秋のヒメマスは“美しい婚姻色”で釣り人を魅了する
ヒメマスとは
ヒメマス(姫鱒)は、最大でも全長30~40cm程とサケやマスの仲間としては小柄な魚。
カパチェプ(薄っぺらい魚)というアイヌ語の名残から、北海道ではヒメマスを「チップ」と呼ぶこともあります。
ヒメマスの生態や生息場所について
ヒメマスは、産卵期になると体色や体格がまるで別の魚のように変態します。
写真のような体色を婚姻色、背中が張り出した雄を「セッパリ」なんて呼んだりします。
今回ご紹介する屈斜路湖(北海道)以外にも、十和田湖(秋田/青森)、沼沢湖(福島)、湯ノ湖(栃木)、西湖(山梨)、芦ノ湖(神奈川)などおもに東日本各地でヒメマスを釣ることができますよ。
重要な水産資源として各地の湖やダム湖へ移植され、定着した場所では今でも利用されています。
▼富士五湖・西湖のヒメマス釣りはコチラの記事
ヒメマスとベニザケの関係
ヒメマスの生息域が全部『湖』だってことにお気づきになられた方は鋭いですね!
じつは川で産まれ海で育ち、産まれた川に遡上して産卵するベニザケ(ソッカイサーモン)の中で、一生を湖で暮らすものをヒメマス(コカニーサーモン)と呼び分けているのです。
大雑把に例えるなら、サクラマスとヤマメに似た関係にあり、同じ種類の魚でも2つの標準和名を持つ魚です。
余談ですが……絶滅からまさかの復活を遂げた“クニマス”は、ヒメマスにとても近い魚ですよ。
▼西湖に生息するクニマスについてはコチラ
屈斜路湖のヒメマスの魅力は婚姻色
食味の良いヒメマスはキャッチ&イートという楽しみ方が一般的で、産卵期は禁漁となるフィールドがほとんど。
一方で婚姻色は繁殖期にしか現れず、美しく発色したヒメマスを釣ることができる湖は、秋にも解禁される十和田湖や漁協が存在しない屈斜路湖などに限られます。
▼十和田湖でのヒメマス釣りはコチラの記事でご紹介
魚の絶滅が起きた“屈斜路湖”
日本最大のカルデラ湖
屈斜路湖は、北海道東部の弟子屈(てしかが)町に位置する周囲長57kmの自然湖。
1938年に起きた屈斜路地震により噴出した硫酸塩が原因となり、ほぼ全ての魚が絶滅したとされています。
そのため現在の屈斜路湖には漁協が存在せず、遊漁券を支払う必要も禁漁期間もありません。
詳しいローカルルールは、弟子屈町のホームページをご覧ください!
現在の屈斜路湖は中性
魚が棲めない酸性湖沼となった屈斜路湖ですが、1980年代半ばから急速にpHが上昇し、現在ではpH7を少し上回る数値で安定しています。
このpHの上昇は人為的なものではなく、原因は今でも分かっていないようです。
もうお察しのことでしょうが、魚が棲める水質になってから、屈斜路湖に移植された魚のひとつがヒメマスという訳ですね。
屈斜路湖の面白さは酸性化だけじゃない
太平洋に流れ込む全長154kmの釧路川は、人工的なダムや堰が存在しないとても珍しい川です。
そんな手付かずな釧路川の源流に位置する屈斜路湖には、サケや放流されたベニザケが太平洋から遡上した記録も残っています。
もしかしたら、今でも150kmも離れた太平洋と屈斜路湖を行き来している魚がいるかもしれないと思うとロマンがありますよね。
湖畔にたくさんヒメマスが泳いでいるゾ!
現実が期待を凌駕する光景
ヒメマスは、沢や伏流水が湖に流れ込む湖岸で産卵する生態を持っています。
屈斜路湖に流れ込む沢を地図上にいくつもピックアップし、ランガンする気満々で挑みました。
ところがそんな心配はご無用だったようで、岸辺にはたくさんのヒメマスたちが群れています!
水中映像でも伝えたい
この風景を皆さんにもお伝えしたくて、カメラを水中へ沈めてみました!
縄張りを主張したり、群れになったり……浅瀬を泳ぐヒメマスたちを見ているだけで充分満足できちゃいそうですが、そこは釣り人。実際に釣って触れてみたくなるものです。
自分の手で釣って、触れて、感じる。生き物の逞しさ
ミノーにチェイスしてくるヒメマス達
ヒメマスの群れから少し距離を置き、ミノーをアクションさせながら引っ張ってくるとヒメマスが追尾してきました!
「喰えッ!喰えッ!」っと願いながら、アクションを続けると躊躇することなくヒット!
