【国内希少種】幻の小魚“セボシタビラ”を求めて。

2020/03/06 更新

幻の小魚「セボシタビラ」を求め、怪魚ハンターが九州へ遠征。日本に多くの種類が生息するタナゴは奥深き魅力を持つ魚です。九州でしか出会えない「セボシタビラ」はどんな魚なのでしょうか?


※取材を行ったのは、国内希少野生動植物種に指定される以前です。2020年2月10日をもって、セボシタビラは国内希少野生動植物種に指定されました。現在では許可無く、新たに捕獲・譲渡・販売・飼育が禁止されています。

幻の淡水魚を探して


日本の川や沼にはタナゴという小魚が住んでいます。コイの仲間ですが、大型の種類でも10cm前後と小さな魚です。

最も特徴的なのは繁殖生態でしょう。少々、変わってるんです。

二枚貝にしか卵を産めません


タナゴの仲間は卵を活きた二枚貝に産み付けます。

貝の存在がタナゴにとって非常に重要なのです。

初めての1匹を求める僕にとって“タナゴ”とは

日本を旅する理由の一つでした。

と言うのも、タナゴの仲間は外来種2種を含めて、日本各地に18種類も生息しています。

本来、日本全域に生息する種類はいません。それぞれのタナゴに出会うためには、日本中を探し回らければならないという訳ですね。

ときには東北へゼニタナゴを求め、北陸ではミナミアカヒレタビラを探したり。

イチモンジタナゴは地元にも関わらず、濃尾平野で苦戦したのが思い出です。

九州を代表するタナゴ “セボシタビラ”

セボシタビラってどんなタナゴ?


九州北部にのみ生息するタナゴの仲間で、近年までの生息域の破壊により生息数が減少したと言われています。

春になると流れのある場所に生息する二枚貝の周りで、オスは鮮やかな婚姻色を身に纏いメスにアピールします。

本格的に産卵モードに入ったセボシタビラは、餌に対する興味が薄れてしまうため極端に釣るのが難しくなります。

保全状況は?


セボシタビラは、絶滅危惧IA類の指定されています。

2020年2月10日をもって、残念ながらセボシタビラは国内希少野生動植物種に指定されました。

許可無く、新たに捕獲・譲渡・販売・飼育が禁止となっています。

そう。こんな記事を書いておきながら、現在では釣っちゃいけない魚となってしまったのです。

初めての一匹を求めて熊本県へ!

生息域とされる河川に到着


婚姻色がバッチリ出たオスのセボシタビラに会いたくて遥々、九州までやってきました。

まずは生息地とされる川に繋がる用水路を探していきます。

外来生物から先制攻撃をくらう


赤虫を餌に探っていくとウキが勢いよく沈みました。

一瞬ブルーギルかと思いましたが、手に取ってみるとまさかのティラピア……。

湧水が豊富な九州では、一年を通して水温が下がらない水域があります。そのような場所ではティラピアが繁殖しているんですね。

ティラピアの猛攻に屈し移動を強いられることに。

川に移動


続いて訪れた場所はテトラがあって比較的水深のある小規模な河川。

赤虫で丁寧にテトラの間を探るとウキに違和感あり!

期待に胸膨らませアワセましたが、正体はギンブナでした。

開拓の旅は早い決断が命。さっさと移動です。

お次は「オイカワ」


気づけば半日で200kmも走り回り、6カ所目でオイカワを釣るころには迷走状態に陥ってしまいました。

セボシタビラは、シロヒレタビラやアカヒレタビラに似ているだろうと考えたんですけどね。

さすが幻のタナゴ。そう簡単には出会えません。

いつだって迷走する。それがタナゴ探しの旅

「キタっー!」と思いきや


日付変わり、住宅地を流れる小さな水路で群れる小魚を発見しました。

どうやらタナゴに間違いなさそうです。

早速釣り上げてみると、以前、濃尾平野で大苦戦した末に感動的な出会いを果たしたイチモンジタナゴでした。

残念。国内外来種だ


イチモンジタナゴは、本来の生息地である濃尾平野や滋賀県では著しく生息数が減少しています。

一方で、何らかの理由で移植された九州では局所的に数を増やしているのです。

「九州のイチモンジ繁栄の理由を突き止めれば、滋賀や濃尾平野でのイチモンジ復活の知見に繋がるのでは?」と、感じさせられる一コマでした。

どこへ行こう?


