人工怪魚“タマクエ”をご存知ですか?

みなさんはこの釣果写真を見て、「クエじゃん」と思ったのではないでしょうか。
じつはこの魚、クエではありません。正体はタマクエです。
「そんな魚いたっけ?」と首をかしげた方も多いはず。それもそのはず。
タマクエは、本来この世に存在しない魚なのです。
タマクエは人工的に生み出された交雑種

クエ/撮影:大畑 大志朗
タマクエとは、高級魚として知られる「クエ」と、沖縄でアーラミーバイとも呼ばれる「タマカイ」を人工的に交配して生まれた魚とされています。

タマカイ/出典:PIXTA
特徴は、クエの帯模様とタマカイの斑点が混じり合った、独特で美しい外見です。
体色はタマカイに近く、黒褐色をしています。

タマクエ
クエは美味しい一方で成長が遅く、出荷までに時間がかかることが課題でした。
そこで供給の安定化を図る目的で、成長の早いタマカイとクエ掛け合わせることに。
これがタマクエが生み出された背景です。
タマクエ、じつは釣れます。

数年前、錦江湾の養殖場からタマクエが逃げ出したという噂が広まり、沖磯や船釣りでの釣果が報告されるようになりました。
話題性と引きの強さから、ブッコミ釣りやロックフィッシュゲームの好ターゲットになっています。
釣れるサイズはさまざまですが、筆者が耳にした最大サイズは108cm・22kg。大型個体も確認されており、しっかり成長していることがうかがえます。
まずは情報収集を入念に

タマクエの釣果実績があるのは鹿児島県の錦江湾。
湾内の波止や磯、船釣りで確認されています。シーズンは初夏から秋にかけてで、日中でも釣れますが、夜釣りのほうが安定しているようです。
ルアーでの釣果もある一方、ブッコミ釣りが有利との声が多く聞かれます。また、繁殖力が強く個体数も多いため、数釣りが成立したという情報もあります。
いくみん
こうした情報を踏まえ、今回は「磯からのブッコミ釣り」で狙うことにしました。
いざ、実釣開始!
「最近、釣れてないよ」

今回の釣行では渡船で沖磯に渡るため、事前に予約の電話を入れました。
釣果を確認すると、船長からは「ベイトはいるけど渋いね」との返答が……。
渡礁したのは立神

初日に渡礁したのは、桜島沖の沖小島(おこがしま)の東に位置する立神という磯。
過去に大型のタマクエが上がっている実績があります。
用意したタックルと餌

竿は錘負荷40号まで対応のクエ竿、リールはナイロンライン60号を100m巻ける両軸リールを使用しました。
ステンレス製の竿受けにセットし、急な大物に備えて尻手ロープも装着します。
がまかつ がまくえライトインパルス30‐475
| 号数 | 30 |
|---|---|
| 全長(m) | 4.75 |
| 自重(g) | 735 |
| 錘負荷(号) | 10~40 |

タマクエなどの底物を狙う際は、付け餌と撒き餌が重要です。
今回の釣行では2日分として、以下を用意しました。
・冷凍アジ40尾
・冷凍サバ10kg
・冷凍イカ20杯
・イワシスライス12kg
イワシスライスと刻んだ冷凍サバを撒き餌にして、ポイントを作ります。

海底付近を狙う釣りのため、根掛かり回収機も忘れずに準備します。
筆者はディープカッターとラインブレーカーを必ず携行しています。
10時間、異常なし——。

初めてのポイントとなるので日没までに手返し重視で仕掛けを投入し、餌や海底の状態を確認していきます。
試行錯誤を繰り返すうちに日付が変わっていました……。
ついに竿が舞い込む!

撒き餌用にサバを切っていると、かすかに鈴の音が鳴りました。
竿に近づいて本アタリを待ちますが反応はなく、少し糸を送り込んでみることに。
すると、次の瞬間——竿が舞い込みました!
一気に走る引きが、竿を握る手にずっしりと伝わります。根に潜られないよう強引に底を切るも、何度も突っ込む相手。
ここでスパイクの掛かりが甘く、足を滑らせて転倒するという痛恨のトラブルが発生しました。
ついに現れた、タマクエ!

体勢を立て直して巻き取っていくと、ついに海面に魚影が浮かびました。
赤色灯に照らされたサイズ感から抜き上げられると判断し、背後へ回してランディング。
陸に上がってなお荒々しく暴れる魚——それが今回の本命・タマクエです!
いくみん
早速計測すると52cmと小ぶりでしたが、過去に釣った個体よりもよく引き、十分に楽しませてくれました。
釣れたタマクエを食べてみました
刺身

魚本来の味を楽しむため、まずは刺身でいただきます。
タレは九州でお馴染みの甘口刺身醤油と、大葉入りのおろしポン酢を用意。どちらも相性抜群です。
薄造りにするとモチモチとした食感で、甘みと旨味が口いっぱいに広がります。エンガワはコリコリとした歯ごたえで、身よりも脂がのり、次第にとろけるような味わいに。
さらに塩で食べると、醤油やポン酢に頼らない分、タマクエ本来の風味がより際立ちます。
炙り

ハタ科の魚は皮も美味しく食べられるため、ぜひ試してほしい食べ方です。
炙る際は皮目に切り込みを入れると、きれいに仕上がります。
炙った皮目は脂が焼けて香ばしく、サクッとした食感に。身に近い部分はコラーゲンたっぷりで、プルプルとした食感が楽しめます。
身の旨味と合わせて、3つの味わいと食感を同時に楽しめる贅沢な一品です。
雑炊

ぬめりや血合いを落とした後、頭を炭火で火入れし、頭や頬の身を使って雑炊にしました。

脂の多い頭を使ったこともあり、タマクエの旨味が脂とともに汁に滲み出て、他の食材をコーティングするように雑炊全体へと広がっていました。
口にすると上品な脂や旨味を感じ、多幸感から身震いするほど。クエ鍋の後の雑炊と同様に締めとして欠かせないタマクエ料理です!
クエとの比較

クエは口にすると脂の甘みと濃厚な旨味が広がるのが特徴ですが、タマクエはそれに比べてややあっさり。脂ののったヒラメに近い食味でした。
遊泳力が高く身が筋肉質なため、やや淡白に感じられるのかもしれません。ただし、甘みや旨味が弱いわけではありません。
いくみん
刺身をタレにつけると脂がふわっと浮かび、噛むほどに甘みと旨味が広がる、非常に美味しい魚でした。
タマクエが抱える問題

今回の釣行では、錦江湾に潜むタマクエを釣って食べてみました。
海底へ引き込む強烈な引きと食味の良さから、魅力的なターゲットであることは間違いありません。ショア・オフショア問わず、ルアーでも餌でも狙える点も大きな魅力です。
一方で、この魚は問題も抱えています。本来自然界に存在しない交雑魚であるタマクエが、在来種との交雑や生態系への影響を引き起こす可能性が指摘されています。
いわゆる“第3の外来種”として、今後どのような影響が広がるのかが懸念されています。
いくみん
釣り人として楽しむだけでなく、その存在についても考えていく必要があるのかもしれません。
撮影:いくみん
※掲載している写真は実際の釣行・調理時に撮影したものをベースとしています。一部、視認性向上のためAIによる補正を行っていますが、製品の性能や実際の状態を誇張する意図はありません。
