プロって本当にうまいの?
メディアプロやトーナメントプロ、さらにはプロテスターなど……
現在の釣り業界には、さまざまな「プロ」と呼ばれる人たちが存在し、紙面やWeb、SNSなどを通して、釣りシーンを盛り上げていますね。
しかし、人間というのは“自分の目で確かめていないこと”は、なかなか信用できないもの。
イマイチ本当に釣りがうまいのかが、疑問だったりしませんか?
そんなプロと「素人」を競わせたら、おもしろそうだ。
ならば、フルタイムで釣りに関わっている「プロ」と、「素人リーマンアングラー」を競わせるのが、もっとも力の差がわかりやすいのではないか?
企画さえ決まれば、あとは検証あるのみ。秋が深まり始めた11月上旬、都内某所にプロをお呼びして、この“ゆるいけど、真剣な勝負”が実現したというわけです。
今回の記事では、その大接戦(?)の模様をおとどけ。人より多く釣る人は、いったい何が違うのか。ぜひ、その点にも注目してみてください。
【次ページ:いざ、決戦の場へ】
リーマンアングラー vs. プロガイドによる「河川シーバス対決」
今回お呼びした「プロ」
高田 雄介
国内のフィールドはもとより、旅行者向けに「怪魚釣りツアー」を提供するなど、世界を股にかけるプロガイド。現在は自身の豊富な経験を生かし、製品の開発にも携わるなど、活躍の幅を広げている。“ビックリマン高田”というペンネームで、TSURI HACKライターとしても執筆中。年間釣行日数は300日。1990年生まれの滋賀県出身。
相手に「プロガイド」を選んだ理由は?
釣りで言うところのプロガイドとは、その名の通り、「人に釣ってもらうこと」が仕事。訪れたお客さんに“釣れた”という経験をしてもらえれば、それがリピーターへと繋がります。
だからこそ、毎日ひたすらにフィールドへ通い、お客さん以上に釣果を上げなければいけない。
いわば、とにかく釣る(釣らせる)ことだけに特化したスペシャリティーなのです。
一方、「素人アングラー」はこの人
編集部・I
TSURI HACK編集部員。“先祖が漁師”という、前評判とともに入社。しかし、数回にわたる編集部釣行では、いまだその実力を発揮できていない。シーバス歴は5年で、年間釣行日数は50日と、見本のような平均的アングラー。都市型河川シーバスを長く楽しんでいるが、最近はもっぱら「ショアジギ」に浮気中との噂も?
☝極度のアガリ症で、カメラを向けられるとうまく笑えないI君。
ここで、読者のみなさまのために、今回の対決のルールについて補足を。
【対決のルール】
・とにかく数を多く釣ったほうが勝ち
・どんなに小さくてもOK
・ただし、シーバス(セイゴ)以外の魚はノーカウント
・公平を期すため、同じスポットで釣りをおこなう(半径50メートル以内)
「場所が同じでも、釣り人によって釣果に差が出るのか?」という検証も含んでいるため、このようなレギュレーションを設定。
魚が多く釣れる場所を知っているのは、プロであれば当然ともいえるので、あえて「魚を探す」ということ以外の観点で、勝敗を決めてみたいと思いました。
サイズは問わず、単純に多くの本数を釣り上げた人物が勝ちというわけです。
つまり、編集部・I君が勝利を収めてしまう可能性も充分に秘めているという、とってもフェアなルール。
いざ、スタートフィッシング
☝川をまたいだ反対側にそびえるのは、『東京スカイツリー』。
とくに開始のホイッスルなどもなく、“ふわっ”と、対決がスタート。
今回、舞台に選んだのは首都圏を流れる大規模河川。平日にも関わらず、多くのアングラーが訪れる関東随一のメジャースポットです。
その中でも実績が高いと評判の場所だけに、すでに対岸や周囲には人影がチラホラ……。

