おさかな寝かせてシート(W-PHマット)について

おさかな寝かせてシートは、W-PHマットという名称でも販売されており、知る人ぞ知るアイテムとしてスーパーや飲食店でも愛用されていました。
通販などを中心に業務用としての販売が多かったのですが、釣具店などでも取り扱いが始まり、釣り人からの注目度も高まっています。

特殊な4層構造によって、ドリップを吸収し、細菌の増殖や変色を抑制。
ドリップとは、タンパク質や旨味成分などを含んだ赤い液体(=組織液)のことを指し、魚や肉から流出します。
ドリップがあると、微生物や菌が繁殖しやすい環境になってしまい、身の品質低下を招きます。
余分な水分やドリップが身に触れて戻るのを防げる構造になっているのが、一般的なキッチンペーパーと大きく異なる点です。
tsuki
シート自体が弱酸性になっていることにより、細菌増殖を抑え、鮮度が保てるのも特徴です。
おさかな寝かせてシート(W-PHマット)の使用方法

キッチンペーパーで下処理した切り身の水分をしっかり拭き取ります。

緑のザラザラした面に魚の身をおきます。

魚をシートで巻いたあと、ラップなどに包んで、冷蔵庫に保管。

シートで巻いたあとは、さらにアルミホイルで空気が入らないようにして巻くのも推奨されています。
アルミの優れた熱伝導率によって、素早く身を冷やせますよ。
皮付きの場合は、皮面を上に身側を下にして、敷いたシートに水分を落としていくような使い方が良いでしょう。
tsuki
シートは、1日毎の交換が推奨されていますが、極端にシートが湿っていなければ交換しなくても問題ないようです。
おさかな寝かせてシート(W-PHマット)の効果を比較検証!

おさかな寝かせてシート(W-PHマット)は、実際に効果があるのか?
寝かせてシートの効果を検証しました。
キッチンペーパー・ミートペーパーと比較検証

一般的なキッチンペーパーと筆者が魚の熟成でよく使用しているミートペーパーを用意しました。
魚の切り身を各ペーパーで包み、ラップに包んでから冷蔵庫で寝かせます。
各ペーパーは毎日交換し、身の状態の見た目の変化やニオイ、味などを確認します。

検証には、淡路島沖で釣れた新鮮なサンバソウ(イシダイの幼魚)の切り身を使用。
できるだけ同じようなサイズを選びました。
検証1日目 サンバソウ(白身魚)
おさかな寝かせてシート

ドリップや余分な水分は、かなり抜けており、シートの外側が少し湿っているくらいでした。
特にニオイも気にならず新鮮な状態が保たれています。
キッチンぺーパー

ペーパー自体がビタビタになるくらい濡れており、ドリップをかなり吸収している印象。
新鮮な状態のため、ニオイはしませんが、吸収したドリップがそのまま身にあたるのが少し気になります。
ミートペーパー

状態は、ほぼキッチンペーパー同様でした。
ペーパーの厚みや丈夫さもあり、ペーパー自体に湿り気はなく、キッチンペーパーより若干吸水しにくいかなという印象です。
1日目の結果

左から寝かせてシート、ミートペーパー、キッチンペーパーの順に、各サンプルの切り身を並べてみました。
さすがに1日目なので、見た目の変化はなく、どれも新鮮な状態に見えます。
tsuki
シートは、1日毎の交換が推奨されていますが、極端にシートが湿っていなければ交換しなくても問題ないようです。
検証7日目 サンバソウ(白身魚)
おさかな寝かせてシート

毎日シートを交換しましたが、見た目の変化はなく、みずみずしさも保たれています。
少しだけ生臭さもありますが、気になるレベルではなかったです。
キッチンペーパー

毎日ペーパーを交換したためか、かなり水分が抜けており、身の表面は少し乾いています。
ニオイは寝かせてシートの身より、若干強く感じました。
ミートペーパー

キッチンペーパーと同様、水がかなり吸収されており、身の表面が少し乾いています。
7日目の結果

切り身の見た目の状態も変わりません。どれも旨味を強く感じ、味は美味しいです。
身は初日よりも随分柔らかくなっており、食べると熟成魚らしいネットリ感が少し残ります。
ミートペーパーとキッチンペーパーは、水分が多く抜けているためか、寝かせてシートよりは少し身が硬い印象でした。
検証14日目 サンバソウ(白身魚)
おさかな寝かせてシート

