世界最大級のウツボ『ドクウツボ』について
ウツボの種類

釣り人にとってウツボは噛みついて来たり、仕掛けをグチャグチャにしたりするので嫌われ者です。
ですが、世界には180種以上ものウツボがいて、それぞれに模様や大きさ、生態や珍しさが異なっていて、生き物好きには意外と人気のある魚なんです!
かくいう、怪魚ハンターの僕もウツボの仲間は大好きです。
世界最大級のウツボ

今回の記事の主人公である『ドクウツボ』はウツボの仲間で最大級! 全長2.5m、体重30kg前後まで成長するといわれています。
英語名はGiant moray(巨大ウツボの意味)です。Giantってつく生き物は良いですね!
鰓孔(えらあな)の周囲が黒くなっていることがドクウツボの特徴です。
ドクウツボの生息域

ドクウツボはインドおよび太平洋の温暖な海域に広く生息していて、日本では高知県以南、とくに沖縄県に多く生息しています。
サンゴ礁や岩礁帯の浅い水深を好み、その貪欲な食性から生態系の上位に君臨しています。
ところにより猛毒を持つことが名前の由来
ドクウツボの牙には毒はない

お察しの通りドクウツボは猛毒を持つ魚ですが、ウミヘビのように鋭い牙で噛まれたことによる裂傷によって毒が注入されることはありません。
とはいえ、このサイズのウツボに噛まれると大怪我をする場合がありますので、生き物の扱いに慣れていない方はくれぐれもご注意ください。
もし、釣れてしまった場合はハリスを切って逃がしてあげましょう。
ドクウツボが持つのはシガテラ毒

ドクウツボが持つ猛毒は、神経伝達に異常をきたす「シガテラ毒」です。シガテラ毒は主に内臓や筋肉に蓄積されています。
シガテラ毒の保有は生物濃縮がおもな原因であるため、生きた物から死んだ物まで動物性の餌をなんでも食べるドクウツボは高濃度でシガテラ毒を持っている可能性があります。
ドクウツボの他にも、バラハタやオニカマス、アカマダラハタなど400種以上の魚でシガテラ毒が確認されています。
ドクウツボは食用として利用されることもあるようですが……

与那国島では、シガテラ毒を持っていないドクウツボが多いようですが、リスクがあるものをわざわざ食べる必要もありません。
シガテラ毒は死亡例こそ極めて稀ですが、吐き気や下痢、不整脈や温度間隔異常、など様々な中毒症状をきたすため注意しましょう。
ドクウツボを狙って与那国島へ
僕にとって憧れの魚『ドクウツボ』

そんな巨大で猛毒を持つドクウツボ。特徴的な生き物が大好きな僕にとって長年憧れの魚でした。
今回、ようやくドクウツボと戦う機会ができました! その場所は、日本最西端の島与那国島です!
巨大ウツボと戦うために用意した釣り具

最大で30kgといわれると中途半端なタックルでは太刀打ちできないと思い、時間をかけてクエ釣り用の釣り具を一式揃えました。
貴重なアタリは全部取る! そんな覚悟のタックルです。
ウツボにそこまで本気になるか? と言われるかもしれませんが、僕にとっては憧れの魚なので……ガチです!
■ドクウツボに挑むタックル
- 竿:4.5mのクエ竿(80号くらい)
- リール:両軸リール9/0
- ライン:ナイロン100号100m
- 瀬ズレワイヤー:7本撚り#30
- ハリス:49本撚り#40
- ハリ:クエ針30号
冬の与那国島は天気が悪い

準備だけは万全でしたが、出鼻をくじくかのように天候激荒れです。
「飛行機が飛んだだけマシだよー」と島民の方に言われ、この地に降り立てただけ幸運と前向きになりますが……。
これではウツボの餌を狙う小物釣りも満足にできそうにありません。
カジキの切り身でドクウツボを狙う
日本最西端の島、与那国島でドクウツボ釣り

与那国島といえば、カジキ釣りやハンマーヘッドシャークとのダイビングが有名ですね。
情報収集を兼ねて、久部良港にある漁協を尋ねてみると一日前に釣りあげられたというカジキの解体が行われていました。
初めて吊るされた状態のカジキを見て「スゲースゲー」って言っていたら、漁協の方が「一緒に写真撮ってやるよ!」と言ってくださりました。
自分で釣った魚でもないのに満面の笑みでパシャリ(笑)やっぱカジキってカッコいいなー!
ドクウツボに最適?な餌“カジキの血合い”をゲット

漁協の方に大きなウツボを釣ってみたいと伝えると、なんとカジキの血合いを分けて下さりました!
なんでも、筋が多く餌取りに強くてウツボ釣りに最適なんだとか!
とりあえず風の影響が少ない釣り場へ!

