今回のターゲット:最大サイズのオイカワ
オイカワ(ヤマベ・ハエ)とは

オイカワ(Opsariichthys platypus)は、コイ目コイ科クセノキプリス亜科ハス属に分類されるコイの仲間です。
ヤマベやハエなど様々な地方名があるように、オイカワは北海道と南西諸島を除く日本全国に普通に生息する川魚です。
カワムツと並び、どこでも誰でも簡単に釣れる魚として雑魚あつかいされています。
▼カワムツについてはコチラの記事もご覧ください!
オイカワは学名にまでもザコ(Zacco)という名がつけられていた

欧州に日本の川魚を紹介したドイツ人のシーボルトは、日本でオイカワが「雑魚(ザコ)」と呼ばれていたことから、オイカワに Zacco platypus という学名をつけたという話は、淡水魚好きの間であまりに有名な話です。
学名って世界共通言語のようなもの。こんなに綺麗な魚にザコって……ちょいと酷すぎやしませんか?(笑)
※現在、オイカワはハス属に分類され Opsariichthys platypus という学名が与えられています。
今回の目標は…最大級のオイカワ釣獲!18cmという壁を越えてみたい!

オイカワを紹介する多くの図鑑では、全長15cm前後まで成長すると書かれています。そんな中で、最大で18cmまで成長するという文章やメジャーを当てた巨大なオイカワの写真を見てしまったのです。
オイカワならどこにでもいるし「ちょうど良い目標ができたぜ!」と久々にテンション爆上がりです。
さっそく、延べ竿とさし虫を持って近くを流れる相模川水系へ出発です!
近所の川で雑魚オイカワのドリームハンティング開始だ!
最大級のオイカワを追い詰めるために用意した釣り具

用意したのは、オイカワの釣り餌としてはド定番のサシ虫(ハエの幼虫)です。
寄せ餌団子まで購入する気合の入れよう……見方を変えれば弱腰姿勢。(笑)
いかに僕が本気かということです。
マルキュー 寄せ太郎
オーナー 糸付 ハエスレ
初めてガチンコ勝負を挑む相模川水系

近くにいるからこそ気づけない魅力というものってありますよね?
相模川の畔に引っ越して2年。初めての1ピキばかり追いかける僕にとって、物珍しい魚種がいない相模川では、しっかり竿を出したことがありませんでした。
はじめまして相模川。今日はお宅の雑魚の王様に挑戦させていただきます!
浅瀬で産卵を繰り返すオイカワ達
数釣って巨大オイカワを混ぜる作戦

ありきたりな作戦ですが、きっとこれが王様への一番の近道!
寄せ太郎を川底に投げ込み様子を見みます。大体の川魚はこの作戦で爆釣です!
餌より繁殖優先ってことね……

鮮やかな婚姻色のオスと、銀ピカのメス達がひっきりなしに浅瀬で産卵しています。
寄せ餌を投入した淵には、一向におりてくる気配はありません。花より男子とはまさにこのこと。身長の高いイケメンは雑魚の世界でも王様ってことです。
いつかこの法則を打ち破る生き物を探してやる!
浅瀬で繁殖真っ最中のオイカワを直撃してみる

たくさんのメスの相手をするモテ男を釣るために浅瀬に移動してみました。
決して嫉妬心とかじゃないですよ!(笑)
オイカワのメスばかり入れ掛かる

サシ虫を産卵場所に流し込むと、すかさず周りいたメス達がサシ虫に食いついてきます。
「私たちのキングに手を出すな!」と言わんばかりに……。
美女達に守られたオイカワの王様。これは一筋縄じゃ落とせそうにありません。
もしかして……オイカワのオスすら釣れずに終わっちゃう?

気合だけが空回りで終わってしまう釣行なんて日常茶飯事です。今回もそんな感じか……やっぱり相模川水系だもんなぁ。と早くも諦めモード。
ところが、オイカワのメスを釣り続けているとあることに気づきます。
コレって……この川って……もしかしたらめちゃくちゃ凄いかもしれん!
メスのオイカワの平均サイズがデカいことに気づく
オイカワはメスよりオスが大きい

オイカワは繁殖期になるとオスだけが綺麗な婚姻色に染まるため、簡単にオスとメスを見分けることができます。
オイカワのメスはオスよりも一回り小さく、一般的には10cm前後が最大です。
ところが、さっきから釣れるオイカワのメスのサイズがデカいんです。これならオスが釣れればきっと15cmは超えるはずです。
12cm当たり前!14cmまで飛び出した!