熟成2週間経過、寝かせてシート14日目の様子です。
若干の変色やニオイがありますが、みずみずしさは保たれており、まだ美味しく刺身で食べられそうな印象。
新鮮な釣魚とはいえ、2週間の間、十分な鮮度を保てていることに感動です。
キッチンペーパー

ペーパーの湿り気は少ないですが、身の水分もかなり抜けています。
一夜干しに近い身の状態になっているのが、寝かせてシートと大きく異なる点でした。
毎日交換を続けたことにより、身の水分をかなり奪ったようです。
ミートペーパー

14日目のミートペーパーもキッチンペーパーとほぼ同様の状態でした。
ペーパーの湿り気もほとんどありません。
ミートペーパーもキッチンペーパーも毎日交換しており、水分が少ないためか、ニオイは気になりません。
14日目の結果

初日や1週間の状態と比較すると、どの切り身も少し変色が進んできています。
味は美味しく、熟成としてはピークに近い印象です。
寝かせてシートは水分が保たれ、粘り気がある食感になっており、鼻に抜ける香りの広がり方にも違いがありました。
ミートペーパーとキッチンペーパーは、水分が抜けた分、硬めの食感。刺身というよりは、ハムのような状態に近い印象です。
検証21日目 サンバソウ(白身魚)
おさかな寝かせてシート

いけるところまでいってみた熟成3週間、寝かせてシート21日目の様子です。
水分は保たれていますが、かなり変色しており、ニオイも気になるレベルでした。
身の弾力も無くなっており、グニョっとしている印象です。
キッチンペーパー

かなり変色しているのと、乾燥が進み、刺身とは別物になっています。
身が小さくなってしまった分、余計に水分がなくなったのはありますが、吸水性の高いキッチンペーパーを長期間毎日交換して使うのは良くないみたいです。
キッチンペーパー

キッチンペーパーと同様、ほぼ干物状態になっていました。
乾燥しているためか、ニオイはほぼありません。
21日目の結果

どの切り身もかなり変色しており、食べるには微妙な状態になっていました。
寝かせてシートの身は水分が保たれていますが、ニオイが気になり、味もいまひとつです。
身が柔らかくなり過ぎており、グニョっとした食感も微妙でした。
シート以外の身は味がピークを過ぎ、水分が抜けている分、大きな変化は感じられません。
乾燥が進み、食感はジャーキーのように硬く、熟成魚とは少し違う印象でした。
サンバソウ(白身魚)での総評

寝かせてシートでは17日目までは美味しく頂けましたが、以降は下り坂な印象でした。
寝かせてシート以外の身は、水分が吸収され乾燥が進んだ分、14日目以降の味の変化は少なかったです。
ただ、水分がペーパーに奪われる分、ジャーキーやハムに近い状態となり、刺身の状態とは大きく異なりました。
キッチンペーパーやミートペーパーの身が寝かせてシートと同じように美味しいと感じながら食べられたのは10日目くらいまでです。
検証1日目 ブリ(赤身魚)

キッチンペーパーやミートペーパーを長期間毎日交換すると、水分を奪いすぎることが判ったので、少し条件を変えて再検証してみました。
シートやペーパーは身の状態を見て、必要そうであれば、適宜交換していきます。
魚はサンバソウより鮮度落ちが早そうなブリを使って、もう少し変化が判るようにしました。
おさかな寝かせてシート

身の水分量が多いためか、サンバソウの時よりもドリップが多く、シートもかなり湿っている状態でした。
シートの外側も少し湿っており、汚れていた様子から、ドリップはちゃんと吸収してくれている印象。
吸水はまだできそうな状態だったのと、寝かせてシートの交換頻度を少なくできるのかも確認したかったので、1日目は交換しないようにしました。
キッチンペーパー

