ここまでのあらすじ

警察拘束や高速逆走など波乱の幕開けとなったインド遠征。
不安定な通信環境やクセの強いガイドに翻弄されながらも、ダム直下ではワラゴアッツーをキャッチし、マルリウスの釣獲にも成功。
しかしカトラ狙いでは計画のズレや追加料金などトラブルが続き、釣果は伸び悩む。
最終的に未知の魚との出会いを得つつ、インドという土地と人との向き合い方を学んだ遠征となったのであった。
インド遠征記.1(ワラゴアッツー編)はコチラ↓
【インド遠征記.2】インド最南端のケララ州へ大移動
800kmのバス旅

イムラン(前回のガイド)との釣行をどこか消化不良のまま終えた僕こと山根は、次の目的地・ケララ州コチへ向けて移動を開始しました。
カトラは残念な結果に終わりましたが、「インド以外でも釣れる魚だし」と気持ちを切り替え。
山根
『インドでしか釣れない、もっと言えば南部でしか出会えない魚』へと、次なるターゲットにモチベーションを移しました。
インドの寝台バスが快適すぎる件

プッタパルティからバンガロールを経由し、コチまでは約800km。
飛行機なら比較的安く移動できますが、今回はあえて夜行バスを選択しました。
『インドの寝台バスはメチャ快適』という噂は本当で、片道3,000円とやや高め(バンガロール〜コチのフライトは1万円前後)ながら、車内はまるでカプセルホテルのような空間でした。
コンセントも完備されていて、バッテリーも体力もフル充電。
約11時間の乗車時間も苦にならず、ブラジルのバスのような過度な冷房で凍えることもなく、過去イチ快適なバス旅となりました。
湿度を感じるケララ州

明け方、コチに到着してまず感じたのは“湿気”。
草木もぐっと濃い緑を帯び、乾ききった内陸から一気に海沿いへ来たことを肌で実感します。
ケララは特産種の宝庫
山根
さて、そんなケララ州で今回僕が狙うターゲットをご紹介します!
マラバールスネークヘッド(チャンナ ディプログラマ)

第一目標は、マラバールスネークヘッドと呼ばれるライギョの仲間です。
アジアを代表するゲームフィッシュといえば、“トーマン”や“チャドー”と呼ばれるライギョが有名ですが、このマラバールスネークヘッドは、100年以上にわたってトーマンと同種とされてきた魚でもあります。
しかし2011年、「チャンナ・ディプログラマ(Channa diplogramma)」という学名が復活し、独立種として再分類。釣り人よりも、どちらかといえば熱帯魚愛好家のあいだで知られている存在です。
インド南部に“変わった模様のチャドーがいる”という話は大学時代から知っていましたが、ようやく挑戦する決意が固まりました。
生息域:インド南西部(西ガーツ山脈南部〜西部)
最大サイズ:70〜80cm程度(トーマンよりやや小型)
▶︎因みにトーマンとは

こちらは、近年日本人アングラーからも高い人気を集めているトーマン(Channa micropeltes)です。
難易度、生息数の多さ、日本からのアクセスのしやすさ——どれを取っても魅力的で、まさにゲームフィッシュとしての素質バツグンの魚といえるでしょう。
イザベラスネークヘッド(シュードマルリウス)

第二目標は、イザベラスネークヘッド(Channa pseudomarulius)。
こちらも2017年に独立種として再定義され、100年以上の時を経て学名が復活した魚です。
かつては、インドのダム下釣行編で釣ったマルリウスのシノニム(同一種に付けられた別名)として扱われていましたが、現在は別種として認識されています。名前の由来は、イザベラ色(高貴な淡い茶色)を思わせる体色にあります。
見た目で分かりやすい特徴は、マルリウスには見られない鰓蓋の赤い模様。いつか本場の生息域で野生個体を見てみたいと憧れていた、ライギョのひとつです。
生息域:インド南西部(西ガーツ山脈南部)
最大サイズ:70〜80cm(マルリウスよりやや小型)
マラバールリーフフィッシュ(プリストレピス・ルブリピンニス)

マラバールリーフフィッシュは、タイ語で「象に踏まれたキノボリウオ(ปลาหมอช้างเหยียบ)」というユニークな名前を持つ魚。タイやマレーシアなどに生息しています。
かつてタイで活動していた僕にとってはとても身近で、見慣れた存在でもあるのですが、ケララについて調べていくうちに、尾鰭が赤く染まる“ゾウニフマレタキノボリウオ”が生息していることを知りました。
▶︎今回の裏本命

