日本各地で生息地を拡大するブラウントラウト
ブラウントラウト(Salmo trutta)はその名の通り、茶色(brown)がかった体色が特徴のマス(trout)の仲間です。
一生を河川や湖沼といった淡水域で過ごすものもいれば、サケのように海に下るものも一定数存在し、シートラウトと呼ばれます。
世界の侵略的外来種ワースト100
北米出身と思われがちなブラウントラウトですが、本来はヨーロッパおよび西アジア原産のマス類です。
食味の良さや釣り味の良さから、今では南極を除く5大陸全てに生息し利用されています。
一方で、成長すると強い魚食性を示し、各国において本来の生態系に悪影響を与えているとされています。
日本でも要注意外来生物なんです
日本の侵略的外来種ワースト100にも選定され、外来生物法において要注意外来生物として扱われています。
つまり、現在進行形で定着域拡大や生態系への悪影響が懸念されている生き物ということですね。
既に、多くの河川に定着していまっている北海道では、北海道内水面漁業調整規則により道内において移植を禁止し一部の流域では、在来生物に与える影響についての調査や試験的な駆除も行われています。
産業管理外来種としての顔
一方で、ニジマスやレイクトラウトと合わせて、環境省および農林水産省はブラウントラウトを産業管理外来種に選定しています。
要するに、「入れない、捨てない、拡げない」といった外来種被害予防三原則に基づき適切に管理した上で引き続き商業利用しよう。と言うことです。
以上の方針から、今のところ既に定着している水域では、ブラウントラウトを釣って楽しんでも良いということになります。
もちろん、外来種被害予防三原則は厳守しましょう。
用水路を巡る旅へ出発だ!
まさに清流水路
僕の住む地域では考えられない透明度に、まずはビックリです!
まずは釣り竿を車において魚影を探してみることに。
何本も水路を巡るも……魚影を見ることはできず
ナマズ好きがゆえに、僕が探すとこんな水路ばかりが目についてしまいます……。
サイトで魚が見つからないので、取り合えずルアーを投げてみることに。
ブラウンはいれば食ってくる!(多分)
以前、アメリカのクリークでブラウントラウトを狙った際に、ブルックトラウトやレインボートラウトに比べ、獰猛でねちっこいイメージがありました。
いれば食う。チェイスすれば掛かるまでアタックしてくれる!
そんな非常に楽観的な意識では釣れるわけも無く。苦戦を強いられることに……。
思い切って地域を変えてみる!
ブラウントラウトに関する報告書に記載された地域に来てみるものの、2月中旬という季節柄なのか水が抜かれてしまっています。
適当に巡ればすぐ釣れるだろう。きっと想像以上に増えているだろう。
考えが甘かったと反省してみるとともに、まだブラウントラウトの拡散は食い止めることができそうだなと感じました。
とは言え、坊主では帰れません!
釣り人で賑わう本流域
早々に水路のブラウンが釣れたら本流で気持ちよく釣りをしようと入漁券まで購入していたのに……。
本流は出直しです。日が傾いてきましたが諦めず水路のブラウントラウトを探していきます。
釣れません!いません!幻の魚です!
暗いうちから探し始め、地域も変え、どんだけ運転してんだよ! って1人で突っ込みをいれる始末です。
そんな中、やっと魚影が!
見つけたっ!と、思いきや。
釣れない時間が長い程、ドキドキ度合いは膨らんでいくものですよね。
こんなにコイにドキドキさせられたことは無いですね(笑)
そう。残念ながらコイでした。
ブラウントラウトと間違えてルアーを投げてから気づいたということは内緒にしておいてください(笑)
雨まで降りだす始末
日暮れを迎え、おまけにシトシト雨まで降ってきました。
そうだ、冒頭で紹介するのを忘れていました!
実は世界を見渡すと、ブラウントラウトは夜行性を示す時期や地域があることが知られています。
このままストイックな夜釣りへ突入します。釣るまで帰りません!!
やっと釣れた!水路のブラウントラウト!
もはや執念です。
ルアーを投げては歩く、長距離運転も苦にせず3つ目の地域。
まさにラン&ガンのお手本とも言うべきハイペースで本日30か所目くらいの淀んだ水路でようやく何かがヒット!!
想像以上の引きの強さ、PE1号+フロロ16lbで良かったと心底思う程です。
思わず雄叫びを上げる
ジャンプやヘッドシェイクといった豪快な引きをなんとか往なして無事ネットイン。
思ったより大きそうです。こんなブラウントラウトがほぼ止水状態の水路にいるなんて……。
それも、ヒレに欠損は無く美しい魚体です。
こんなに嬉しいとは(笑)
なかなか自撮りでこんな笑顔になりませんよね(笑)
全然手がかりが掴めなかっただけに、本当に嬉しかったんです。
はたして水路のブラウントラウトは美味しいのか
即、帰宅しました(笑)
この時間帯、残りの体力もまだ充分ある。一気に調理までできるぜ!
そう判断し帰路につきました。では早速、捌いていきましょう!
サーモンピンクを期待するも
ぬめりはブラウンなので多いですが、変な臭みはありません。
小さな期待に胸を膨らませ、すっと背中に包丁を入れ身の色を確認してみるも……。
まるでホッチャレのような身
以前、刺身用に養殖されたブラウントラウトを購入した際にとても美しいサーモンピンクに感動したことがあります。もちろん、最上級に美味しい身質と甘みでした。
それをちょっぴり期待したのですが……。
やっぱり養殖技術って凄いんですね。改めて実感しました。
こう見ると美味しそうでしょ?
まずは、魚の実力を知るために塩焼きにしてみました。
バター焼きは薄口しょうゆでほんのり香りづけ。
きっと臭みがあるんだろうなー
チーズと味噌で味付けしてみました! これなら臭みも紛れるでしょう。
それでは、水路のブラウントラウトを実食してみましょう!
香り良し!
この時点では、不味いマス特有の臭みがくるだろうと身構えていますが……。
予想外だなっ!
臭みは全くありません!
かと言って、養殖ブラウントラウトのような感動的な旨味はありませんが。
でも、充分美味しいです! 2切498円とかでスーパーで売ってたら買うレベルです。
外来生物問題を考慮した上で、トラウト類が商業利用されていない今回のような水路だったら迷わず持ち帰りますね!
これ以上、生息域が拡大しないことを願います
ブラウントラウトを今回狙ってみて楽しかったですし、達成感もありました。
入漁券も念のため購入しましたし、その際、地元の釣り具屋でルアーも買いました。道の駅では家族に特産物等のお土産も購入しました。
小さな経済効果でしょうが貢献したことでしょう。ただ、心の底でどこか違和感を感じざるを得ません。
産業管理外来種と定められている間は、ひとまず楽しめることでしょう。
特定外来生物に選定される可能性や必要性が少なからずある生き物だと個人的には思います。
今後も生産的にブラウントラウトを利用するならば入れない、捨てない、拡げないを守りましょう。
筆者紹介
山根 kimi ヒロユキ
“初めての1匹”を求めて、世界中どこへでも行く怪魚ハンター「山根ブラザーズ」の兄。釣りに留まらず、ガサガサや漁業者と協力してまでも、まだ見ぬ生き物を追い求め、日々水辺に立っている。