風呂に入る時間もお金も勿体ないので体のリフレッシュは水浴びでサクッと済ませます。

身も心も奇麗になって次に目星をつけた水路へ向かいます。

 
>>Next Page:ついに、セボシタビラのいる水路を発見か?

川底がキラっキラ光ってるぞ!

なんの変哲もない用水路


緩やかな流れ。捨てられたブロックが気になりますが、セボシタビラが好みそうなストラクチャーであることは間違いありません。

友人と目をこらして魚を探していきます。


すると、ブロックの隙間で一瞬キラっと何かが光ります。

友人はその一瞬でセボシタビラと見抜き、ガッツポーズ。

僕は「釣るまで確信しない」と言いつつも、ようやく答えに近づけたことでに一瞬安堵しました。

狙ってみる


見え隠れするセボシタビラは発色したオス2匹。周りにメスの姿は見えません。

網ですくえば話は早いのですが、それは最終手段。時間の許す限り一対一で挑みます。

睨めっこすること丸一日


昼寝してポイントを休めたり、餌を何種類も試したり。あっという間に日が暮れてしましました(笑)

今回の旅は明日が最終日。早朝のチャンスで口を使わなかったら網で取ろう!

そう決めて、夜のターゲットを探すためにこのポイントを一旦離れることにしました。

しかし、翌朝の数投目、なんとか釣ることができたのです。

釣れ上がった瞬間だけ、宝石よりも奇麗なんです

惚れ惚れする色合いです


このイッピキと向き合うことのべ10時間。やっと釣り上げることができました。

ホットケーキミックスと卵黄、バニラエッセンスを混ぜて作った特製餌を用意してよかった〜。

これ以上の発色は無いってくらいの鮮やかさ。感無量です。

皆で鑑賞会


本当に小さな魚ですが、日本の淡水魚って魅力がいっぱいあるのです。

タナゴ類を始め、多くの生き物が次々と国内希少野生動植物種へ指定される傾向にあります。

令和の時代は魅力に富む小さな生き物たちと、自然の中で触れ合う最後の時代となるかもしれません。

この一瞬の感動のために


いくら水族館で見れるとは言え、これほどの発色を展示下で表現するのは難しいでしょう。

何よりも、セボシタビラのことを沢山調べて、遠征費用を貯金し、時間をかけて作り上げた僕ら3人のような価値観はもう手に入らなくなったのです。


日本では一度国内希少野生動植物種に指定されると、外れることはまずありません。

僕たち生き物愛好家は、突きつけられたルールを守りながら、国内希少野生動植物種から外される日が来ることを待つことしかないのです。

「沢山の子孫を残してくれよ」、そう言いながら逃がしたセボシタビラの子供たち。もう会えないと考えると、どこか寂しい気持ちになりますね。

 
撮影・文:山根 kimi ヒロユキ
 

※取材を行ったのは、国内希少野生動植物種に指定される以前です。2020年2月10日をもって、セボシタビラは国内希少野生動植物種に指定されました。現在では許可無く、新たに捕獲・譲渡・販売・飼育が禁止されています。

ライタープロフィール

山根 kimi ヒロユキ
“初めての1匹”を求めて、世界中どこへでも行く怪魚ハンター「山根ブラザーズ」の兄。釣りに留まらず、ガサガサや漁業者と協力してまでも、まだ見ぬ生き物を追い求め、日々水辺に立っている。

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初めての1匹との出会いに最も価値を置き、世界中何処へでも行く怪魚ハンター山根ブラザーズの兄。餌・ルアー問わず、もはや釣りに限らず。ガサガサや漁業者と協力してまでも、まだ見ぬ生き物を追い求め、日々水辺に立っている。 テレビ東京・緊急SOS池の水全部抜くやNHK・ダーウィンが来た、TBS・VSリアルガチ危険生物などに出演したり、魚類生態調査に参加したりと幅広く活動中。

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