なんでも、2012年に Pristolepis rubripinnis という学名で新種記載された魚で、ケララ州の中でも限られた水系の渓流域にのみ生息しているとのこと。
ちなみに「ルブリ」は赤、「ピンニス」はヒレを意味します。
ケララに来たからには、ぜひとも釣っておきたい一匹です。
▶︎キノボリウオとは

ちなみに、本家のキノボリウオはこんな形……少し細身で、丸みのある体型をしています。
キノボリウオの仲間はアナバス類に属し、空気呼吸も行う魚ですが、ゾウニフマレタキノボリウオはエラ呼吸のみで生きる点が大きな違いです。
恩人と再会
インド在住の釣り好き日本人

ワラゴアッツー編で警察に捕まった際、助けてくれた日本人の方を、本記事ではリュウさんと呼ばせていただきます。
リュウさんはインドで日本料理店を営む、無類の釣り好き。今回はそのリュウさんと、2人での釣行です。
コチ空港で合流し、彼が過去にマラバールスネークヘッドを釣り上げた川を目指して出発しました!
インド料理と渋滞

ドーサと呼ばれるインド料理をブランチにサッと済ませ、ガイドの運転で目的地へ向かいますが……。
途中で渋滞に遭遇。原因は踏切なのですが、遮断機の故障といった分かりやすい理由ではありません。
遮断機が下りている間に対向車線を使って次々と追い抜こうとした結果、両側に車が溜まり、踏切が開いても身動きが取れない状態に……。
山根
僕たちには理解しがたいことが、インドでは当たり前のように起こります。
船がデカいw

出船場所を間違えつつも、それらしいポイントにたどり着いたのはお昼ごろ(またしても)。
とはいえ、不可抗力の渋滞があっただけで、無駄なく移動できたと前向きに捉えてボートに乗り込みますが……。
想像以上に大きな船に、インド人が3名も同乗。誰が本命ガイドなのかというより、「これ、小回りが効くのか……?」と一抹の不安がよぎります。
ちなみに今回のガイド陣とリュウさんは初対面(いつものガイドは中東へ出稼ぎに行ってしまったらしいです)。
アンカリングして狙っていく……

ポイントに着くや否や、「ドボン」とアンカーが投入され、船はその場で固定されました。
通常、トーマン系の釣りはオールで船を流しながら広く探るスタイルですが、どうやら今回は一カ所で粘るようです。
まだガイドとの信頼関係も築けていない段階で、頭をよぎったのは——
山根
呼吸打ちなのか?
それとも、ルアー釣りをまったく理解していない最悪のパターンか……?
超ハイペース岸撃ち
岸撃ちをリクエスト

モヤモヤした時間が続くかと思いきや、20分ほど経った頃、リュウさんが「岸撃ちやってもらいましょう!」と一言。
有無を言わせず、ガイドたちにアンカーを上げるよう指示してくれました。
自分たちの意見をしっかり通す——少し強めの意思表示こそが、インドで動くうえでは重要なのだと、この3週間の旅で強く感じています。
プロップベイトにヒット!

彼らは岸撃ちの経験があまりないようで……オールではなく(船が大きすぎて無理でした)、エンジンで移動しながら岸際のストラクチャーを撃っていくスタイルに。
ちなみに、これがとにかく速い。
体感では、エレキ全開の3倍くらいのスピードでバス釣りをしているような感覚です。
マルリウスで効果的だったプロップベイトを、その船速に合わせてキャストしていると——ジュバッ! と水面が割れました!
ホントに頬が赤い!

サイズこそ小さいものの、慎重に寄せてみると——なんとイザベラスネークヘッド!
もっと閉鎖的な環境に行かないと出会えないと思っていただけに、これは嬉しい誤算です。
この一匹で、船上の空気が一気に変わりました(改めて、乗っているのは5人もいます)。
岸撃ちでマラバールスネークヘッドもキャッチ!

相変わらずの爆速(トローリングしたらクランクベイトの泳ぎが破綻しそうなレベル)で岸際にトップウォータープラグを打ち込んでいくと——次はマラバールスネークヘッドがヒット!
ずっと憧れていたライギョだっただけに、本当に感無量。
同時に、「これで自分の中の“大型ライギョ集めの旅”の一周目が終わってしまったなぁ……」という、いつもの少し切ない感情も湧いてきました。
山根
僕に釣果が出るまで竿を置いてくれていたリュウさんにもマラバールスネークヘッドがヒットし、実釣初日としては上々の滑り出しです。
呼吸が始まった夕まずめ
ピタッと風が止んだ日暮れ時、ガイドから「最後にもう一度アンカリングしよう」と提案がありました。
「アクティビティ」と指さす先、約50m先には、鏡のような水面に頻繁に波紋が広がるエリアが見えています。
雷魚の呼吸が始まった

