ツインパワー32年の歴史
1987年に登場した「チタノスツインパワーGT」から数えて、今年でなんと32年の歴史になるツインパワーシリーズ。
オリンピックイヤーである2020年に、満を持して5年ぶりのモデルチェンジを果たしました。
ツインパワーといえば強さの象徴でもありますが、今回は大幅な軽量化を実現。そんな20ツインパワーをリールマニアがインプレします。
20ツインパワーのラインナップ
20ツインパワーの5大進化
シリーズ史上最軽量
スピニングリールの軽量化が大幅に進む近年。前作15ツインパワー の最大のネック、それが自重の重さでした。
そんな中、今回の20ツインパワーは歴代最軽量を達成。2500Sの自重は210gとなり、前作比でなんと30gも軽量化されています。
ボディ部を19ヴァンキッシュ と共通の設計にすることにより、この軽さを実現できました。※
待望の金属ローター
15ツインパワーで使用されていたローター素材は高強度樹脂です。これはストラディックのローターと同等の素材で、CI4+よりも重く、巻き上げの際にたわむことがネガティブ要素でした。
ところが、今回の20ツインパワーは待望の金属ローターを採用。ベール素材とラインローラー部の差別化が図られていますが、ローター本体は18ステラ と共通の素材です。
たわみや歪みが抑制されることで、巻上げ力やドラグ性能の向上に繋がるため、非常に大きな進化といえます。
スプールがロングストローク化
2018年までは“ステラだけの特権”だったロングストロークスプールですが、2019年からヴァンキッシュ・ストラディックにも相次いで採用され、今回の20ツインパワーにも搭載されました。
従来のスプールよりも糸の放出がスムーズで飛距離が伸びるため、遠投系の釣りで用いられることの多いツインパワーでは、待望の進化と言えるでしょう。
駆動系の刷新
18ステラの系譜通り、駆動系にはマイクロモジュールギア2とサイレントドライブが導入されました。
ステラに近いシルキーな巻き心地とガタの少なさは、釣具店で手に取ればすぐに体感できるはずです。
防水性が向上
15ツインパワーで用いられていたコアプロテクトから、18ステラや19ヴァンキッシュと同じXプロテクトに進化しています。
さらに、18ステラから改良された新設計のラインローラーを搭載するなど、現時点で最新の防水機構が投入されています。
20ツインパワーを100投インプレッション
今回は、シーバス・ショアジギング・フラットフィッシュでの注目度が高い4000XGを用いてインプレッションしてみました。
鉄板バイブレーションやジグヘッドワーム、ミノーを投げ倒した所感をそのままお伝えします。
ただし、“使い込んだ”わけではないので、耐久性への言及は避けさせていただきます。
軽さ
まず、ロッドにつけて持った瞬間に体感するのが軽さです。さすがにヴァンキッシュとまではいきませんが、十分すぎる軽さを感じます。
とくに、投げ続け、巻き続け、ロッドをシャクリ続けるショアジギングにおいては絶大なアドバンテージでしょう。
リリース時には軽くなったことを批判されもしましたが、大半のアングラーが「軽くなって良かったな」と、実感するはずです。
また、従来は重さがネックになってエギングやライトゲームでの人気がイマイチでしたが、軽量化によってこの辺りの釣りとの相性がかなり良くなっているはずです。
今まで通り、ヘビーな釣りをメインとしつつも、ライト(繊細)な方向への汎用性が広がっているのは間違いありません。
巻上げトルク
金属ローターと駆動系の刷新が大きな役割を果たしているからか、大型鉄板バイブやミノーなどを軽々巻ける感覚は病みつきです。
メタルジグに加えて、3フックの鉄板バイブや大型ミノー、ジグミノーの速巻きが定番化しつつある近年のショアジギング事情を踏まえると、かなり評価が高いポイントです。
引き抵抗が大きなルアーを楽に巻けるということは、巻上げトルクが増大しているわけですから、魚とのファイトも楽になるのは言うまでもないでしょう。
楽に釣りができて、楽に魚をキャッチできると言うことは、ビギナーの方にもとても優しいリールだと言うことです。
巻き感
サイレントドライブとマイクロモジュールギア2により大きく変化を遂げており、ギアの噛み合いを感じさせず、入力に対して素直に回る感覚が魅力です。
