然別湖の固有亜種“ミヤベイワナ”について
ミヤベイワナと然別湖
ミヤベイワナは、北海道大雪山国立公園内にある火山性堰き止め湖『然別湖(しかりべつこ)』にのみ生息するイワナの仲間。
然別湖は、約1万年前に溶岩ドームの成長によりヤンベツ川が堰き止められてできた湖です。
オショロコマの陸封型
ミヤベイワナとは、イワナの仲間であるオショロコマの亜種にあたります。
ヤンベツ川に生息していたオショロコマですが、1万年前に湖に閉じ込められてしまい、“狭くて浅い環境”から“広くて深い環境”に適応するために進化しました。
オショロコマとミヤベイワナの違い
オショロコマとミヤベイワナの決定的な違いは、エラに備わっている鰓耙(さいは)と呼ばれる器官の数。オショロコマ(21-22前後)に対してミヤベイワナ(26前後)と数が多いことが挙げられます。
鰓耙が多いということは、川より湖に多く生息するプランクトンなどの小さな餌を食べやすいように進化したことが伺えます。
他にも、ミヤベイワナのヒレは川に住むオショロコマより長いとも言われます。
トラウト愛好家の憧れ“ミヤベイワナ”
「湖の宝石」とも表現されるミヤベイワナは、トラウトフィッシングをする釣り人にとって一度は釣りあげてみたい憧れの魚です。
然別湖の中でも、釣れるポイントによってミヤベイワナの体色は様々で、なかにはエメラルドグリーンやコバルトブルーに染まり、釣りをしない人でも思わず息をのむ美しさと言われます。
そんなミヤベイワナを求めて北海道へ釣行してきました! 高水温で厳しい状況下で、はたして美しいミヤベイワナと出会えたのか。釣行記をお楽しみください!
憧れのミヤベイワナを求めて北海道へ
スタッフが親切にポイントや釣り方を教えてくれます
待ちに待った然別湖釣行当日、朝5時半ごろグレートフィッシング然別湖事務局で受付を済ませます。
期待とは裏腹に、連日の高水温でミヤベイワナはかなり厳しいとのこと……。 ニジマスは好調な反面、ミヤベイワナは釣果ゼロに終わる方が多いそうです。
それでも、前々日にミヤベイワナを釣り上げた方のポイントやルアーといった細かい情報を丁寧に教えてくださいました。
手漕ぎボートに乗って実釣開始
然別湖では、手漕ぎボートを使って釣りを行います。魚釣りは一部の区間でのみ認められており、岸釣り可能エリアも手漕ぎボートを使用しないと渡れません。
然別湖は厳格なルールによって管理されているフィールドなんですね。ボートを漕ぐのが苦手な方は、渡船サービスもありますのでご安心ください。
レイクトローリングでミヤベイワナを狙います
スタッフの方に「ミヤベイワナを確実に釣りたいなら、キャスティングは一先ず諦めた方が良いですよ」とアドバイスをいただいたので、朝一からレイクトローリングを始めます。
表層水温が20℃近くまで上がってしまい、冷水を好むミヤベイワナは水温躍層の下に入ってしまっているので深場一択ということですね。
60m先で何かヒットしたぞ!
ロッドが激しく引き込まれた!
14gのスプーンを15m落とし込み、更にボートを約50m漕いでからリールのベイルを返します。
人が歩く程度の速度でボートを進めていくと……ロッドが「ギュンっ!ギュンっ!」と引き込まれました!
「早速ミヤベイワナ来たかな?!」心臓が飛び出そうになる緊張を抑えてファイト開始!
バレないよう丁寧にネットですくい上げます。青い魚体の正体は……。
ブルーバックのニジマスGet!
60m先から上がってきたのは、コバルトブルーに染まるニジマスでした!
ニジマスとは言え、その魚体の美しさは圧巻です。青く染まるブルーバックのニジマス。初めて見る姿に惚れ惚れしてしまいます。
40オーバーのレインボーに興奮!
同じようにスプーンをボートで引っ張ていると、ロッドを持っていかれそうなくらい強烈な引き込みがきました!
本能的にミヤベイワナじゃないな。と思いながらファイトをしていると、40m先で大きなニジマスが豪快にジャンプ!それも何度も!
正直に言います。めちゃくちゃ楽しいです(笑)
これもブルーバックだったのですが、みるみるブルーが抜けていきます。トラウトの色は釣れ上がった瞬間だけと言われますが本当でした。
陸っぱりでは小さなサクラマスが連発
船を進めていくと岸釣り可能エリアに入ってきたので、試しにウェーディングをしてみることにしました。
小さな魚が盛んにライズしているので、軽めのスプーンで表層を引っ張るとサクラマスと呼ばれる降湖型のヤマメが釣れました!
ミヤベイワナは?
ニジマスとサクラマス、数こそ釣れますがミヤベイワナが釣れる気がしない。然別湖に来れば簡単に釣れると思っていましたが、6月下旬ということもあり一筋縄ではいかないようです。
このままニジマスとサクラマスに引っ張られると、本当にミヤベイワナに出会えずに終わってしまいそうなので再びレイクトローリングをすることに!
ついにミヤベイワナがヒット!またひとつ夢が叶ったぞ
晴天微風ということで120mラインを出してみた
じつに良い天気で清々しいのですが、ミヤベイワナを狙うには最悪のコンディションになってしまいました。
こうなると深場一択ということで、スプーンを20m落とし込みボートで100m漕いでからトローリング開始!
リールに200mもラインを巻いておいて良かった!と久々に感じました。
グリーンバックのミヤベイワナが、ついに姿を見せた!
