銀鱗が美しい!ヒラスズキという魚について
荒磯の王者とも呼ばれているヒラスズキは日本沿岸部に生息し、釣りの好ターゲットとして人気の魚。
一方で、生態やライフサイクルなどは学術的に解明されていない部分も多く、釣り人にとって身近でありながら謎な部分も多くあります。
ヒラスズキの生態や釣り方と美味しい食べ方など、ヒラスズキガチ勢の怪魚ハンターがまるっと解説していきます!
生態と生息域
ヒラスズキは外洋に面した地域の岩礁帯を好む魚で、房総半島や伊豆半島、紀伊半島、四国太平洋側や九州地方が釣り場として有名です。
釣り人から熱い視線が注がれるヒラスズキですが、水産資源としての認知度は低く、生態に関する研究はほとんどなされていません。
ヒラスズキは、荒れる大自然の中で1匹を釣り上げる難易度がとても高い釣りであることから、“いつか挑戦したい憧れの釣りのひとつ”といわれる対象魚です。
外見的な特徴
日本には、シーバスという呼び名でお馴染みの『スズキ』と中国を原産とする外来種である『タイリクスズキ』、そして今回の記事で紹介する『ヒラスズキ』の3種類が生息しています。
ヒラスズキの見た目の特徴として、他の2種と比べて銀白色で黒斑を持たない個体が多数を占めます。
また、他の2種と比べて尾柄部が太く、尾びれの切れ込みが浅いのも特徴です。
マルスズキとは「体形と目の大きさ」で見分けられる
マルスズキとも呼ばれるスズキに比べて、ヒラスズキが決定的に違うのは体形が平たく、クリっとした大きな目であること。
またスズキの下顎にはウロコが無いのに対し、ヒラスズキの下顎にはウロコがあることで見分けられます。
ちなみに、ヒラスズキの最大サイズは90cm前後で、1mを超える個体はそう滅多に上がりません。
ヒラスズキの釣り方
ヒラスズキを釣るには、サラシが出ている荒々しい磯場がメインになる事が多々あります。
釣り上げるためのタックルやルアーはもちろん、そういった釣り場に入るうえで大事なポイントを解説していきましょう。
一番大事なのは「安全装備」を揃えること
命を守るライフジャケット
磯ヒラゲームを始めるなら、タックルよりも先にライフジャケットやウェア、シューズといった命を守る道具から揃えましょう。
自動膨張式のライフジャケットは岩だらけで波も荒い磯では救命具の役割を果たせないので、必ず浮力材の入った固定式のものが必要です。
収納スペースが多いゲームベストでも良いですが、足下の視野を確保しやすく動きやすいロックショアベストの方が適しています。
シマノ ロックショアベスト
キャストのしやすさと機動性を追求したシマノのロックショアベスト。
全面に2つのネオプレン素材で伸縮性に優れたポケットがあるので、ルアーを収納することも可能です。
浮力 | 7.5kg |
---|---|
カラー | ブラック/グレー |
サイズ | フリー |
裾囲最大 | 145cm |
シューズは釣行場所に合ったソールを選ぼう
波にさらされ、濡れているうえコケが生えていることもある磯はとても滑りやすいため、靴選びも重要。
中でも靴底の素材や構造は、釣行場所に合わせてしっかり選んでください。
靴底の種類としては、ラジアル、フェルト、ラジアルスパイク、フェルトスパイクの4種類が一般的。
磯だけでなく、磯にアプローチする山道や崖などを歩くことも多いので、自分が釣行するエリアや磯の特性をしっかり把握しましょう。
■靴底(ソール)の選び方
- ●ラジアルソール:乾いた岩場、山道、ヌメリの少ない磯
- ●フェルトソール:濡れた岩場、ヌメリの多い磯、ゴロタ浜
- ●ラジアルスパイクソール:山道、斜度のある場所、目の粗い岩場
- ●フェルトスパイクソール:濡れた岩場、ヌメリの多い磯、ヌメリが厚い磯、ゴロタ浜
RBB フェルトスパイクシューズTG
タングステンピンを採用したフェルトスパイクタイプのシューズ。
シューズ内の水を素早く排水するドレインソールがGOOD。
サイズ | M(25.5cm) L(26.5cm) LL(27.5cm) 3L(28.5cm) |
---|---|
カラー | ブラック |
▼磯ヒラ用靴選びのキホンはコチラの記事で!
