富士五湖のひとつ“西湖”でヒメマス釣りを楽しんでみよう
上品な美味しさで人気なヒメマス
紅鮭(べにざけ)と聞けば、ピンとくる方もいらっしゃるかと思います。そう、ヒメマスは日本の朝食に欠かせない塩鮭の原料になる魚です。
言わずもがな、ベニザケはとっても美味しい魚で、サケ・マスの仲間でも味が良いと評価する人が多いんです。
透明度7m前後を誇るとても綺麗な西湖で育ったヒメマスの塩焼きは、ほどよく脂が乗りふっくらとした身で絶品なんです!
本来は海にいるベニザケですが、釣りや漁の対象魚として湖に放流したものや地殻変動などで湖に取り残されてしまったベニザケをヒメマスと呼びます。
つまり、魚の種類としてはベニザケとヒメマスは同じ種類なんですね。
東京から日帰り圏内でヒメマスが釣れる湖がある
サケやマスといえば、北海道や東北地方というイメージがありますよね……。
確かにメッカといえばその通りなんですが、実は富士五湖の中でも水深の深い西湖(最大水深72m)や本栖湖(最大水深122m)にはヒメマスが放流されており、期間限定で釣ることができるんです。
富士五湖ならば中央道で東京から2時間! 充分日帰り圏内なんです。
西湖の魅力
西湖の魅力はなんといっても静かなこと。エンジンボートの使用が禁止されているため、湖面にプレジャーボートの波が立つことはありません。
西湖の周囲にはコンビニすらなく、観光客が多く集まる河口湖と対照的にとっても落ち着いた湖です。
自然にすっと溶け込むような、ナチュラルな時間を過ごしたい方にオススメな釣り場なんです。
天然のマス釣りって難しそうだし……って心配はご無用です
釣り堀ならまだしも、大きな湖を泳ぐヒメマスを釣るなんて難しそうと思われるかもしれませんが、ヒメマスはマス類の中では比較的簡単に釣ることができる魚なんです。
釣り初心者でも大丈夫。堤防でアジやイワシを釣る仕掛け(サビキ)でヒメマスが釣れちゃいます! それもコマセ無しで!
今回は、西湖のヒメマス釣りの魅力とコツ、用意した方が良い釣り具をご紹介します。
ぜひ、静かでのんびりと時間が流れる西湖で美味しいヒメマスを狙った魚釣りを楽しんでみて下さい。
西湖でのヒメマス釣りは手漕ぎボートを使います
西湖のヒメマス釣り解禁期間と遊漁券
西湖ではヒメマスを釣っても良い期間(解禁期間)が決められており、釣りをする際には遊漁券を購入する必要があります。
漁協がヒメマスの放流量と漁獲圧を適切に管理しているからこそ、末永くヒメマス釣りを楽しんでいけるんですね。
例年通りだと、ヒメマスとワカサギの解禁期間は3/20~5/31と10/1~12/31、遊漁券は1日券のみの販売で、男性1,500円、女性・中学生750円、小学生以下は無料です。
釣行前に必ず西湖漁業協同組合のHPでヒメマス釣りが解禁されているか確認しましょう。
手漕ぎボートに乗って楽しむ西湖のヒメマス釣り
西湖の湖畔には何軒ものレンタルボート店が建ち並んでいます。ヒメマス以外にも、ヘラブナやブラックバス、ワカサギ釣りなどを楽しむことができます。
水深の深い場所を泳ぐヒメマスを狙う場合は、手漕ぎボートを借りて船から釣りをすることが第一歩です。
休日に釣行される場合は、電話にて船を予約しておくことをオススメします。
ボートの料金は船の形状によって変動しますが、一般的な手漕ぎボートは1日レンタルで3,000円~となっています。
詳しくはレンタルボート店にお問い合わせください。
■西湖レンタルボート
手漕ぎボート初めてでもOK!
西湖には、ヒメマスが良く釣れるポイントにブイと呼ばれる大きな目印が浮かんでいます。
このブイは各レンタルボート店のすぐ目の前に設置されていて、ボートを長距離漕いで移動する必要はありませんので、初めてボートに乗る方でも安心です。
最初こそ真っすぐ進まないかもしれませんが、それも自然の中で遊ぶ楽しさのひとつと思ってエンジョイしましょう!
ブイまでたどり着いたら、ボートとブイを固定しましょう。風が吹いてもボートが流される心配なく釣りに集中できますよ!