巻き物の釣りではリールの存在を感じさせず、巻きスピードや流れの変化などに集中できると思います。
巻きトルクも含め、巻く釣りとは“滅法相性が良い”というのが20ツインパワーの印象です。
キャストフィール
20ツインパワーを購入する人の中には、「重たいルアーを遠投したい」と言う方が多いと思います。
そういった意味では、ロングストロークスプールの恩恵を最も感じられるのが20ツインパワーなのかもしれません。
既存の搭載機種でも実証されている通り、糸抜けが良く、飛距離は間違いなく向上します。また、キャスト時には糸の初速が速くなったからか、高い音がスプールエッジから奏でられていました。
重たいルアーをキャストしていたので当然ですが、今回の試釣時にライントラブルは一切発生していません。
20ツインパワーのココが気になる……
初動の重さ
ステラと同等のローターを積んでいるのにもかかわらず、初動の重さを感じます。そして、その理由は2つあると推測します。
1つはベアリングの数。18ステラが12個入っている一方で、20ツインパワーは9個。このうち2個は、ウォームシャフトとローターナット部なので、巻きの軽さに直結していると思います。
もう1つの理由が、ギアの表面加工の差。どちらも超超ジュラルミンのハガネギアを採用しており、ステラには特殊表面処理(ひと昔前でいうバリアギア)が施されていますが、20ツインパワーはされていません。
この2つがステラよりも初動が重く感じる原因として考えられ、同じ理由で巻き感度も劣っていると感じました。
とくにエクストラハイギアは初動の重さが顕著なので、巻き重りが気になる方はハイギアかノーマルギアを検討してもいいかもしれません。
メンテナンスの頻度
ツインパワーシリーズに初めて採用されたマイクロモジュールギアですが、ギアの歯面が細かいことにより、グリスの保持量が減ってしまうことがデメリットとして挙げられます。
グリスが切れると特有のコロコロ感が出るため、旧モデルに比べてオーバーホールによるグリスアップの頻度が上がると思います。
17ツインパワーXDとの比較
シリーズの中でも屈指の人気機種となった17ツインパワー と、20ツインパワーを使い比べました。
レスポンスはXD
2機種の大きな違いとして、ツインパワーXDはMGLローター(CI4+素材)を搭載していることが挙げられます。ローター自体は16ヴァンキッシュ と同等のものですが、金属ローターと比較すると軽さは段違いです。
そのため、2機種を比較するとツインパワーXDの方が圧倒的に初動が軽く、ストップ&ゴーやリフト&フォールを繰り返す、レスポンスの良さが求められる釣りではXDに軍配が上がります。
もし、レスポンスの良さを求めるのであれば、次期XDを待った方がいいかもしれません。
巻上げの強さは20ツインパワー
ローターの剛性と駆動系の改良の影響からか、同じルアーを巻き比べてみると、20ツインパワーの方がより楽に巻き上げられました。
巻き上げトルクを比べれば20ツインパワーが優っているので、負荷が大きな釣りや巻き続ける釣り、大型魚とのファイトを優先する方は、間違いなく20ツインパワーがおすすめ。
単純に「少しでも強い方がいい」と言うならば、20ツインパワーを選択することになるでしょう。
21ツインパワーXDとの比較(編集部追記)
ここからはTSURI HACK編集部がお届け。
20ツインパワーの1年後に登場した、21ツインパワーXDと比較します。
21XDは軽い
ツインパワーとツインパワーXDの大きな違いが自重。
4000XGを比較すると、ツインパワーが260gなのに対し、ツインパワーXDは245g。
自重にもっとも大きく作用しているのがローターで、アルミ合金製ローターを積むツインパワーに対し、ツインパワーXDはCI4+(炭素繊維強化プラスチック)製ローターを搭載しています。
このローターが、巻き感にも強く影響を与えているわけです。
巻き感はまったく違う
ツインパワーXDの軽量なCI4+ローターは慣性モーメントが小さく、それによって初動が軽く、回転レスポンスに優れます。
その一方で、ややスカスカとしていてステラのようなシルキー感はありません。
ツインパワーは初動がやや重い反面、慣性モーメントを活かした重厚なフィーリングがあります。
パワーは僅差で20ツインパワー
パワーに関しては“僅差で20ツインパワーの勝利”といったところでしょう。