レインジャケット&防水リュックも必須
磯での転倒は思わぬ怪我に繋がるため、長袖長ズボンを着用し、波を被ることもあるので上着はゴアテックスなど透湿防水素材のレインウェアが必要です。
バッグは両手が空くバックパックタイプで、防水性の高い生地を使ったものがおすすめ。
また、真冬でも磯場を歩き回るヒラスズキ釣りでは厚着は適さず、必要に応じてウェットスーツやアユ用タイツを着用すると、水濡れを気にせず快適に釣りができます。
ダイワ ゴアテックス インフィニアム™ プロダクト レインスーツ DR-1922
動きやすく軽い着心地のゴアテックスレインスーツです。
汗の水蒸気を逃してムレやベタつきを軽減し、雨天時や長時間着用しても快適な着心地が持続します。
サイズ | S~2XL |
---|
ヒラスズキ狙いで必要なタックル
ロッドは長め&強めの専用モデルがベスト
強風が吹き荒れる中、足場の高い磯からヒラスズキを狙うには、張りと長さがあるヒラスズキ専用竿の使用が断然有利。
また、崖を上り下りしたり、藪漕ぎをしたり、泳いだり、とにかくハードで危険を伴う移動中は両手を空けることが大事。バッグに竿を仕舞えるパックロッドだとより安全です。
具体的には以下の通り。
■磯ヒラゲームに求められるロッド性能
- ●風速10m/sを超える向かい風の中でも風を切れる
- ●狙いを定めたサラシや岩の陰に向かって僅か20g前後のルアーを打ち込める
- ●掛かったヒラスズキを波に乗せてズリ上げられる強いロッド
長さとしては、危険を回避するために数歩下がって釣りをしたり、足場の高い場所からのキャストが多いため、10ft後半から11ft前半のものが主流です。
トランスセンデンス エンピナード91S+
1本の竿でありながら、9ft1inと10ft8inの2通りの長さで使用できるヒラスズキ専用の可変式マルチピースロッド。
ポイントまでのエントリーに藪漕ぎや崖下り、時にはスイムをするヒラスズキ釣りではリュックに仕舞える60cmという仕舞寸法の短い竿が安全面でとても重宝されます。
全長 | 9ft1in/10ft8in(可変式ロッド) |
---|---|
自重 | 195g(9ft1in)/240g(10ft8in) |
仕舞寸法 | 60cm |
ルアーウェイト | 12-56g |
ライン | PE1.2~3号 |
リールはスピニングの4000番にPE2号を
ラインはPE2号にフロロの30~40lbを3m程結び、リールはラインを200m程度巻ける4000番のスピニングリールがオススメです。
潮を被ることは勿論のこと、風に舞う砂ぼこりを浴びることも多く、転倒して破損するリスクもあるため、リールも竿も消耗品と考えて釣行しましょう。
ヒラスズキ狙いにオススメのルアー
基本は10~14cmのシンキングミノー
荒れた磯で餌を狙うヒラスズキは、マルスズキほど餌を選んで捕食することが無いため、ルアーの種類やカラーを多く持ち歩く必要はありません。
中でもベーシックなのが、15cm程度までのシンキングミノー。表層と中層の中間を泳がせられるので、ポイントを探るのに適しています。
リップ付きで荒れたサラシの中でも泳がせやすく、飛距離も出しやすいので必ず持っておきたいルアーです。
メガバス X-80マグナム
投げて巻くという単純な動作だけでしっかりとヒラスズキをキャッチできるルアー。
水噛みの良いリップが足場の高い磯や荒れる海でもしっかりルアーを潜行させられるため、磯ヒラ初心者にオススメなミノーですよ。
全長 | 11.5cm |
---|---|
自重 | 18g |
タイプ | シンキング |
喰わせに強いリップレスミノー
シンキングミノーよりもレンジを上げたい時には、10~14cm程度のリップレスミノーが活躍します。
ただ巻きで反応が悪い場合は、潮の流れや風を読みながらサラシの中を漂わせるように流すのも有効です。
ima サスケ裂波120
ヒラスズキ釣りのド定番ルアーとも言えるフローティングタイプのリップレスミノー。
