タナゴの種類について
日本には18種類ものタナゴが生息している
『世界最小の釣り』とも言われるタナゴ釣りですが、じつはタナゴの種類は1種類だけではありません。
日本には、特別天然記念物や外来種も含めると18種類ものタナゴの仲間が生息しています(17種という見解もあります)。
今回の記事では、タナゴ探しの入門種とも言える“ヤリタナゴ”の釣り方や探し方を簡単にご紹介します。
美しい婚姻色がタナゴの魅力
タナゴの魅力はオスが繁殖期に見せる「婚姻色」と呼ばれる鮮やかな色味でしょう。
魚釣りをしない方でも思わず二度見してしまうくらい、特徴的で美しい発色が根強いタナゴ人気の理由です。
タナゴ達の婚姻色は、種類や産地によって差があり、釣り味だけでなくコレクション的な要素からもタナゴ釣りの世界にハマる人が多いんです。
タナゴの楽しさは“生息場所を探すこと”にあります
タナゴ釣りはほとんどの場合、タナゴが棲むポイントにたどり着けさえすれば簡単に釣ったり捕まえたりすることのできる魚です。
とはいえ、様々な理由でタナゴが生息できるような環境が昔と比べて減ってしまっているため、“ポイント探し”こそが難関。
捕まえてみたい種類のタナゴの生態を勉強し、そのタナゴがどんな環境なら生き残っているか想像しながら探し出すこともタナゴ釣りや採集の楽しさのひとつです。
日本に広く生息するヤリタナゴについて
ヤリタナゴとは
ヤリタナゴは、最大で全長10cm~12cm程度まで成長するタナゴの仲間で、アブラボテに比較的近い種類とされています。
ヤリタナゴの婚姻色は、胸ビレ周辺が朱色、体側は淡い緑色に発色し光の加減では水色に見えることも。
婚姻色を出さないタナゴのメスや幼魚、オスであっても繁殖期以外の見分けは難しく、タナゴに詳しい人でも見誤る場合があります。
▼アブラボテというタナゴについてはコチラの記事
ヤリタナゴは身近なタナゴです
ヤリタナゴは日本に生息する在来タナゴとしては、もっとも生息範囲の広いタナゴとして知られています。
北は青森県から南は宮崎県まで。北海道、鹿児島県、沖縄県以外を自然分布域とし、移入種として鹿児島県でも生息が確認されています。
ちなみに、国外外来種ですがタイリクバラタナゴは47都道府県全てで生息が確認されています。
▼東京都内でも楽しめるタイリクバラタナゴ釣り
ヤリタナゴの繁殖期と寿命
ヤリタナゴの婚姻色を楽しむ上で重要なのが、繁殖期の把握です。
ヤリタナゴは生息範囲が広いため、地域によって多少の前後はありますが、おおむね4月から7月にかけて繁殖期を迎えます。
婚姻色にこだわらなければ年中釣れる魚ですが、冬季は活性が落ちるため夏に比べると釣りにくくなります。
ちなみにヤリタナゴは、生後1年で成熟し寿命は2~3年程度です。
ヤリタナゴの特徴と見分け方
ヤリタナゴの特徴その1:ヒゲが長い
婚姻色の出たヤリタナゴは比較的、他のタナゴと見分けやすい種類です。
まず注目して欲しいのは、“ヒゲの有無”と“長さ”。ヤリタナゴやアブラボテは口ひげが長いという特徴があります。
ヤリタナゴの特徴その2:背ビレに紡錘斑(ぼうすいはん)がある
アブラボテ属に分類されるタナゴの仲間の特徴として、背ビレに紡錘斑が入ります。
ヤリタナゴはアブラボテの仲間なので、画像のような斑点が背ビレに確認できます。
ちなみに、日本に生息するアブラボテ属に分類されるのは、アブラボテ、ヤリタナゴ、ミヤコタナゴの3種類です。
ヤリタナゴの特徴その3:細長い形状
ヤリタナゴとアブラボテは、体形や色味が違うのでとても簡単に見分けられます。
ヤリタナゴはアブラボテよりも体高が低く、暗い色合いのアブラボテに比べてヤリタナゴは淡い色に発色します。
ヤリタナゴとアブラボテの交雑について
ちなみに、ヤリタナゴとアブラボテは自然界でも交雑することがあります。
両者の特徴を持ったタナゴは、「ヤリボテ」と呼ばれる交雑種かもしれません。
ヤリタナゴとカネヒラやタビラ類との見分け方
タナゴを見慣れていない方は、アブラボテよりもカネヒラやアカヒレタビラなどとヤリタナゴの見分けの方が難しいと感じるかもしれません。
カネヒラもアカヒレタビラも口ヒゲがありますが、ヤリタナゴよりも短く、背ビレに紡錘斑が無い代わりに、体側に青い縦斑があるため、見分けることができます。
ちなみに、学術的に魚は頭から尾にかけての方向を縦、背から腹にかけての方向を横と定義しています。
ヤリタナゴの探し方について
二枚貝が生息できない場所にはタナゴはいない
タナゴの共通事項として、卵を二枚貝の中に産み付けるという変わった生態を持っています。
好む二枚貝はタナゴの種類によって差があるものの、大前提として二枚貝が生息できない場所、すなわち水質が著しく悪かったり、二枚貝が生息できないような川底に改修された河川ではタナゴも生き残れません。
また、広い生息域を持つヤリタナゴであっても、生息するエリアとしないエリアがハッキリとしている場合があるので、同じ市町村内を細かく探すのではなく、探す範囲を広くすると良いでしょう。
水田地帯の小川や用水路が狙い目
ヤリタナゴは流れのある環境を好むタナゴのため、池や沼よりも田園地帯を流れる小川や用水路が狙い目です。
