外来魚にも色々あるんです
外来生物(外来魚)とは
外来生物(外来魚)とは、文字通り外から人為的に持ち込まれた生物を指します。
例えば、ブラックバスやカミツキガメなんかが有名ですよね。
それでは、「外来魚」というワードに皆さんはどんなイメージがありますか?
もともといた生き物(在来種)を食べてしまう悪い奴とか 、人に噛みつく怖い奴とか……きっと悪いイメージが先に頭に浮かぶかと思います。
『池の水』に出演する山根兄が、基礎知識と予防策についてお届けします!
外来魚でも経済・産業・文化的に大切な種類もいる
一括りに外来生物と言っても、“在来生物への被害の大小”や“地域経済・産業・文化との関わり”など種類ごとに特徴が異なります。
「えッ?外来魚が経済に貢献してるの?」って思われるかもしれませんが、食べて美味しいニジマスは水産およびレジャーの対象として、美しい錦鯉は鑑賞魚として、それぞれ利用価値の高い外来種です。
このように外来種によって講ずるべき対策が異なるため、国は外来生物を「特定外来生物」や「産業管理外来種」など、さまざまな区分に分けて管理しています。
錦鯉は外来種ということを覚えてください
いま「錦鯉って外来種なの?」って疑問に思われた方もいらっしゃるかと思います。
受け入れたくない事実ですが、錦鯉は外国のコイを使った品種改良種であるため、野外へ放流された時点で如何なる場所においても外来種となります。
錦鯉は人の管理する池や水槽で飼育されている間は問題ありませんが、自然界に放ってしまうと、『もともといた生き物(在来種)を食べてしまう悪い奴』になってしまいます。
このように、多くの日本人が在来種と思っている生き物でも、元をたどると歴とした外来種であり、生態系に悪影響を与えていることがあるんです。
「国内外来種」というワードを覚えよう
日本に住む魚=在来魚ではありません
もう少し、外来魚の基礎知識を深めてみましょう。
例えば、琵琶湖にしか住んでいない魚(固有種)を霞ヶ浦へ持っていったら……これは霞ケ浦では外来魚になってしまいます。
つまり、その魚の能力で行けない場所へ人間が運んでしまったら駄目なんですね。
このように、日本国内で人為的に移動された種を「国内外来種」と呼び、関東地方のオヤニラミや東海地方のギギなど、各地で問題になっていますね。
身近な国内外来魚をご紹介します
関東地方にお住いの皆さん! 小川で簡単に釣ることのできるカワムツやヌマムツ、あれも実は国内外来種なんです。
他にも、北海道・東北・関東・東海地方ではナマズが、九州・四国地方ではワカサギが国内外来魚に該当します。
でも、ワカサギやナマズを駆除するなんて話は聞いたことがありませんよね?
長い年月の中で、多くの国内外来魚が在来種かのように既成事実化されています。
このように外来魚のことを知れば知るほど、人との利害と歴史が複雑に絡みあっていることに気づき、外来魚問題がいかに根深く・解決が難しい問題であるか実感できます。
外来種問題には、駆除という単純な方法だけでなく『在来種・外来種・人間』が上手に付き合っていけるようなシステムを構築する必要があると僕は考えています。
外来魚ってそもそも何が問題なのか
外来魚問題①:在来生物に対する食害
もっとも人々の印象に残りやすい被害は、在来種が外来種に食べられてしまう“食害”です。
食害を発生させる外来魚としてブラックバス(オオクチバス・コクチバス)やブルーギル、アメリカナマズやソウギョなどが代表例として挙げられます。
餌を食べない魚なんていませんので、肉食・草食・プランクトン食など食性問わず在来生物に対する影響は、どの外来魚にも必ずあると考えましょう。
外来魚問題②:在来生物との競合(種間競争)
在来魚と外来魚が同じ大きさで同じような生態の魚の場合、ニッチ(生態的な地位)が重なり、餌や繁殖場所などを取り合いになります。
例えば北海道の千歳川水系の支流では、種間競争によってイワナ(アメマス)からブラウントラウトへ置き換わってしまった例が報告されています。
外来魚問題③:交雑種の発生
在来魚と外来魚が交雑することによって、新しい種類の魚が生まれてしまい、代を重ねるごとに在来種が数を減らしてしまう被害も起きています。
代表例としては、バラタナゴの亜種である二ホンバラタナゴとタイリクバラタナゴの関係や、イワナの交雑問題が分かりやすいでしょう。
外来魚問題④:人への脅威
メディアで食害と同様に大きな話題になるのが人に対する被害です。
鋭いトゲや牙を持つような魚を誤って触ると怪我をする場合があります。
代表的な例としては、カミツキガメの顎、アメリカナマズのヒレやガー類の牙が挙げられますね。
外来魚問題は挙げだしたらキリがありません
代表的な外来魚の実害を4つ挙げさせていただきましたが、細かい被害や科学的に証明されていない影響まで言及すると膨大な問題が出てきます。
それほど、外来魚がもたらす被害は大きく多岐にわたります。
そんな問題だらけの外来魚ですが、本当に百害あって一利なしの存在なのでしょうか?