X-80と同様に、ただ巻きするだけでヒラスズキが釣れるルアーですので、磯ヒラ初心者の方にオススメです。
全長 | 12.0cm |
---|---|
自重 | 17g |
タイプ | フローティング |
トップウォーターや飛距離が出るルアーもあると万全
タックルボックスに余裕があれば、状況に応じて使用するトップウォータープラグや、飛距離が出るバイブレーション、そして青物のナブラが出た時に備えてメタルジグも入れておくと良いでしょう。
ヒラスズキはトップにも出やすい魚ですが、ミスバイトも多くなりがち。
トップウォーターの場合は直線的なアクションを心掛けると良いでしょう。
タックルハウス リップルポッパー 115
こちらもただ巻きだけで泳がせることのできる磯ヒラ初心者向けのトップウォータープラグです。
ペンシルベイトよりも左右への動きが少なく、一定の速度で動くルアーなのでトップウォータープラグとしてはミスバイトが少ないルアーですよ。
全長 | 11.5cm |
---|---|
自重 | 21g |
タイプ | フローティング |
ima koume 90
潮が早い場所や引き波の中でも動きが破綻しにくいバイブレーションがヒラスズキ釣りに適しています。
コウメ90やコウメ90ヘビーは、タイトなアクションでヒラスズキ釣りにも効果的なバイブレーション。
バイブレーションの出番はあくまでもミノーやリップレスミノーの後……キャスト後1~3秒ほど沈めてからロッドにアクションが伝わるギリギリの遅さでリールを巻きましょう。
全長 | 9.0cm |
---|---|
自重 | 20g |
最終手段はジグヘッド+ワーム!
サラシが充分に出ていなかったり、先行者が打った後でルアーに反応がないなんて時は、ソフトベイトが状況を打破してくれることがあります。
基本アクションはただ巻きでOK。ジグヘッドは5~10g程度の軽めが食い渋りに効果的です。
ヒラスズキが釣れるシーズンとポイント
秋から春がベストシーズン
ヒラスズキ釣りのシーズンは秋から初夏にかけてと長く、中でも冬の産卵が終わる3月ごろから初夏にかけては、数が狙えてヒラスズキ釣りを始めやすい時期と言えるでしょう。
普通では「釣りなんてできないだろう。」と感じるウネリや、強風が当たる磯こそがヒラスズキの釣り場となり、そんな環境で釣るヒラスズキを磯ヒラと呼びます。
逆に、ベタ凪の天候だとヒラスズキは釣れにくいということも覚えておきましょう。
釣り場はサラシが出る磯や夜の河口エリア
日中は岩礁帯に身を寄せているヒラスズキですが、夜になるとベイトを求めてサーフや河川の河口部などに来遊してきます。
サーフで釣るヒラスズキを『砂ヒラ』、ナイトゲームで釣るヒラスズキを『夜ヒラ』なんて呼んだりします。
荒れ狂う磯でヒラスズキを狙うのは少し怖い……なんて方は、ヒラスズキのナイトゲームにトライしてみると良いでしょう。
予報を見て「サラシ」が出る日を狙え!
風や波によって磯に発生する白い泡を「サラシ」と呼び、ヒラスズキはサラシが発生すると活性が上がり、積極的にルアーに反応します。
そのため、磯ヒラを楽しむアングラーは毎日天気予報をチェックしながら釣行日を決めるのです。
もちろん、海が荒れすぎても危険ですし、地域やポイントによって最適な天候は異なります。
初めての場合はヒラスズキ釣りに慣れた人と一緒に釣行して、自分が通うエリアの海と天気に詳しくなるように努力しましょう。
ヒラスズキを釣るための大事なテクニック
まずは「立ち位置」の見極めから始めよう
磯に降り立ったら、いきなりルアーを投げるのではなく、まずは波がどこまで這い上がってきているか5分から10分間ジッと観察しましょう。
荒れた海では長い周期で突然大きなウネリが入ってくることがあるため、絶対に波が上がってこない場所を見極めてからキャストするように心がけてください。
また、この時にどこでランディングするかもイメージしておくとヒットした時に慌てないで済みますよ。
5投して反応がなければランガン!
