魚が跳ねても、釣り時とは限らない
ここまで跳躍行動の理由をみてきたが、「魚が跳ねる」と一口に言っても色々あることがわかっただろうか。
もし、摂餌や逃避といった「食う・食われる」関係の行動であれば、釣りにピッタリのタイミングと言える。
逆に、ストレスを感じた魚の苦しまぎれの行動だった場合、魚はエサを食べるどころではないので、釣りにならない可能性もある。
さらに、冒頭にも述べたとおり「身体の一部だけが水面に出る」のは「跳躍」と別であることも注意しておきたい。
魚が水面近くで勢いよく動けば、跳躍後と同じように水音や波紋は生じるが、それが必ずしも特定の機能をもつ行動であるとは限らない。
「そこに何がいて、何をしているのか?」
「魚にとって今、その場所はどんな環境条件なのか?」
こういったことを検討しつつ、かれらの行動を推測してみることが大事と言えるだろう。
参考文献
引用文献
[1] Kalleberg (1958) Institute Freshwater Research
[2] Timmermans (2000) Netherland Journal of Zoology
[3] Rossel et al. (2002) Journal of Experimental] Biology
[4] Lowry et al. (2005) Environmental Biology of Fishes
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[8] Kondratieff & Myrick (2006) Transactions of the American Fisheries Society
[9] Lauritzen et al. (2010) Bioinspiration and Biomimetics
[10] Tsukamoto & Uchida (1990) Nippon Suisan Gakkaishi
[11] Uchida et al. (1990) Nippon Suisan Gakkaishi
[12] Furevik et al. (1993) Aquaculture
執筆者
吉田 誠 (Makoto A. Yoshida) 博士(農学)
2017年9月、東京大学大学院農学生命科学研究科水圏生物科学専攻博士課程修了。同10月より東京大学大気海洋研究所 特任研究員を経て、2018年4月より、国立環境研究所 生物・生態系環境研究センター 特別研究員。
専門は、動物搭載型の行動記録計(データロガー)を使った魚の遊泳行動に関する力学的な解析と野外での魚の生態研究。
小学生の頃、祖父との海釣りで目にした、海面に躍り出た魚の一瞬のきらめきに魅せられて、魚の研究者を志す。
「人と魚の間で繰り広げられる『釣り』という営みを、魚目線で見つめ直してみよう」、そんな視点から、釣り人の皆さんの役に立ちそうな学術研究の成果を紹介していきたい。