2メートルを超える怪物『アオウオ』vs怪魚ハンター兄弟!国内最大の淡水魚に挑んできました

最大2メートルにもなる国内最大の淡水魚、アオウオ。日本では利根川水系に生息すると言われていますが、数は少ない……まさに幻の魚ともいわれています。今回、そんな夢のようなターゲットへぼくら山根兄弟が迫ります。幻の魚アオウオに出会うまでの釣行記、お楽しみください。

目次

アイキャッチ画像提供:Chill株式会社

日本国内で”最大”の淡水魚に挑んだお話し

全長200センチにまで成長するコイの仲間。日本では利根川で稀に釣り上げられる。

子供のころ、図鑑で読んだこの文章。当時9才と6才だった僕ら山根兄弟は衝撃を受けました。

いつか絶対に釣りたい。

2人とも大人になり忙しい日々を過ごすようになっても、この大きな目標を忘れる日はありませんでした。

その目標……いや兄弟で描いた子供からの夢をいま、2人で抱きかかえています。

筆者の紹介

山根 kimi ヒロユキ(写真右)

初めての1匹を求めて世界中何処へでも行く怪魚ハンター山根兄弟(兄)。

餌・ルアー問わず、もはや釣りに限らず。ガサガサや漁業者と協力してまでも、まだ見ぬ生き物を追い求め、日々水辺に立っている。

今回のターゲット

中国原産のコイの仲間、『アオウオ』が今回のターゲット。

110センチ前後が最大クラスとなる日本のコイに比べて、アオウオは200センチ近くまで成長する超大型淡水魚。

在来種では無いものの、釣りの対象魚として確立されている魚の中では、“日本最大”の淡水魚と断言できます。

情報収集開始!

まずは情報収集! 数日間にわたり、データを集めるところからスタートです。

■生息域

利根川水系(霞ヶ浦、北浦含む)全域、江戸川、全国各地のごく一部の野池やダム。

今回は最も生息密度が高いと思われた利根川本流に釣行することに決定し、利根川に関する情報を重点的に仕入れていきます。

■シーズン

3月中旬から5月中旬、9月中旬から11月下旬。

■狙う場所

カーブのアウトサイドや水深が深くなっている場所。捨石や杭などが絡む場所。

■餌

タニシ類、シジミ、ドブガイ等の大型二枚貝。

利根川水系には、厄介な餌取りであるアメリカナマズが数多く生息しているため、彼らが嫌う生きた貝類しか使い物にならないでしょうね。

■どのぐらい釣れるのか?

アオウオを1匹釣るのに数年かかる人もいれば、年間10匹以上釣り上げる達人もいるようです。

難易度の想定

僕ら山根兄弟は、魚釣りの難易度の目安として対象魚種を1尾釣るのにかかる所要時間で表現します。

今回のターゲットである、アオウオの難易度は……

Bクラス

高知のアカメより難しく、琵琶湖(本湖)のビワコオオナマズと同程度の難易度と考えました。

釣獲にかかるまでの期間は1か月。待ってろよ、アオウオ!

生息数が少ない魚。チャンスを増やすには!?

アオウオの釣獲率を見る限り、生息数は多いとはいえません。

では、どうするか?

自分たちの釣り座を通ったアオウオをできるだけ長い時間留めたり、また餌場と認識させ再び戻ってこさせるために、餌を撒き続けることに!

というわけで、タニシに詳しい友人や漁業者の方に協力をお願いし、73キロの餌を用意しました。

どこにポイントをつくるか?

撒き餌の効果を最大限に活かすためにも、一度竿を出す場所を決めたら1ヶ月間は移動しません。

つまり、ポイント選択が最も重要ということですね。

利根川河川敷で綺麗に草が刈り込まれている場所は、アオ師やコイ師が釣り竿を出す可能性が高いです。

以上を踏まえれば、自分の釣座は自分で草刈りをし、“ポイントをつくるべき”と僕は考えています。

釣り座を決定

スマホで簡単に使える魚群探知機を使用し、水深や起伏を把握します。

アウトサイドベンドの払出し。水深8メートルの川底に捨石が積み上げられ、水深1メートルと4メートルの段が人工的に構築されたこの場所の草を刈り、1ヶ月張り込むことを決意します。

 

断面図はこんな感じ。誰がみても好ポイントであることは間違いないのですが……

この鋭利なブレイクが厄介なんです。

実釣開始!ポイント選択は間違っていなかった!?

