グレ釣りの世界へようこそ
メジナはスズキ目イスズミ科に属する魚で、北海道南部から台湾まで分布しており、ほぼ日本全国の磯や堤防に生息しています。
西日本ではグレ、九州ではクロと呼ばれ、古くから釣りの対象魚として親しまれてきました。
グレは小魚や甲殻類、海藻などさまざまなものを捕食する雑食性ですが、オキアミを使ったウキフカセ釣りで狙うのがもっともポピュラーです。
本記事では、グレ釣りの魅力やシーズン、仕掛け、釣り方などを元釣具屋の筆者が紹介します。
グレ釣りに興味がある方や始めてみたい方は、ぜひ参考にしてください!
グレ釣りの魅力
グレ釣りというと、ベテラン釣り師が多くてやや敷居が高いイメージがあるかもしれませんが、それだけ釣り人を惹きつける魅力があるともいえます。
奥が深い釣りではありますが、初心者の方でも十分に楽しめる要素もたくさんあります。
ゲーム性が高い
グレは潮流や水温など環境の変化に非常に敏感な魚で、警戒心も強いため、釣果を上げるためには状況毎に適切な判断が求められます。
特に磯は複雑な地形や潮通しのよさもあって状況変化が激しく、他の釣りに比べて考慮すべき要素が多いといえます。
複雑な地形や潮を読み、コマセと仕掛けを同調させながらグレの元へ届けることがこの釣りの醍醐味です。
引きが強い
グレの引きは強くてスピーディーです。
さらに、ハリに掛かると素早く根に潜ろうとする性質があり、油断しているとあっさりハリスを切られてしまうことも。
長い磯竿を曲げ込み、主導権を奪いあうスリリングなファイトはグレ釣りの大きな魅力です。
美味しい
夏場のグレは磯臭い場合もありますが、冬場のグレは脂が乗って味も濃厚で美味です。
特に冬の時期の鍋(グレしゃぶ)は絶品。
鍋以外にも、刺身や煮付け、フライにしても美味しいので釣行後の楽しみも魅力です。
2種類のグレがターゲット
主にフカセ釣りのターゲットとされるのは、口太グレと尾長グレの2種です。
見た目がよく似ていて同じ釣り場で釣れることも多い両種ですが、性質は大きく異なるのでそれぞれの特徴を確認しておきましょう。
口太グレ(メジナ)
尾長グレより生息域が広くて沿岸域を好み、多くの地域でメインターゲットとなります。
小型の個体であれば近場の堤防などにも群れで多くいるため、初心者の方でも手軽に釣ることが可能です。
個体数が多いので尾長グレより撒きエサに集まりやすい反面、大型になるとタナにシビアで喰い渋りも多いため、アタリが小さくなる傾向があります。
尾長グレ(クロメジナ)
尾長グレは口太グレよりも高水温で潮通しのよい外洋を好み、60cm超にも成長する魚です。
エラブタにある黒い縁、細かい鱗、名前の由来になっている長い尻尾で口太グレと見分けられます。
口太グレに比べて圧倒的に引きが強く、歯がカミソリのように鋭いため、大型を釣り上げるのは非常に困難です。
繊細かつ旨味の多い身質で、通年脂の乗りも良いので食味も口太グレに勝るといわれます。
グレ釣りのシーズン
グレは年中釣れる魚ですが、シーズンによってパターンなどが異なります。
季節毎の特徴を確認しておきましょう。
秋
水温が低下し始める10月頃からグレの適水温となり、本格的なグレ釣りシーズンが始まります。
沿岸部で活発に捕食活動を始めるため、数釣りが期待できる時期です。
しかし、グレと同様に周りにいるエサ取りも活性が高いため、エサ取りの対策は必須。
エサ取り用の撒きエサと本命用の撒きエサを撃つ場所を分けながら、エサ取りをコントロールして釣ることが大切です。
冬
エサ取りが少なくなって良型の口太グレを喰わせやすく、「寒グレシーズン」とも呼ばれ、磯釣りの最盛期です。
水温が下がり過ぎると活性も下がり、釣りが難しくなることもありますが、水温が上がって安定すれば爆釣も期待できます。
まだ水温が高いうちは潮がガンガン流れるような場所で喰ってきますが、水温が低くなると潮流が穏やかな落ち着いた場所を好む傾向に。
口太グレは脂のノリもよくなるので食味もベストな時期ですが、尾長グレは産卵シーズンなので狙いにくくなります。
春
3月〜5月頃は口太グレが産卵期に入るため、春は釣りにくくなる時期といえます。
その反面、水温が上がると尾長グレの活性が上がり始めるため、場所によっては大型尾長グレを狙い撃ちできる時期です。
春は釣果のムラが大きな時期ですが、条件が合えば思わぬ好釣果も期待できます。
夏
口太グレの産卵が終わった梅雨時期は梅雨グレとも呼ばれ、再び活性が上がってよく釣れるようになる時期です。
口太グレと尾長グレの両方を狙える時期で、数も型も期待できます。しかし、水温が高くなり過ぎる真夏は喰いが渋く、一般的には8月・9月ごろはオフシーズンとされています。