姑息にも、フライング気味に放たれたI君の記念すべき第一投目は、きれいな放物線を描き、理想的なトレースコースへと着水。
しかし、一瞬の期待はもろくも崩れ去ることに。

☝「釣れない時間帯にコンフィデンスのあるルアーをロストするのはツライので」と、ジグヘッドをチョイス。
「お、食った!デカいかも!」と、最初のバイトを得たのは高田さん。しかし、一瞬重みが加わっただけで、テンションが抜けてしまった。

と、開始10分で両者「つまづき」から始まるという、波乱の幕開け。(なにか呪いのようなものを感じる)
いったいこの勝負どうなってしまうのでしょうか?
後半戦へつづきます。
【次ページ:ついにゲームが動き出す?】
時合を制するものはシーバスを制す
☝高田さんが、本日の対決に合わせ用意したルアーの一部。
「スナップ伸ばし」「ミニエント沈没」から始まった、今回のゆるい決戦。(とはいえ、本人たちはいたってマジ)
バイトこそ多いものの、なかなか魚を拝めない時間が続きます。
☝その後、これといったバイトもなく、ただひたすらに“ミニエント・ロス”に浸るI君。
と、プロガイドが釣れてないのをいいことに、いつも以上に饒舌。
しかし、この調子だと「ひょっとしたら、ひょっとして」の展開もあり得るのかもしれない……。
☝「いつ時合来るか、はっきりとはわからないですからね~。その時まで投げ続けるだけですよ」。気がつけば、あたりの日は暮れていた。
そして、この宣言は見事的中することに。
19:43 高田・ファーストフィッシュ
「食うとしたらココ」と自信をもって投げ続けたコースで、ついにゲームを進める一匹がヒット。
セイゴサイズではあるものの、「20時ごろ」という予告通りの魚に驚かされる。
しかし、この一匹は『高田劇場』の序章に過ぎなかったのです。
ラッシュをかけるプロ。追いつけない素人。
1匹目を釣りあげてから、約5分後の19:50、高田さんに2匹目がヒット。しっかりと、サイズアップにも成功。
と、さりげなくプレッシャーをかけられるI君。その背中には『焦り』が、プンプンと異臭を放っている。
☝ついには、この場所にいるはずもない、“編集部メンバーの野次”が幻聴として聞こえてくるほど……。
そんな姿を尻目に、ほどなく、サラリと3匹目を釣り上げる。ここまでのヒットルアーはすべて、タックルハウスの「スイミングリップルポッパー」(TKRP9)。
☝剥がれ落ちた塗装、ローリングマークや歯形に、思い入れと戦歴がうかがえます。