ボディや駆動系はまったく同じなので、ここもローターの違いが表れているポイントです。
ツインパワーはローターの慣性モーメントで回転を後押ししてくれるため、引き抵抗の大きなルアーのただ巻きや、メタルジグの回収は楽に感じました。
とくに差が分かりやすくなるのは重たいオモリの回収なので、オフショアで釣りをする人は違いを感じやすいかもしれません。
魚がヒットするとロッドをポンピングしたりするので、正直そこまで差を感じませんでした。
万人ウケのツインパワー、玄人好みの21XD
金属製のローターを搭載し、ステラ系の回転フィーリングを有する20ツインパワーは、“王道のハイパワースピニング”と呼べる仕上がりです。
それに対し、ヴァンキッシュと同等の軽量ローターを搭載し、パワーとレスポンスの両立を計った21XDは“やや玄人好み”な1台といえるでしょう。
22ステラとの比較(編集部追記)
ツインパワーの上位機種に当たる、22ステラと比較します。
ステラはツインパワーの上位互換
基本的にステラとツインパワーのフィーリングはよく似ていて、“ツインパワーの上位互換”という表現がそのまま当てはまります。
22ステラは現行で唯一のフルメタルボディを用いており、パッケージングの面ではこの点が一番の違いです。
フルメタルだからといって直接的に強さを感じるわけではありませんが、フルメタルならではの精度や剛性が“ステラ特有のフィーリング”に寄与していることは間違いないでしょう。
スローオシュレーションの功罪
機構の面で大きく異なるのが、オシュレートスピード。22ステラは04モデル以来となる、スローオシュレートを採用しました。
これによってラインが密に巻かれるため、ラインの放出抵抗が小さく、特定の条件下では飛距離が伸びます。
また、リトリーブ中にリールが安定するため、巻き感がさらに良くなりました。
しかし、密巻きゆえにキャスト時に下のラインを拾いやすく、使い方によってはライントラブルが起こりやすくなっています。
ラインメンディングができていればトラブルは起こりませんが、やや使い手を選ぶリールになったのは間違いないでしょう。
その点で20ツインパワーの方がユーザーフレンドリーですが、22ヴァンキッシュがスローオシュレートを採用したため、次期ツインパワーにもスローオシュレートが導入される可能性は十分あります。
4000PGの有無
ツインパワーとツインパワーXDにあって、ステラには無いもの。
それが、4000PGのラインナップです。
4000PGはあまり人気のない番手ですが、オモリグやSLJなどの特定の釣りでは一定数の支持があります。
18ステラは19年に3番手が追加されたので、4000PGが出る可能性もゼロではありませんが、既存番手の品薄が続いているので追加される確率は低そうです。
絶対的な性能 or コスパ
ステラとツインパワーの選択軸は、絶対的な性能 or コスパになるでしょう。
なにせ、ステラ1台でツインパワーが2台買えるわけですから。
基本的には、資金があればステラをおすすめするのですが、少しネックになるのがスローオシュレート。
もし、まだルアー釣りの経験が浅いのならば、ツインパワーを検討してもいいかもしれません。
20ツインパワーの耐久性(編集部追記)
丸1年間、編集部備品としてショアジギングをメインに使ってきましたが、大きなトラブルはなく、良い状態をキープしてくれています。
大荒れの離島釣行などの過酷な取材もありましたが、1度もオーバーホールに出さずともコンディション良好なため、「耐久性も文句無し」といったところです。
青物に加え、90cmアップの真鯛や大型タマンといったパワフルな魚たちも数多くキャッチしましたが、この程度の魚なら十分すぎる余裕があります。
発売前には“半プラ論争”が巻き起こっていましたが、丸1年使ってわかったのは「弱さはまったく体感できない」ということでした。
信頼の証、ツインパワー
5年越しの進化を果たした20ツインパワー。まさに32年の歴史に恥じない進化といえるでしょう。
リリースが発表された時には“半プラボディー”との批判もありましたが、実釣における強さは十分すぎると言えます。これ以上の強さが必要ならば、ステラかSWシリーズを求めればいいでしょう。
多くのアングラーにとって最適なスペックとなった。それが20ツインパワーの素晴らしさだと思います。