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絶句とイラッの連続。3日間ノーバイト──それでも追い続けた“正体不明の1匹”

絶句とイラッの連続。3日間ノーバイト──それでも追い続けた“正体不明の1匹”

「俺の指示に従え」

そんな言葉から始まった、インド怪魚遠征の記録。

狙うは50kg級に達するとも言われる、肉食性の巨鯉。

過酷なルール、高額な餌代、癖の強いガイドに振り回されながらも、ひたすら追い続けた。

理不尽の先で見た結末とは——。

目次

ここまでのあらすじ

ワラゴアッツー編の釣行で不完全燃焼に終わった山根は、特産種の宝庫・ケララ州へ移動。

寝台バスで800kmを走り、恩人リュウさんと合流。クセの強いガイドや文化の違いに戸惑いながらも釣りを開始する。

不安を抱えつつ岸撃ちに切り替えると流れは一変。イザベラスネークヘッド、マラバールスネークヘッドを次々キャッチし、目標を達成したのであった。

インド遠征記.1(ワラゴアッツー編)はコチラ↓

インド遠征記.2(ケララ州編)はコチラ↓

インド遠征記.3|肉食性の巨鯉を求めて

“川の虎”と呼ばれるマシール

インドの絶滅危惧種であるハンプバックマシール
ハンプバックマシール

3週間にわたるインド釣行も、残すところ12日。

最後の目標を達成するため、残りの期間をすべてこの挑戦に費やす計画です。

ターゲットは、オレンジフィンマシール。最大50kg以上に成長し、強い肉食性を示す大型のコイ科魚類です。

インドにはさまざまなマシールが生息していますが、この魚は情報が少なく、その“わからなさ”こそがモチベーションとなり、挑戦を決めました。

山根

珍しそうな魚種ほど、気になってしまうんです。

ブルーフィンマシール

外来種として問題になっているブルーフィンマシール
ブルーフィンマシール

そしてもう一種類、ブルーフィンマシールも狙います。

こちらも最大30kg超えの大型コイ科魚類。水面まで魚を追い回して捕食する獰猛なプレデターです。

近年ではインド内での国内外来種として大問題になっている魚でもあり、オレンジフィンマシール減少の一因にもなっているとされています。

インドのバスは超快適

インドの寝台バスで休む怪魚ハンター

ケララでの釣行を終えた僕は、超快適な寝台バスに乗り込み、目的地を目指しました。

車内ではしっかりと睡眠を取りつつ、Webミーティングなんかもこなします。

山根

インドに限らず、年を追うごとに、海外遠征は本当に快適になっていると実感します。

許可証に付属されるガイド

パーミッションの取得完了

オレンジフィンマシールの生息する川で釣りをするための許可証

ローカルバスを乗り継ぎ、計画段階からインド人の友人に依頼してスペシャルパーミッションを取得していた川へ到着しました。

オレンジフィンマシールは無許可での捕獲が禁止されているようですが、今回は保護活動に協力するという名目で、特別に許可を得ることができました。

頑固なガイドさん

頑固だけど釣らせようとしてくれるガイド

当初は、大好きなキャンプスタイルで、夜釣りも含めてじっくり狙ってみたいと思っていたのですが……。

しかし、明確なルールがあり、自由に釣りができるわけではないと友人から聞いていた通りでした。あまり英語が話せない、いかにも頑固そうなガイドがあてがわれました。

「初めまして!こんにちは、ヒロです!」という僕の挨拶に対して、彼は名乗ることもなく、「俺の指示に従え」と一言。

そんな空気のまま、釣りが始まりました……。

餌は練餌

マシール釣りの餌

釣り餌は、穀物の一種であるシコクビエの粉末を練ったもので、現地では「ラギ」と呼ばれています。

ラギ団子を使うことは予習していたのですが、驚愕したのはその値段。

なんと、この一袋で約1000円。毎日の餌代だけで3000円の出費です。

「高すぎん!?」と突っ込むも、「要らないのか?」と一蹴され……。

「要ります!」としか言えず……。

山根

このガイド、強敵だと確信した瞬間でした。

3日間釣果ゼロ

シコクビエを使った練餌

釣り方は針一本。オモリもウキも使わない超シンプルな仕掛けにラギ団子を埋め込み、川へ投げ込みます。

日本で実際にラギ団子を作って練習していた通り、現地で用意したものも比重が高く、かなり強固です。

1投あたり1〜2時間待つというサイクルで、3日間トライ。

しかし、弛んだ糸が一瞬張る程度のアタリが数回あっただけで、見事にノーフィッシュでした。

ブッコミ釣りスタイルでマシールを狙う

ガイド曰く、マシールはラギ団子を咥えてもすぐに吐き出すらしく、ラインが走ったら数秒以内にアワせるのが鉄則とのこと。

1日中、竿のそばで水面を見つめていると、目の前で巨大な魚が跳ね上がったり、マシールが小魚を追い回すナブラが起きたりします。

7日でブルーフィンが1〜2匹というのが平均釣果と予習していたため、余裕を持って10日間を確保していたのですが……。

山根

想像以上に魚の気配はあるのに、ヒットはありません。

小物釣りへシフトチェンジ

ルアーで連続ヒット

ルアーで釣れたブルーフィンマシール
ブルーフィン

ブルーフィンマシールは、特大サイズにこだわらなければルアーで数釣れる魚というイメージがありました。

そこで4日目の朝、懇願に懇願を重ねて、ついにルアーフィッシングを解禁です。

すると、ミノーにブルーフィンが次々とヒット!

