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鯉 外来魚

アレもコレも外来魚…『隠れ外来魚』の存在を知って意見を持って欲しい!

近年さまざまなメディアで耳にする「外来魚」という言葉。ブラックバスやブルーギルなど、その代表格として認識されているかと思いますが、もっと身近に知られざる外来魚がいることはご存知ですか?

目次

隠れ外来魚ってご存知ですか?!

外来魚=人為的に持ち込まれた魚

皆さんも外来魚という言葉を聞いたり見たりしたことがあるでしょう。

「危険生物!」とか「日本の魚を食い尽くす!」などの過激な表現で紹介される、アリゲーターガーやブラックバスが外来魚の代名詞とも言えますね。

人の手によって外部から持ち込まれた魚を『外来魚』と呼び、もともと住んでいた生き物に多かれ少なかれ悪影響を与えます。

外来魚がもたらす影響と恩恵は千差万別

ニジマス 外来魚

「待て待て。外来魚がもたらす恩恵なんて無いだろう!」ってツッコミを頂戴しそうですが、ちゃんと利益もあるんです。

たとえば、管理釣り場や渓流で楽しく釣っているニジマス。養殖産業も含めると、大きな経済的な価値を生み出している外来魚です。

コイ 外来魚

ほかにも、もっとも身近な川魚であるコイ。子供の頃、川や池に小さなコイを放流した経験がある方もいるかもしれません。

コイや錦鯉は「川や池といった身近な自然を大切にしましょう」と子供たちを教育するために、一役買っている外来魚です。

隠れ外来魚の存在~コイもニジマスも外来魚~

分かっていますよ。「ニジマスとコイが外来魚なんて信じられない!」って言われることくらい。

受け入れがたいですが、ニジマスもコイも錦鯉も外国から持ち込まれた外来魚であることは事実です。

ニジマス 外来魚

今回は、そんな知らず知らずのうちに日本の魚として扱われてしまっている“隠れた外来魚”をご紹介いたします。

外来魚問題は複雑かつ解決不能な事柄ばかりですが、解決の第一歩として必要なことがあります。

それは、専門家やマニアではない一般市民も外来魚に対して自分自身の意見を持つことです。

この記事をキッカケに、外来魚に対して自分の意見を持つようにしていただければ嬉しいです。

隠れ外来魚をご紹介します

ニジマス|隠れ外来魚の代表格

ニジマス 隠れ外来魚

今やコイと並んで知名度の高い川魚のニジマスですが、じつはアメリカ・カナダ・ロシア・メキシコを原産とする外来魚です。

ニジマスは養殖が簡単であること、サケマスの仲間では適応できる環境が多いこと、引き味が強く世界中の釣り人に人気があることなどから、世界中に拡散されています。

同様な理由でブラウントラウトも大きな問題となっていますね。

コイ(ヤマトゴイ)|もっとも知名度の低い隠れ外来魚

日本には体形が細い在来のコイ(野鯉:メラノータス)が生息していましたが、残念なことに、日本のほとんどの水域で気道の太さや腸の長さが在来のコイとは違う、ユーラシア大陸由来のコイ(ヤマトゴイ:カルピオ)に置き換わってしまっています。

「ヤマトゴイ」という紛らわしい呼び名も影響し恐らくもっとも知名度が低く、最古から日本に生息する外来魚とも言えるかもしれませんね。

在来種のコイ メラノータス

現在では、琵琶湖の深い深度にのみ、メラノータスが生息しているとされています。

日本に住むコイについては、機会があれば詳しく書いてみたいと思います。

錦鯉|素晴らしい日本の技術といえども野外に出れば生態系に悪影響を与える外来魚

そもそも論として、世界中どこにもニシキゴイという種類の魚はいませんでした。つまり、錦鯉という魚は人が品種改良を経て作り出した生き物です。

ヤマトゴイと錦鯉は、強い雑食性や長い寿命により世界中の生態系に多大な悪影響を与えています。

近年、錦鯉やヤマトゴイが生態系に大きな悪影響を与える魚である。という考え方が普及している一方で、未だに野外へ放流する活動を続けている団体もあります。

ワカサギ|ワカサギを守るためにブラックバスを駆除する?(矛盾していますよね)

