目次
ひとめ惚れした世界基準のルアー釣り対象種“プラー・シャドー/トーマン”
“ジャイアントスネークヘッド”と呼ばれるライギョの仲間

今回の主人公となるこの魚は、呼び名がたいへん多い魚です。まずは英名から説明しましょう。
英語では、Giant Snakehead(ジャイアントスネークヘッド・巨大なライギョ)と呼ばれ、ライギョの仲間では日本にも生息するカムルチーと並び、1m前後まで成長する最大級の種類です。
東南アジアに広く分布し、タイ語では「プラー・シャドー」、マレーシアやインドネシアでは「トーマン」と呼ばれます。日本の釣り人にはこれらの呼び名が親しいかと思います。

また、ペットとしても人気のある魚で、日本の観賞魚業界での流通名はレッドスネークヘッド(赤いライギョ)。
※今回の釣行記の舞台はタイ国でありますので、シャドーと呼ばせていただきます。
東南アジアを代表するゲームフィッシュ“シャドー/トーマン”

シャドーは世界の怪魚の中でも、獰猛さと残酷さではトップクラス。ルアーへの反応も良好なため、近年、世界的に人気なゲームフィッシュとなりつつあります。
特徴は何といっても遊泳速度の速さ! 待ち伏せて頭から捕食しようとする一般的なフィッシュイータとは違い、シャドーは追いかけっこが大好きで、どんな獲物にも追いつきしっぽにかみつきます。

活性が高い場所に釣行すると、下半身だけが食いちぎられた魚があちこちに浮いてたりします。
せっかく捕まえたのだから全部食べれば良いものの、スイッチの入ったシャドーは生き物を殺すのが趣味なのか……と思うほど残酷です。
鮮やかな婚姻色がシャドー/トーマン最大の魅力

シャドーの最大の魅力といえば何といっても鮮やかな婚姻色でしょう。
何度釣っても、水系ごとに少しずつ違う婚姻色の出方に飽きることはありません。
レッドスネークヘッドという名前の由来となった真っ赤な稚魚

グリーンやブルーといった鮮やかな婚姻色になる親魚に対して、シャドーの稚魚は黄色や真っ赤な色合いを見せます。
それはもう息をのむ程に美しく、ついつい見とれてしまいます。
海外には、日本では考えられない凶暴さや美しさをもった淡水魚がたくさんいます。
今回は、僕が初めて惚れた海外の魚であるシャドーを狙った釣行記をお届けいたします。
“プラー・シャドー/トーマン”を求めて。初めての旅先をタイ王国にしたワケ
“プラー・シャドー”という魚を釣ってみたかった

バス釣りとライギョ釣りに全力を注いでいた高校性の僕にとって、とあるバス釣り雑誌に小さく掲載されたトップにド派手にバイトするという美しいライギョ……。
どんな魚よりもどんな人よりも魅力的に見えました。
“シャドーを釣ってみたい”という大きな想いを実現させるために、大学入学後すぐにアルバイトを始めました。
(アルバイト厳禁のバリバリ進学校の皆さん!大学生になれば自由ですよ!)
普段の釣りを我慢せずお金を貯めるために犠牲にしたもの
旅費だけで費用は12万円! 釣り具も買わないといけないし、毎日釣りに行きたいお年頃でしたので、なかなかお金なんて貯まりませんでした……犠牲にしたのは、カラオケ、合コン、サークル活動……普通の大学生が経験する遊びを僕は一度も経験しませんでしたね(笑)
タイは物価が安く、治安も良い親日国!

