卵黄と小麦粉を混ぜた“黄身練り”を自作する方もいます。
また、練りエサに反応がない場合は、アカムシなどの虫エサが有効なことも。
あると便利なアイテム
用意しておくと便利なアイテムを紹介します。
タナゴポンプ
適量の練りエサをスムーズに取り出せるアイテムです。
手を汚さずに素早くエサ付けができ、練りエサの乾燥も防げるのでとても便利です。
計量カップ
練りエサを作る時に使うアイテムです。
タナゴ釣りはエサの量が少ないので、コンパクトなものを選びましょう。
観察ケース
釣ったタナゴを観察して楽しめるアイテムです。
スペースは狭いので、観察や撮影が終わったらすぐに逃してあげましょう。
バケツ
水を汲んだり、タナゴを生かしたり、手を洗ったりと、あると何かと便利です。
近年は観察ケースの役割も兼ねたクリアタイプのバケツも流行っています。
タナゴの釣り方
ここからはタナゴの基本的な釣り方を紹介します。
釣り場を探す
まずは釣り場探しから。
タナゴがいている場所を、自身の足で探すのもタナゴ釣りの魅力のひとつです。
タナゴは身近な場所に生息おり、基本的には流れの緩い小河川や水路、湖沼の岸際に多くいます。
しかし、ヤリタナゴのように流れを好むタナゴもいるので、いろいろな場所を探してみましょう。
例えば、少し開けた水路。
臆病なタナゴはヘラ台などの障害物周りに潜んでいることが多いです。
流れが緩い場所は、タイリクバラタナゴなどの好ポイントかもしれませんよ。
こちらは、浅くて比較的流れがある水路。
一見何もいなさそうに見えますが、流れの中をヤリタナゴなどがたくさん泳いでいましたよ。
水路の所々にある窪みも好ポイント。
とくに冬季は、水温が安定する深場にたくさんのタナゴが溜る傾向があります。
このような浅くて透明度が高い場所なら、魚影を目視で確認するのがもっとも確実。
偏光サングラスでじっくり観察すれば、タナゴの体がキラリと光を反射するのがわかるはずです。
エサは小さく付ける
タナゴの口は小さいので、エサは小さく付けましょう。
針先に練りエサをフワッと乗せるイメージで付けるのがおすすめです。
エサ持ちを考えて硬く練り過ぎると、掛かりも悪くなるので注意してください。
根気よく打ち返すのも大事
釣り始めた時は、タナゴが人影に怯えて散っていることも多いです。
しかし、しばらくじっとしながら釣りを続けていると、徐々にアタリがでるようになります。
また、仕掛けを引き上げる際は竿をあおってエサを切り、水中にエサが落ちるようにしましょう。
針から落ちたエサが寄せエサとなり、タナゴが集まりやすくなります。
アタリの出方はさまざま
タナゴのアタリはとても繊細で、ウキの浮力調整をしっかりしても、ウキが沈まないアタリがたくさんあります。
そのため、ウキだけを見るのではなく、ウキ下のシモリ玉の動きをよく見てアタリを取りましょう。
シモリ玉が動いた段階で、軽く手首を返すようにして素早くアワせばよく掛かるはずです。
大きな強いアワセをすると、仕掛けが周りに引っ掛かったり、タナゴを散らしたりする原因になるので注意してください。
タナゴ釣りのマナー&注意点
近年タナゴは生息数を減らしているので、とくに希少な種はリリースするのが望ましいです。
観賞魚として飼育する場合は、最低限の個体数にしておきましょう。
さらに、外来種はもちろんのこと、在来のタナゴでも異なる水系への放流は絶対にやめてください。
本来その水系にいなかった種が増えることで、生態系のバランスを崩してしまいます。
また、釣り場となる農地の水路やため池は私有地であることも多いです。
ゴミの処理や駐車スペースなどには十分気を使い、近隣の方とトラブルにならないようしてください。
シンプルさと繊細さがクセになります!
自分の足でポイントを探し、綺麗なタナゴを釣り上げた時には、きっと感動するはずです。
魚釣りとしての楽しさはもちろんありますが、昆虫採集に近い楽しさもあります。
道具もシンプルで手軽に始められるので、ぜひタナゴ釣りにチャレンジしてみてくださいね。