オオニベについて

オオニベ(Argyrosomus japonicus)は、最大1.4〜1.5mにまで成長し、国内に生息するニベ科魚類の最大種です。
房総半島以南の太平洋側、四国、九州、沖縄県にかけて生息しており、サーフからの陸っぱりだけでなく沖合での船釣りで釣り上げられることもある魚です。
ちなみに、岸から狙う場合は晩秋から真冬が好シーズンと言われています。
山根
宮崎県では水産資源として利用される魚でもあり“ミナミスズキ”とも呼ばれ、養殖や種苗放流も行われているようです。
世界中で愛されるニベの仲間たち

ニベの仲間は世界に約280種が知られており、釣り味の良さや食味の良さから人気ターゲットになっているものも。
オーストラリアやアフリカにもオオニベによく似た種類が生息していたり、北米や南米には純淡水魚のニベの仲間がいたりします。
ニベとオオニベの違いと共通点

ニベとオオニベの見分け方としては、オオニベの方がやや下顎が長く、側線上に斑点が見られる点が挙げられます。
一方で、ニベとオオニベに共通する特徴として、「グーッ」や「グググ」といった低い音を発することも知られていますが、これはニベの仲間ならではの性質です。
こうした鳴き声は、ニベの仲間の雄だけが持つ鰾と連動する特殊な筋肉(発音筋)によるもので、求愛行動や個体同士の位置関係を把握するためのコミュニケーション、あるいは威嚇など、さまざまな役割を担っていると考えられています。
オオニベへの挑戦は10年前に遡る

僕がオオニベ釣りに初めて挑戦したのは10年以上前の大学生の頃。
当時、オオニベ釣りと言えば宮崎県というのが定説でありながら、怪魚仲間の間では静岡県のサーフでも狙って釣れるという噂がありました。
噂を鵜呑みにして挑戦するも、タチウオ1匹の釣果で惨敗したことだけ覚えています。
昨年も空振りに終わる

時は巡り、今では静岡県から愛知県にかけてのサーフでも、オオニベを狙って釣れることが広く知られるようになりました。
僕の弟がこのエリアでオオニベを立て続けに何尾もキャッチしたことをきっかけに、再び釣行することになったのですが……、これまた見事に空振りに終わりました。
山根
今思えば、オオニベに対する熱意が足りていなかったんだと思います。
そして、3度目の挑戦へ

そして、すっかり寒くなり、今シーズンもオオニベが釣れ始めたという情報が流れ始めました。
僕なりにオオニベの生態を勉強し、弟や友人からのアドバイスを整理したうえで、3度目の挑戦はソロで行くことにしました。
「本気でオオニベを釣ってみたくなった」と自覚しながら、単独釣行に出発です!
ブレイクと飛距離

最初に入ったのは、K2F162 T:3(タックルハウス)をフルキャストし、5〜10巻きで海底を叩き始めるような、遠浅のポイントでした。
着水からルアーがボトムに当たるまで、つまりブレイク周りでヒットするイメージで狙っていきます。しかし、時々ベイトらしき何かに当たるだけで、バイトはありません。
ブレイクより手前のシャローをチェックするため、水面を泳ぐルアーも試してみますが、こちらも反応なし。移動を決断します。
砂浜の流れ

実釣日は潮位差の大きな潮回りだったこともあってか、次に入ったポイントは流れが出ており、ルアーの引き感が重く感じられました。
ブレイクは岸に寄っており、着水から30mほどはK2Fを引くことができます。
10分ほどキャストを続けていると、着水から10巻きほどのところで、「ガツッ!」と鋭く激しいバイトを感じました!
ファーストラン

竿を立ててフッキングをした瞬間、もの凄い勢いで走り出しました!
ドラグを少しだけ締めて魚を止めつつ、ジワリと追いアワセを入れると、今度は「ガガッ!ガガッ!」と激しく首を振り始めます。ここでオオニベを確信しました。
ポンピングをしながらリールを巻き、寄せにかかります。
波打ち際の攻防

波の影響を受ける距離まで寄ってきたところで、ドラグを緩めながら慎重にランディングの機会をうかがいます。
ヘッドライトで魚を照らすと、ピンクに光る眼が見えました!
光を嫌がったのか、最後に少し走られましたが、無事に砂浜へズリ上げることに成功しました!
オオニベ釣ったぞ!

