琵琶湖にしか生息しない『ゲンゴロウブナ』を求めて

ヘラブナって、じつは品種改良された魚であることをご存知でしょうか?
そしてもうひとつ意外なのが、じつは“美味しい魚”でもあるということ。
今回の記事では、ヘラブナの原種であるゲンゴロウブナを狙った釣行記と食レポをお届けします。
ヘラブナとは

今から約100年前、琵琶湖に生息していたゲンゴロウブナが大阪の北河内地方で養殖され始めました。
養殖中に稀に発生する体高が非常に高いゲンゴロウブナを選抜育種したものが、後にヘラブナと呼ばれる品種改良種「カワチブナ」です。
当初は食用のために始まった養殖ですが、釣りの対象魚として人気が高まり、全国各地に放流されました。
ゲンゴロウブナについて

ゲンゴロウブナは、世界で琵琶湖にだけ生息する固有種です。
つまり、琵琶湖以外に生息するヘラブナは、国内外来魚ということになります。
植物プランクトンを主食とし、主に琵琶湖の沖合に生息しているのが特徴です。
釣りの世界で広く知られるヘラブナと比べると、ゲンゴロウブナは体高がやや低く、顔が大きく見える印象があります。
ニゴロブナというフナもいます

琵琶湖にはゲンゴロウブナのほかに、ニゴロブナという固有亜種(※現状はキンブナの亜種扱い)とギンブナも生息しています。
ニゴロブナは、ゲンゴロウブナやギンブナと比べて体高が低いのが特徴で、主に動物プランクトンを食べていると考えられています。
▶︎鮒寿司の原材料

ちなみにニゴロブナは、古くから鮒寿司の原料として利用されてきた魚です。
山根
今回の釣行ではゲンゴロウブナを本命にしつつ、あわよくばニゴロブナも……という欲張りなモチベーションで、春の琵琶湖へ出掛けてきました!
乗っ込み真っ盛り!漁師さんも集まってます

琵琶湖に生息するフナの仲間たちは水産資源として今でも漁獲されている魚です。
浅場に産卵で集まっている時期ということもあり、投網を打つ人も多く見られました。
山根
湖魚を食べる文化が薄れゆく時代かと思いきや、まだまだフナを美味しく食べていらっしゃる方がいることに、ちょっと安心したりもしました。
ウェーダーを使って釣り場探し

もっと手軽な場所でも楽しめる琵琶湖のフナ釣りですが、今回は冒険心を持って、今まで入ったことのないポイントへ挑戦してみることに。
ウェーダーを履き、泥濘を突破しながら、重たいヘラ釣り道具を担ぎ込んでいきました。

普段は沖合に生息しているため狙って釣るのが難しいゲンゴロウブナですが、産卵期になると岸辺のヨシ帯へ大群で乗っこんできます。
まさにこの時期こそ、ゲンゴロウブナを狙って釣る絶好のタイミングなんです。
とはいえ、餌を打って魚を寄せる釣りなので、一度釣り座を構えるとルアー釣りのように気軽にランガンはできません。だからこそ、ポイント選びがとても重要になります。

漁業者の方と立ち話をしながら湖畔を歩き回り、釣り座に選んだのは水深わずか40cmの激浅ワンドです。
山根
外来種である水草に沢山の卵が産み付けられているのを見て、フナが集まっていると確信したので釣り座を決めました。
10尺の両グルテンでスタート

今回用意した餌は、グルテンと呼ばれるヘラブナ釣り用の練餌です。
竿は10尺(約3m)、道糸は1.5号、ハリスは1.2号を使用。
ハリスの段差は5cmに設定し、「上針トントン」の底釣り(湖底に練餌を置く釣り方)で狙っていきます。
マルキュー 野釣りグルテン
| 内容量 | 18g x 8パック |
|---|
湖流でウキが流される

一見すると淀んだ沼のようなワンドですが、仕掛けを振り込んでみると、ウキが斜めになったり流されたりするほど、しっかりとした流れがあります。
琵琶湖には「湖流」と呼ばれる流れがあり、条件が揃うと秒速30cm(時速約1km)ほどの強い流れが発生することもあるんです。
秒速30cmといえば、海釣りなら0.6ノットほど。
山根
船のタイラバにちょうど良いくらいで、フカセ釣りならウキがスルスルと流れていくような速度感でしょうか。
ゴミばかり……

湖底に置いた練餌が流れで動いてしまうせいもあり、開始から20分ほどは水草の破片や木の枝などのゴミばかり。
それでも野釣り好きな僕にとっては、「誰も釣りをしていない場所ならでは!」とポジティブに捉えながら、せっせと湖底を綺麗にしていきます。
ズボッとウキが入った!

作った餌の半分ほどを打った頃から、食いアタリを思わせるチクッとした良い反応が出始めました。
じっくり待ってからスパッと合わせると、強烈な引き込みが伝わってきます!
良型のゲンゴロウブナ

一枚目は45cmに迫る良型のゲンゴロウブナでした!
ダム湖産のセッパリ小顔なヘラブナもカッコいいですが、顔の大きな原種も素敵ですよね!
連チャンだー!

グルテン餌に魚たちが寄ってきたようで、2枚目もすぐにヒット。
この後、コイの襲来で仕掛けや釣り座がグシャグシャになる場面もありましたが……、フナが散ってしまうことはありませんでした。
ニゴロブナ登場!

