外来魚といえども旨いもんはウマイんだ!
外来魚とは
もとの生息域と違う場所に人の手によって放流された魚を「外来魚」と呼びます。
本来はアメリカに住んでいるブラックバスやニジマスが、外来魚の代表例と言えますね。
外来魚は多かれ少なかれ、もともと住んでいた生き物に影響を与えます。
なかでも、深刻な被害をもたらす魚を国は特定外来生物に指定し、飼育や移動などを禁止しています。
外来魚を食べるには勇気がいる
外来魚というレッテルを張られている時点で、食べる気力を削がれてしまいますよね……。
淡水魚を食べる文化が衰退してしまっている日本では、敷居の高い食材と言えます。
また、一般的に魚を生食する日本人にとって淡水魚は危険な寄生虫のリスクがあるのも事実です。
美味しい外来魚もいれば目も当てられない外来魚もいる
外来魚って基本的に個性豊かで、食味についても驚くほど美味しいものから腐った鉄のような(舐めたこと無いケド)到底食べ物と思えないものまで色々あるんです。
そんな外来魚の食味について、今回は“本当に美味しい魚”に絞ってご紹介していきたいと思います。
もし、身近に今回僕が紹介する外来魚が住んでいたら、ぜひ食べてみて下さい!
美味しい外来魚の共通点は食用魚
外来魚が移入した理由に注目してみよう
日本に外来魚が移入される原因は、大きく2つ挙げられます。
1つ目は観賞魚。つまり、ペットとして輸入された魚を飼育していた人が野外に遺棄することに起因します。
2つ目は、食用として養殖していた外来魚を業者が不法投棄したり逃がしてしまったりすることに起因します。
食用として移入した外来魚
食用として移入される外来魚の多くは、日本で養殖することを目的として連れ込まれるため、日本の気候に合った種類が選ばれます。
そのため、一度野外に流出してしまうと比較的容易に定着(繁殖して世代交代すること)します。
食用として移入され、日本の川や湖に定着している魚の代表例は以下の通りです。
- ●ニジマス(産業管理外来種)
- ●チャネルキャットフィッシュ(特定外来生物)
- ●ナイルティラピア
- ●ソウギョ
- ●カムルチー
- ●ウシガエル(特定外来種/両生類)
観賞魚として移入した外来魚
観賞魚として輸入される多くの魚は「熱帯魚」と呼ばれることもあるように、沖縄を除き寒い日本の冬を乗り越えられず1年以内に死んでしまいます。
しかしながら、北米原産や中国・韓国原産の魚は、日本の環境に適応し定着してしまいます。
- ●コウライギギ(特定外来種)
- ●ダントウボウ
- ●コウライオヤニラミ
- ●コウタイ
- ●カワイワシ
- ●カダヤシ(特定外来種)
- ●マダラロリカリア
- ●カミツキガメ(特定外来種/爬虫類)
食べてみるなら食用外来魚に限る!
魚に詳しくなってくると、姿形や何の仲間か調べることで何となく食味が予想できてきます。
例えば、海水魚から分化したシクリッドの仲間は基本的に美味しいですし、デトリタスやコケを食べる系の魚はボラが臭くなるようなイメージで所によって激マズだったりします。
それでは、僕の経験から外来魚初心者の方にも自信を持ってオススメできる美味しい魚をご紹介いたします。
心の底からオススメできる外来魚『ティラピア』
今までに100匹以上はティラピアを食べてきました
食べて美味しい外来魚オススメNo.1は、アフリカ大陸原産のナイルティラピアです。
ティラピアは日本産淡水魚にはないシクリッドの仲間で、簡単にいえば海に住むスズメダイの遠い親戚のような魚です。
沖縄県の川や池では普通に見られ、熊本、滋賀、三重、愛知県などの温排水や湧水地に定着しています。
食材として世界中で愛されています
ティラピアという魚は原産こそアフリカ大陸ですが、食味の良さと養殖の容易さから世界中で食されている淡水魚です。
淡水域への釣行が多い僕にとって、海外遠征時に食べないことは無いといっても過言ではありません。
メニューにティラピアの名前があれば安心して頼む。ティラピアはそんな存在です。
塩焼き、唐揚げ、フライなんでもOK
釣ったティラピアは泥抜き等不要です。内臓を出す際にお腹の膜が黒いため、日本人には抵抗があるかと思いますが身に匂いはありませんのでご安心ください。
オススメは味の素や塩を振って丸揚げにすることですが、塩焼きや三枚におろしてフライでも大変美味ですよ。
日本でもフィレになった冷凍食品が売られていますので、ティラピアの味が気になった方はぜひ、試してみてください!
