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トウゴロウイワシはマズイ魚ではありません
トウゴロウイワシは“美味しくない”って本当なの?

堤防でサビキ釣りをしていると、イワシのようでイワシじゃない魚が釣れることがありますよね。
隣で釣りをしているおじ様から、『トウゴロウは美味しくないぞ!』と教えてもらうこの魚。じつは、逃がすには少々もったいない魚なんです!
トウゴロウイワシを食べている魚はルアーで釣りにくい

ルアーフィッシングをするアングラーの間でも、トウゴロウイワシはマイナスのイメージで良く知られている魚なんです。
というのも、トウゴロウイワシは水面で止まったり急に動いたりすることが得意なため、トウゴロウイワシを追いかけているシーバスをルアーで釣るのが難しいからなんですね。
不人気な堤防の魚『トウゴロウイワシ』の良い所を深堀します

確かに……アジやマイワシに比べていると、色んな意味でトウゴロウイワシが劣ることは認めます。ただ、トウゴロウイワシしか釣れないことだってあるじゃないですか(泣)
そんな時はぜひこの記事を参考に、トウゴロウイワシを美味しく料理してもらいたいです!
きっとトウゴロウイワシの魅力に気が付くはずですよ!
サビキ釣りの外道『トウゴロウイワシ』の特徴やイワシとの見分け方について
トウゴロウイワシとイワシの違いは?

具体的に、トウゴロウイワシとマイワシやカタクチイワシの違いを見ていきましょう。
一番分かりやすい違いは、ウロコの剝がれにくさです。イワシの仲間は魚体に触れただけで、薄いウロコが手にまとわりつくようにして剥がれてしまいます。
対してトウゴロウイワシのウロコは、調理する際に面倒に思うほどしっかりとしています。
その他にも、トウゴロウイワシの背ビレは2つあるのに対して、イワシの仲間は1つです。
トウゴロウイワシは淡水魚であるレインボーフィッシュの仲間

トウゴロウイワシは“イワシ”と名前が付いていますが、生物としてはイワシとは遠くかけ離れた種類の魚です。
マイワシやカタクチイワシが「ニシン目」に分類されるのに対して、トウゴロウイワシは「トウゴロウイワシ目」であり、例えるならスズキ目であるマダイと、ナマズ目であるゴンズイくらいの大きな違いがあります。
ちなみに、トウゴロウイワシ目に該当する多くの魚は淡水魚であり、観賞魚として人気のある“レインボーフィッシュ”の仲間が、トウゴロウイワシの仲間と言えるでしょう。
余談ですが……熱帯魚マニアでもある僕は、わざわざオーストラリアまでトウゴロウイワシの仲間(写真の魚)を捕まえに行ったこともあります(笑)
トウゴロウイワシとそっくりなギンイソイワシの存在について

日本に生息するトウゴロウイワシの仲間は、「ギンイソイワシ」や「ムギイワシ」など数種類が知られています。
トウゴロウイワシとギンイソイワシについては、外見がとても良く似ているため一般的には区別されていませんが、トウゴロウイワシは内湾や汽水域に多く、ギンイソイワシは外洋に面した地域や潮遠しの良い沿岸域に生息しています。
ちなみに、磯でルアーフィッシングをされる方に有名な「ナミノハナ」もトウゴロウイワシ目に分類される魚ですよ。
トウゴロウイワシ|名前の由来や地方名について
トウゴロウイワシの生息域

トウゴロウイワシは主に沖縄を除く、新潟県以南の日本海および千葉県以南の太平洋側に広く生息しています。
沿岸域に生息する性質があるため、沖合に出ることがなく、マイワシやカタクチイワシと比べて回遊性の低い魚として知られています。
この生態は、釣り人にとっては好都合で、一度港内に入ってくれれば長い期間釣れ続けたり、ベイトフィッシュとして機能してくれる魚です。
トウゴロウイワシの由来はウロコにある

ところで、『トウゴロウ』とは面白い名前ですよね。この名前の由来は、ウロコの剥がれにくさにあると言われています。
九州の方言で、着物を脱がずに寝てしまうことを「とんころ」と言ったそうで、死んでしまう頃にはウロコが剥がれてしまうマイワシやカタクチイワシと姿が似ているのに、いつまでもウロコを付けたままな状態を着物を脱がずに寝ていることに見立て『とんころいわし』と呼び、いつしかトウゴロウイワシになったのではないかという説が有力です。
トウゴロウイワシには様々な地方名で呼ばれている

人々の生活に身近だった魚には、多くの地方名が与えられていることがありますが、トウゴロウイワシも多くの名前で呼ばれています。
例えば、神奈川県では「ボライワシ」、愛知県では「ネコイワシ」、他にも「トンゴロ」や「ウロコイワシ」、「ヤマハダラ」など様々な呼び名で親しまれています。
トウゴロウイワシが釣れる場所や釣り方について
トウゴロウイワシは堤防で釣ることのできる魚

そんな身近なトウゴロウイワシは、比較的簡単に堤防でのサビキ釣りで釣ることができます。
群れに当たれば年中釣ることのできるトウゴロウイワシですが、水温が高い初夏から秋にかけてが最もよく釣れる時期と言えるでしょう。
トウゴロウイワシの釣り方のコツ

