霞ヶ浦で「見たことのない魚が釣れた!」という情報が頻発している
霞ヶ浦で変わった魚が釣れている?!
2016年以降、日本で2番目の大きさを誇る霞ヶ浦で「フナに似た見たことも聞いたこともない魚が釣れた!」という情報が増加しています。
その釣獲情報は年々増加傾向で、2018年ごろからは取り分け珍しい情報でも無くなり、霞ケ浦で釣りをする人の間ではその魚の正体が『ダントウボウ』という魚であることが認知されるようになってきました。
変な魚の正体『ダントウボウ』
ヘラブナのように体高が迫り上がり、ワタカのように遊泳力の高そうな尾びれを持ち、コイのような口ヒゲはありません。
この魚は中国で「タントウファン」や「ウーチャンユイ」と呼ばれるコイの仲間で、原産国である中国では主要な食用魚として養殖が盛んに行われています。
生態について詳しく書き出すと、ダントウボウ(Megalobrama amblycephala)はコイ目コイ科クセノキプリス亜科メガロブラマ属に分類され、日本の魚の中ではワタカに比較的近い種類の魚です。
食性は植物食性を基本とした雑食性ですが、ユスリカの幼虫やミミズなど動物性の餌も摂餌します。
ダントウボウの大きさ、最大サイズについて
ダントウボウについて日本語で検索すると最大で2mにまで成長するという情報を多く目にしますが、中国では最大で60cm程度の中型魚として扱われています。
確かに僕も頻繁に閲覧するFishBaseというデータベースにはMax size 200cmと記載されていますが、これは恐らく誤った情報と思われます。
中国の図鑑ではダントウボウは最大で3~4kgまで成長する魚と記されています。
ダントウボウを霞ヶ浦で釣ってみたい
怪魚ハンターとして釣らずにはいられない
ダントウボウ……そりゃ、釣ってみたいでしょ! ということで、昨年から何度も霞ヶ浦に通っていました。
実はハイブリット種の“コイヘラ”を狙った釣行でも、同時進行でダントウボウを狙っていたんです。
▼世にも珍しい交雑種”コイヘラ”を狙った釣行記はコチラ
ダントウボウに関して情報をまとめます
ダントウボウは、主にヘラブナ釣りの外道で釣られていて、ポイントは霞ケ浦全域。とりわけ土浦周辺や常陸利根川、小野川などの情報が多い印象を受けました。
また、アメリカナマズ狙いのブッコミ釣りやバス釣りの外道でも釣れたという投稿や動画もあり、食性の幅の広さも感じます。
タナゴ狙いの外道では10cm以下の幼魚が釣れており、繁殖していることについて疑いようがありません。
実はめちゃ苦戦してたんです。
なんと、今回でダントウボウ狙いの実釣はのべ10日目……。
ヘラ釣り、ブッコミ、スプーンやスピナーを使ったルアー釣り、そしてタナゴ釣りまで一通り試してみましたがかすりもせず(笑)。
あげくの果てに、ダントウボウの死骸を見つけて歓喜する程まで追い込まれていました。
特に今年は捕獲情報が多く、そんなに珍しい魚でもないはずなのに「何で……。」相性が悪いとはまさにこのことです。
一周回ってヘラブナ釣りを楽しむ怪魚ハンター山根
もともとヘラブナ釣りが大好きだったこともあり、ダントウボウを狙いながらヘラブナ釣りを楽しんでいればそのうち釣れるやろう……と長期戦で挑んでいたのです。
この記事を書いているということは、とうとう釣れたのか?!
それでは先日の霞ヶ浦・ヘラブナ(ダントウボウ)釣行を振り返っていきましょう!
ブッコミとヘラ釣りの2段構えで挑むダントウボウ釣り
2020年11月曇り……寒いです
我が家から霞ヶ浦までは約3時間。通うにはちょっと微妙な距離ですが、今回も気合を入れて深夜に出発です。
それにしても8℃……。11月にしては寒すぎやしませんか。でも、この寒さでアメリカナマズ達の活性がいくらか下がっているかもしれませんね!
ブッコミ釣りからスタート
この日は午後から南風が吹く予報が出ていたので、風を背負える稲敷郡にポイントを決め、早速ミミズを餌にしたブッコミ釣りを始めます。
霞ヶ浦ではコイが頻繁に掛かるので、ドラグは緩めておかないと竿が吹っ飛んでいくので注意ですよ。
鈴をつけたら、ヘラブナ釣りの準備に取り掛かります!
練餌を作ります
まずは魚を寄せる為に集魚力の高い餌を作ってみました。
「ダントウボウもフナもタナゴも何でも来い!」って意気込みです。
ヘラブナ釣り用語では18尺(5.4m)の竿を使ったバランスの底釣り、餌は両ダンゴといったところでしょうか。水深は竿一本(約90cm)です。
ウキがめちゃ遠いぞ(笑)
仕掛けを組み終わり、タナが取れたところで実釣開始です!
