【釣り×科学】魚はなぜ跳ねる?4つの理由と時合との関係

2019/02/15 更新

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※本記事は、2018年7月23日にスマルア技研に掲載された記事(魚はなぜ跳ねる?)のリライト版です。

魚はなぜ跳ねる?

波紋

筆:吉田 誠

水辺で水面を眺めていると時折、魚が跳ねるのを目にすることがある。大きな魚がバシャーンと盛大に水しぶきを散らすこともあれば、あちこちで水面に身を翻す小さな魚を見かけることもしばしば。

本来水中にくらす魚が、なぜ水面を跳ねるのだろうか?

(1) 摂餌のための跳躍


魚の中には、水面近くを飛び回る昆虫をエサにするものがいる。サケ・マスの仲間はもちろん、オイカワなどの小魚も含めて、渓流でフライフィッシングをする人にはすっかりおなじみだろう。

しかし研究の面では、この「エサを捕らえるための跳躍行動」がどのようにして可能となっているのか、完全に解明されたとは言えないのが実情だ。

水面では光の屈折が起こるため、空中にいる獲物との距離を水中から測るのは実に困難である。

こうした状況で、魚がどのようにして狙いを定め、泳ぎをコントロールして正確な跳躍をしているのかについては、今でも研究が進められている。

ちなみに、馴染みのあるサケやマスだけでなく、熱帯にすむシルバーアロワナやテッポウウオ(水面近くに伸びた、木の枝や葉の上にいるエサを食べる!)なども実験対象として使われている。[1]-[4]


(2) 逃避のための跳躍


敵から逃げるために水面に飛び出す魚として最も有名なのは、トビウオの仲間だろう。

水中で助走をつけて高速で水面に飛び出し、発達した1対の胸びれ(と、多くの種では1対の腹びれも)を広げて、水面から高さ数メートルまで上昇し、距離にして数十メートルも離れた場所にまで飛翔する。[5]

かれらと異なるタイプとして、水中で大きく広げた胸びれを勢いよくたたみ、その反動で水面に飛び出す魚もいる。

観賞魚として知られるアフリカ原産のバタフライフィッシュや南米産のハチェットフィッシュは、水面付近を飛ぶ虫の捕食と、敵からの逃避の両方の場面で跳躍することが知られている。[6,7]

(3) 障害物を越すための跳躍


川を横断する堰やその脇の魚道では、時期により、水の流れに逆らって上流へ向かいジャンプを繰り返す魚がみられることもある。

秋に起こるサケの遡上や、初夏にみられるアユの遡上などが有名どころだろう。[8,9]

人工物のない自然状態でも、流れの速く、泡を立てて水の落ち込むような瀬を通過して川の上流へ向かう彼らは、落ち込み場所付近で体感する落水刺激(水流)や混雑具合(魚の密度)の刺激に応じて、こうした跳躍行動をみせると考えられている。[10,11]

(4) 寄生虫を落とすための跳躍


海に浮かべた生け簀で養殖されるアトランティックサーモンは、水温の高くなる夏、体表につく寄生虫の密度が高くなるほど、跳躍を多く繰り返すと報告されている。

特徴的なのが水に落ちる時の身体の向きで、水面に飛び出てから身体を90度横倒しにし、体側から着水する様子が観察されている(川を遡上する際は、飛び出した向きのまま、腹側から着水する)。[12]

あるいは、全身を空中に出さず、水面に少しだけ身体を出してぐるりと反転する「ローリング」が見られることもあり、この行動も何らかのストレスを受けた魚に特徴的な行動とされる。[12]

海水、淡水を問わず、魚の体表につく寄生虫は多く知られているし、他にも高水温や貧酸素、過密状態といったストレス要因も多く存在する。

魚にとって不快な条件の時にも、水面を割る行動が生じることは覚えておいてよいかもしれない。


魚が跳ねても、釣り時とは限らない

シーバス
出典:PIXTA
ここまで跳躍行動の理由をみてきたが、「魚が跳ねる」と一口に言っても色々あることがわかっただろうか。

もし、摂餌や逃避といった「食う・食われる」関係の行動であれば、釣りにピッタリのタイミングと言える。

逆に、ストレスを感じた魚の苦しまぎれの行動だった場合、魚はエサを食べるどころではないので、釣りにならない可能性もある。

さらに、冒頭にも述べたとおり「身体の一部だけが水面に出る」のは「跳躍」と別であることも注意しておきたい。

魚が水面近くで勢いよく動けば、跳躍後と同じように水音や波紋は生じるが、それが必ずしも特定の機能をもつ行動であるとは限らない。

「そこに何がいて、何をしているのか?」

「魚にとって今、その場所はどんな環境条件なのか?」

こういったことを検討しつつ、かれらの行動を推測してみることが大事と言えるだろう。

参考文献

Soares D & Bierman HS (2013) Aerial jumping in the Trinidadian Guppy (Poecilia reticulata). PLoS ONE 8: e61617.
Fagen RM (2017) Salmonid jumping and playing: Potential cultural and welfare implications. Animals 7: 42.

引用文献

[1] Kalleberg (1958) Institute Freshwater Research

[2] Timmermans (2000) Netherland Journal of Zoology
[3] Rossel et al. (2002) Journal of Experimental] Biology
[4] Lowry et al. (2005) Environmental Biology of Fishes
[5] Davenport (1994) Reviews in Fish Biology, Fisheries
[6] Wiest (1995) Journal of Zoology
[7] Saidel et al. (2004) Environmental Biology of Fishes
[8] Kondratieff & Myrick (2006) Transactions of the American Fisheries Society
[9] Lauritzen et al. (2010) Bioinspiration and Biomimetics
[10] Tsukamoto & Uchida (1990) Nippon Suisan Gakkaishi
[11] Uchida et al. (1990) Nippon Suisan Gakkaishi
[12] Furevik et al. (1993) Aquaculture

執筆者

吉田 誠 (Makoto A. Yoshida) 博士(農学)

2017年9月、東京大学大学院農学生命科学研究科水圏生物科学専攻博士課程修了。同10月より東京大学大気海洋研究所 特任研究員を経て、2018年4月より、国立環境研究所 生物・生態系環境研究センター 特別研究員。

専門は、動物搭載型の行動記録計(データロガー)を使った魚の遊泳行動に関する力学的な解析と野外での魚の生態研究。

小学生の頃、祖父との海釣りで目にした、海面に躍り出た魚の一瞬のきらめきに魅せられて、魚の研究者を志す。

「人と魚の間で繰り広げられる『釣り』という営みを、魚目線で見つめ直してみよう」、そんな視点から、釣り人の皆さんの役に立ちそうな学術研究の成果を紹介していきたい。

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