西湖のヒメマス釣りで使う道具
西湖でヒメマスを釣るための仕掛け
西湖では、針が沢山ついた仕掛けを使うサビキ釣りとルアーを船で引っ張るトローリングでヒメマスを狙うことができますが、初心者の方にはサビキ釣りがオススメです。
ヒメマス専用のサビキ仕掛けはなかなか市販されていませんので、小アジ用を代用してもOK。僕の主観ですがウィリーがオススメ、ピンクスキンでも大丈夫です。
サビキの針の大きさは小アジ用5~7号が良く、針の数は5~6本が扱いやすいです。オモリは10~15号を用意しましょう。
ヒメマスは遊泳力が強く、仕掛けを絡めてしまうことが多いので、サビキの予備は1人当たり3~5セットを目安に用意すると安心です。
オモリは重たい方が仕掛けが絡みにくくなるので、使用する釣り竿のオモリ負荷に合わせて重めの物を選びましょう。
1艇で複数本の竿を出す場合は、オモリの重さを統一した方が仕掛け同士の絡まりが軽減できますよ。
もうひとつ、集魚版を持っていくことをオススメします。
ヒメマスは、とにかくキラキラ光るものに興味を示す性質があるため、大き目の集魚版を仕掛けに着ける方が多いです。
ヒメマス専用仕掛けを購入できる場所
仕掛けだけはこだわりたい、という方もいらっしゃるかと思います。僕も準備でできることはしっかりやりたいタイプなのでお気持ち分かります。
レンタルボート店によってはヒメマス用のサビキを販売している場所もありますので、ボートを予約する際に確認しましょう。
細かなアドバイスとしては、20cm前後のレギュラーサイズを狙う場合は5号、30cmオーバーを狙うなら6~7号が良いです。
西湖のヒメマスに効果的な餌
ズバリ言いましょう! 西湖のヒメマスはイクラが一番です。ボートを予約する際にイクラもお願いすることをオススメします。
他にも紅サシやブドウ虫でも釣果は得られますが、イクラには敵いません。
普段僕たちが口にするスーパーのイクラは針につけた瞬間「プチっ」と割れてしまうので、必ず塩漬けされた釣り餌用のイクラを購入するようにしましょう。
西湖のヒメマス釣りにはトラウト・バスロッドがオススメ
手漕ぎボートから楽しむ西湖のヒメマス釣りでは、竿は2m前後のしなやかな物が適しています。
特段こだわる必要は無く、バス用のライトスピニングロッドやトラウトロッド、船用のキス竿やちょい投げ竿でも大丈夫です。
レンタルボート店によっては、レンタルロッドが数量限定で用意されている場合もありますので電話で確認してみましょう。
ヒメマス釣りで一番重要なのは“釣り糸”
ヒメマスは湖の中層を群れで回遊する生態をもっているため、自分のサビキが深度何mにあるのか把握する必要があります。
ここで大活躍するのが、1mごとにマーキングされているPEラインです。
糸の太さは1号、ヒメマスの釣れるタナが深い場合に備えて70m程度巻いておきましょう。
シマノ タナトル8 200m 1号
撚り数:8本
号数:1号
糸巻量:単品 200m
マーキング:1m、5mピッチマーキング
サビキを使った西湖のヒメマスの釣り方
西湖のヒメマス釣りにはルールがあります
西湖では3つのローカルルールがありますので、ここで確認しておきましょう。
■西湖ヒメマス釣りルール
- ●コマセなどの撒き餌禁止
- ●ヒメマス持ち帰り制限1日ひとりあたり30尾
- ●岸からのヒメマス釣り禁止
ルールは変更されることがあるので西湖漁業協同組合のHPで確認しましょう。
西湖はヒメマスと一緒にクニマスも生息しています。資源管理という観点から持ち帰り制限は必ず守りましょう。
違反者には厳しい罰則が科せられます。漁協による見回りも行われているので、必ずルールは守りましょう。
西湖でボウズにならないため、ヒメマス釣りのコツ
せっかく美味しいヒメマスを狙いに行くのですから、なんとかボウズ(釣果ゼロ)は避けたいところですよね。
西湖でヒメマス・クニマス生態調査に携わっていた僕からのアドバイスは以下の通りです。
■POINT
- ●レンタルボート店で前日に釣れていたブイとタナ(深さ)をしっかり聞く(あの辺り……ではなく、できるだけ具体的に!)