じつはライギョの仲間は、ラビリンス器官によって空気呼吸も行うため、水面に浮上して呼吸する習性があります。
呼吸が起きているポイントに近づき、アンカーを打ってじっくり待機。
水面が揺れた瞬間、即座にルアーを打ち込む——まるでモグラ叩きのような釣法ですが、日本のライギョ釣りでもおなじみのテクニックです。
呼吸とルアーの着水がドンピシャで重なった瞬間、「ゴンッ!」と強烈なアタリ!
重量感のある引きと、鋭い横走り——

上がってきたのは、70cm・4kg級。ナイスサイズのマラバールスネークヘッドでした!
最初はイムランの件もあり、「人数も多いし……」とガイドたちにどこか警戒していましたが、釣果という“魔法”にかけられたインド人3名と日本人2名は、気づけばすっかり意気投合。
山根
きっと、前回の釣行でもカトラが1匹でも釣れていたら、また違った印象になっていたんだろうな……と、ふと思ってしまいます。
リーフフィッシュを求めて遠征
遅刻を注意する

リーフフィッシュを求めて遠征する日の朝。
集合時間になっても、あれこれ理由をつけて現れないガイドたちに、リュウさんは冗談を交えつつもしっかりと注意を入れていました。
僕なら「まあいいか」と流してしまいそうな30分ほどの遅刻ですが、ガイドと客という関係の中で規律をつくることが、インドでは結果的に釣果にもつながる——帰国してから、そんな実感が強く残っています。
山間部の渓流

長時間のドライブの末にたどり着いたのは、山間部を流れる渓流のようなフィールド。
やや渇水気味で流れは緩く、岸辺を歩く“陸っぱりスタイル”で、小さな特産種「マラバールリーフフィッシュ」を狙っていきます。
使うのは、メバルやイワナを釣るときのような小型プラグです。
めちゃ綺麗

対岸の岩場にルアーを打ち込み、ゆっくりただ巻きしていると——クンクンッと、まるでチビメバルのようなアタリ!
上がってきたのは、ヒレの赤いゾウニフマレタキノボリウオでした。
それにしても、本当にヒレが赤くて美しい魚です。
山根
その後、リュウさんもキャッチし、午前中のうちに目標達成となりました。
goodサイズのイザベラも!
ライギョ2種も生息しているフィールドということで、タックルを持ち替え、プロップベイトを投げ込んでいきます。
静かな渓流域に響くプロップの音が心地いいな……と思っていると——ドバーーーン!

上がってきたのは、ナイスサイズのイザベラスネークヘッド。
山根
イザベラ(高貴な赤茶)色が美しい個体で、飾り鱗こそ少ないものの、しっかりと太っていて、ライギョ好きにはたまらない一匹でした。
支流の細流へ
最奥に真っ赤を求めて

リュウさんも僕と同じく源流釣りが好きということで、午後は「細流に入ってみたい」とガイドにリクエストしてみます。
小さな尾根を越えて入渓すると、まさにイワナが潜んでいそうな雰囲気。
イワナは源流に近づくほど体色が濃くなるイメージがあるだけに、リーフフィッシュの発色にも期待が高まります。
真っ赤!

さっそく予想的中。
真っ赤なリーフフィッシュをキャッチすることができました(個体差かもしれませんがw)!
本当に驚くほど綺麗な個体で、どうしてここまでヒレが赤くなるのか……。魚の体色って不思議だなと、改めて感じさせられます。
小魚たちも超綺麗

綺麗な小物たちは、リーフフィッシュだけではありません。
ミミズやグルテンを使うと、さまざまなコイ科魚類が顔を見せてくれます。
中でもこのバリリウスは、まるでタナゴのような発色でひときわ美しい魚でした。
山根
欲を言えば、婚姻色のマラバールスネークヘッドも見てみたかったところですが、繁殖期は雨季とのこと。
いつか機会をつくって、再訪してみたいと思います。
インド人とのコミュニケーション方法を学んだ4日間でした

南インドの特産種を狙った今回の釣行、リュウさんの的確な指示とガイド達の知識のお陰でトラブルもストレスも無く目標を達成することができました。
たまには、こんなボーナスステージがあってもいいと思えるくらい気楽な釣行でしたが、こんな理想的な流れがいつまでも続くはずは無く……。
山根
次回はマシールと呼ばれる肉食性のコイを狙った釣行記をお届けしますのでお楽しみに!
撮影:山根央之