決してそんな訳はありません。外来魚の中にも、さまざまな価値を生み出している種類もいることを知っておきましょう。
釣り人にとって大切な産業管理外来種
産業管理外来種とは
水産庁は、産業上で重要な外来魚を産業管理外来魚に指定しています。
詳しく説明すると、人が管理する水域外へ該当する種類の魚を拡げない・捨てないこと、管理水域内でこれ以上利用量を増やさないことを大前提とし、『産業資源として外来魚を利用をしても良い』というものです。
産業管理外来種に該当する魚
2021年現在までに、ニジマス・ブラウントラウト・レイクトラウトの3種類が産業管理外来種に指定されています。
これらの魚は、一部の水域に限られますが外来魚ではありながら地域経済を下支えする重要な魚として扱われているんですね。
産業管理外来種の他にも、河口湖などではブラックバス(オオクチバス)の利用が認められています。
現時点では、一部の外来魚を内水面漁業の振興のために利用できるが……
産業管理対象種を定めている“外来種被害防止行動計画”では、産業管理対象種3種についても、外来種の利用量を抑制する方法や代替性の検討を引き続き行うとしています。
つまり、すぐに外来種を利用するなとは言わないが、徐々に利用する魚を外来種から在来種に移行せよ。ということになりますね。
外来魚被害を予防するために心掛けたいこと
特定外来生物は本当にヤバい外来種
外来生物の中でも特に生態系、人の生命・身体、農林水産業へ被害を及ぼすもの、または及ぼすおそれがあるものが『特定外来生物』に指定されています。
身近な魚ではブラックバスやアメリカナマズ、ブルーギルなどが挙げられますね。
外来生物法を厳守しよう!(キャッチ&リリースは可能です)
外来生物法によって、特定外来生物の飼育・運搬・輸入・販売・放流などが禁止されています。
一般市民が知らずに犯してしまうことがあるのが、運搬と飼育でしょう。身近な魚ですが、バスやギルを飼育したり池から池に移動させることは犯罪になります。
一方で誤解されることが多いのが『放流』です。外来生物法では、釣ったその場でのキャッチ&リリースは規制対象となっていません。
釣りあげた外来種の特性だけでなく、その地域や水域での地位(遊漁対象なのか駆除対象なのか……など)を考慮し、自分で判断しましょう。
※都道府県の条例等でキャッチ&リリースも禁止されている場合がありますので注意が必要です。
生き物を元いた場所から移動させないようにしましょう
これ以上、外来魚問題を発展させないために一般市民ができることは単純です。
それは、釣った魚の移送放流や飼育している魚の放流をしないこと。これに限ります。
美味しい外来魚は食べてみるのも良いでしょう
外来魚の中には、海産魚と同じように美味しいものもあります。
そのような外来魚は思い切って食べてみるのも良いでしょう。
▼ガチで美味しかった外来魚TOP3+a
無暗な駆除は行うべきではない
霞ヶ浦で魚釣りを楽しんでいると、捨てられたアメリカナマズの死骸をよく目にします。
このような方法の外来魚駆除は、倫理的に褒められたものではありませんし、周辺住民に迷惑となります。
また外来生物のなかでも種類によっては、いま保たれている生態系の中で重要な位置にある可能性もあるため、素人が無暗に駆除を行うべきことではありません。
僕たち一般市民は外来生物のリスクとリターンを正確に知ることに留め、駆除活動は専門家にお任せしましょう。
今回は少し難しい記事となってしまいましたが、これを機会に外来魚問題に興味を持っていただければ幸いです。
ライタープロフィール
山根央之(やまねひろゆき)
初めての1匹との出会いに最も価値を置き、世界中何処へでも行く怪魚ハンター山根ブラザーズの兄。餌・ルアー問わず、もはや釣りに限らず。ガサガサや漁業者と協力してまでも、まだ見ぬ生き物を追い求め、日々水辺に立っている。
テレビ東京・緊急SOS池の水全部抜くやNHK・ダーウィンが来た、TBS・VSリアルガチ危険生物などに出演したり、魚類生態調査に参加したりと幅広く活動中。
どえらい魚を獲った!もはや釣りを越えて!色んな人と繋がって!特大天然メコンオオナマズ! 240 cm175 kg 捕獲です!!ホント色んな人に助けられてこの魚と出会うことができました!メコンオオナマズに関わる全ての人に感謝でいっぱいです!! pic.twitter.com/JHWpNdLAvX
— 山根ブラザーズ(兄)@kimi (@chillkimi) September 16, 2017