秋同様にエサ取りが多いため、エサ取り対策は必須です。
グレ釣りのポイント
グレ釣りというと荒磯をイメージする方も多いと思いますが、それはあくまでもグレ釣りの一面に過ぎません。
グレは身近なポイントにもたくさん生息している魚です。
堤防
堤防では、グレの適水温となる梅雨時期や秋頃に小型サイズの数釣りを楽しめます。
先端や角などの潮通しのよい場所、テトラ際など変化があるポイントが狙い目です。
内湾よりも外海に面した堤防を選び、潮の流れがあるポイントに釣り座を構えましょう。
足場が安定しているため、堤防でフカセ釣りに慣れてから磯釣りデビューをするのがおすすめです。
磯
地形や潮流の変化に富んだ磯場はグレ釣りの好ポイントです。
地磯の中にも良い場所はありますが、沖磯の方が釣果が上がりやすく型も狙いやすい傾向にあります。
沖磯は渡船屋さんが実績のあるポイントに渡してくれたり、見回りに来てくれたりもするため、釣果・安全の両面から初心者の方は渡船で釣行するのがおすすめです。
グレ釣りのタックル
グレ釣りで使用する適切なタックルを確認しておきましょう。
はじめから高額なタックルは必要ありませんが、ある程度スペックのよいものを選べば大型を獲れる確率が上がります。
竿
5〜5.3mの磯竿で、号数は1.2〜1.5号程度のものを選びましょう。
大型尾長グレの魚影が濃い場所では1.7号以上の強い竿が適していますが、50cmの口太グレまでならば1.5号で十分対応できます。
先調子の竿は操作性がよく、胴調子の竿は魚の引きを竿全体で受け止められることが特徴です。
ダイワ リバティクラブ 磯風 1.5号-53・K
継数:6本
仕舞:101cm
自重:215g
オモリ負荷:1.5-4号
リール
リールはスピニングリールの2500〜3000番程度のものを選びましょう。
グレの強い引きで竿をのされた時でも、瞬時に竿を立て直せるレバーブレーキ付きリールがおすすめです。
糸フケを取りやすく、仕掛けの回収も速いハイギアモデルの人気が高まっています。
ダイワ シグナス 3000H-LBD
ギア比:6.2
巻取り長さ:93cm
最大ドラグ力:8kg
最大ブレーキ力:14kg
ナイロン巻糸量:4号-150
ベアリング:5/1
道糸
リールにはナイロンラインの2号前後を100〜150mほど巻いておきましょう。
道糸を大きく分けると、水に浮いてライン操作がしやすいフロートタイプ、水に馴染んで風波の影響を受けにくいサスペンドタイプ、の2種類があります。
慣れないうちはラインコントロールがしやすいフロートタイプがおすすめです。
グレ釣りの仕掛け
グレ釣りは仕掛けのパターンが多岐に渡りますが、まずは半遊動仕掛けと全遊動仕掛けを覚えておきましょう。
ひとまずこの2種類をマスターしてしまえば、大半の釣り場・状況に対応できるはずです。
半遊動仕掛け
半遊動仕掛けは、ウキ止めを付けることで任意に狙うタナを決められます。
一定のタナを狙えるため、グレのいるタナが絞れている時や、グレが一定のタナに集中している時は効率よく釣れる仕掛けです。
アタリが目で見て判りやすく、仕掛けの位置も判るため、初心者の方はまず半遊動仕掛けから始めましょう。
全遊動仕掛け
全遊動仕掛けはウキ止めを使用しないため、仕掛けがゆっくりと沈み続けます。
表層から底までの広い層を探れるため、釣れるタナが判っていない場合に有効な仕掛けです。
また、魚が咥えた時にウキの抵抗が掛からないため、喰い込みが良く、喰い渋る魚に有効なこともメリット。
しかし、慣れないうちはエサを取られてもわかりにくい上に、タナが絞れている場合は釣りの効率が悪いといったデメリットがあります。
グレ釣りのエサ
グレ釣りは、魚を寄せる撒きエサ(コマセ)とハリに付ける刺しエサを用います。
それぞれどのようなエサが適しているのかを確認しておきましょう。
撒きエサ(コマセ)
オキアミと集魚剤を混ぜた撒きエサを使うのが一般的です。
集魚剤は、オキアミがまとまって投げやすくなる、集魚力が上がる、比重を高めて沈められる、といった効果を発揮します。
そのほかにも、ボイルオキアミだけを使う場合もあり、遠投は難しくなりますが、エサ取りに強い、浅いタナを狙いやすいなどのメリットがあります。
刺しエサ
刺しエサには、撒きエサと同じくオキアミを使うのが定番です。
エサ取りが多くて生のオキアミが残らない場合は、ボイルオキアミやエビの剥き身などが用いられます。
撒きエサがボイルオキアミの場合は、刺しエサにもボイルオキアミを使いましょう。
グレ釣りの一連の流れ
ここからは、半遊動仕掛けを例にグレ釣りの一連の動作を解説します。
フカセ釣りは難しいイメージがありますが、よく見ると難しい動作は一切ありませんよ。