サラシが出ているような状況の海面は複雑で強い流れが渦巻いており、ルアーの動きが破綻しがちです。
海面が平らなサラシがあれば好条件、無ければ波のタイミングを見計らい、海面が凪ぐ一瞬を狙いましょう。
また、磯ヒラゲームは一か所で粘ることよりも、ひとつのサラシを数投で見切り、ランガンしていくと釣果が出しやすくなります。
ランディングは波と魚の動きを見つつ慎重に
魚が掛かったら、ヒットさせた立ち位置からランディングできる場所まで移動します。この時に波とヒラスズキの動きを見て、無理なくランディングする場所まで移動するのがポイント。
弱らせたヒラスズキを海面に浮かべた状態にし、押し寄せる波とタイミングを合わせて、一気に磯の上にズリ上げてランディングしましょう。
ヒラスズキの美味しい食べ方
釣りのターゲットとして人気のヒラスズキは、食べても非常に美味しい魚です。
一般的な網を使った漁では数が獲れないこともあり、高級料理店で重宝されていたりする魚なので、まさに釣り人の特権とも言えるでしょう。
ヒラスズキを美味しく食べられる料理方法を、いくつか紹介します!
定番は刺身や塩焼きだけど、どう料理しても絶品
ヒラスズキはスズキよりもタイなどに近く、適度に締まった身質の白身魚。
臭みはなく上品で旨味ある脂が乗り、なににしても美味しい魚です。
定番は刺身や塩焼きですが、煮付けや潮汁にしても非常に美味しく食べられます。
ムニエルやポワレなどの洋風の料理にしても抜群
クセのない白身で適度な弾力のあるヒラスズキは、ムニエルやポワレのような洋風の料理にしても美味しい魚。
加熱しても硬くなったりパサつきにくく適度なジューシーさも残り、クリームソースやトマトソースなどどんな味付けにもマッチします。
とくに、レモン果汁と生クリームを合わせたレモンクリームソースはヒラスズキと相性抜群なのでおすすめです!
ヒラスズキの内蔵も絶品!
クセや臭みが少ないヒラスズキは、胃袋や腸、肝、鰾など内蔵も美味しく食べられます。
内蔵は必要に応じて塩もみをしながら汚れやヌメリをしっかり取り、サッと沸騰したお湯で湯がきます。
刻んだネギと紅葉おろし、ポン酢をかければ絶品おつまみの完成です。
磯から持ち帰る時の方法
苦労して荒波から釣り上げたヒラスズキは、とても美味しい魚ですので持ち帰る釣り人も少なくありません。
磯から持ち帰る場合、クーラーボックスを持って行けるような場所でないことが多いので、ストリンガーで繋ぎタイドプールで泳がしておき、帰る直前に締めて血抜きするのがおすすめ。
車に戻ったらすぐにクーラーに即入れましょう。釣り場から距離がある場合は、クーラーバッグや濡らしたドンゴロス(麻袋)に入れると鮮度を保ちやすくなります。
ヒラスズキは個体差こそあるものの、一年を通して味や脂が落ちることがなくいつ食べても美味しい魚です。
釣っても食べても最高な磯の王者!
磯でのヒラスズキ釣りは、キャストやファイトといった基本的な動作だけでなく、天候や海況を読む力、磯や山を歩く経験値、土地勘など……とにかく釣り人としての総合力を試される過酷な釣りのひとつです。
誰でもできる釣りではありませんが、荒れる磯には非現実的な大自然とヒラスズキという大きな目標が待っています。
道具を揃え、経験を積み、苦労して釣り上げたヒラスズキは感動間違いなしですよ!
※磯釣りは、一歩間違うと重大な事故に繋がる遊びということをしっかりと自覚し、はじめは経験豊かな先輩アングラーに同行するようにしましょう。