誰もいないサーフだったので、「やったぁー!オオニベだー!!でっかー!!!」と声を上げ、喜びを爆発させてしまいました!
側線上のスポット、わずかに長い下顎……。
大きさから見ても疑いようはなく、オオニベの特徴がしっかり確認できます。

そして「ググ、ググ」という鳴き声と尾びれの形……。
こんなに巨大でも、やっぱりニベなんだなと感動してしまいました。
山根
個人的に、ニベ系の魚は尾びれが一番好きです!
サーフでの大型魚の扱い

アメリカ、南米、東南アジア……。さまざまな国でニベの仲間を釣って食べてきましたが、総じて旨いんですよね。
写真のニベはガイアナ(南米)で釣った純淡水魚ですが、スープ料理にすると激旨!
淡水魚がスープでここまで旨いというのは、本当に凄いことです。臭みもなく、身はフワッフワで、毎日でも食べたくなりました。
ということで、せっかくの機会なので、オオニベの食レポもさせていただきます!
リリース or キープ

今回、僕は釣ったオオニベを食べるつもりだったため、キープを前提に釣りをしていました。
持ち帰る場合は、大型クーラーや十分な量の氷を、あらかじめしっかり準備しておきましょう。
僕は「もしかしたら150cmクラスが釣れるかも」と考え、分厚いシートと氷10kgを用意して釣行に臨みました。
サーフでの撮影は難しい

一方で、キャッチ&リリースでオオニベを狙いたい方も多くいらっしゃると思います。
海況やサーフの地形にもよりますが、大型魚をサーフで生かしたまま、ソロで写真を撮るのは、オオニベに限らず至難の業だと毎回感じます。
山根
サーフの釣りに慣れていない方や、リリースを優先したい方は、普段以上に迅速に逃がせるよう、事前の準備をしておきましょう。
オオニベ料理

持ち帰ったオオニベを捌いていきます。お腹を割いたところで、発音筋を発見!
気になったので、試しに食べてみました。
発音筋

発音筋のお味は、赤身魚のような食感はあるものの、香りや旨味は控えめで……少し不思議な味でした。
決して不味いわけでも、血のニオイがするわけでもありませんが、やはり身の方が味わい深く、美味しいと感じました。
刺身

オオニベのお刺身の第一印象は、「見た目が綺麗な白身」。
釣ったばかりということもあり、歯ごたえは程よく、食感はなかなかのものです。ただし、甘みや旨味はやや控えめな印象。
ほかの魚に例えるなら、ランカーサイズのシーバスに近いかもしれません。
塩焼き

塩焼きはもっとパサつくかと想像していましたが、脂の乗った個体だったこともあり、しっとりとした仕上がりで美味でした。
ニベ系の魚は火を通した方が美味しい印象がありますが、オオニベも例外ではなさそうです。
バター焼き

オオニベの切り身に塩コショウで下味をつけ、ニンニクとバターで焼き上げてみました。
これが想像以上に旨い! 塩焼きよりも身がふっくらと仕上がり、バターの風味との相性も抜群でした。
潮汁

大量に出たオオニベのアラを使って、潮汁も作ってみました。
上品なお出汁が出て、とても美味しかったです。
鍋などの汁物に身を入れる場合は、加熱しすぎると身が硬く締まってしまうため、仕上げる直前に入れるのが良さそうです。
オオニベのタックルについて

最後に、たった1匹しかオオニベを釣ったことがない僕ですが、参考までに使用したタックルをご紹介します。
オオニベ釣りに使用するラインは、PE1.5〜2.5号が標準的なようで、僕は2号を選択しました。
リーダーには、ナイロン40lbを一ヒロ取っています。
ロッドは、50g前後のルアーを気持ちよくフルキャストできる、10ft前後のものが適していると思います。
リールは、PE2号を300m巻けるモデルで、C5000番クラスがちょうど良いと感じました。
ルアー

ルアーは、16cm前後のミノーを中心に用意しました。
僕がキャッチしたのはK2F162 T:3(タックルハウス)で、弟や仲間も、このルアーでの実績が最も多いです。
ほかには、タイドミノー ゴースト 170F(DUO)にも実績があるようです。
タックルハウス K2F162T3
| サイズ | 162mm |
|---|---|
| 重さ | 45g |
| タイプ | フローティング |
DUO タイドミノーゴースト170F
| サイズ | 170mm |
|---|---|
| 重さ | 46g |
| タイプ | フローティング |

最初に入釣したポイントのように、水深が1m程度の浅い場所では、カゲロウ155F(メガバス)やマキフラット155F(DUO)でも釣果が出ています(弟が……)。
カラーについては、白やチャート系といった膨張色に加え、フラッシング系のカラーを中心に用意しました。
広大なサーフでは、まずオオニベに気づいてもらうことが、何よりも大切だと感じています。
DUO マキフラット155F
| サイズ | 155mm |
|---|---|
| 重さ | 50g |
| タイプ | フローティング |
フックの強度について

フックは、BKKのファングス62(線径2X)を中心に使用しましたが、タックルとのバランス次第では63(線径3X)でも良いかもしれません。
がまかつであればMH〜H、オーナーならST46やST56といった具合に選ぶと良さそうです。
また1つ、目標が思い出に変わった

ずっと気になってはいたものの、なかなか本気で挑戦してこなかったオオニベ釣り。
実際に経験してみると、大物釣りならではの緊張感と達成感に満ちた、非常に魅力的なターゲットでした。
釣り方自体は、遠くに投げてゆっくり巻くだけという、単調な釣りに思えるかもしれません。
しかし、潮流や地形の変化、ベイトの気配を探し始めると、飽きることなくキャストを続けられる奥深さがあります。
山根
こんな大物が砂浜から狙って釣れるなんて——。
日本の海って、本当に凄いなと改めて感じました。
撮影:山根央之
