スズメバチの脅威
スズメバチは、川や湖といった「木々に囲まれた場所に多い」というイメージを持たれている方は多いのではないでしょうか。
しかし、スズメバチの移動距離は1~5キロメートルにも及ぶと言われており、堤防や磯場でスズメバチと出会う危険性は否定できません。
「もしも」に備えておくと安心でしょう。
スズメバチに刺されると……
スズメバチの恐ろしい所は、刺された患部の痛みによるものだけではありません。
スズメバチの持つ毒が引き起こす、アナフィラキシーショックが曲者なのです。
皮膚の赤みや腫れ、かゆみに加えて、呼吸困難や血圧の低下、意識を失うなどの重篤な症状を引き起こします。
イギリスの研究では、刺されて15分前後で心停止に至るというデータが出ているようです。*
スズメバチは集団で襲ってくることも
スズメバチは警戒ホルモンを分泌することがあり、そのホルモンによって仲間が集まってくる場合があります。
スズメバチに遭遇したときは単体であっても、気付けば複数のスズメバチに囲まれてしまうといったケースも……。
決してスズメバチを攻撃してはいけません。
スズメバチの種類と巣を作る場所
釣り場やアウトドアフィールドの中には、スズメバチが巣を作りやすい場所が多く存在しています。
スズメバチの種類によって、その場所は異なるので、スズメバチの種類ごとにどのような場所に巣ができやすいのか、見ていきましょう。
モンスズメバチ
北海道や本州、四国、九州に広く分布する、女王蜂は3センチ、働き蜂は2.5センチほどの大きさのスズメバチ。
腹部の波を打つ黄色い模様が特徴で、主に夏に活動します。幹に出来る空洞や何かの隙間、天井裏などに巣を作ります。
夜になっても活動を続けるのは、日本ではモンスズメバチだけなのだとか……。
コガタスズメバチ
本州以南に生息する小型のスズメバチで、女王蜂は3センチ、働き蜂は2~2.5センチ程度の大きさ。
人里や都市部でも良く見られる種で、茂みの中や木の枝、屋根のひさしなどに巣を作ります。人間が攻撃を仕掛けない限り、襲ってくることは滅多にありません。
腹部の先端が黄色の縞模様をしており、オオスズメバチと似た見た目をしています。
ヒメスズメバチ
女王蜂は3.7センチ、働き蜂が2.2~3センチほどの大きさがあり、本州・四国・九州に分布しています。
腹部の末端が黒く、茶色がかっているのが特徴。木箱の中などの遮蔽空間に巣を作ります。スズメバチの中でも最もおとなしい性格で、刺傷被害例の最も少ない種と言われます。
キイロスズメバチ
北海道や本州、四国、九州から屋久島まで広く分布する小型のスズメバチで、女王でも2.5~3センチ弱、働き蜂は2~2.5センチ程度の大きさです。
体は小さいのですがかなり凶暴なため、巣に近付くのは大変危険。名前の通り全体的に黄色っぽい体色をしています。
3月の下旬頃~11月と活動期間が非常に長く、どんなところにも巣を作ります。
オオスズメバチ
北海道から屋久島・種子島までの広い範囲に分布する、世界最大で最強とも謳われるスズメバチ。
女王蜂は5センチにも達し、働き蜂でも3~4センチ程度の大きさがあり、攻撃性も非常に高い種といえます。巣から離れた場所にいる単体でも近付いた人間を攻撃してくる場合があり、強力な毒を多量に注入してくるため非常に危険です。
土の中や木の根元など低いところに巣を作ることが多いようです。
クロスズメバチ
北海道から九州までの広い地域に分布するスズメバチで、女王蜂でも1.5センチ、働き蜂が1.1センチ前後の小さな種です。
黒い体に白色の模様が入っています。多くの場合は巣を地中に作り、唯一冬の時期にも活動することもできるようです。
毒性は弱く、攻撃性も強くはないと言われています。長野や岐阜などでは食用とする文化も。
チャイロスズメバチ
主に本州以南で稀に見られるスズメバチで、女王蜂は3センチ程、働き蜂は2.4センチほどの大きさです。
腹部が全体的に黒く、頭部と胸部が褐色なのが特徴。攻撃性や防御力が高く、キイロスズメバチやモンスズメバチなどの巣を乗っ取るという特異な生活史を持っています。
女王蜂は1から巣作りをしないため、遅めの5~7月頃に活動を始めます。
スズメバチに刺された時は
身を低くしてその場から離れる
スズメバチは総じて動くものに反応する習性を持ち、攻撃のスピードも並外れています。
そのため、スズメバチを手で払ったり走って逃げたりするのは絶対に避けて下さい。身を屈め、ゆっくりとその場から離れましょう。
蜂は自分より下を見ることが不得意なため、できるだけ低く身を屈めると見失ってくれる可能性があります。
ポイズンリムーバーで毒抜きする
患部に針が残っていたら、毛抜きなどを使って針を抜いて下さい。
また、患部から毒を吸い出すためのポイズンリムーバーを活用することで症状が軽減できる場合があります。安いものなら500円程で手に入れることが出来るため、万が一に備えて常備しておくと安心でしょう。
患部を洗う、冷やす
蜂の毒は水に溶けやすいため、患部を良く洗うことが効果的です。
毒魚に刺された場合はお湯で患部の痛みを和らげますが、蜂に刺された場合は、冷水や氷などを使って患部を冷やしましょう。
また、刺されて1時間程度は呼吸困難や嘔吐、意識が朦朧とするなどの症状が出ていないか注意することが必要です。
病院に行く
呼吸困難や意識障害などのアナフィラキシー症状が起きている場合は、速やかに病院へ向かうか、救急車の要請を考慮する必要があります。
特に重篤な症状が表れていない場合でも、病院で診察を受けておけば患部の痛みや腫れを軽減できるでしょう。
ハチを刺激しないように
釣りの最中に蜂と遭遇する可能性は、決して低くないはずです。もしもに備えて準備しておけば、いざという時に役立ちます。
スズメバチに遭遇してしまったら、とにかく落ち着いて、相手を刺激せずにやりすごしましょう!