その後、4、5匹目を追加し、順調に数を伸ばすプロガイド。この時点でI君の釣果は0匹。
脳内に『敗北』の2文字がチラつきはじめる。
もはや、「対決」という本来の趣旨を忘れ、自分との戦いにシフト。
その切なる願いにこたえるように、ついにI君のロッドにも生命感のある“しなり”が!
☝「シーバスよ、ありがとう(泣)」と、名誉を守る一匹をゲット。しかし、口元には見覚えのないルアーが……。
話は前後するが、実は待望の一匹を連れてきたのは、高田さんから譲り受けたミノー。(マレーシアで購入、メーカー名不明)
☝ルアーはおろか、釣り方のノウハウまでいただこうとする始末。(悪気なし)
☝「尻下がりの姿勢&細かいピッチロールで泳ぐ、変わりダネなんです」(高田)
“釣れているという余裕”もあるが、対戦相手にもサービス精神旺盛な高田さん。これにはこんなワケが。
なるほど。プロガイドというのは、自分のノウハウを惜しげもなく披露するものらしい。
それもすべて、「自分を頼りにしてくれるお客さん」のため……まさに職業病とも言うのでしょうか。
そんな物思いにふけっていると、I君にヒット。ロッドの曲がり方とエラ洗いの規模から推測して、かなり良型の予感。
しかし、シーバスが最後の抵抗を見せた瞬間に、無念のフックアウト。なんともっていない!
☝マレーシアミノーで良型をバラし、星空を仰ぐ。「Slamat Jalan」はマレー語で“さようなら”。
勝敗というよりも、「見栄え的に値千金の一匹」を逃してしまったI君。プライベートでも悔しいサイズなのに、取材ともなれば精神的なダメージも、さぞ大きいことでしょう。
☝「シーバスは、得てしてバレる魚」そう語りながら、慎重&冷静にやり取り。
一方、その後も高田さんは訪れるバイトを確実にものにし、数を伸ばします。
☝「魚が上ずってますね。今日はコイツの日ですわ」と、スイミングリップルポッパーが無双状態に。
フックアップした魚は確実にキャッチする、精度の高い落ち着いたランディングに経験値が現れていました。
ここまでくると、当初の沈黙がウソのよう。あとは終了までどれだけ釣果を伸ばしてくれるのか、最終結果が楽しみ……
☝その展開を期待していないわけではない。しかし、「イソメ」でも投げない限り難しいと思いますよ。
おっと、こちらも忘れてはいけません。
I君も最後まで決してあきらめず、なんと追加にも成功。
終了時刻まで両者、黙々とキャストを繰り返していましたが、21:00にストップフィッシングをむかえました。
さぁ、いったいどちらが勝利したのでしょうか?
そうですね。では訂正しましょう。
どれだけプロガイドが素人を引き離したのか?
その結果はいかに?
【次ページ:『上手い人はなにが違う』を考察してみた】
結果発表
2‐11 プロガイド高田の圧勝!
ご覧の通り。予想通りの結果とは言え、それにしても差が開きすぎな気が(笑)

「絶対リベンジさせてください!つぎは負けませんっ!」と固い握手を交わす二人。
寒い中、遅い時間までお疲れさまでした。
編集後記
最後に客観的に勝負を見ていた筆者が、2人の釣果の差はどこから生まれたのかを考察してみました。
フィールドによって狙い方はもちろん違いますが、すこしでも参考にしていだければ……そんな風におもいます。
1.バイトに対してのキャッチ率の高さ
I君も高田さんも、バイトの数はかなり多かったと思います。しかしながら、キャッチ数に差が出たのはフッキングのタイミングや、ラインスラックの生み出し方が絶妙だったからではないかと。
年間釣行日数300日の経験から生まれるものは、ダテじゃありません。
2.時合に効率よく連発できる
魚の食い気が立つ、いわゆる「時合」と呼ばれる瞬間を逃さずに、連発していた高田さん。その一瞬のために集中を切らさず、いかにキャストを繰り返せるかも、超基本でありながら超大事なこと。
また、釣れた一匹目から得たわずかな情報をヒントに、自身の経験の引き出しから、最適なルアーや流し方&アクションを考察。釣り方がわかってから、連発するまでのスピード感もすごかった……。
3.タックルバランス
シーバス専用タックル(9.2フィートのMクラス)を使っていたI君に対し、ややライトなタックル(6.10フィートのML)を投入。結果的に、ショートバイトをはじかずにフックアップさせていました。
「ミスを減らすには、まずタックルバランスを見直す」の、好例とも思える結果です。
4.必要以上にロッドを煽らないランディング
フックアップしたあと、ロッドを必要以上に暴れさせてしまうと、ラインテンションが抜けてフックアウトの原因に。「決して焦らずに、かけた魚は確実に手元まで寄せてくる」そんな落ち着いたランディングが印象的でした。
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編集部 I君が“今一番ほしいルアー”はこれ
弾丸のように狙ったスポットに飛ぶ、空気抵抗の少ない一口サイズのバイブレーション。
「サイズに見合わないハイピッチな動きがお気に入りです。これは釣れます。一投目で根がかったのは、僕の腕のせいなので悪しからず」(編集部 I)