さぁ、いよいよ実釣開始。

夢の魚……果たして出会えるでしょうか。

草刈りの最中で

未だ桜の蕾すら膨らまぬ3月中旬。弟と二人で本気の草刈りに大汗を流していると、巨大な黒い背ビレが鏡のような水面を静かに切り裂きました。

そしてすぐに大きな尾びれを持ち上げ、川底へ。

150センチ前後はあるでしょう。疑う余地もありません。アオウオです。

「いるぞ!場所は間違っていない!」ぼくら兄弟は喜びの声をあげます。

待ちの釣りにおいて、対象魚の所在が分かっているか否かで、精神的疲労の大きさが全く違うのです。

ヘアリグを採用

カープフィッシングで用いられる、ヘアリグを採用。タニシの殻に穴を開け、1つの針に2~3個ずつ取り付けていきます。

仕掛けは、遊動天秤を使用した1本針。オモリは30-40号を捨てオモリ式に。

打ち込みは1日3回のみ!

仕掛けの投入は朝・昼・日暮れ後の3回。あとはひたすら24時間体制で待つのみ。

打ち返しの際、柄杓で仕掛けの周りに約1キロずつタニシをばら撒きます。

アオウオ釣りの必需品

今回は離れた場所に車を停めていた為、無線を搭載したバイトアラームを使用しました。

バイトアラームとは、釣り竿にセットすることで引き出される糸によりローラーが回転し、音を発してアングラーにヒットを知らせるスグレモノ!

実釣5日目の朝

弟が150メートル程下流に釣り座を構えた友人アオ師のもとへ出掛けている時の事でした。

弛んでいる弟の竿の道糸がフワっと揺れました。今まで無かった生命反応。もう既に心臓が飛び出そうです!

続く静寂……果たして

フワッが3回続き、1分程でしょうか。静寂が続きます。

撒き餌だけ食べて深みに帰ってしまったかな? あきらめかけた瞬間でした。

けたたましく鳴り響くバイトアラーム

糸がピンッと張り、ゆっくりと走り出しました。ローラーが回転し、けたたましく鳴り響くバイトアラーム。

竿を手に取り、思いっきり大きくそして強くアワセを入れます。

この重さ!アオウオに間違いない!

地球の裏側まで届く程の大声で弟の名を呼びます!

「マサァーーッ!アオ掛かったぞ!!」

激闘はじまる

ヒットしたのは水深4メートルライン。

正直言って水深4メートルラインで勝負したかったのですが、ドラグを締めても良いことは無いと竿にかかる魚の重さで判断。

推定40キロクラスだと思われました。

ブレイクに糸が擦れることなど百も承知でしたが、マサが来るまでの1分弱の間、できるだけ沖へ走らせてみようと試みました。

まるで潜水艦!

意外にも、俊敏なダッシュはありませんでした。しかし、パワーはコイなどの比じゃありません。

まるでゆっくり潜行していく潜水艦。一般的な釣魚で例えるならエイのよう。地を這うように潜っていきます。

10メートル程ゆっくり走られると、ガッガリガリッとエッジに糸が擦りだしました。

ヤ、ヤバイッ!

弟に竿をバトンタッチ

状況を端的に説明します。

「40キロクラス!10メートル走ってメインラインが擦ってる!沖へ走らせないとマズいぞ」

動きが止まった……?

しかし、弟に竿を渡すと今度は全く動かなくなりました。

クラッチを切って糸をフリーにしても微動だにしません。

まるで、自分が釣られていることを自覚していない様子です。

もうコレしかない

角度をつけるためにも、意を決して入水!

さー目覚めろ!アオウオ!!

ブレイクまでの距離を詰め、ラインの擦れを解消できました。

こうなれば、思いっきり魚に力をかけることができます!

さぁ、真っ向勝負だ!

力のぶつかり合い

タックルバランスを信じ、一気に竿を煽る弟!