山根

サイズこそ小さいものの、初めての1匹はやっぱり格別に嬉しかったですね。

▶︎鋭い引き味が病みつきになりそう

ミノーで釣れたブルーフィンマシール

ニゴイというよりも、コイに近い風貌とスピード感です。

ルアーへの反応はすこぶる良いものの、スレるのも早く、群れでの警戒心の高さはコイっぽいなと感じました。

引きはコイよりもすばしっこくてトルクフル。60cmほどのブルーフィンでもフックやリングを壊してしまうほどのパワーファイターで、釣り物としての素質はバツグンです。

コイが一直線に走るのに対して、ブルーフィンは進行方向を変えながら、「ギュギュギュッ!ギュギュギュギュッ!」と引き込む感じですね。

タナゴ仕掛けで魚種稼ぎ

雄のロージーバルブ
雄のロージーバルブ

ルアーでもオレンジフィンが釣れるとは予習していたのですが、圧倒的にブルーフィンの数が多い状況。

ならば超大型に狙いを絞ったほうが確率は高いと判断し、再びラギ団子の釣りに戻りました。

ブッコミ釣りの傍らでルアーを投げるわけにはいかないため、タナゴ仕掛けでバルブ類を釣りながらアタリを待つことにしました。

何も掛からないダンゴ餌

集魚剤を追加したラギ団子

あまりに釣れないため、4日目からは持参したコイ用フレーバーを添加したり(ガイドには大反対されながら)、リグを工夫したり(ガイドがいない隙や寝ている間に)と、さまざま試したのですが……。

とにかく、アタリがありません。

山根

時おり、目の前で20kgはありそうなブルーフィンがもじるんですけどね……。

一同騒然、保護センターへ搬送

掛かってきたのは小さなマシール

オレンジフィンマシールの幼魚
オレンジフィンマシールらしき魚

実釣5日目。

この日も、ピクリとも動かないブッコミ竿の横で小物釣りをしていると、少し黄色っぽい小さなマシールがヒットしました。

すると、木陰にいたガイドから「ゴールデンマシール!」と声が飛びます(彼はオレンジフィンのことを“ゴールデン”と呼んでいました)。

オレンジフィンとブルーフィンの幼魚は見分けるのが難しいことは、事前に予習済みです。

ガイドが僕の機嫌を取ろうとしているだけかもしれない——そんな疑いもよぎりました(そもそもオレンジフィンの幼魚の写真は、ネット上にほとんどありません)……。

それでもテンションの上がったガイドは、魚を大切そうに網へ入れ、そのまま各所へ電話をかけ始めました。

オーナーが駆け付ける

オレンジフィンと断言するオーナー

ほどなくして、ほかの釣りガイドらしき人物と、この釣り場を管理するオーナーがやってきて、オレンジフィンマシールだと断言してくれました。

彼ら曰く、下顎の形状で両種を見分けられるそうで、なんとこの場所では今シーズン初の捕獲とのこと。

山根

嬉しいような、でも本当なのか……。

もしかしたら、宝くじが当たったときって、こんな気分なのかもしれません。

保護センターへ移送

保護施設へ移送されるハンプバックマシール

保護センターでは、野生のオレンジフィンマシールを集め、人工繁殖による種の保存と種苗放流を目指しているそうです。

山根

めちゃくちゃ大切な1匹のはずなのに、ビニール袋で持っていくんかい!

——そんなツッコミは心の中に留めました。

それでも、彼らがオレンジフィンを後世に残したいという気持ちを持っていることは、強く伝わってきた瞬間でした。

ついにヒットするも……

ラインブレイク

木陰で休むガイド

その後も、これぞオレンジフィンと呼べるような超特大サイズのマシールを狙い、粘り続けてみたのですが……。

結局、餌を小舟で運んで投入する際に、一度だけヒットがあっただけで終わってしまいました。

船から餌を落とし込んでいる最中、糸が物凄い速度で走り出します。

しかし、ガイドはラインを離すどころか、なぜか強く引いてしまい(おそらく焦ってアワセを入れ、そのままファイトしようとしたのでしょう)、僕はリールのベイルを返すこともできず、あっけなくラインブレイク。

岩場のポイントだったため、根ズレで切れてしまったのだと思いますが……。

山根

開口一番、「俺は何もしていない!お前の釣り糸が悪い」と言われて……ズーンときましたね(笑)

街に向かう決断

オーナーはとても親切で丁寧な方でしたし、ガイドもイラッとするけど憎めない人物でした(彼が「ゴールデン」と言わなければ、僕もブルーフィンとして扱っていたかもしれません)。