公魚 外来魚

釣り人に大人気なワカサギも、じつは多くの場所では外来魚です。

本来ワカサギの生息地は、日本海側では島根県、太平洋側では千葉県以北。具体的には宍道湖・霞ヶ浦・八郎潟・小川原湖・網走湖・石狩川などがあげられます。

これらの原産地の共通点として、現在もしくはかつて海と繋がっている場所です。ワカサギは本来、海と湖を行き来する魚であることを覚えておきましょう。

念を押すようですが、ワカサギ釣りで有名な富士五湖、諏訪湖、檜原湖でさえもワカサギは外来魚です。もちろん、琵琶湖でもワカサギは外来種です。

ナマズ|隠れ国内外来魚は他にもいっぱいいる……

ナマズ 隠れ 外来魚

ほかにも国内由来の隠れ外来魚をご紹介していきますね。

日本のどこでも見かけるナマズですが、じつは東海地方より西では本来生息していなかった魚です。

他にも、ヒメマス、カワムツ、ハス、ワタカ、ゲンゴロウブナ……あげだすとキリがないくらい、釣りの対象魚となる魚達が隠れ外来魚として生息しています。

ニジマスを日本の魚だと思うその意識がもっとも危険

ニジマスはブラックバス並に悪影響を与える外来魚

ニジマス 外来魚

ニジマスは、世界の侵略的外来種ワースト100および日本の侵略的外来種ワースト100共にリストアップされるほど、世界中で生態系に多大な影響を与えている魚です。

日本では、特定外来生物法において要注意外来生物に指定されており、在来種に対する悪影響があります。

具体的には、肉食性であるため昆虫などを含む在来種が食べられてしまうことはもちろん。同じくらいの大きさのイワナやアマゴなどの産卵床を掘り返してしまっていたり、海外では交雑種による悪影響も出ています。

なぜ、ニジマスに外来魚のイメージがないのでしょうか?

ニジマス 刺身

理由は簡単です。ニジマスは水産資源としてとても大きな経済効果を生み、僕たち日本人の生活を豊かにしてくれているからです。

ニジマスとブラックバスの大きな違いは、“食味の良し悪し”です。やはり食べて美味しいものは、人の生活に受け入れられやすいんですね。

ちなみに、ニジマスは環境省および農林水産省が定めた外来種リストの中で「適切な管理が必要な産業上重要な外来種(産業管理外来種)」に分類されています。

外来種を経済的に利用することについて

僕は、外来魚であっても、その魚の素性を知った上で養殖したり釣ったり食べたり……つまり経済活動に使うことに賛成です。

多くの外来魚は一度定着してしまうと、単純な駆除活動だけでは捕り去れないからです。

ただし、今あるだけの外来種資源と産業に限った話です。これ以上、外来魚を利用する産業や場所を増やしたり発展させることには反対です。

利用する魚を、外来種から在来種へシフトさせる努力も行うべきだと考えています。

嫌でも外来魚と共存する道を歩まなければならないのなら、放っておくのではなく経済的に利用し、生み出されたお金で在来生物や自然環境の管理・保全を試みた方が生産的だと僕は考えています。

外来魚のことを正しく知って自分自身の意見を持とう

種の保存について|人為的な移動が絶滅を回避した事例もある

外来魚の全てが排除されるべき生き物ではありません。もっとも象徴的な例が、西湖に外来魚として移入されたクニマスの存在です。

クニマスは人が起こした環境破壊により、唯一の生息地であった田沢湖で絶滅してしまいました。

幸いなことに絶滅の前に西湖に移入されていたため、今でもクニマスはこの世に存在できています。

▼クニマスに関する記事はコチラ!

隠れ外来魚を日本の魚と勘違いしては絶対ダメ!

途中から少し小難しい文章になってしまって申し訳ありませんでした。

僕が今回の記事で一番お伝えしたかったことは、『隠れ外来魚を日本の魚として認知しないでほしい』ということです。

隠れ外来魚で商いをする人たちは、商売ですのでどうしても隠れ外来魚をあたかも日本の魚のように扱いますが、どうか惑わされないでくださいね!

感動的なストーリーにも思える西湖のクニマスも、れっきとした外来種であることをしっかり認知しておきましょう。

日本にも貴重な在来種が残っていることをお忘れなく!

こんなに外来魚だらけになってしまった日本列島ですが、幸いにも在来魚達が残っている場所があります。

外来種と違って在来種は、たくさん釣れないし、大きくないし、迫力も劣るのかもしれませんが。在来種って良いものですよ!

隠れ外来魚と知った上で自分の意見を持って行動しよう

錦鯉やニジマスが在来種に与えるリスクを知っているのと知らないのとでは、放流活動に賛成するかどうか考え方が変わってくることでしょう。

外来種を放流する側も、外来種を放流することによるリスクとリターンを包み隠さず、子供たちにも分かりやすく説明して欲しいものですよね。

最後まで読んでいただきありがとうございました。これを機に自分自身の意見を持って外来魚と接していただければ幸いです。

撮影・文:山根 央之

ライタープロフィール


山根央之(やまねひろゆき)
初めての1匹との出会いに最も価値を置き、世界中何処へでも行く怪魚ハンター山根ブラザーズの兄。餌・ルアー問わず、もはや釣りに限らず。ガサガサや漁業者と協力してまでも、まだ見ぬ生き物を追い求め、日々水辺に立っている。

テレビ東京・緊急SOS池の水全部抜くやNHK・ダーウィンが来た、TBS・VSリアルガチ危険生物などに出演したり、魚類生態調査に参加したりと幅広く活動中。

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