ドリップがかなり吸収されている状態でした。
このまま寝かせると身にドリップが触れて続けてしまうため、キッチンペーパーは交換。
ミートペーパー

キッチンペーパーと同様、ドリップをかなり吸収した状態でした。
ドリップを身に当て続けるワケにはいかないので、こちらもペーパーを交換します。
検証3日目 ブリ(赤身魚)
おさかな寝かせてシート

3日間交換しない状態にしていましたが、身は綺麗な状態でみずみずしさも十分保たれています。
とはいえ、シート自体はかなり湿ってきていたので、交換しました。
ミートペーパー

この時点では変色もなく、寝かせてシート同様、身の状態は綺麗でした。
キッチンペーパーの状態もほぼ同様、ペーパーは交換します。
検証4日目 ブリ(赤身魚)
おさかな寝かせてシート

シートは交換しましたが、水分は奪われ過ぎず、みずみずしさを保っています。
シートは交換せず様子を見ることにしました。
キッチンペーパー

毎日交換したためか、水分が多く吸収され、身の表面が少し乾いた状態になってきました。
初日と比べると変色もしていますが、ペーパーを交換するとさらに乾きそうだったので、交換せずに様子を見ます。
ミートペーパー

キッチンペーパー同様、水分を多く吸収しているためか、身の表面が乾いてきました。
少し変色もしていましたが、さらに吸水されそうだったので、ペーパーは交換しないようにしてみます。
検証7日目 ブリ(赤身魚)
おさかな寝かせてシート

水分は保たれていますが、さすがに1週間経つと変色が進み、ニオイも少し気になります。
そろそろ生食の限界ラインかなといった印象です。
毎日マメにシートを交換しておけば、もっと鮮度を保てたかも知れません。
キッチンペーパー

シートを変えないこともあったためか、かなり変色しており、ニオイもします。
寝かせてシートと比較すると、生食は難しそうな状態です。
ミートペーパー

キッチンペーパーと比較すると変色とニオイはマシですが、やはり身は乾いた状態になってきています。
こちらも生食はギリギリといったラインです。
ブリ(赤身魚)での総評

その後も11日目まで確認してみましたが、どのサンプルも変色が進みニオイが強くなるだけでした。
鮮度落ちの早い青物の場合、寝かせてシートを使って、7日目程度までが生食の限界かなという印象。
身の水分を奪いすぎるペーパーは、4日目時点で身が乾き始めるので、長期間の熟成に不向きであることを再確認しました。
寝かせてシートなら余分な水分だけを吸収し、水分を身に戻さないので、長期間の熟成もしやすいです。
グリーンパーチ紙と比較検証

グリーンパーチ紙(パーチメント紙・青紙)は、保湿と保温性能に優れる耐水紙です。
その保湿性能から熟成などの用途に鮮魚店や飲食店で使われていることも多く、寝かせてシートと同様、身の水分を吸収し過ぎないのが特徴。
熟成ブリの切り身を使って、寝かせてシートとの違いを比較検証してみました。
▼グリーンパーチ紙についての記事です
検証1日目(熟成ブリ・赤身魚)
おさかな寝かせてシート

既に数日熟成させている身で検証を始めたので、実質は熟成5日目の切り身ですが、水分は十分保っています。
ドリップがほとんどないので、シートは交換しません。
グリーンパーチ紙

身から出た水分は、ほとんど吸収されておらず、全体的に湿っているような状態。
身が乾くことはありませんが、水分を身に当ててしまうという観点では、寝かせてシートに劣るかもしれません。
検証3日目(熟成ブリ・赤身魚)
おさかな寝かせてシート

熟成としては7日目も過ぎており、変色はありますが、水分は適度に保った状態。
ニオイも少ないです。
グリーンパーチ紙

吸水性が低いため、身が湿った状態でビチョビチョに。長期熟成では、水分が雑菌繁殖の原因となるため、こまめな交換が必要です。
グリーンパーチ紙はキッチンペーパーと異なり吸水性が低く、乾燥や旨味の流出を防げそうでしが、身から出た水分が直接触れているため、雑菌繁殖のリスクがあります。
交換を怠ると鮮度低下につながる点には注意が必要です。

