イシダイについて
イシダイはスズキ目スズキ亜目イシダイ科に属する、大型肉食の海水魚。『磯の王者』の異名を取り、古くから磯釣りのターゲットとして愛されてきました。磯釣り以外でのなじみは薄い魚ですが、食通の間では絶品と知られます。また、知れば知るほど不思議な生態を持つイシダイ。今回はイシダイの奇妙な生態と、人との関わりに迫ります。
イシダイの特徴
体高が高い木の葉状の体形で、名前の由来となった“石をも砕く”くちばしが外見の特徴。若魚時代に明確な縞模様は、成長とともに薄れ、くちばしは真っ黒に変化します。
イシダイの生態
食性は肉食で、海底付近を泳ぎ回り、甲殻類や貝類を主に捕食。くちばしで固い貝類を積極的に食べるイメージに反し、実際は小さなエビやカニを好んで捕食します。
産卵期は春で、仔魚は藻に付着し、プランクトンを食べながら漂流。3センチほどに成長すると海底へ住処を移し、ウニやフジツボを捕食し始めます。成長速度が非常に遅く、60センチに成長するまで20年以上を要するという研究結果もあります。
イシダイの生息域
北海道南部から九州までの磯や浅い岩礁に生息。適水温は18度から24度で、超大型は伊豆半島や紀伊半島、四国南部で釣獲されています。
東京都伊豆諸島や高知県足摺岬周辺、長崎県五島列島は磯釣り師憧れの釣り場。大型の着く磯は限られており、同じ磯釣りターゲットのグレよりも釣れる磯が少ないといわれています。
イシダイの地方名
イシダイは幼魚と成魚で外見が大きく異なるため、それぞれに地方名があります。幼魚は西日本ではサンバソウ、東日本ではシマダイ。老成魚はクチグロやギンワサと呼ばれます。
学習能力が高い?
好奇心旺盛で学習能力が高いといわれるイシダイ。水族館ではイルカのように訓練し、輪くぐりやおみくじを引く芸を披露。トゲが鋭いウニは、口から水流を吹きかけて裏返しにし、トゲのない部分から食べているようです。
飼育下では海には存在しない物もエサと認識し、昆虫やケーキ、シュークリームも食べることが確認されています。人にも慣れ、エサを求めて寄ってくる姿は愛嬌たっぷりです。
ツナミ・フィッシュ
『ツナミ・フィッシュ』と呼ばれたイシダイがいます。東日本大震災の津波で流された日本の漁船『斎勝丸』の貯蔵庫には、イシダイの仔魚を含んだ海水が充満。約2年後に斎勝丸はワシントンの海岸で発見され、なんと貯蔵庫には稚魚に成長した5匹のイシダイが泳いでいました。
侵入種となる恐れがあったため、4匹は殺処分されてしまいましたが、1匹はオレゴン州のシーサイド水族館で飼育されています。