当時のタイの通貨である“タイバーツ”は、1バーツ=2.6円前後。コンビニで500mLの水が10バーツ(約26円)、コーラが25バーツ(約65円)程度でした。
また、タイ王国は親日国としても有名で、治安の良さも安心感がありましたね。
加えて、航空券が安かったの理由のひとつです。
当時LCCなんて概念はありませんでした

今でこそ、エアアジアやスクートなど様々なLCCが空を飛び交っていますが、当時はタイ往復10万円前後が相場。
そんな中でも、デルタ航空の乗り継ぎ便を利用することで5.5万円で飛べたお得感は今でも忘れられません。
安く海外釣行へ出かけたい方は、航空券の検索にはちょっとだけ多めに時間を使ってみると良いですよ!
大減水のカオレムダム。果たしてこの状況が意味するものとは……
プラー・シャドーフィッシングの聖地“カオレムダム”を目的地に決める

当時、タイでシャドーを釣ろうとしたとき、僕が日本で入手できた情報はカオレムダムという単語くらいでした。
SNSやYoutubeなどで、いくらでも情報が出てくる今の時代を当時の僕が羨ましがるか分かりませんが、あの時、分けわからないままタイへ旅立った経験は今でも活きています。
例え、釣果に恵まれなくても、目的地にたどり着くことさえ叶わなくても、旅に出た経験と事実は、後になって必ず役立ちます!
現地の最新情報が着くまで分からない…それが海外遠征の醍醐味

釣り場へ向かう飛行機は窓側に限ります。大地を見て天気は良さそうか確認するためです。
陸路では橋を渡るたびに川を覗き込みます。水位が気になるんですね。

雨が良いのか、晴れが良いのかこの時点では知る由も無いんですけど(笑)
でも、いろいろ考えてしまうのも旅の醍醐味ですね。
目の前に広がる大渇水の巨大ダム湖“カオレム”

これは……。
はじめて行くポイントでも危機を感じるほどの大渇水が目の前に広がっていました。
シャドーは増水に合わせて産卵し、繁殖期にだけ鮮やかな色が出ます。
「婚姻色は絶望的な状況だなーっ」て感じたのをよく覚えていますね。
でも、不思議と海外釣行っというのは、落胆よりも向上心が勝るものなんです。
自分の培ってきた経験を武器に「絶対釣ってやる!腕が鳴るぜー!」って燃え上がりました。
トップオンリーで“シャドー/トーマン”入れ食い状態!海外釣行は刺激的!
あっさりと釣れたプラー・シャドー

開始早々、水面を引いてきたルアーに「バシャンっ!」と派手にバイトが来ました!
ドキドキして飛び出しそうな心臓をなんとか落ち着かせながらフッキング。上がってきたのは小さいながらも縞模様の綺麗なシャドーでした!
初めての1匹というのは、サイズに関係なく嬉しくホッとするものです。
トップでシャドーがバッコバコ

その後も、バンク(岸)を打てば打つほど同じようなサイズのシャドーが釣れ続きます。
日本のねちっこくルアーを追いかけてくるライギョとはまるで性質違うんですね。

バズベイト、ペンシル、スイッシャーとにかく早く動くトップでバンバン釣れます!
チェイスした後、止めたら見切る、スピードを上げればバイトする。めちゃくちゃアクティブな魚です!
海外釣行の楽しみの一つは外道の存在!美魚“プラー・カスープ/ハンパラ”登場

「バフォ!」っとちょっとこもり気味の捕食音で魚種が違うな! とすぐに分かりました。
鋭くスピーディな引きを見せてくれたのは、赤い尾びれと黒い斑点が美しいプラー・カスープというコイの仲間。
完全肉食性で最大で70cmにまで成長するというから魅力的!
タイやマレーシアではシャドーに並んで人気の高いゲームフィッシュです。
単独海外釣行の満足感は自分で決めよう!納得の最大魚65cm 2kg

実釣3日間半で手にした最大のシャドーは、僕がイメージした大きさではありませんでした。
体色も雑誌で見たものとは全く違います。でも、良いんです。この大渇水という状況だからこそ味わえた数釣り。
そんな中で、ド派手に水面を爆発させてくれたこの一匹とのファイトはまさに至福のひと時でした。
「勇気出してカオレムに来てみて良かったなー」って。僕にもそんな時代があったんですよ!
ちょっぴり悔しいさが残る。それも海外の釣り旅ってもの

