最近、ブルーギルを見かけなくなった気がします。
久しぶりのギル釣り

先日、お世話になっている人から「魚皮ルアーを作りたいからブルーギルを釣ってきて欲しい」と頼まれました。
二つ返事でギル釣りに出掛けたのですが……、これが大苦戦。
頼まれた数を集めるのに数時間も掛かってしまいました。
噂通り、確かにギルは減っている

これをキッカケに、池や湖を訪れるたびに釣らずともギルの姿を探すようになったのですが、子供の頃(写真は20年前の僕です)に比べると減っている印象を受けました。
噂には聞いていましたが、ブルーギルが何らかの原因で減っているのは間違いないようです。
ということで、今回は改めてブルーギルとはどんな魚なのか、原産地で色んなギルを釣り歩いた経験をもとにマニアックな情報も交えながらご紹介していきたいと思います。
ブルーギルとは
生態と形態

ブルーギルはスズキ目サンフィッシュ科に分類される最大25cm程度の淡水魚。
動物プランクトンや水棲昆虫などを主食としながらも、小魚や甲殻類、水草など様々な餌を捕食します。
マダイやスズメダイのように扁平した体形で、紫や青色を示す個体から黒ずんだ個体まで体色のバリエーションが多岐にわたるのも特徴。
ちなみに、IGFAによるブルーギルの世界記録は15inch(38.1cm)、4lb12oz(2.15kg)とされています。
生息域と原産地

ブルーギルはメキシコ北部からカナダ南部にかけての北米大陸原産の魚であり、日本国内では外来魚に該当し、北海道や沖縄県を含む全ての都道府県で生息が確認されているのが現状です。
おもにため池や沼、湖、流れの緩やかな河川に生息し、とくに水草の多い環境を好む傾向があります。
ブルーギルの種類

原産地ではブルーギルの他にも似たようなサンフィッシュの仲間が沢山生息しています。
僕が今まで出会ってきた種類をいくつかご紹介させてください。
ロングイヤーサンフィッシュ

個人的に最も派手だと感じるブルーギルの仲間はロングイヤーサンフィッシュです。
オレンジとブルーの発色が強い個体が釣れると思わずラッキーって思えます。
レッドブレストサンフィッシュ

こちらはブルーギルによく似た種類のレッドブレストサンフィッシュ。
イヤーフラップ(鰓蓋の黒い部分)が成長とともに極端に長くなるのが特徴で、イヤーフラップの周囲が白く縁どられていないことからロングイヤーと見分けられます。
パンプキンシード

バス釣りをされる方ならば、パンプキンシードというワームのカラーはお馴染みですよね。
もうわかったかもしれませんが、そのカラー名の元ネタがこちらのパンプキンシード。
オレンジ色の斑紋とイヤーフラップの赤い点が特徴で、とても美しい種類です。
ウォーマウス

こちらはウォーマウスという種類のサンフィッシュ。
名前の通り、ギル系の魚としては大きな口を持っているカッコいい奴です。バス持ちもできますよ。
グリーンサンフィッシュ

こちらは岸辺のリップラップ(石積)で釣れることの多いグリーンサンフィッシュという魚です。
ギル系の魚の中では一番根魚っぽい印象を受けます。個人的には一番可愛いと思う種類ですね。
ブルーギルの釣り方
ブルーギルが釣れる時期

ブルーギル釣りに適した時期は水温の上がる5月から9月です。
ブルーギルは流れの穏やかな環境を好み、水面にまで浮かび上がって虫などの餌を捕食します。
そのため、フナやオイカワといった日本の川魚よりも見つけやすく釣りやすいため、ある意味身近な魚と言えるかもしれません。
ブルーギルを釣るための仕掛けと餌

ブルーギルは食欲・好奇心ともに旺盛ですので、餌や仕掛けに拘りは不要です。
ウキを使った川釣り用仕掛けセットと、食パンやミミズといった餌で狙ってみると良いでしょう。
釣り方のコツは、まずは目視でブルーギルを見つけること。姿さえ見つけられれば簡単に釣り上げられますよ。
ルアーやフライで狙ってみるのも面白い

ブルーギルはバスフィッシング用のワームや管理釣り場用のルアーなどでも釣れます。
また、フライへの反応が抜群に良いので、水面に浮かべて使うドライフライで釣ると捕食シーンが見られるのでエキサイティングですよ。
ブルーギルに関する法律や条例
外来生物法と特定外来生物

ブルーギルやブラックバスは特定外来生物に指定されているため、外来生物法によって飼育・運搬・輸入・販売・放流などが禁止されています。
ブルーギルは誰でも簡単に釣れる魚ですが、生きたまま池から移動させると犯罪になってしまいますので絶対にしてはいけません。
ブルーギルのリリースについて

特定外来生物について、誤解されやすいのが放流(リリース)です。
外来生物法では、釣ったその場でのキャッチ&リリースは規制対象となっていませんので、釣れた場所に限ってリリースできます。
一方で、各都道府県が定める条例によって外来生物のリリースが禁止されている場合がありますので注意が必要です。
外道として釣れてしまったら

ヘラブナ釣りやタナゴ釣りをしていてブルーギルが掛かってくることは珍しくありません。
例え外道であっても、リリース禁止の条例がある場所では逃がせません。
滋賀県を例にしてみると、外来魚回収箱を釣り場に設置している場所もありますが、何もない場合は釣り場で締めて持ち帰り、生ゴミとして適切に処分するように県のHPで案内されています。
食べてみるのもアリ

原産地のアメリカでは、フライパンに入る大きさであることから“パンフィッシュ”と呼ばれるくらい食用として認知されている魚です。
また、バックリミット(持ち帰り制限)が設定されている場所も少なくありません。
生ゴミとして捨てるのは生き物の命を粗末にしていると感じる方は、思い切って調理してみるのも良いでしょう。
独特な風味が気にならなければ、フライやムニエルで美味しく食べられますよ。
ブルーギルの減少を考察
駆除活動の成果

琵琶湖をはじめとする外来魚駆除を積極的に行っている場所では、駆除活動の効果が出てきていることが考えられるでしょう。
また、ため池では池干しする機会に合わせて外来魚を駆除することもありますね。
生息数の安定

アメリカの湖や池で釣りをしていると、一昔前の日本のようにギルがそこら中に沢山浮いているって現象はあまりないように感じます。
駆除活動が行われていない場所でもギルが減っている場合は、日本に移入されて年月が経ち、ブルーギルにとって適正な生息密度に落ち着いてきたという考え方もあるかもしれません。
水質向上、プランクトンの組成変化

近年は外来魚駆除だけでなく、ため池やダム湖の水質向上を図る施策がなされている場所も増えてきています。
水質が改善したことによって栄養塩が減少すると、プランクトンの量や種類に変化が生じます。
プランクトンを主食とする仔魚期の段階で、モツゴやヨシノボリといった魚との競合に負け、数が減っているという仮説やデータもあるようです。
ブルーギルが再び増えないようにしたい

今回の記事は、最近ブルーギルが減ったと感じたことをキッカケに書かせていただきました。
他にも沢山あるであろうギルが減っている要因を明らかにすることで、効率良く生息数を減らし、この先再び増えないような防除に繋がることを期待したいですね。
撮影:山根央之
