スティーズ リミテッド SV TW
シリーズ特有のレーシーなフォルムに、“あの蠍座の主星”に勝るとも劣らない銀ピカボディ
バス釣りベイトリール界における「フラッグシップたるや」をすべて備えた、21スティーズ LTD SV TWが2020年末にフライング・デビューしました。
スペック
品番 | 自重(g) | ギア比 | 最大巻上長(cm) | 最大ドラグ力(kg) | ナイロン糸巻量(lb-m) | 本体価格(円) |
1000 | 160 | 6.3 | 67 | 5.0 | 14-45〜90 16-40〜80 | 70,000 |
1000L | 160 | 6.3 | 67 | 5.0 | 14-45〜90 16-40〜80 | 70,000 |
1000H | 160 | 7.1 | 75 | 5.0 | 14-45〜90 16-40〜80 | 70,000 |
1000HL | 160 | 7.1 | 75 | 5.0 | 14-45〜90 16-40〜80 | 70,000 |
DCブレーキのような色めいた技術特性を持たないにもかかわらず、定価ズバリ70,000円なり。
ミドルクラスが平気で2台買えてしまうという、アンリミテッドな価格設定ばかりに目が行きがちですが……
スティーズシリーズ内での位置付けは?
派生モデルの登場で、ますます充実するスティーズファミリー。写真はスティーズCT SV TW
スティーズシリーズには現在、SV TW、A TW、A TW HLC、CT SV TW、AIR TWと、5系統の派生モデルがあり、それぞれが得意分野で最高のパフォーマンスを発揮するようセッティングされています。
そして今回の主役、スティーズ LTD SV TWはと言うと、もちろんSV TWのアップデート版。カタログスペック上は、16スティーズSV TWと何ら違いがありません。
スティーズファミリーの長兄、16スティーズ SV TW(写真右)
軽量ロープロファイルのハードベイトスペシャル
従来のSV TW系統とは一体何が違うのか? 結論から先に言っておきましょう。
そもそも軽量&トラブルレスを一面に押し出した“操作系スペシャル”、とくにワーミング向けな印象のSV TW系統に対して、リミテッドはズバリ、“操作系ハードベイトスペシャル”です。
何がそうさせるのか? これは先ほど言った通り、数字に現れない部分の影響が大きいので、気になる人は当記事を隅々まで読み尽くしてください!
インプレを読む上でのおことわり
高額なリールに「1台で何でもこなせる器用さ」を求める人がいるのも当然ですが、筆者はリールを含むすべての釣り道具に「特定の目的を完璧にこなせること」を期待しています。
そのため、「このリールを選択する必然性があるのか?」、「他のリールを押しのけてまで使用する排他性があるのか?」という2点を重要視してインプレしていきます。
スティーズリミテッドの魅力①:次元の違う静粛性
巻きに真価を発揮する、ハイパードライブデザイン
ラインを張っている時間の長いムービング系の釣りでは、手元に伝わるノイズが大きいと集中して釣りをすることができませんよね。これまでのスティーズとの違いが、もっとも色濃く現れているのが静粛性。
名称だけが大袈裟で大した意味を成さない技術特性が多い中、ハイパードライブデザインの恩恵は、リールを手に取った瞬間実感できます。
「今までのリールは何だったのか?」極めてノイズレスなギア周り
ピニオンギアを2点保持する「ハイパーダブルサポート」、歯面の接触面積を最適化した「ハイパードライブデジギア」……駆動系を支えている2つの技術特性ですが、細かい進化についてはわかりません。
ともかく、ダイワの2021年新製品は、駆動系の雑味のないしっとり感、カッチリ感のレベルが上がっていて、これは既に多くの人が体感していることだと思います。
ちなみにこの「ノイズの少なさ」。本体重量を重くしたり、ドライブギア素材を真鍮にしたりと、もっと乱暴なやり方ではグリスをベタベタに塗ったりすることでも実現できます。しかし、すべて所詮はまやかし。