自分が釣られていることをようやく自覚したアオウオ!

ものすごい力でドンドン沖へ走って行きます!

よし、勝てるぞ

20メートル程走らせることに成功!

ここからは、ブレイクに近づかぬよう注意しながらテンションを強くかけたり、緩めたりをくりかえします。

徐々にアオウオの体力を削いでいくようにファイトすること約10分!

ようやく鼻を上げました!

緊張と歓喜の瞬間

ランディングは僕の役目。

いつだって、メモリアルフィッシュのランディングには気を遣います。

ボガグリップをでっかい口にはめ、すぐに手を離します。

すかさず魚体後方へ手を回し、用意しておいたロープで尾を取り……

うぁーーーーー!!やっっっっっったーーーー!!!

また1つ。俺らの夢が叶った!

今回はテレビ取材ということもあり、プレッシャーを感じていました。抱き合って喜ぶぼくら。

幼少期から抱いた大きな夢を達成した瞬間を、2人で酔いしれます。

太く、そして美しいアオウオ

この三角形の背ビレ!

これを初日に見たんだ! やべーよほんと!

鱗が一枚も落ちてない! めっちゃ綺麗っ!!!

綺麗でカッコいい1枚を!

これだけの巨体。陸揚げすれば大きな外傷とストレスがアオウオにかかるのは明白ですよね。

釣った魚をどう扱うか。それは無主物先占の考え方により、釣った人にその権利があります。

今回僕らは、極力ダメージを与えぬよう入水して写真を撮ることを選択!

最高にカッコいい一枚。何度見返しても、最高の思い出です。

アオウオへの価値観

水中では魚の重さや長さを正確に測ることはできません。

でもさ、この手の幻の魚を相手にそんなことは僕らにとって大きな問題じゃないんだ。

できるだけ綺麗な魚体を写真に残せれば、それだけで良い。

その後も通い続けました

まだ数十キロのタニシが余っています。時間を見つけては利根川に通う日々が続きました。

本降り雨の中、再びバイトアラームが鳴り響きます。

小さいながらも綺麗なアオウオが僕の竿にも掛かってくれました。

それにしても美しい! かっこよすぎるぜ!

嬉しい報告も

そして、友人アオ師からも良い知らせが舞い込んできます!

一緒に頑張った仲間だからこそ、本当に嬉しいです。

アオウオ釣りに挑戦してみて

ほとんどの魚がそうであるように、場所、釣り方、時期が合えばしっかり釣れてくる魚だなと実感しました。

ヒットまで少々時間はかかりますけどね(笑)

気長に車中泊やテント泊を楽しみながら待てる人。1匹の価値に酔いしれたい人にはオススメです!

バイトアラームが鳴り響いたときの緊張感はホント! たまんないよ!

今後アオウオ釣りに挑戦してみたい方へ

今回僕達が考えるアオウオ釣りの道具のご紹介いたします。

竿

5~6メートルの石鯛竿

竿に関しては、僕たちは短い大物竿で挑んだものの、ある程度長さのある物が必要かと思います。友人アオ師が使用していた石鯛竿が本当に扱いやすそうでした。鋭利なカケアガリを回避するために強靭かつ長さのある石鯛竿が適します。

岸近くの浅瀬がポイントとなることが多いため、投げる距離も5-20 m程度と岸辺近くなので遠投の必要はありません。

ダイワ 幻覇王石鯛 HH-524

全長 5.2m
継数 4本
仕舞寸法 141cm
自重 800g
先径 2.8mm
元径 23.4mm
錘負荷 25〜40号
適合道糸 24〜40号
カーボン含有率 96%

リール

ナイロン16号が100メートル以上巻ける両軸リール

場所によっては、ウェーダーで入水して投げることなく仕掛けを投入できます。アオウオはそれほどにまで浅い場所にも摂餌しにくるのです。僕に掛かったアオウオは水深1mでヒットしました。

ただ、はじめに言ったとおり、深場が隣接していることが大前提であることをお忘れなく!

