世界の雷魚を一挙ご紹介

世界には、さまざまな種類のライギョが棲息しているのをご存じでしょうか?
その数はなんと30種以上。いまなお新種が見つかっているというから驚きです。
今回の記事では、釣りの対象魚として人気の高い大型ライギョに焦点を当てて紹介します。
カムルチー(Channa argus)
世界三大雷魚

日本人にとって、最も馴染み深いライギョといえばカムルチーでしょう。
最大で110cm前後まで成長し、世界三大雷魚の1種と称されることもあります。
朝鮮半島や中国、ロシアを原産とする移入種で、1923年頃に朝鮮半島から日本へ持ち込まれたとされています。
フロッグで釣る文化

日本では、カエルを模した「フロッグ」と呼ばれるルアーを使った雷魚釣りが人気です。
ルアーに反応した瞬間、水草や水面が揺れ……そこから「バフッ!」という独特の捕食音。
フッキングと同時に竿へズッシリとのしかかる重み。これこそが、雷魚釣りの醍醐味だと個人的には思っています。
ウィップラッシュ アマガエル
| 全長 | 62mm |
|---|---|
| ウェイトクラス | 3/8oz |
| チューニングウェイト | 13-16g |
タイワンドジョウ(Channa maculata)
カムルチーとの違い

釣りの対象魚として、日本にはもう一種、タイワンドジョウというライギョが生息しています。
カムルチーの模様が不明瞭で連続的なのに対し、タイワンドジョウは細かく、それぞれが独立しているのが特徴です。
最大サイズは60cm前後と、カムルチーより小型である点も見逃せません。
現地では食用魚

ライギョは、失明や死亡例もある顎口虫症のリスクが高い魚です。そのため、生食文化のある日本では食用にされることはほとんどありません。
一方で、カムルチーやタイワンドジョウ、さらにはこれからご紹介する大型ライギョも含め、海外では一般的な食用魚として利用されています。

ちなみに、ライギョは火を通せばとても美味しい魚です(生焼けには注意)。
シンプルに焼いてもよく、揚げ物や煮付けでも美味しくいただけます。
世界中どこで食べても臭みが少なく、身質はややしっかりめ。ひとことでいえば、淡水魚らしさをあまり感じさせない味わいです。
山根
僕は海外遠征の際、よくライギョを食べています。
ジャイアントスネークヘッド(Channa micropeltes)
雷魚界人気No.1

世界中の釣り人から最も人気のあるライギョといえば、ジャイアントスネークヘッドでしょう。
最大で110cm前後、体重は13kg前後に達するとされ、ウェイトを踏まえれば世界最大種ともいえる存在です。
カムルチーに比べて遊泳速度が速く、ファイトも強烈。さまざまなルアーで狙えるゲーム性の高さも、人気の理由です。
トーマンとチャドーの違いについて

この魚に興味がある方なら、「トーマン」や「チャドー」という呼び名を耳にしたことがあるかもしれません。
トーマンはインドネシアやマレーシア、チャドーはタイでの呼び名で、いずれも同じ魚を指します。
生息域はインドネシア、マレーシア、タイ、カンボジア、ラオス、ベトナム、ミャンマーなど。さらに、移入種としてフィリピンや台湾にも定着しています。
若魚はこんな模様

ジャイアントスネークヘッドは、成長段階や繁殖期の有無、地域差によって体色や模様が大きく変化します。
個人的には、写真1枚目の鮮やかな婚姻色が好みです。ただ、子どもを守っている個体を狙う現地スタイルが苦手な方にはおすすめできません。
山根
一方で、2枚目のような繁殖を意識していない体色も十分に魅力的です。
▶︎レッドスネークヘッド

ちなみに、熱帯魚の世界では「レッドスネークヘッド」と呼ばれることがありますが、その由来はこの“稚魚ボール”。
15〜20cm程度までの間、群れで行動する様子が観察できます。
▶︎カリマンタン産の真っ赤な幼魚

こちらはカリマンタンのブラックウォーターで釣れた、真っ赤なトーマン(通常、このサイズでは黄色が一般的です)。
ライギョの仲間は、産地ごとに体色や模様の違いが大きく、コレクション的な魅力も高い魚といえるでしょう。
マラバールスネークヘッド(Channa diplogramma)
100年振りに学名復活

姿かたちはジャイアントスネークヘッドによく似ていますが、2011年に「Channa diplogramma」として再定義された、比較的知名度の低いライギョです。
インド南部の限られた地域にのみ生息し、100年以上にわたってジャイアントスネークヘッドと同一種とされてきた経緯を持ちます。
ジャイアントスネークヘッドより一回り小さい

現地ではマラバールスネークヘッドと呼ばれ、ルアー釣りの人気ターゲットとなっています。
一般的な最大サイズは80cm前後。ジャイアントスネークヘッドより一回り小さいものの、ルアーの追い方やヒット後の引き味は非常によく似ています。
若魚はこんな感じ

成長段階や繁殖期の有無によって体色が変化する点も、ジャイアントスネークヘッドと共通しています。
山根
個人的には、この模様こそマラバールスネークヘッドらしくて好みです。
プラーチョン(Channa striata)
繁栄度No.1

ストライプドスネークヘッドと呼ばれるこのライギョは、どの国に行っても出会える超定番の魚。
南アジアから東南アジアにかけて広く生息し、都市部や街中の用水路でも釣れてしまうほど身近な存在です。
食材としても大人気