とはいえ、何かしらトラブルや予期せぬことが起きるのも海外ならではです。
僕の場合、とんでもない大物がヒットしてスプリットリングを飛ばされるという出来事がありました……。
「さすが海外!」では済まされない悔しさを痛感したりもして、いつかリベンジするぞ! って誓ったのも今では良き思い出です。
出会いがあるのもの旅ならでは

空港近くの釣り堀を旅の最後に訪れた際に、日本のバラエティ番組の撮影が行われていました。
撮影協力として怪魚ハンター達が集まっていて、ここでのひと時は僕の人生を少し変えたなと今思い返すと感じます。
シャドーに限らず、沢山のタイでの釣り話を聞かせてもらい、絶対もう一度タイに来るってタイ人怪魚ハンターに強く言ったのを覚えています。
大切なのは自慢できる釣果じゃなくって、自分が旅して良かったと思えるかどうか

SNSのイイネの数なんか気にしてちゃ、せっかくの自分だけの時間がもったいない。というのが僕の本音です。
旅にも釣りにもスキルがあって、同じように運も必要です。
大きな魚を釣った人だけが凄いわけでもなく、たくさん旅した人が偉いというのも違うと思います。
イイネで他人に評価してもらうのは簡単ですが、自分の釣り旅に価値をつけるのは、紛れもなく自分自身です。
絶対行くんだ!と決意すれば、海外釣行は誰だってチャレンジできます!
ここまで僕の記事を読んでくださったということは、心の底のどこかできっと「海外で釣りをしてみたい」って気持ちがあるはずです。でも、まわりに渡航経験を持つ人がいない方にとって、一人旅を決心することは簡単ではないですよね。
親や友人に自分の想いを切り出したとしても「海外なんて危険でしょ!」とか「どこにそんなお金があるの!」とか……。
否定的な意見が嵐のように降りかかり、せっかく燻りかけた大切な火種が消えてしまうんです。

僕からのアドバイスは、海外に本気で行きたいなら決意表明の証として、パスポートを「取得しろ!」です。
そして、結果やまわりの目はひとまず気にしないで、「もうパスポート取っちゃったもん!」とか適当な理由つけて、行ってみたい国へちょっと強引にでも行くべきです!
旅先には、否定的な意見なんてなくって、前向きな意見を沢山くれる一生モノの出会いが待っていますよ!
プラー・シャドー/トーマン用のタックル紹介
強めのバスロッドで代用可能!短い方が取り回しが良くてオススメ

ボートからの釣りが主となる“シャドー/トーマン釣り”は、短く強めのバスロッドが扱いやすいです。
長さは5ft後半から6ft台、パワーはH程度が良いです。でも……せっかくの海外釣行、新たにロッドを購入するという方も多いかと思います。
そんな方には、怪魚用ロッドを強くお勧めします!
怪魚用ロッドを選んでおけば間違いない
・Length:5'5ft
・Folded Length:132cm
・Rod Wt.:135g
・Mono Line (lb ,MAX):25
・PE (# ,MAX):8
・Cast Wt.:10g〜120g
ボートからの釣りになるシャドーフィッシングにはショートロッドがオススメです。
万が一7kgオーバーのモンスターサイズがヒットしても全く問題のないパワーを持ったピメンタ55は使っていて安心です!
リールはハイギア必須!PEラインにリーダーを組みましょう
ギヤ比:8.5
ドラグ力:最大 5.5kg
糸巻量(ナイロン):12lb-130m、14lb-110m、16lb-100m
巻上長(ハンドル1回転あたりの長さ):最大 91cm
※ソルト対応
シマノの人気シリーズ、「スコーピオン」シリーズの最新機種で、コスメもより大胆なバーガンディー、このシリーズが好きな人にはたまらないモデルです。またMGLスプール搭載と機能面でも隙がなくコスパも含めてとても使い勝手が良いように感じます。ノーマルギア、ハイギア、そしてエクストラギアと3種類のギア比から選べ、巻物から打ち物まで網羅しています。
当方が使ってみて一番驚いたのはその飛距離でした。12lbのナイロンラインにて14gのバイブレーションをフルキャストしたところ70m巻いたスプールのラインが軽く全て出きってしまいました。これは恐らくですが倍の値段するハイエンドモデルとそう変わらない飛距離だと思います。巻き心地は決して素晴らしいとは言えませんが、定価27000円、実勢価格では20000円を切るリールとしてはかなり良い方であると感じました。自重210gと近年リリースされるリールとしては決して軽い方ではありませんが、気になるほどではないと思います。
シャドー/トーマン釣りでは、トップウォータープラグを高速でアクションさせるため、ハイギアリールが必要不可欠です。
ブッシュ周りでの釣りが多くなるため、ラインはPE一択。3号から4号を100mほど巻きましょう。
リーダーはナイロンの50lbから60lbが標準的です。
シャドー/トーマン用ルアー【バズベイト(ペラルアー)】