18cmのオスのオイカワという目標にばかり目をくらましてしまい、危うくこの川の素晴らしさに気づかずに家に帰るところでした。
この川なら間違いなく特大サイズのオイカワが釣れる! きっとそれもそれほど難しくなく!
高望みばかりしていると、ありきたりな物の価値を見落としてしまいがちです。皆さんも気をつけましょうね!
オイカワの産卵は真昼間に行われます

オイカワの産卵期は6月から8月と長く、日の高い昼間に行われます。僕が苦戦しているように、この時期のオイカワは昼間は産卵し朝夕に積極的に餌を食べます。
王様との決戦は夕マズメとなりそうです。
夕方になりライズが起き始めた

ライズが起きている規模の大きなポイントに入り直し、サシ虫を流れに乗せると小さなウキがギューンと横っ走りします。
小さなウグイでも掛かったかと思わす抵抗のある引きに「とうとうその時が来た!」と期待します。
ゆっくり浮かせるとキラキラと光る青い魚影が見えます! ようやくオスがヒットしたようです!
やっと来たぞ!でっかいオイカワだー!

慎重に寄せてくると思わず零れる……「で、デカいぞ!」という焦る僕の声。
紛れもなく自己記録越えのオイカワが掛かっています。
いつもなら抜き上げるところですが、慎重に足元でランディング! そして、恒例の雄たけびです!
「ヨッシャーー!特大オイカワ獲ったぜー!」さぁ、サイズは何センチだ?!
いよいよオイカワの王様とご対面!その大きさ色の濃さ、感無量です。
17.3cmというオイカワをキャッチ

「18cmいっただろ!」と珍しく持参したメジャーを取り出し計測してみると、17.3cm。
「惜しい!」「でも嬉しい!」遅れてスミマセンとばかりにやってくる悔しさ……なんだこの不思議な感覚は(笑)
日暮れまであと1時間。もう少し粘ってみます。
オイカワの王様ついに掛かる!

卵を抱えてお腹がパンパンに膨れたメスをいくらか釣ったあと、小さなウキが「シュッ」と川の中に消し込みました。
すかさず5.4mの長竿を振り上げると「ズシッ」と重みのある手応えです。まるでヤマメでも掛けたかのよう。
あせりは禁物。針掛かり重視でカエシのない針を使っているため、糸が緩めば簡単に針が外れてしまいます。
オイカワの王様の必死の抵抗をドキドキしながら、しっかり竿を曲げて受け止めます。
これはいったな……18cm。間違いない。

さっきの17.3cmと体の厚みが違います……。
ケタ違いに大きなオイカワ。メジャーを当てずとも分かります。今日一日追いかけていた王様を掌にのせて、何にも代えがたい幸福感を噛み締めます。
身長が高く、イケメンで、人気者。僕も君の虜です。

こんな綺麗な魚。やっぱザコって呼ぶべきじゃないよなぁって感じながらも、雑魚って呼ぶからこそ、愛着が沸くのかな?
シーボルトは、皆に覚えやすいような名前を付けたかったのかな? 確かにZaccoって一度知ったら絶対忘れないもんなぁ。
なんて色々考えながら、写真をバチバチ撮りました。
オイカワ・オス 18.4cm 相模川水系の魅力を一つ実感しました

身近な川、僕にとって特に珍しい魚もいない川。そんな相模川水系でしたが、これだけ大きなオイカワがいるとは!正直、驚きでしたし、嬉しかったです。こんな時だからこそ、身近な水辺の魅力に気づけたのかなって感じます。
皆さんも、目の前に当たり前にあるものをもう一度見つめなおしてみてはいかがでしょうか?
もしかしたら、新しい発見や出会いがあるかもしれませんよ!
筆者紹介

山根央之(やまねひろゆき)
初めての1匹との出会いに最も価値を置き、世界中何処へでも行く怪魚ハンター山根ブラザーズの兄。
餌・ルアー問わず、もはや釣りに限らず。ガサガサや漁業者と協力してまでも、まだ見ぬ生き物を追い求め、日々水辺に立っている。
テレビ東京・緊急SOS池の水全部抜くやNHK・ダーウィンが来た、TBS・VSリアルガチ危険生物などに出演したり、魚類生態調査に参加したりと幅広く活躍する。
どえらい魚を獲った!もはや釣りを越えて!色んな人と繋がって!特大天然メコンオオナマズ! 240 cm175 kg 捕獲です!!ホント色んな人に助けられてこの魚と出会うことができました!メコンオオナマズに関わる全ての人に感謝でいっぱいです!! pic.twitter.com/JHWpNdLAvX
— 山根ブラザーズ(兄)@kimi (@chillkimi) September 16, 2017