キングサーモンの生息地と呼び名
日本ではマスノスケと呼ばれるキングサーモン
キングサーモンは、サケ目サケ科タイヘイヨウサケ属に分類される紛れもなくサケの仲間です。
北海道ではシロザケ(サケ)やカラフトマスよりも大きく成長するキングサーモンを、国衙(こくが・国司の役所)の介(すけ・実務上の最高位)に例え“マスノスケ”と呼びました。
つまり、当時の人々は稀に漁獲されるキングサーモンは、選ばれし魚であり、とても巨大で強い権力を持っていると考えていたのでしょう。
ちなみに、日本人にはキングサーモンという名前が最も馴染み深いのですが、アメリカやカナダでは「チヌークサーモン」と呼ぶのが一般的です。
キングサーモンの世界記録って?
キングサーモンの一般的な大きさは、全長80-100cm、体重5.0-15kgと、イトウの仲間であるタイメンと並び、サケの仲間で最大級です。
僕らにとって最もなじみ深いシロザケ(サケ)の平均サイズが60-80cm、体重5kg前後であるかとからもキングサーモンの大きさはよくわかります。
ちなみに、釣りによるキングサーモンの世界記録は97lb(約44kg)。漁獲されたものでは全長147cm、体重61kgが最大とされています。
こうなってくると、ちょっとしたマグロ級の大きさですよね!
マスとサケの違いって何?
日本人に限らず、世界の人もマス(トラウト)とサケ(サーモン)のように、この手の魚を呼び分けます。
しかし、意外なことに生き物の分類としてサケとマスの違いを考えてみますと実は全く差がありません。
日本語では、それを表すようにサケとマスの呼び分けに規則性はありませんが、英語では、海に下るもの(キングサーモンやソッカイサーモン)をサケと呼び、河川に残るもの(レインボートラウトやレイクトラウト)をマスと呼びます。
早速話がそれてしまっていますね! キングサーモンに戻りましょう。
日本にも来遊する“キングサーモン”本来の生息地について
キングサーモンは、サケ・マスの中でも特に冷水を好むため、生息域の緯度は高く、東はロシア・アムール川から西はアメリカ・ベンチュア川にかけての太平洋北部が主な生息地として知られています。
日本近海にも稀に来遊することがあり、北海道を中心に数は少ないものの漁獲され高値がつけられています。
キングサーモンは有能な水産対象種として日本でも放流された
食料資源としても、遊漁(釣り)資源としても大変有能なキングサーモンは、日本の北海道を含めた北半球に留まらず、サケ・マスが一切生息していなかった南半球へも放流されました。
キングサーモンの放流事業は成功した場所としなかった場所があり、北海道では定着しませんでしたが、ニュージーランドやパタゴニア、アメリカの五大湖(淡水湖)では定着し利用されています。
キングサーモンの生態や生活史
キングサーモンには、河川型と海洋型の2タイプが知られています
■キングサーモン2タイプ
- 【海洋型】
- 生まれた年に海に下り、産卵は河川中流域で行う
- 【河川型】
- 生後1〜2年間を河川で過ごしたのちに海へ下り、産卵は上流域まで遡上する
2つのタイプに分かれるキングサーモンですが、ともに川を下るのは雪解け水で川の水位が上がる季節です。
それに対し遡上開始時期は、河川型は海から遠い上流域を目指すため、2月ごろから始まり、海洋型は7月ごろから始まります。
河川型では、標高2100m(富士山5合目)以上、距離では1500km(東京-那覇)以上も遡上する個体群も知られています。
キングサーモンを釣りで狙えるのは2つのステージ
■キングを狙える2ステージ
- 【スモルト】
- 海や湖でさかんに餌を捕食している成長ステージ
- 【二次成長】
- 産卵のため河川をのぼる遡上ステージ
沖合を泳ぐキングサーモンを釣るためには、船が必要不可欠です。成長ステージでは主にトローリングで狙います。
遡上ステージでは、ルアーやフライを使い目の前を泳ぐキングサーモンとの接近戦となります。大きく育ったキングサーモンのファイトは強烈です。
それぞれのステージの釣り方やレギュレーションをご紹介いたしますね!