小柄な魚体が解き放つパワー全開ファイト
繁殖を意識したヒメマスは春や夏に釣るヒメマスと比べものにならない程、アグレッシブでジャンプを繰り返すファイトを見せてくれます。
美しくて勇ましいヒメマスと出会うことができました
何尾かヒメマスを釣り上げていくと、自分好みの発色具合の魚が釣れてきます。
思わず「この魚は綺麗だ!」って声が出てしまうくらい美しい魚が釣れたら、釣りを中断して美しい魚体を写真に残します。
屈斜路湖でヒメマスが釣れる時期と天候
10月初旬から11月上旬が好機
屈斜路湖で婚姻色の出たヒメマスが釣れるシーズンは年によって前後しますが、おおむね10月初旬から11月初旬にかけて。
ヒメマスが産卵のために接岸していない時は、まったく魚影がありませんので、10月になったらSNSなどを隈なくチェックし、接岸状況を把握してから釣行すると良いでしょう。
“晴天無風”が狙い目です
なかなか北海道の天気を読んで釣行するのは難しいですが、この釣りの醍醐味のひとつにサイトフィッシングがあるため、晴天無風が一番の狙い目となります。
ヒメマスの群れを探すという意味でも無風は大事な条件ですね。
もちろん曇天や雨天時でも接岸していれば釣果は出ますので、天気が悪い日は風向きや波の向きを考えて入るポイントを選ぶと良いでしょう。
屈斜路湖のルールとヒメマスが釣れる場所について
ローカルルールを尊重しましょう
冒頭で簡単に触れましたが、屈斜路湖には漁協が無いため、周年ヒメマス釣りを楽しむことができます。しかし、弟子屈町が独自にバーブレスフックの使用やキャッチ&リリースの推奨といったローカルルールを設定しています。
このルールに法的な強制力はありませんが、屈斜路湖に釣行する場合はルールを尊重してヒメマス釣りを楽しみましょう。
林道エリアが実績場として人気
秋の屈斜路湖のヒメマスポイントとしては、湖西部から北部にかけて湖岸沿いを走る林道エリアが人気です。
林道を車で走っているといくつも沢がありますので、インレット周辺の砂礫底をキーワードにして群れを探してみましょう。
林道エリアを中心に湖岸を歩きまくれば、きっとヒメマスが群れている場所を見つけられるはずです。
屈斜路湖で活躍するタックルとルアーについて
渓流タックルでOK
ヒメマスさえしっかり接岸していれば、ロッドとリールはとくにこだわる必要はありません。
エリアトラウト用でも渓流用でもOK。メバリングタックルやバス用ULクラスでも良いでしょう。
メインラインはPE0.6号にリーダーナイロン1.5号を目安に、ロッドやリールのバランスに合わせれば大丈夫です。
渓流用ルアーを中心に用意しよう
繁殖期という特異的な状況とサイトフィッシングという釣法のため、カラーはフルピンクとフルオレンジがとくにオススメ。
なかなかヒメマス用にカラーリングされたルアーは販売されていないので、購入できなければ渓流釣りで使用するカラーでも大丈夫です。
ミノーは5cm前後を基準に、フローティング、サスペンド、シンキングの3タイプを用意できれば安心ですよ。
ダイワ シルバークリークミノー44Sヒメマスカラー
シンキングタイプのフラットサイドミノー。
ヒメマス用のカラーが充実しているのでオススメですよ!
全長 | 44mm |
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自重 | 4.2g |
タイプ | シンキング |
バスディ シュガー2/3ディープSG 52F
今回の釣行で良い釣果が得られたルアー。
トゥイッチからの浮上でバイトが集中しましたよ。
全長 | 52mm |
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自重 | 3.1g |
タイプ | フローティング |
リアクションバイトを意識しましょう
この時期のヒメマスは捕食ではなく、威嚇や反射行動によってルアーを襲います。
トゥイッチで追わせて、ポーズや次の動き出しでバイトさせるイメージでルアーを動かしてみましょう。
沈むものに反応したり、浮上するものに反応したりとパターンが変わるので3タイプ持っているとおおむね対応できますよ。
魚がスレてしまっている場合は……
有名ポイントなど魚がスレてしまっているような状況では、ボトムノックスイマーなどの左右に大きく動くルアーやアジングやメバリングで使用する2~3g前後のマイクロジグ、3g前後の管釣り用のスプーンなどが活躍する場合があります。
スミス ボトムノックスイマーⅡ
左右に大きくダートするアクションが特徴の渓流用ルアー。
ミノーやスプーンとは違った動きでヒメマスにスイッチを入れてくれますよ。
全長 | 30mm |
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自重 | 3.2g |
タイプ | シンキング |
アングラーズシステム バックス エリア
ヒメマス釣りでは管理釣り場用のスプーンが効果を発揮する場合があります。
カラーは蛍光色のオレンジやピンク系がオススメですよ。
全長 | 26mm |
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自重 | 2.5g |
屈斜路湖へ遠征してみてはいかがでしょうか
屈斜路湖のヒメマスは、人の放流活動が無くともよく釣れる状況が続いています。
屈斜路湖の水質が安定していることはもちろんのこと、それ以外にも多くのアングラーがローカルルールを守りながらヒメマス釣りを楽しんでいるのも重要な要因だと感じます。
そんな素晴らしい屈斜路湖へ出掛けてみてはいかがでしょうか。