湖の中心部を通っていると「ギュギュンッ!」とロッドが引き込まれました!
ニジマスよりもいくらか鋭さを欠く引きですが、重量感はバッチリです!
これは……と期待しながら、120mのラインをゆっくり巻き上げます。
深みからミヤベイワナが上がってきます! それも綺麗なグリーンバック。お願いしますッ! バレないでー!
うぉー!ネットに入ったぞー!
船べりでバチャバチャ跳ねるミヤベイワナを無我夢中で掬い上げました!
やったーーーー! ミヤベイワナだ!メチャ綺麗だーー!
憧れだったこの魚体!まさにグリーンバック!
図鑑でしか見たことが無かった、美しいミヤベイワナとこうして実際に触れあえて本当に幸せです。
エメラルドグリーンに輝くこの魚の美しさは、僕にとってどんな宝石よりも輝いて見えました!
場所と深度が分かれば立て続けにミヤベHit!
14gのスプーンと、20m+100mのライン出しがこの日のパターンだったようです。
ポツポツと拾い釣りではありましたが、ミヤベイワナがヒットしてくれました!
ブルーバックのミヤベイワナは、とくに綺麗でしたよ!
1日の釣果データを報告します
魚種・時間・ヒットルアー・深度・魚のコンディション等を報告
然別湖にしか生息しない貴重なミヤベイワナを保護・管理するために、ミヤベイワナを狙った釣りの解禁期間は年間で僅か50日間に設定されています。
ミヤベイワナはキャッチ&リリースに限られ、1日の釣果データの報告を求められます。
多くの貴重な生き物に対し、捕獲禁止といった措置が講じられる現代において、厳格なルールではあるものの、生き物と触れ合えるチャンスを残している然別湖は本当に素晴らしいと感じます。
今回、ミヤベイワナのヒットルアー
今回の実釣では14gのスプーン使用し、100m以上ラインを出したトローリングでヒットが集中しました。
カラーは魚種問わず、赤金に反応が良かったです。ミヤベイワナが深みに落ちてしまう6月下旬に然別湖を訪れる際は、12-20gのスプーンを持っておいた方が良いかと思います。
当たりカラーやスプーンの種類は日々変化するようですが、僕はダイワのチヌークSとティムコのライトニングウォブラーでミヤベイワナを釣りました!
ダイワ チヌークS 14g
ティムコ ライトニングウォブラー 14g
然別湖のレギュレーションについて
然別湖では、厳しいルールの下でミヤベイワナを釣ることが許されています。あくまでも、資源量調査に調査員として参加している。という自覚を持って臨みましょう。
■然別湖レギュレーション
- 【2021年解禁期間】
- ・First Stage:5月28日〜7月1日(35日間)
・Second Stage:9月19日〜10月3日(15日間) - 【遊漁時間】
- ・First Stage:6:00〜15:00
・Second Stage:7:00〜15:00 - ・岸釣り可能エリア:音更湾および、うぐいす湾(徒歩では行けません)
- ・遊漁者人数:50人/日(要予約)
- ・フィッシングライセンス:4,190円/日
- ・釣法:ルアー 、フライ、テンカラ(餌釣り禁止)
- ・フック:1本のロッドに対し、シングルバーブレスフック1本
- ・釣竿の本数:1人1本(予備竿の持ち込みは可能)
- ・ミヤベイワナはキャッチ&リリースに限る
- ・オモリや鉛によるボートのアンカリング禁止(シーアンカーは許可制)
- ・釣果記録用紙の提出
- ・手漕ぎボートのみ持ち込み可
その他、細かいレギュレーションはコチラでご確認ください。
釣行の予約はグレートフィッシング然別湖事務局のHPへ
然別湖での魚釣りは、人数制限のある予約制になっています。
必ず釣行前に予約するようにしましょう。予約はグレートフィッシング然別湖事務局のHPから行えます。
ミヤベイワナが良く釣れるのは5月下旬から6月上旬
僕が訪れた6月下旬は、例年ミヤベイワナの釣果が落ちる時期と言われています。
First Stage解禁から6月上旬は、多い人で50尾以上のミヤベイワナを表層で釣ることができるそうです。
また、Second Stageは、気温の乱高下により釣果は安定しないものの、産卵期を前に秋色に染まったカッコいいミヤベイワナに出会えるチャンスだそうです。
今回はなかなか厳しいコンディションでしたが、美しいミヤベイワナを1尾1尾大切に釣ることができて1ピキの価値に酔いしれることができて良かったなと思います。
次回は、Second Stageで違う色のミヤベイワナも見てみたいなぁ。と企んでいます!
筆者紹介
山根央之(やまねひろゆき)
初めての1匹との出会いに最も価値を置き、世界中何処へでも行く怪魚ハンター山根ブラザーズの兄。餌・ルアー問わず、もはや釣りに限らず。ガサガサや漁業者と協力してまでも、まだ見ぬ生き物を追い求め、日々水辺に立っている。
テレビ東京・緊急SOS池の水全部抜くやNHK・ダーウィンが来た、TBS・VSリアルガチ危険生物などに出演したり、魚類生態調査に参加したりと幅広く活動中。
どえらい魚を獲った!もはや釣りを越えて!色んな人と繋がって!特大天然メコンオオナマズ! 240 cm175 kg 捕獲です!!ホント色んな人に助けられてこの魚と出会うことができました!メコンオオナマズに関わる全ての人に感謝でいっぱいです!! pic.twitter.com/JHWpNdLAvX
— 山根ブラザーズ(兄)@kimi (@chillkimi) September 16, 2017