寝かせてシートも2〜3日程度なら交換しなくてもほぼ問題ありませんが、極端に交換が少ないと雑菌は繁殖してしまいます。
1週間も同じシートで保管していると写真のように白っぽくなり、身をダメにしてしまうので、注意しましょう。
tsuki
基本は毎日交換か、身の様子を確認した上で交換を判断することが必要です。
おさかな寝かせてシートの検証まとめ

キッチンペーパーやミートペーパーは身の水分を奪い続けるのに対し、おさかな寝かせてシートは吸水性が少なく、余分な水分だけ吸収してくれるアイテムでした。
グリーンパーチ紙も吸水性は少ないですが、ドリップや水分を身に戻さないという観点では、寝かせてシートの方がやや優秀です。
あくまで毎日交換が推奨ではありますが、多少交換をサボっても鮮度低下しにくく、初心者でも長期間熟成に失敗しにくくなるともいえます。
tsuki
とはいえ、あまり過信すると食中毒の原因にもなりますので、必ず身の状態は確認して交換を判断しましょう。
おさかな寝かせてシートの上手な使い方
アイテム | 吸水性 | サイズあたりのコスト | おすすめ用途 |
---|---|---|---|
おさかな寝かせてシート | やや少ない | 高い | 切り身や柵の長期熟成 |
グリーンパーチ紙 | 少ない | やや高い | 魚の包装・保管、熟成 |
キッチンペーパー | 高い | 安い | ドリップや水分の吸収 |
ミートペーパー | やや高い | 安い | 魚の包装・保管、短期熟成 |
各アイテムの吸水性やコストの違い、おすすめ用途をまとめました。
寝かせてシートは、サイズあたりのコストが高く、毎日交換も考えると沢山は使えません。
切り身など、サイズが小さいものに対して使うのが最適でしょう。
数日程度の短期間熟成なら、キッチンペーパーやミートペーパーを毎日交換してもある程度身に水分が残るので、大きな差はありません。
4〜5日以上寝かせたいなら、吸水性の少ない、寝かせてシートやグリーンパーチ紙を使うのがおすすめです。

おすすめの使い方としては、ドリップが出やすい初期の段階で魚を丸ごと1本保管する場合、まずはミートペーパーで包装するのがおすすめ。
吸水性が高いので、魚全体のドリップをしっかり吸収してくれます。
特にドリップが出やすい内臓を出した後の腹部には、吸水性が高いキッチンペーパーを詰めておきましょう。

3〜4日程度までは、ペーパーを毎日交換していれば、この方法で問題ありません。
その後もさらに丸ごと1本で保管しておくなら、吸水し過ぎないグリーンパーチ紙で魚を包装しましょう。

切り身や柵の状態にして熟成させるなら、寝かせてシートの出番です。
どの状態でもラップやアルミホイルなどを使って、できるだけ空気に触れないようにしておくのもポイントですよ。
空気に触れると痛みやすくなるので、できれば皮付きで身の部分だけに寝かせてシートを当てる使い方が良いでしょう。
おさかな寝かせてシートはこんな用途にも!

寝かせてシートは、野菜にも使えます。
野菜から出る余分な水分を吸収し、鮮度を保ち、みずみずしい状態が長続きしますよ。
もちろんお肉にも使え、ドリップを吸収することにより、変色や鮮度低下を防ぎます。

付けたまま冷凍保存も可能です。
解凍時のドリップを吸収してくれますよ。
長期間鮮度を保つ、熟成魚に便利なアイテム!

お魚寝かせてシート(W-PHマット)は、美味しい熟成魚を簡単に作れる画期的なアイテムです。
価格はやや高いですが、コスト面以外のデメリットは特にありません。
魚を美味しく長く楽しめるので、釣り過ぎても大丈夫です。
小〜中型魚の切り身に使いやすいサイズや大きな身に使いやすいロールタイプなど、ラインナップもさまざま。
tsuki
ぜひ、おさかな寝かせてシートで美味しい熟成魚を堪能してみてください。
エフピコ商事 W-PH おさかな寝かせてシート 緑
エフピコ商事 W-PHマット ロール