コマセを撃つ
シャクを使って撒きエサを撃ちます。
狙いのポイントに撒きエサが効くように撃つのがベストですが、釣り始めは海の状況が判らないことも多いため、足元に撃ちながら潮の流れやエサ取りの状況を確認しましょう。
撒きエサを沖に撃ち過ぎると、グレが沖に出てポイントが遠くなるので注意してください。
エサ付け
刺しエサはできるだけ真っ直ぐ綺麗に刺すことを心がけましょう。
真っ直ぐ刺すことでエサが海中で回転するのを防ぎ、グレが警戒しにくくなります。
食い渋っている場合はオキアミの頭をとったり、ムキ身にしたりして、小さく吸い込みやすくするのがおすすめです。
仕掛けを投入
潮目やシモリなどのポイントで仕掛けが馴染むように、ポイントの少し手前(潮上)に仕掛けを投入します。
投入直後は、少しハンドルを巻いて道糸が真っ直ぐになるようにしてから、そこから再び糸を出して仕掛けを馴染ませましょう。
そして、投入後は撒きエサを1〜2杯ほど仕掛けの近くに追い打ちしておきます。
仕掛けを流す
仕掛けがウキ止めの位置まで落ちたら、仕掛けに適度な張りを作りながら流れに合わせて糸を送っていきましょう。
刺しエサが先に流れる状態が理想なので、リールのベールを開けて指を添え、ウキが流れるのに合わせてブレーキを掛けつつ道糸を送るのがコツです。
アタリ〜アワセ
ウキが勢いよく沈むアタリの場合は、エサを咥えて反転ていることが多いため、糸フケを取りながら大きい幅でアワセを入れます。
小さなアタリの場合は、居食いしていることが多いため、小さい幅で素早くアワセを入れましょう。
ただし、尾長グレはハリを飲まれるとハリス切れを起こすため、どんな状況でも鋭く即アワセすることが基本です。
やりとり
竿の弾力を活かして魚を浮かせる意識でやりとりをしましょう。
ポンピングをするとテンションが抜けてその瞬間にグレが走ることも多いため、初めのうちは竿の角度を一定に保ちつつリールを巻きながらやりとりするのがおすすめです。
竿が伸されそうになったらレバーブレーキで糸を出し、ロッドの角度を立て直しましょう。
グレを釣るコツ
グレを釣るコツは紹介しきれないほどたくさんありますが、代表的で重要なものを簡単に紹介します。
潮を読む
グレは潮の動きに敏感で、潮の流れによってエサが運ばれてくるところにグレも集まります。
そのため、潮流の向きや強弱、他の潮流との合流点などを見極め、どこに撒きエサが溜まるのかを考えることが重要です。
例えば、サラシの先や潮目、帯状に浮いている泡、ウキが海中に引き込まれるような潜り潮、本流に引かれる潮などが狙い目。
そして、それらのポイントで喰わせられるように、仕掛けを調整し、撒きエサをコントロールして投入する必要があります。
常にラインメンディングを行う
磯では風が強いことが多く、何もしないでいるとウキと道糸が風に流され、仕掛けの安定感を損ない、流すべきコース(潮流)から外れてしまいます。
こうなると、撒きエサと仕掛けの流れがズレてしまい、一気に釣れなくなるのです。
そこで重要なのが、ラインメンディング(道糸の軌道修正)。
横風を受けて道糸が膨らんだ場合は、竿先を持ち上げて道糸を水面から離し、風上側の水面に置きなおしましょう。
刺しエサを潮流に乗せて流すことが大切なので、風に道糸やウキが流されないようにしてください。
エサ取り対策をする
高水温期にはエサ取りが多く、刺しエサがすぐに取られてグレまで届かないことが多々あります。
そのような状況では、撒きエサの撃ち分けやタナの調整、エサの変更といった対策が必要です。
具体的には、足元にエサ取り用の撒きエサを多めに撒き、沖に本命用の撒きエサを撃てば、エサ取りとグレを分離させることができます。
また、タナの調整に関しては、頻繁にエサが取られる場合は取られなくなるまでタナを深くするのがセオリーです。
エサについては身が硬いボイルオキアミやエビのむき身はエサ取りに強く、重たいガン玉を付けてエサ取りのタナを一気に突破させるのも有効です。
グレ釣りはハマる要素満点!
グレ釣りは考えることが多く、人よりも大きな魚を狙ったり、たくさん釣ったりしようと思えば、それなりに経験や技術が必要なのは間違いありません。
しかし、グレという魚自体は非常に数多く生息しているため、初めの1匹を釣るのはそれほど難しくなく、青物やチヌに比べればよっぽど簡単だと思います。
磯に渡らずとも堤防でも気軽に楽しめますので、奥深いグレ釣りにぜひチャレンジしてみてください!
筆者の紹介
tsuki
関西出身の元釣具屋。釣具店時代の知識を活かして皆様の役に立つ情報を発信していきます♪
釣りはいろんなジャンルをしていますが、その中でも好きな釣りはタナゴ釣り。