- ●早朝から出船する
- ●イクラを使う
- ●自分の仕掛けが何mにあるか意識する
- ●しっかり防寒対策をする
ブイに係留しヒメマスの泳ぐ深度を探しましょう
前日によく釣れたブイを教えてもらえたら、まずはそのブイに直行しましょう。
船をブイに係留したら、いよいよ釣り開始です。早速、ヒメマスの泳ぐタナを探していきます。この時、竿の数が多い程、効率よくタナを探ることができます。
通常、ヒメマスは5~40mの間を泳いでいることが多く、中でも10~25mがもっとも可能性が高い深度になります。
竿を複数本出したり、2人で釣りをされる場合は、お互いに声を掛け合いながら常に5m程度タナを変えておきましょう。
ヒメマスを沢山釣るためのコツ
僕はいつも鈴をつけた4本の竿を出して、10、15、20、25mのタナから釣りを始めます。この時、竿受けがあると効率よく釣ることができます。
鈴が鳴ってアタリが出たら、その棚から一番遠い竿のタナを当たったタナに合わせてから掛かった魚を取り込みます。
群れが来遊した時に、いかに効率よく釣りあげるか。これが重要です!
第一精工 スーパー受太郎
本体:アモルファス樹脂
収納サイズ:155x140x55mm
重量:315g
ヒメマスが釣れない時は…
ついつい移動してみたくなる気持ちはよく分かりますが、まずは以下のことを試してみてください!
■POINT
- ●竿を上下に揺らして誘いをかける
- ●イクラを取り替えてみる
- ●タナ(水深)を変えてみる
ヒメマスは回遊する魚なので、仕掛けが水中に入っている時間が長いほど釣れる数は多くなります。1時間程度は釣れなくても辛抱して良いでしょう。
それでもヒメマスが掛からない場合は、移動を決断するのもひとつの選択肢です。
ボートが集まっている場所や頻繁に鈴がなっている船があれば、その近くのブイに寄っていくのが無難な技といえます。
移動中にも釣りをしよう
ヒメマスは、人の歩く程度の速度で動く餌に非常によく反応します。
魚釣りに慣れた方は、移動中も竿を1~2本出してトローリングのようにサビキを引っ張ってみましょう。
西湖では絶滅したと思われたクニマスも釣れます
田沢湖で絶滅した固有種『クニマス』
世界で秋田県の田沢湖にのみ生息していた「クニマス」というヒメマスとよく似た魚の名前をニュースで耳にしたことのある方もいらっしゃるかと思います。
田沢湖のクニマスは、約80年前に発電施設を作ったが故に絶滅してしまったのですが、絶滅以前に偶然クニマスの卵が移入されていた西湖で細々と生き残っていたというなんともドラマティックな歴史があります。
西湖でのクニマス再発見には、さかなクンが携わっていたこともありメディアが大きく取り扱いました。
現在でも西湖にはクニマスが生息しています
クニマスについて語りはじめるとどうにも止まらなくなってしまいますので、またの機会にさせていただきます。こうご期待くださいませ。
ちなみに、西湖でヒメマス釣りを楽しんでいるとクニマスも掛かってきます。それも特段、幻級と言うほど珍しくありません。
具体的な確率は申し上げられませんが、何度も制限尾数まで釣りあげたことのある方ならきっと釣ったことがあるはずですよ!
僕も発信機を取り付けるためにクニマスを釣りあげました。
クニマスとヒメマスは外見では見分けがつかない
婚姻色が出ていない限り、クニマスを見慣れていない方はヒメマスとクニマスの区別はつかないでしょう。
発信機を取り付ける際も最終的な種判別をするためにDNA鑑定を行っていました。
外見で見分けのつかないクニマスとヒメマスですが、釣り分けることも困難です。どうしてもヒメマスに一定割合混じってきてしまいます。
現状、クニマスは放流無しの自力繁殖で再生産しています。貴重なクニマスですが、今のところ釣り人ができることは制限尾数を守ることです。
筆者紹介
山根央之(やまねひろゆき)
初めての1匹との出会いに最も価値を置き、世界中何処へでも行く怪魚ハンター山根ブラザーズの兄。
餌・ルアー問わず、もはや釣りに限らず。ガサガサや漁業者と協力してまでも、まだ見ぬ生き物を追い求め、日々水辺に立っている。
テレビ東京・緊急SOS池の水全部抜くやNHK・ダーウィンが来た、TBS・VSリアルガチ危険生物などに出演したり、魚類生態調査に参加したりと幅広く活躍する。
どえらい魚を獲った!もはや釣りを越えて!色んな人と繋がって!特大天然メコンオオナマズ! 240 cm175 kg 捕獲です!!ホント色んな人に助けられてこの魚と出会うことができました!メコンオオナマズに関わる全ての人に感謝でいっぱいです!! pic.twitter.com/JHWpNdLAvX
— 山根ブラザーズ(兄)@kimi (@chillkimi) September 16, 2017