とはいえ、チップ代や餌代など想定外の出費が毎日かさみ、ストレスもどんどん溜まっていく状況。予定より早めに撤収することにしました。

山根

サイズこそ極小だったものの、種類としてはオレンジフィンが釣れた——

そう自分に言い聞かせ(確率的には半信半疑ですが)、まだ見ぬ“インドならではの魚”を狙いに向かいました。

練餌の原価

ちなみに、スーパーでラギの値段を確かめてみると、1kgあたり約100円……。

ガイドの言い値の、なんと10分の1です。

山根

さあ、明日はいよいよ滞在最終日。

切り替えなきゃと、自分に言い聞かせます。

別の街に住むインド人の友人が釣り仲間を紹介してくれたので、案内してもらうことになりました。

帰国日、前日の釣行

街中の川へ

翌朝、シカゴ在住経験のあるドライバーと、英語がまったく話せないガイド役らしき人物が、宿まで迎えに来てくれました。

僕もシカゴには縁があるため、アメリカの話題で盛り上がりながら、自分の目標が「いろんな魚種を釣ること」だとガイドに伝えてもらうと、快く受け入れてくれました(当初はブルーフィンを狙いに行きたそうでしたが……)。

カルナティックカープ

カルナティックカープ

第一目標は、最大50cm前後と、マシールに比べると小型種であるカルナティックカープ。

ルアーでも狙えるようですが、どちらかというと草食性が強い種類とのこと。

ガイドが用意してくれたカレーチップスと花びらを餌にして、釣ることができました。

▶︎スパイスのニオイがプンプンするぞ

釣り方は超シンプル。このお菓子を針につけて、川に流すだけ。

最初はカレーの匂いがしていて、「絶対釣れんだろ!」と思っていたのですが……。

山根

インドでは魚もスパイスが好きなのかもしれません(笑)

アジアのシクリッド

オレンジクロマイド

続いてリクエストしたのは、アジアにわずか数種類しか生息しないシクリッドの一種、オレンジクロマイドです。

釣ったことはないけれど、「いる場所は分かるぞ」と案内されたポイントをランガンしまくり、なんとかタナゴ仕掛けで釣り上げることに成功しました!

最大でも10cmに満たない小さな魚ですが、シクリッド釣りが大好きな僕にとっては、思わず声を上げてしまう1匹です。

スターダストが綺麗なブルズアイ

マルリウス

イムランとの釣行で釣り上げたブルズアイスネークヘッドことマルリウス。地域ごとにさまざまなバリエーションがあることから、この川の個体も釣ってみたいとリクエストしました。

流れの強い川でしたが、スピナーを駆使して探っていくと——ゴンッ! 雷魚らしい手応えが伝わってきます。

上がってきたのは、うっすらとブルズアイ模様(尾鰭付け根の的模様)が残り、スターダストと青いヒレが美しい個体でした。

▶︎スルマルリウスとは……

スルマルリウスと呼ばれていたスネークヘッド
スルマルリウスと呼ばれていたスネークヘッド

続けざまに釣れた2匹目も、同じような模様の個体。ガイドは「これは普通のマルリウスじゃない、どちらもスルマルリウスだ!」と言っています……。

たしかに、この水系のマルリウスについて議論があることは知っていたのですが、「スルマルリウス」という名前は初耳で、やや困惑しました。

山根

僕のご機嫌取りで「別種だ!」と言ってくれている説も否定できず……。

真相は、今の僕にはわかりません(笑)

1日じゃ足りなかった

夕方に釣れた外来種であるブルーフィンマシール
ブルーフィンマシール

最後のスネヘに関する説明は正直よくわからなかったのですが、このガイドさん、インド人としては珍しく「できないことはできない」とハッキリ言い切ってくれたのが好印象でした。

じつはダメ元、そしてこの人を試す意味もあってカトラ釣りもリクエストしてみたのですが、「1週間前に言ってくれれば、撒き餌をして釣り場を作っていたのに……」と残念がられました。

「1日では難しい」とはっきり言ってくれたおかげで、この人を信じることができた。

結果として、多くの魚種に出会うことができました。

必ず、インドに戻ってきます

数年前に釣り上げられたオレンジフィンマシール
オレンジフィンマシール

三編にわたってお届けしてきたインド釣行記も、今回で最終回となります。

いつか、この写真のような大きなオレンジフィンマシールの生息数が回復することを祈りながら……。

もしその時が来れば、次は自分なりに考えた釣り方や餌で、再挑戦してみたいと思っています。

警察に捕まったり、理想通りの釣果が出た場面もありつつ、いろんな人と出会い、さまざまな感情を味わった3週間でした。

山根

ほかの国よりイラッとする場面が何倍も多かったのは事実ですが、それでも、まだ出会いたい魚種が山積しているインドに、僕は必ず戻ってきます。


撮影:山根央之

インド遠征記.1(ワラゴアッツー編)

インド遠征記.2(ケララ州ー編)

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