トウゴロウイワシの大きさは最大でも15cm程度と小さな魚なので、小さなサビキ針を使用するようにしましょう。
1号前後のサビキ針がオススメ。活性が高い時はパニックサビキで効率よく釣ると釣果が伸びますよ!
▼パニックサビキについてはコチラの記事
水温が低くいなどの理由で活性が低い時は、針に餌をつけられるトリックサビキを使うと良いでしょう。
▼食い渋りに強い!トリックサビキはコチラの記事
表層に群れを集めれば大量に釣れることも

トウゴロウイワシは表層を群れで泳ぐ性質があるので、トウゴロウイワシが釣れる状況は水面を観察すれば良く分かります。
トウゴロウイワシが釣り場に来遊していれば、コマセを撒くことで水面にワァーっと集まってきます。
イワシやアジと違い、撒き餌をさぼらなければ群れを足止めすることは比較的簡単で、一度群れを集められればその一日中いてくれることも珍しくありません。
トウゴロウイワシは泳がせ釣りの餌としても優秀!

トウゴロウイワシは、アジやイワシと同じように泳がせ釣りの餌としての使い道もあります。
トウゴロウイワシの群れには、青物やスズキといったフィッシュイーター(肉食魚)が付いていることも!
1匹のトウゴロウイワシが思わぬ大物に変わることがあるので、ぜひ試してみてくださいね!
▼泳がせ釣りについてはコチラの記事
トウゴロウイワシは美味しい魚!騙されたと思って味わってみて下さい
トウゴロウイワシはウロコが厄介なだけです

トウゴロウイワシが食材として嫌煙される最大の理由が、取りづらいウロコの存在です。
とはいえ、あくまでも小あじやイワシと比べての話であり、包丁で簡単に剥ぐことができますよ。
勢いよくウロコを引くとバリバリッとウロコが飛び散るので、その点はご注意くださいね。
トウゴロウイワシの刺身|キビナゴやサヨリに似て美味

トウゴロウイワシは、お刺身で大変美味しく食べられる魚です。トウゴウイワシの大きな血合いは色味が良く、お皿に盛って美しいお刺身になります。
トウゴロウイワシの味としては、キビナゴやサヨリに近く、爽やかでさっぱりとした風味や食感が楽しめますよ。

少々面倒ですが腹骨を丁寧にすき取っておくことで、小骨が気にならなくなります!
トウゴロウイワシのせごし|噛むほどに染み出す旨味

“背超し(せごし)”とは、内臓とウロコを綺麗にとった状態の小魚を輪切りにしたものを生で食べる食べ方です。
皮や骨から噛めば噛むほど旨味が染み出してきます。醤油でも良いですが、ポン酢や酢味噌との相性も抜群ですよ。

トウゴロウイワシでせごしを作ると、骨の硬さが気にならないのでせごし未経験な方にはオススメです!
トウゴロウイワシならではの美味しい食べ方もご紹介
トウゴロウイワシの丸焼き|意外と甘みのある塩焼き

小さな魚を捌くのは面倒くさい! そんな方は、トウゴロウイワシの丸焼きはいかがでしょうか。
“軽く塩を振って焼くだけ”以上です。ウロコも取らなくてよいので、簡単ですよね!
サンマの内臓が好きな方は、きっと「旨いッ!」って言ってくれると思います。
内蔵やウロコが苦手な方は、しっかり下処理をすることで美味しい塩焼きとしていただけますよ!
トウゴロウイワシの唐揚げ|ウロコを付けたまま揚げてみて欲しい

僕が一番好きなトウゴロウイワシの食べ方は、ウロコを付けたままの丸揚げです。
内蔵とエラを取り、塩コショウで下味をつけて丸揚げにします。衣は付けなくてOK!
ウロコが逆立ち、まるで南米の怪魚のような仕上がりですが、サックサクでメチャ旨ですよ!
本当にトウゴロウイワシはボラの仲間なのか?
最後に明日には役に立たない豆知識を少しだけ

トウゴウイワシは、ボラやダツの仲間と言われることがありますよね。
記事の中でご紹介した通り、トウゴロウイワシは「トウゴロウイワシ目」に分類されます。それに対し、ボラは「ボラ目」、ダツは「ダツ目」に分類されています。
目(もく)が違うってことは、マダイとゴンズイのように全然違う魚では……? と感じるかもしれませんが、じつは分類の世界には目の上の項目があるんです。
イワシやカタクチイワシは『ニシン上目』であるのに対し、トウゴロウイワシやボラ、そしてダツも『棘鰭上目(きょくきじょうもく)』に該当します。
トウゴロウイワシは、魚の分類で重要なポジションを取っている

このような理由から、トウゴロウイワシはイワシよりも、ボラやダツに進化の起源が近い魚と言われるんですね。
ちなみに、「棘鰭上目(きょくきじょうもく)」には、スズキ目も入っています。
分類の研究は、現在進行形で行われている分野でありとても流動的なもの。
将来的には全然違う説が唱えられているかもしれませんが、それもまた、生き物の神秘であり魅力なんです。
今回は、あまり注目されないトウゴロウイワシについて深堀してみました。
もし、釣り場でトウゴロウイワシに出会ったら、取り合えず食べてみてください! 結構おいしいですよ!