レイクトローリングで狙う銀ピカのキングサーモンの釣り
成長ステージを狙うなら、バンクーバーや五大湖がおススメ
キャッチ&イートというのは、なにも日本だけの釣りの楽しみ方ではありません。
成長ステージの銀ピカなキングサーモンは、脂乗りがよくとにかく食べて旨いんです! 何を隠そう、これが現地でキングサーモン釣りが人気の理由ですね。
カナダのバンクーバー湾やアメリカ・カナダの五大湖では、僕ら日本人がブリやタイを沖釣りで狙うような感じで、キングサーモンは食べておいしいポピュラーな大物ターゲットとして親しまれています。
五大湖の一つ“ミシガン湖”でキングサーモン釣り
ミシガン湖でのキングサーモンの釣り方は、レイクトローリングが一般的です。
合計14本の竿を同時に使用するこの釣りは、熟練の手さばきが必要です。
漁具(釣り具)を効率よく自由自在に操り、大きな船で壮大な湖から魚群を探し当てる。「レイクトローリングって凄いな!」って実感した釣行でした。
プランナーボードというレイクトローリングならではの釣り具
水の抵抗を受けることで船から離れようとするプランナーボードを使用することで、何本ものルアーを糸が絡まずに引っ張ることができます。
広大な湖や海からキングサーモンを釣りあげるために、できるだけ沢山のルアーを泳がせる必要があるんですね。
持ち帰って食べるというのが成長ステージのキングサーモン釣りの醍醐味
アメリカやカナダでは、キングサーモンに限らず釣った魚の持ち帰り制限が厳しく設定されています。
大切な水産資源を末永く利用するために必要なルールです。日本にもいつかこの考え方が定着する日が来てほしいと願っています。
ルールは州や時期、釣り方などで細分化されているため、アメリカやカナダでキングサーモンを釣る場合のライセンス取得はガイドにお任せするか、バスプロショップなどで確認しましょう。
キングサーモンの刺身はとにかく旨い!
キングサーモンは身の赤みがとてみ強く、見るからに美味しそうな色合いをしています。
養殖のトラウトサーモンのように変に脂っこくなく、素直な脂の甘さと新鮮な歯ごたえがとても美味しくって今でも忘れられません。
パタゴニアで狙う氷河の王“グレーシャーキング”釣り
遡上ステージのキングサーモン釣りは、まさにゲームフィッシング
食べて楽しむ成長ステージのキングサーモンは、地元民に愛される釣りであったのに対し、遡上ステージのキングサーモンを狙うアングラーの大半は遠方から訪れます。
地域によってキャッチ(水揚げ)することが許される場合と禁止される場合があります。
厳しいところでは、魚の顔を水面にあげることすら制限している場所もあります。
いずれにせよ、食味の良さは成長ステージには敵いませんので、一匹との出会いに価値を見出す旅人向けと言えるでしょう。
遡上ステージのキングサーモン釣りが楽しめる地域

本来の生息地としては、アラスカやカナダが有名でしょう。
他にも放流されて定着した場所では、ニュージーランドやチリ、アルゼンチンなどで狙うことができます。
なかでもパタゴニア地方で釣れるグレーシャー(glacier:氷河)キングが注目度No.1です!
氷河に囲まれながらパタゴニアで夢のキングサーモンフィッシング
パタゴニアは、チリとアルゼンチンからなる南緯40°以南の地域の総称です。
簡単に言えば、とても寒い地域ということになり、キングサーモンが生息するのに適した環境だったんですね。
パタゴニア地方に入植したヨーロッパ人が、趣味である釣りの対象魚としてキングサーモンを持ち込んだことがキッカケとなり、今では毎年大きな群れが何百キロも川を遡上します。
遡上ステージのキングサーモンを狙うタックルは?
遡上中のキングサーモンを狙う場合、8.5~9.5ftを基準にMHからH程度のロッドが適しています。
シマノ 18 ワールドシャウラ スピニングモデル 2833RS-2
リールは、シマノであれば5000番、ダイワであれば3500~4000番を選びましょう。
シマノ 20STELLA SW 5000XG
パタゴニアでは、ラインはPE3号にリーダーは40lbという組み合わせがおススメですが、急流で狙う場合はライン強度を上げて対応しましょう。
ルアーはやはりスプーンの使用頻度が高く、20~56gまで幅広く用意しましょう。
他にも、シュガーディープ90やシーバス用のバイブレーションなんかも活躍する場合があります。
パタゴニアならではのレギュレーション
環境に対する意識が高いパタゴニアでは、変わったレギュレーションが多数設けられていますのでこの機会に少し紹介いたしますね。
“あくまで個人的感想”として、外来種としてキングサーモンはじめ人間に都合の良い生き物はガンガン入れちゃう反面、ペットボトル一本すら持ち込ませないというのは……と思ってしまいます(笑)
■パタゴニアレギュレーション
- ・タバコ禁止
- ・ペットボトル持ち込み禁止
- ・靴やウェーダーは消毒が必須
- ・物を動かしてはいけない
サケ・マス界の王者“キングサーモン”に挑戦してみませんか?!
今回はキングサーモンについてご紹介させていただきました。釣って良し、食べて旨しな魚は世界中で愛されるということですね!
キングサーモンフィッシングツアーはChill Tripがオススメ
いつか……憧れのキングを狙いに出かけてみてはいかがでしょうか?!
筆者紹介
山根 kimi ヒロユキ
“初めての1匹”を求めて、世界中どこへでも行く怪魚ハンター「山根ブラザーズ」の兄。釣りに留まらず、ガサガサや漁業者と協力してまでも、まだ見ぬ生き物を追い求め、日々水辺に立っている。
どえらい魚を獲った!もはや釣りを越えて!色んな人と繋がって!特大天然メコンオオナマズ! 240 cm175 kg 捕獲です!!ホント色んな人に助けられてこの魚と出会うことができました!メコンオオナマズに関わる全ての人に感謝でいっぱいです!! pic.twitter.com/JHWpNdLAvX
— 山根ブラザーズ(兄)@kimi (@chillkimi) September 16, 2017