▼そんなティラピアの釣り方はこちら
フライやムニエルに最適な外来魚『アメリカナマズ』
アメリカ人の好物チャネルキャットフィッシュ
アメリカのスーパーで、サーモンと並んでレギュラーメンバーになっているのがチャネルキャットフィッシュ(通称:アメリカナマズ)です。
アメリカナマズのソテーやムニエルは、アメリカのレストランでは一般的なメニューなんですね。
日本には、1971年に食用目的で移入され、霞ケ浦・利根川水系をはじめ、日本各地に定着し大きな問題になっています。
たんぱくでクセの無い白身が特徴
アメリカナマズの特徴は、なんといっても捌きやすく食べやすいことですね。
アメリカナマズにはウロコも小骨も無く、良くも悪くも魚らしい臭みが少なく、料理に扱いやすい魚です。
日本のナマズのような強いヌメリもないので、捌くのが楽ですね!
大きいものは脂が乗りすぎて臭みが出てしまうので、25~35cmくらいがオススメです。三枚に卸し、皮を引いてフィレにしましょう。
揚げ物や焼き物がオススメ
アメリカナマズを使った料理でオススメなのは、フライやバター焼きです。
強めの塩コショウや味の素で下味をつけるのがコツ。生姜やニンニクを使っても良いでしょう。
バター焼きの場合は、焼き上がりの際に薄口しょうゆを回し、焦がしバター醤油にすると美味ですよ!
アメリカナマズではありませんが、東南アジアで一般的な食用ナマズ・パンガシウスキャットフィッシュ(カイヤン)の切り身は日本のスーパーでも見かけます。
味はとにかく良い!ただ…見た目が悪い『ウシガエル』
一番旨い外来生物はウシガエル
ここまで王道の美味しい外来種をご紹介しましたが、ちょっと路線変更させていただきます。
みんな大っ嫌いなウシガエル。この生き物、実はめちゃくちゃ旨いんです。本当にッ! 信じてください!
ゲテモノに該当することは百も承知ですが、スーパーで3匹500円とかで売ってたら買いたいレベルで美味しいんです。
ウシガエルは塩焼きや唐揚げで大変美味
食味や食感は鶏肉に近いのですが、旨味は安い外国産の鶏肉なんかより味わい深く、カエルと知らなければ万人が旨いと答えます。
▼TSURI HACK編集部も絶賛?!ウシガエルの味とは……?
みんなが共感!美味な外来魚『ニジマス』
実はニジマスも外来魚であることを知って欲しい
皆さんよくご存知のニジマスは、世界の侵略的外来種ワースト100(動植物含む)に指定される程、世界中で悪影響を与えるとされる魚です。
ニジマスは日本でも歴とした外来魚で、北海道を中心に定着してしまっています。
外来魚を利用しても良いが在来魚かのように既成事実化してはいけない
ニジマスが美味しい魚であることは言うまでもありません。僕が最後にニジマスを紹介させていただいた理由には、ニジマスも外来種であることを伝えたかったためです。
産業管理対象外来種に指定されるほど、ニジマスは経済的に価値のある魚です。
しかしながら、当たり前のように身近な存在になってしまい、一般市民がいつの間にかニジマスが外来魚であることを忘れてしまう傾向にあります。
最初に触れたように、外来生物はもともといた生き物に対し必ず悪影響を与えます。
コイやアメリカザリガニのように外来種であるにも関わらず、在来種とするような既成事実化をしてはいけません。
最後は真面目な話になってしまいましたが……
外来魚とはいえ、命ある生き物です。専門家が行う単純な駆除だけでは、上手く物事が進まないこともあります。
一般市民が自然や生き物に興味を持って、美味しい外来種は食材として利用するといった世の中になると良いなと思っています。
ライタープロフィール
山根央之(やまねひろゆき)
初めての1匹との出会いに最も価値を置き、世界中何処へでも行く怪魚ハンター山根ブラザーズの兄。餌・ルアー問わず、もはや釣りに限らず。ガサガサや漁業者と協力してまでも、まだ見ぬ生き物を追い求め、日々水辺に立っている。
テレビ東京・緊急SOS池の水全部抜くやNHK・ダーウィンが来た、TBS・VSリアルガチ危険生物などに出演したり、魚類生態調査に参加したりと幅広く活動中。
どえらい魚を獲った!もはや釣りを越えて!色んな人と繋がって!特大天然メコンオオナマズ! 240 cm175 kg 捕獲です!!ホント色んな人に助けられてこの魚と出会うことができました!メコンオオナマズに関わる全ての人に感謝でいっぱいです!! pic.twitter.com/JHWpNdLAvX
— 山根ブラザーズ(兄)@kimi (@chillkimi) September 16, 2017