3枚目として上がってきたのは、体高の低いフナ……ニゴロブナです!
キンブナの亜種ではありますが、素人目線だとキンブナよりも受け口っぽく見える気がします……。
山根
フナの世界も、イワナの世界同様にかなり沼が深いですよね。
次から次にヒット

良い日に当たったのか、コイの強烈な引きに悩まされながらも、一度寄ったフナが散ってしまうことはなく、とても楽しい1日を過ごすことができました。
こんな雄大な琵琶湖で、短竿を使ったフナ釣りが楽しめるなんて……。
「釣りはフナに始まり、フナに終わる」とも言いますが、僕の場合は“間にフナを挟む”ことになるのかもしれません。
特大サイズきたぞ

40cm超えが何枚か釣れていたので、「もしや……」と思って粘っていると――。
ついに49cmの巨ブナが釣れてくれました!
山根
練餌を使った釣りでの自己記録を更新。思わず声が出るほど嬉しい1匹となりました。
フナ料理に挑戦
泥抜きに5日

そんなこんなで、釣ったフナを自宅へ持ち帰ってきました。
バッカンで5日ほど飼育し、泥抜きと呼べるかは分かりませんが、水道水を使って毎日2回の全換水を実施。
山根
ちなみに、半日もすると部屋中が臭くてたまらないほど水が真っ白に汚れました……。
ゲオ臭というより、排せつ物が腐ったようなニオイです。
それでも5日目の朝には濁りがほとんど出なくなってきたので、「そろそろ食べ頃かな?」と判断しました。
血抜き

フナは意外と血の多い魚なので、しっかりと血抜きを行います。
……が、血抜きの際に大暴れ。血なまぐさい水が部屋中に飛び散り、拭き掃除がめちゃくちゃ大変でした。
早くも心が折れかけましたが、学生時代に食べた琵琶湖産フナ(種類不明)の甘煮がとても美味しかった記憶を信じて、そのまま調理を進めていきます。
下準備完了!

ニゴロブナは輪切りに、ゲンゴロウブナは三枚におろしてみました。
アラはゴボウ茶でさっと下茹でし、ヌメリや血などの汚れを落としていきます。
ここまで下処理をして感じたのは、以前ドブで捕まえたフナとはニオイの質がまったく違うこと。
フナ特有の香りはあるものの、いわゆるドブ臭さが皆無なんです。
山根
これはきっと美味いフナ料理が作れるはず……!
そんな期待を抱きながら、甘煮、ふな飯、ふなコクを作っていきます。
はたしてフナのお味は?
ふな飯

三枚におろしたフナの身を包丁でたたいてミンチ状にし、ごま油でしっかり炒めます。
そこへゴボウ、生姜、レンコン、ニンジンのみじん切りを加え、醤油・酒・砂糖で味付けしてみました。
これをご飯にかけて食べる料理が、「ふな飯」と呼ばれるものだそうですが……。

臭みは皆無。それどころか、めちゃくちゃ旨い!
良い意味で衝撃を受けました。たぶん2026年で一番驚いた出来事かもしれません。
フナやコイには「小骨が多くて食べにくい」という印象がありましたが、なるほど……。ミンチにしてしまえば、骨もほとんど気になりません。
ちなみに、右側の黄色いものはフナの卵。同じようにごま油で炒めて味付けしてみたのですが、これがまた食感も良くて美味!
山根
気づけば、ご飯をおかわりしていました。
ふなの甘煮

甘煮(うまに)は、コイやフナを醤油や砂糖、水あめなどで照りよく甘辛く煮絡めた、保存性の高い伝統料理です。
今回は臭み対策と煮崩れ防止を兼ねて、素焼きにしてから煮付けてみましたが、これも食べやすくて美味しかったですね!
ふなコク(フナの味噌汁)

ゴボウ茶で下処理したフナのアラと切り身を、2時間以上じっくり煮込んで出汁を取ります。
ドブ臭の強い淡水魚は、煮込む段階でニオイ成分が揮発し、「食べる前にギブアップ……」となるくらい強烈な悪臭が出ることもあります。
山根
ですが、琵琶湖産のフナはそれが皆無!
本当に、淡水魚は棲んでいる環境が大事なんだなと実感します。
頭が崩れるまでしっかり煮込んだら、骨やウロコなどを丁寧に濾し、改めて野菜とフナのミンチを投入。
最後に味噌で味を整えれば完成です!

フナの頭から大量のコラーゲンが溶け出し、ふなコクは自然なトロミのある仕上がりに。
「さすがに大丈夫だろう……」と思いつつも、少しビビりながら一口すすってみると——
なんて優しいコクと旨味。お世辞抜きで美味しいです。臭みなんてまったくありません。
身もミンチにしているので骨が気にならず、とても食べやすかったですね。
山根
ふなコクは初めて食べましたが、クセがなくあっさりしていながらも、身体の芯から温まる……。
そんな滋味深い汁物でした。
釣って良し食べて良し!最高な淡水魚

幼稚園の頃、祖父に連れられ、ご飯粒を餌に釣ったフナ——それが僕にとって初めて釣った魚でした。
中高生時代はヘラブナ釣りにどっぷりハマり、行動範囲が広がるにつれてフナ釣りからは少し遠ざかっていましたが、こうして久しぶりに向き合ってみると、やっぱり楽しいものですね。
今回は、釣りとしての面白さだけでなく、食材としてのフナの魅力も改めて実感できる釣行となりました。
皆さんも、水質の良い釣り場でフナが釣れた際は、ぜひフナ料理に挑戦してみてはいかがでしょうか。
撮影:山根央之