タイではプラーチョン、マレーシアではハロワン、インドネシアではイカンガブスと呼ばれ、魚市場に行けば必ず見かけるほどポピュラーな食用魚。
最大サイズは60cm前後。ルアーや餌への反応も良好で、最も庶民的なライギョといえるでしょう。
フラワートーマン(Channa pleurophthalma)
インドネシアの宝

橙色で縁どられた眼状紋(オセラータス)が特徴的なこのライギョは、フラワートーマン、またはオセレイトスネークヘッドと呼ばれます。
他のライギョが円筒形に近い体形であるのに対し、フラワートーマンは扁平な体形をしているのが大きな特徴です。
山根
サイズこそ40cm前後と中型ですが、鮮やかな体色や模様、そして独特なフォルムを踏まえると、今回ご紹介する中でも個人的に最も美しいと感じる一種です。
ボルネオ・スマトラ島の特産種

ボルネオ島とスマトラ島の一部水系にのみ生息する、その分布の狭さもこの魚の魅力です。
現地の生息河川では比較的釣りやすい魚なので、訪れた際はぜひ狙ってみてほしいターゲットです。
ロイヤルトーマン(Channa marulioides)
熱帯魚界で人気種

大きな胸鰭と飾り鱗が象徴的なこのライギョは、ロイヤルトーマンと呼ばれる種類です。
最大で80〜90cmほどに成長しますが、どちらかといえば釣りのターゲットというより、観賞魚としての人気が高いライギョといえるでしょう。
タイ語ではプラーチョンカルーワン、インドネシア語ではイカンペヤングと呼ばれています。
なかなか出会えない

プラーチョンとは対照的に人里から離れた場所に生息することが多く、釣りの対象魚としてはややハードルが高い印象です。
このライギョも地域や水質によって体色や模様にさまざまなバリエーションがあり、とくに赤や橙色が濃い個体や、バンドが太く濃い個体は珍重されます。
アーモンドスネークヘッド(Channa lucius)
広い生息域

アーモンドスネークヘッドは東南アジアに広く生息し、口先にかけてスッと細くなる、やや扁平な顔立ちをしています。
最大で40cm前後の中型種で、体側に黒い斑紋が並ぶのが特徴です。
「アーモンドスネークヘッド」は日本の観賞魚界での呼び名で、英名はフォレストスネークヘッド、タイではプラーカソンと呼ばれます。
狙って釣れないけど、たまに釣れる

狙って釣るのは至難の業。しかし、1週間ほどジャングルでトーマン釣りをしていると、不意に釣れてくれる——そんなキャラです。
トーマンより小型のため、ルアーサイズを落とし、岸際を丁寧に探ると出会える確率が上がる印象がありますね。
山根
この個体はカリマンタン産。ブラックウォーターの中で釣獲したためか、真っ黒に黒化していてカッコ良かったです。
バンカスネークヘッド(Channa bankanensis)
アーモンドスネークヘッドかと思いきや

アーモンドスネークヘッドによく似ていますが……こちらはバンカスネークヘッドと呼ばれる種類で、アーモンドよりも顔つきが丸いのが特徴です。
アーモンドスネークヘッドより一回り小さく、最大30cm程度まで成長する小型のライギョです。
ブルズアイスネークヘッド(Channa marulius)
世界三大雷魚の一角

世界三大雷魚、最後の一角を担うのがブルズアイスネークヘッド、ことチャンナ・マルリウス。
最大で110cm前後、なかには120cmを超えるともいわれる超大型種で、ルアーへの反応もすこぶる良好。
原産地では、陸っぱりからでも狙えるルアーフィッシングの人気ターゲットとして親しまれています。
バリエーションが豊富

ブルズアイスネークヘッドは主にインド、バングラデシュ、ネパール、パキスタンなどに生息していますが、地域ごとの遺伝的差異が指摘されており、今後の研究次第では複数種に細分化される可能性もあります。
魚種集めが趣味の僕にとって、この魚にハマると完全に“沼”だと感じます。
山根
ある意味、イワナ釣りのような奥深さを持つライギョともいえるでしょう。
イザベラスネークヘッド(Channa pseudomarulius)
偽者のマルリウス

こちらは、150年以上にわたってマルリウスと同種とされてきたインド南部の特産種、イザベラスネークヘッドです。
2017年に「Channa pseudomarulius」という学名が復活する形で再記載されました。
ちなみに、pseudoには「偽物」という意味があります。
エラ蓋の赤い模様が特徴的

ブルズアイスネークヘッドと比べると、顔がやや扁平である点と、鰓蓋が赤く縁どられている点が、素人目にも分かりやすい違いだと感じます。
ちなみに、タイやミャンマーに生息し「コブラスネークヘッド」と呼ばれているマルリウスは、2018年から2019年にかけて「Channa aurolineata」へ、さらにスリランカの個体群は2020年に「Channa ara」へと再定義されています。
山根
このように、ライギョの仲間の分類は今後さらに進んでいくと予想されます。
いつまでも終わらないライギョ集めの旅

カムルチーやトーマンといった有名種から、最近記載されたばかりの新種まで、駆け足ではありますがご紹介してきました。
中小型種まで含めると、まだ釣ったことのない種類が山積みのライギョの世界。
きっと長いであろう自分の人生をかけて、これからもコツコツと釣り集めていけたらと思います。
撮影:山根央之
