ウミケムシについて

みなさんは「ウミケムシ」という悪魔のような生物をご存知でしょうか。
漢字では海毛虫と書き、名前の通り体に毛が生えたゴカイと同じ多毛種の生物です。
今回は釣り人なら出くわす可能性の高いウミケムシの実害性・そして万が一刺されてしまった際の正しい対処法をご紹介します。
ウミケムシが恐ろしい5つ理由
冒頭から衝撃的な姿で衝撃を与えてくれるウミケムシ。
見た目から感じるクリーチャー感だけでなく、彼らが恐ろしいのはさまざまな理由があるのです。
邪悪な見た目

初めて見た時の衝撃は言葉では言い表せない地獄の使者のようなディテールのウミケムシ。
背側にある目玉のような謎の模様といい、その邪悪さは視覚的ダメージを与えてきます。
しかし、この見た目が「カワイイ!」という方もいるとかいないとか……。
捕食の姿はさらにハイレベル

基本夜行性であるウミケムシ。昼間は砂地に身を潜めていますが頭部だけ覗かせていることが多く、エサを発見すると活発に飛び出してきます。
蛇が獲物を飲み込むような吸い込むスタイルで捕食する姿はR指定ばりの衝撃シーン。
食性についてはガッツリ肉食系であり、オキアミから小魚、ましてや仲間であるゴカイも共食いする大食漢です。
意外と速く泳ぐ

全身をうねらせながら遊泳するウミケムシの姿を見たことはありますか?
彼らは意外にも泳ぐ速度が速く、夜間常夜灯の下で見かけることが多くあります。
しかし遊泳力は弱く流れのあるところではあまり見かけないため、表面の潮が動いていない指標の一つとなります。
広がる生息域

暖かい水温を好むウミケムシは日本の本州中部以南、太平洋南西部、インド洋を中心に生息しています。
日本では京都府宮津湾は他エリアと比べ圧倒的な数が確認されている場所です。繁殖スピードも非常に早く、また温暖化による海水温の上昇から生息範囲は拡大傾向にあると言われてます。
あなたのホームエリアにも侵略してきているかもしれません……。
毒のある体毛

ウミケムシを覆う体毛は毒針となっており、警戒心や危険を感じた際に逆立ち臨戦態勢を取ります。
万が一触れてしまった場合は無数の毒毛が皮膚に突き刺さってしまいます。せっかく楽しんでいた釣りも刺されてしまうと自宅もしくは病院へ場所移動を余儀なくされるでしょう。
こんな時に気を付けましょう
海に居る限りは実害のあるウミケムシと出会う可能性は高く、意外にも身近に生息している危険生物なのです。
特に遭遇する可能性が高い3つのシーンを確認していきましょう。
釣り

ウミケムシと出くわす可能性がもっとも高いレジャーフィッシング。
砂地に生息しているキスやフラットフィッシュを狙った餌をあまり動かす事のない投げ釣りの外道として掛かり、釣れた場合は針ごと丸飲みしているケースが多くあります。
絶対に素手で触ることはせず、プライヤーやフィッシュグリップを駆使して針を外し、海へ返してあげてください。
その場に残すことで、知らずに触ってしまう方がいるかもしれません。必ず海に返しましょう。
海水浴

海水温の上昇・砂地とウミケムシが出現する条件が整っている″海水浴″も注意しなければならない場面。
ウミケムシを発見したら決して近づかず、有人の管理海水浴であれば係員さんに報告しましょう。また浅瀬の岩下などにも潜んでいる為、磯場遊びの際も注意が必要です。
アクアリウム

入れた覚えの無い水槽にも突如発生するウミケムシ。
これは観賞用の岩(ライブロック)へ付着したウミケムシを持ち込んでいる可能性が最も高く、また気付かぬうちに大量増殖してしまうケースも聞かれます。
魚への実害はほとんど無く、むしろ少個体数であれば砂中の雑菌を掃除してくれるメリットも存在します。
もし刺されてしまったら

ウミケムシの体毛には「コンプラニン」と呼ばれる毒があり、刺された箇所には痛み・痒み・腫れなどの症状が出ます。
命に別状はありませんが、刺されてから数日、痒みに関しては数週間続く事例も報告されており、かなり辛い思いをすることになります。
ウミケムシの毒針がびっしり皮膚に刺さってしまった! 万が一の事態が発生した場合のため、あらかじめ対処方法を覚えておきましょう。
①毒針を抜く

ヤツに触れた場合、ガラス繊維のような剛毛を無数に突き刺してきます。刺された箇所は絶対にこすらず、ガムテープやセロハンテープを使い毛を剥がしていきましょう。
間違っても決して素手で抜こうとはしないで下さい。
②水で洗い流す

毒針の除去が完了したら、流水で洗い流して下さい。
③アルコールで消毒

流水で流した後はアルコールなどで消毒を行って下さい。
④症状が続く場合は

症状が長引く場合や痛み痒みなどが酷い場合は、皮膚科の専門医に見てもらいステロイド外用薬などを処方してもらいましょう。
触らぬ神に祟りなし

見た目の邪悪さと実害という攻撃性を兼ね備えたウミケムシ。“触らぬ神に祟りなし”と、ことわざがあるように基本こちらから仕掛けなければ何もしない生物ですので出会った際は触れず遊ばず海へ返してあげましょう。
海にはウミケムシ以外にも危険生物が多く生息しています。見たことない種類や未知の海洋生物と出会った際は容易に触れず口にせず、安全第一のマリンレジャーを心掛けていきましょう。