シマノ (SHIMANO) チヌ・石鯛リール 15 海魂 3000T

ギア比:6.2
最大ドラグ力:117.6N/12.0kg
自重:650g
スプール寸法:59.5/40mm
ナイロン糸巻量(号-m):16-170/18-150/20-130
最大巻上長:116cm(ハンドル1回転あたり)
ハンドル長:75mm
ベアリング数(S A-RB/ローラー):4/1

道糸

石鯛用ナイロンライン16号

飛距離を要さないアオウオ釣りにおいて、道糸は水に馴染みやすいナイロンライン一択と言って良いでしょう。

根ズレに強くしなやかな石鯛用がオススメです! 太さは釣り座にもよりますが16号以上を使用すると安心です。

サンライン(SUNLINE) 磯スペシャル テクニシャン石鯛 口白鬼憧 300m 16号 クチジロブラック

●16号
●規格:300m
●カラー クチジロブラック
●究極の夢を叶える!石鯛用USCライン!(PAT.)口白を完全ターゲットに開発!
●超高分子量シリコーンを融合させたUSCナイロンを採用。耐摩耗性と遠投の飛距離が格段にアップします(特許4673598号)
●強力・粘りを両立させ、本イシ・クチジロとの強引なやりとりも対応可能です
●リール馴染みがよく糸ぐせも付きにくいノントラブル糸質ライン

ハリス

コイ用ハリスPE10号 5-15センチ

淡水に対する比重が0.98と軽く、吸い込みが抜群に良いためオススメです! ハリスとの結合は強度を重視したハワイアンフックを採用しました。

YGK よつあみ ダイニーマ鯉ハリス 50m ブラウン 10号

・号数10
・長さ50m
・素材ダイニーマ カラープロブラック

ソイ針19鈎がオススメ!

軽くてシャープな針です。タニシやヒメタニシを餌にする場合はこれが最適!

ただ単純に大きくて太い針は吸い込みが悪く、根掛かりの際に対応が難しくなるため不向きです。

がまかつ(Gamakatsu) ソイ鈎 19号

●号数:19号
●入本数:9
●カラー銀
●メーカー品番12259 商品説明

ボイリーニードルとボイリーストッパー

タニシの針への装着は、ボイリーで使用されるヘアリグと同様の手法を採用しました。

水溶性のPVAバッグは遠投する際に重宝しますが、今回は足元がポイントだったため使用しませんでした。

霞ヶ浦では必需品だとか。

ダイワ(Daiwa) カープニードル 04910206

ダイワ カープ ヘアリグストッパー

入数(本):10 

ダイワ カープ PVAバッグ L−50枚

その他の使用品

■バイトアラーム

Lixada ワイヤレス釣りアラームセット

フォックス マイクロン MR+ 3 ロッドセット

■マイクロン Mrプラス アラーム×3台
■レシーバー
■専用ケース
■アラーム:単4電池2本使用
■レシーバー:単3電池3本使用
■全天候対応
■最大受信範囲200m(使用環境により大きく変化します。)

■魚群探知機

Deeper Pro+ スマートソナー GPS内臓

★ワイヤレスでキャストが可能なDeeper PRO+
●ポータブルGPS魚群探知機
●Wi-Fi接続で100mの通信距離、80mの水深に対応
●本体にGPSを搭載
●2つの周波数で広範囲にサーチ
●リアルタイムモード
●ボートモードでリアルタイムマッピング
●穴釣りモードでアイスフィッシング
【付属品】・本体、取り付けボルト2本、充電用USB、専用ケース、取扱説明書

あとがき

これだけ長寿で生息数の少ないアオウオ。再捕獲されることもあるはずです。にもかかわらず綺麗な個体が多いのはきっと、昔からアオウオ釣りを楽しむアオ師の方々が魚を丁寧に扱っているためでしょう。

ポイント選定の際に河畔を歩いて回りましたが、綺麗に草刈りがなされたアオ師の釣座にはどこもゴミひとつ落ちていませんでした。

いつまでもアオウオ釣りが楽しめるように、これからも先輩たちを見習い、魚と釣り場を大切にしていきたいものです。

今後も夢を追い続けます!

TSURI HACK連載企画として、引き続きぼくの怪魚釣行記をお届けします。

楽しみにしていただけたら嬉しいです!

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