ブッコミの仕掛けは30分程経ちますが静けさを保っており、どうやら厄介者のアメリカナマズの活性は低そうです。
これなら水深の浅いこのポイントでもヘラブナ釣りが成立するぞ!と期待しますが……。
霞ヶ浦にはたくさんの魚が住んでいる
意外な外道「ウグイ」に苦しめられる
異変は釣りを初めて15分程経ってから始まりました。どうやら集魚力の高すぎる餌を作ってしまったようです。
仕掛けを投入した途端にウキがピクピク動き、全然落ち着いてくれません。
仕掛けをあげると、小さなウグイが掛かっています。それもWヒット連発……。
ウグイの猛攻、ときどきボラ、タナゴに喜ぶ悪状況
僕の得意技のひとつに数釣って、本命を当てるという忍耐力を使った釣りがあります。
朝から13時までウグイを50匹以上釣り続けますが、まれに掛かるボラにドキッと緊張する始末です。
霞ヶ浦ならではの魚「オオタナゴ」の活性も高く、美しい魚体に癒されますが……ダントウボウにはほど遠い状況なのは言うまでもありません。
相変わらずブッコミの方は、まれにミミズがかじられる程度で強いアタリはありません。
風向きが変わったタイミングで餌をグルテンに変更!
予報どおり南風が吹き始め、時を同じくして湖流も強くなってきました。
仕掛けをドボン釣法と呼ばれる重たいオモリを使ったものに変更し、溶けやすい餌からしっかり針に残るグルテンに変えてみることに。
ここからは、じっくり待って釣る釣りを展開します。それにしても……ブッコミ当たらないな(笑)。
マルキュー 野釣りグルテン ダントツ
ウグイ去り、ヘラブナ来たり!ダントウボウのチャンス到来か?!
ウグイのアタリが激減
風と流れが変わり、あれだけ寄っていたウグイの群れがまわりから抜けていったようです。
今まで30秒と止まることが無かったウキの動きに、ようやく静けさが帰ってきました。これぞヘラブナ釣りです。
15時10分 待望のヘラブナ掛かる
日も陰り始めた15時過ぎに、「チクッ」とウキが入りました!
久々のアタリだったので、半信半疑で竿をあげると綺麗なヘラブナが釣れてくれました。
いよいよダントウボウが現れそうな雰囲気が漂ってきました。
15時30分 ついに!それっぽい魚がキタゾ!
いつだって「そろそろダントウボウが掛かりそうだな!」って思って何も起こらない釣行をこなしてきたのですが、この日は違いました!
恥ずかしながら、ウキに当たりは出ませんでしたが(笑)。餌を付け替えようと竿を上げると如何わしい魚がヒット!
バラしたくないので一気に抜き上げ魚体を確認すると……。
念願のダントウボウ釣れたー!
これです、これ!! 日本の魚っぽくないこの感じ!
黒っぽい魚体! 苦労したから強く思う!
めちゃカッコいい!!
ヘラブナとダントウボウを見比べてみましょう
日ごろからフナ釣りをされている方なら見間違うことはないですね!
ヘラブナよりもウロコが細かく、尻ビレの形が大きく異なります。
いやー2年もかけてしまったダントウボウチャレンジ。とうとう終わってしまいました。
めちゃくちゃ嬉しい反面、いつもちょっぴり思うのです。また1つ目標を失ってしまったと。
次はどんな淡水魚を狙おうかな! 初めてのイッピキを求めた釣行はまだまだ続きます!
美味しいと言われるダントウボウを食べてみた
中国ではとてもポピュラーな食用魚『ダントウボウ』
中国を旅した時に、市場やレストランで姿は見たことがあったのですが、オーダーするまでは至らなかったダントウボウ。
そりゃお味の方も気になるところです。もちろん、持ち帰って実食してみましたよ!
ダントウボウはコイの仲間だけど臭くない
コイの仲間はY字の小骨が多いので包丁を細かい感覚で入れてみました。
皆さんが気になっている淡水魚臭さですが、コイやフナより匂わず臭気的にはオッケーです。
期待に身を任せて塩焼きで頂く
素材の味を楽しむために塩焼きでチャレンジしてみましたが……。
なんと一口で驚愕しました。
普通に美味しいんです!
臭みは無く、小骨も気になりません。身は柔らかめでふっくらしています。
強いて結えば、香りや味が薄く、物足りなさがありますが、これを良い方向に捉えれば淡水魚としてハスやニゴイに並んで食べやすい部類に入るかと思います。
香辛料の本場、中国で食べたら旨いだろうなー。
日本が誇る調味料“ポン酢”をかけて美味しく完食しました!
最後にお願い「外来魚の移送放流は絶対にやめましょう」
ダントウボウは中国原産の外来種です。定着が確認されたのが最近ということもあり、ダントウボウによる在来生物への影響がどの程度出るのか分かっていません。
2020年11月時点ではダントウボウのリリースに関する条例等が無いため、釣った場所で逃がすことは可能ですが、釣った場所以外への移送放流は厳に慎みましょう。
外来魚は釣り人に夢や経済効果をもたらす半面、大なり小なり確実に在来生物に影響を与える存在であることをしっかり理解しましょう。
筆者紹介
山根央之(やまねひろゆき)
初めての1匹との出会いに最も価値を置き、世界中何処へでも行く怪魚ハンター山根ブラザーズの兄。
餌・ルアー問わず、もはや釣りに限らず。ガサガサや漁業者と協力してまでも、まだ見ぬ生き物を追い求め、日々水辺に立っている。
テレビ東京・緊急SOS池の水全部抜くやNHK・ダーウィンが来た、TBS・VSリアルガチ危険生物などに出演したり、魚類生態調査に参加したりと幅広く活躍する。
どえらい魚を獲った!もはや釣りを越えて!色んな人と繋がって!特大天然メコンオオナマズ! 240 cm175 kg 捕獲です!!ホント色んな人に助けられてこの魚と出会うことができました!メコンオオナマズに関わる全ての人に感謝でいっぱいです!! pic.twitter.com/JHWpNdLAvX
— 山根ブラザーズ(兄)@kimi (@chillkimi) September 16, 2017