ご親切に強い北風を避けることができる釣り場も教えていただきました。
ダイビングの拠点となっている港ですが、深夜に堤防の先端なら釣りをしても問題ないとのことでした。

20cm程あるカジキの血合いをクエ針にセット完了!
堤防の先端には大物釣りの痕跡がたくさんあり、夜になるのを待っていよいよドクウツボ釣り開始です!
嵐の中で人生初のドクウツボを釣った
ドクウツボがヒット!

風速15mを超える嵐を避けるために車で待機を余儀なくされます。
台湾から流れてくるラジオを聴いていると、ケミ蛍が付いた竿先がギューっと海面に舞い込んでいきます!
慌てて車から降り、一気にリールを巻き上げます!
クエ竿が強すぎて想像より軽いけど、この引きは間違いなくウツボです。
ドクウツボってめちゃ綺麗な生き物だな

堤防に引き上げたウツボを見るとコレは予想外! 頭が黄色く、模様がハッキリとしていてメチャ綺麗!
コレです!この模様が僕が憧れていたドクウツボです。あくまでも個人的な意見ですが、めっちゃカッコいい……そして美人!
食べてみたい気持ちを押し殺してリリース

ウツボの仲間はとても美味しい魚ですし、頭骨標本にしてもカッコいいのでキープしたい。という強い欲求に駆られますが。
万が一にも遠征先で体調を崩す訳にはいきませんので、元気なうちにリリースさせていただきました。
▼魚の頭骨標本の作り方はコチラの記事でご紹介
巨大生物はやっぱり魅力的だ!
磯でサイズアップを狙います

翌日は天候が回復したので磯にやってきました!
投げサビキでウツボ用の餌を狙うと、ウメイロやイスズミ、ブダイの仲間が釣れてきます。
ブダイやイスズミを餌に待つ事8時間……

豪快にイチモンジブダイを磯際に投入します。
ときどき、カジキの血合いやイスズミに餌を変えながらひたすら大きなアタリを待ちます。
最後の夕日に照らされたクエ竿が舞い込んだ

日本で最後の夕暮れを眺めていると、クエ竿がゆっくり引き込まれていきます。
待ちすぎると根に潜られると思い、一気に巻き上げます!
釣られていることに気づいていないのか、海面まですんなり上がってきます。
140cm越えのドクウツボ来たぞ

道糸を取ろうとすると、ようやく危機に気づいたようで大暴れ開始です!
体重をかけてガンガン首を振り、針を外そうとしてきます。1匹目より一回り大きそう!絶対獲りたい!
クエ針を信じて、必死抵抗するドクウツボが落ち着くのを待ってランディングです。
まだまだ子供かもしれないけど

2m以上に成長するドクウツボにとって1.4mはまだまだ小さいかもしれませんが、僕にとっては大満足な出会いとなりました。
口の大きさといい、胴体の太さといい、感無量です! 30cmくらいのイスズミなんて丸呑みですね!
僕のウツボ釣りはまだまだ続く

ウツボの仲間はまだまだたくさんいます。次はどんなウツボを狙いに行こうかなー!
皆に嫌われるウツボですが、カッコいい魚ですし種類によってはとても綺麗です。
どんな魚も想いを込めて狙ってみると楽しいですよ!
▼今回のドクウツボ釣行はTSURI HACK TVでも公開中
▼怪魚ハンター山根流の普通のウツボ釣りはコチラの記事でご紹介!
筆者紹介

山根央之(やまねひろゆき)
初めての1匹との出会いに最も価値を置き、世界中何処へでも行く怪魚ハンター山根ブラザーズの兄。
餌・ルアー問わず、もはや釣りに限らず。ガサガサや漁業者と協力してまでも、まだ見ぬ生き物を追い求め、日々水辺に立っている。
テレビ東京・緊急SOS池の水全部抜くやNHK・ダーウィンが来た、TBS・VSリアルガチ危険生物などに出演したり、魚類生態調査に参加したりと幅広く活躍する。
どえらい魚を獲った!もはや釣りを越えて!色んな人と繋がって!特大天然メコンオオナマズ! 240 cm175 kg 捕獲です!!ホント色んな人に助けられてこの魚と出会うことができました!メコンオオナマズに関わる全ての人に感謝でいっぱいです!! pic.twitter.com/JHWpNdLAvX
— 山根ブラザーズ(兄)@kimi (@chillkimi) September 16, 2017