川底が砂礫底で良質な水草が育っていて、水面を覗き込むと小魚が逃げまどうような場所を探してみましょう。
水深は20~50cmもあればOK。濁っていたり深くて魚がいるかいないか分からないような環境で試し釣りを繰り返すよりも、川底が確認できる程度の透明度と水深の場所を目視だけで探し歩く方が効率的です。
■ヤリタナゴの探し方POINT
- ●本州、四国、九州
- ●平野部の小川や用水路が狙い目
- ●湖や池などにも生息する場合あり
- ●緩やかに流れるポイントを好む
- ●良質な水草が育つ砂礫底を好む
- ●水深20~50cm程度がオススメ
- ●小魚が逃げまどう姿が確認できる場所
逃げまどっていても、数分もすれば餌に食いついてきますよ
食欲旺盛なヤリタナゴは、例え人の気配を感じて逃げてしまっても、数分静かにして待っていると再び餌を食べ始めます。
水中が見えやすくなる偏光グラスをかけて、平野部を流れる小川や用水路を探して回りましょう。
ヤリタナゴの釣り方と餌について
タナゴ仕掛けを用意しよう
タナゴ釣りと聞くと、繊細でなかなか針掛かりしない釣りを想像するかもしれませんが、ヤリタナゴはそこまで気にしなくても問題ありません。
確かに、バラタナゴやカゼトゲタナゴなど小さな種類は極小針を使ったりしなければなりませんが、ヤリタナゴは一般的なタナゴ用のセット仕掛けでも釣ることができます。
竿と仕掛けの長さは釣り場に合わせて選びましょう。田んぼ脇の用水路では150cm前後、小川では210cm前後が扱いやすいですよ。
餌は黄身練やグルテンがオススメ ミミズや赤虫でも〇
ヤリタナゴは、藻類から小さな水生昆虫まで食べる雑食性の魚です。
そのため、グルテンや黄身練といったタナゴ釣り定番の餌だけでなく、赤虫や小さく千切ったミミズでも釣ることができます。
水と混ぜるだけで作れるタナゴグルテンや黄身練りがお手軽で、ヤリタナゴの食いも良くオススメ!
泳いでいるヤリタナゴの前に餌を落とせば食いついてきます
ヤリタナゴが群れているような場所では、競い合うように食いついてくるのでタナゴ針を使った仕掛けなら初心者の方でも簡単に釣り上げることができます。
タナゴ釣りは、場所が何よりも大切。ヤリタナゴが群れているポイントを見事探し当てることができれば、入食いになることも珍しくありません。
▼タナゴ釣りを始める方はまず読んでみてください!
ヤリタナゴの飼育と注意点について
ヤリタナゴは観賞魚としても魅力的
美しいヤリタナゴを捕まえたら、飼育してみたいと思う人もいることでしょう。
ヤリタナゴは日本産淡水魚ということで、熱帯魚のように冬季に加温せずに飼育することができます。
むしろ真夏の高水温の方がリスクとなりますので、30℃を超えてしまう場合は、エアコンで室温を下げたり、水槽用のファンを使用しましょう。
ヤリタナゴは比較的優しい性格
タナゴは種類によって気性が荒く、小競り合いが多いものがいますが、ヤリタナゴは比較的温和な性格です。
そのため、他の魚との混泳も成功しやすく、ドジョウやヌマエビ、タナゴと同サイズ以上の姉金などの金魚と一緒に飼育できます。
ヤリタナゴを飼育するのに必要な水槽の大きさ
コトブキ工芸 プログレ600 8点セット
水槽サイズ | (約)幅60×奥行き30×高さ36cm(水量:約58L) |
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LED照明 | フラットLED SS 600 |
上部式フィルター | スーパーターボ トリプルボックス 600 |
ヒーター | ツーウェイオートMD 160W |
最大で10cm前後まで成長するヤリタナゴは、45cm規格水槽から飼育することができます。オススメは60cm規格水槽です。
餌は口に入る大きさの物なら、金魚の餌などの人工飼料も選り好みせず食べてくれるので、飼育難易度としては簡単な部類に該当します。
一度飼育を始めたら絶対に逃がしてはダメ
近年、観賞魚を野外に放つ飼い主が多く、社会問題になっています。弱ってしまったから可哀そうとか、飼いきれないから……など、いかなる理由があっても、一度家に持ち帰った生き物を再び自然へ逃がすことは認められません。
例え、日本中に広く棲んでいるヤリタナゴといえど、地域ごとに微妙な違いがあるため、移送放流も絶対にやってはいけません。
これ以上、国内・国外問わず『外来種問題』を発展させないためにも、生き物を飼育する際は必ず家族としっかり相談し、何があっても死ぬまで飼い続ける覚悟を決めましょう。
タナゴが釣れるポイントの扱い方にご注意下さい
タナゴを釣るためにポイントを探してみると、想像以上にタナゴが生息できる環境が少ないことに気が付くかと思います。
また、ポイントさえ見つけられれば簡単に釣ったり採集できることから、観賞魚として販売目的の乱獲の被害に遭いやすい性質もあります。
そのため、タナゴ用の釣り具を販売している釣具店でも、タナゴの釣り場を教えてくれないお店が多いのが実情です。
同様の理由から、日本産タナゴに関しては、釣り場に関する情報を安易に不特定多数の人が閲覧できるSNSやブログなどに投稿しないように注意しましょう。