筆者はスティーズLTD SV TWと21ジリオンSV TWをどちらも2020年12月に購入し、ドライ状態(グリスを洗い流した状態)で使用し続けていますが、しっとりヌメヌメが持続しています。
スティーズリミテッドの魅力②:ホンモノの軽量&堅牢マシン
一般的には反対のイメージを持たれがちですが、カバー撃ちなどのゴリゴリにヘビーな釣り以上の負荷がリールを襲う巻き物という釣り。
それもそのはずで、投げては巻きを高負荷の状態で繰り返すわけですから、リールの回転系に大きなダメージを与えます。
軽くて強い。矛盾の克服こそがフラッグシップの証
従来のスティーズには堅牢性を重視した、スティーズA TWという派生モデルが存在し、これが今日まで巻き物フラッグシップの座に君臨していました。
けれどもタフになればなるほど、自重が増すのはもはや常識。スティーズA TWも決して重くはありませんが、190gもあります。
一方で軽快な味付けのされているスティーズSV TWは、良くも悪くも特有のチャカチャカした感じがあり、剛性感にイマイチ不安があります。
スティーズリミテッドは上述の通りギア周りそのものが強化されただけでなく、高負荷時のボディの歪みを抑え、駆動ロスを軽減するハイパーアームドハウジングの採用でカッチカチ。
操作系ムービングルアーに「軽い」は正義
たとえばジャークベイトやビッグベイトは、操作がキモとなるムービングベイトの代表
「リールに重量があった方が巻きが安定する」という人がいます。
たしかに分からなくもないのですが、筆者は「巻き物向けのスペックを追求して開発した結果、重くせざるを得なかったのでは?」とも思っています。
仮にそうでなくとも、近年流行しているギルベイトやi字系ハードベイトなど、ロッドワークを要する操作系のハードベイティングでは、タックルは軽いに越したことがありません。
スティーズリミテッドSV TWは、そんなチョコマカとルアーを操る釣りにぴったりの軽量ベイトリールです。
スティーズリミテッドの魅力③:飛距離と制動性を両立
巻き物に真価を発揮
ムービング系ルアーは基本的に、横方向にアクションさせることでバスを誘います。ということは必然的に、“飛べば飛ぶだけ有利”という状況が少なからずあると言うことです。
たとえばクランクベイトなら、狙いの潜航深度に到達させるための助走を含めた飛距離が必要ですが、通したいスポットとの位置関係によっては、ギリギリ届かないということにしばしば陥ります。
2段階で効くから、薄くブレーキを残せるSV BOOST
SV BOOSTスプールは標準搭載。もちろん従来のスプールとも互換性あり
このSV BOOSTスプール。「後半の伸びがいい」とか「スコンと飛んでいく」とか、とても抽象的に語られがちなのですが、「後半のブレーキの過不足をどちらも補ってくれるから飛ぶスプール」と考えて間違いありません。
SV BOOSTスプールは、インダクトローターを2段階稼働とすることで、高回転時にはスプールのオーバーランを防ぐための強力なブレーキを、低回転時にはルアーの姿勢を制御する程度に抑えたブレーキをそれぞれかけられるようにした新機構スプールです。
まとめ
軽量かつ堅牢。これらはすべてのベイトリールに求められる性能ではありますが、それぞれがトレードオフの概念で結びついているため、いずれも満たすことは困難です。
あるリールは巻き感を追求するあまり重く、あるリールは軽快さを追求するあまりタフさに欠ける。その結果、「どちらかと言えば◯◯に向いている」という妥協をせざるを得ないのが現実です。
しかしスティーズLTD SV TWは、「操作系の巻き物にこれ以上フィットするリールは現状ない」と言い切れる仕上がりになっています。
ダイワ スティーズリミテッド SV TW
ライタープロフィール
MONSTER
大阪府大阪市在住。インテリバサーを志す、グランダー武蔵世代。関西を舞台に、「考えるバス釣り」を楽しむ理論派ブログ戦士。勢いあまって、机の上で釣りを終えることがほとんど。ボート、おかっぱり、どっちも好きです。バス釣りブログ「BassGo!」の管理者。