もっとも一般的な釣り方は、ペラルアーやバズベイトといったトップウォーターの超高速巻きです。
残念ながらペラルアーは日本では入手し辛いのが現状ですが、バズベイトでも代用可能です。
ワイヤーの強度が高く高速リトリーブでもバランスを崩さないものを選びましょう。
他にない直進系バズベイト!直進力が高く、実は他にあんまりないような音を奏ででくれます。ゼロツービートとはまた違う感じのおとなしい音が気に入ってます。個人的おすすめは3/8オンス。重量が軽いけど、コンパクトな分空気抵抗が少なくて飛距離が出る感じがします。
シャドー/トーマン用ルアー【クランクベイト】

増水している場合や繁殖期のシャドーを狙う場合は、クランクベイトでレンジを入れてあげる必要があります。
2m前後のミドルレンジと4m程度のディープレンジを泳ぐ2タイプを用意しましょう。
シャドー/トーマン用ルアー【スピナーベイト】
活性が低い場合に効果を発揮するのがスピナーベイトです。3/8~1/2ozを基準にいくつか持っておくと安心です。
バスとは比較にならないファイトになりますので、ワイヤーは太軸を選びましょう。
シャドー/トーマン用ルアー【ワーム】
浮草やオダなどブッシュが濃いフィールドでは、スナッグレス性能に優れたノーシンカーワームが大活躍します。
表層を早く巻いても回転しないバジングワームが最適! サイズは4インチから5インチがオススメです。
一人旅はどうしても心配。お金はあっても時間がない…。そんな方はツアーを使っても良いんですよ!

どうしても一人旅をした奴が偉いとかカッコいいっていう風潮があるのも事実かと思います。
とはいえ、やっぱり自分が主人公であるべきです。周りの目を気にせず、ツアーを使うことで行きたい国へ行けるのであれば、手段として使うべきだと思います。
ツアーで案内してくれるアテンダーや現地ガイドとの出会いもまた、素晴らしい出会いになるかもしれませんよ!
シャドー/トーマンフィッシングはChill Tripがオススメです。僕と一緒にシャドー釣りに出かけましょう!
筆者紹介

“初めての1匹”を求めて、世界中どこへでも行く怪魚ハンター「山根ブラザーズ」の兄。
釣りに留まらず、ガサガサや漁業者と協力してまでも、まだ見ぬ生き物を追い求め、日々水辺に立っている。
20回以上の訪タイ経験を持ち、今では片言のタイ語も話す。
どえらい魚を獲った!もはや釣りを越えて!色んな人と繋がって!特大天然メコンオオナマズ! 240 cm175 kg 捕獲です!!ホント色んな人に助けられてこの魚と出会うことができました!メコンオオナマズに関わる全ての人に感謝でいっぱいです!! pic.twitter.com/JHWpNdLAvX
— 山根ブラザーズ(兄)@kimi (@chillkimi) September 16, 2017
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