ノッコミ限定の……

春といえば、チヌ(クロダイ)のノッコミ。
産卵のために接岸してくるので、1年の中でもっとも釣りやすいシーズンです。
産卵ということは……オスは白子(精巣)、メスは真子(卵巣・卵)を持っています。
でも、そもそも「チヌは美味しくない」と思っている方も多いのではないでしょうか?
正真正銘、チヌはタイの仲間

アマダイやコロダイといった、標準和名が「○○ダイ」の魚は200種を超えるそうです。
しかし、その多くは「あやかり鯛」と呼ばれる、“タイではないタイ”。
実際にタイ科に属している魚は、国内に14種だけだそうです。
クロダイはタイ科に属する正真正銘タイの仲間なので、マズいわけがないでしょう(?)
ということで、春限定のチヌの白子&真子を食べてみることにしました!
まずは下処理から

今回食べるのは、和歌山の磯で釣ってきたチヌ。
最低限の血抜きなどはしましたが、翌日も釣行だったため、「処理は完璧ではなかったな〜」という感じです。

とはいえ、捌いてみると身は綺麗で臭みもほとんどなく、美味しそうです。
身質はしっかりしていますが、栄養を生殖器に取られているせいか、どの個体も脂のノリはイマイチな印象でした。

真子を丁寧に取り出してみると……
魚体に対してかなりのボリューム感!!

こちらは白子です。
真子ほどではありませんが、良く発達しています。

白子は綺麗でしたが、真子は少し血が回っているのか赤っぽいですね。
今まで捌いてきた魚はもう少し明るい色のものが多かったので、チヌも本来はもう少し白っぽい色なのかもしれません。

白子も真子も汚れや血管を除去した上で、臭みを抑えるために酒に漬け込んで冷蔵庫で冷やしておきます。

寄生虫は見られませんでしたが、加熱調理推奨です。
その日に食べないのなら、先にささっと加熱処理をしておきましょう。
火はしっかり通したいので、ボリュームのある卵巣は1口大にカットしておきます。

そのまま沸騰したお湯に入れると、卵巣は広がって花が咲いたような状態に!

白子はそこまで大きくないので、切らずに丸ごと茹でます。
ちなみに、火を通しても長期保存できるワケではないので、1日か2日程度で食べるようにしましょう。
はたして旨いのか!?

下処理が終わったので、さっそく料理して食べていきます。
卵巣は数匹分でもかなりのボリュームだったので、食べ応えもありそうです!
真子の煮付け

真子といえば、定番は煮付けですね。
花が咲いたような見た目から、花煮とも呼ばれます。
砂糖、酒、醤油、みりんでコッテリ気味に煮れば完成!

真子にタレがよく絡んで美味しい!
真子そのものに味がしっかりあるわけではありませんが、タレの味と真子の食感がGOOD。
臭みや雑味なんかも全然ありません。
ちぬこパスタ

パスタソースを作るために、スプーンを使って真子をバラします。
バラした真子をバターで炒め、マヨネーズと醤油で和えればパスタソースの完成!

粒の大きさがたらこに近く、味わいも“ほぼたらこパスタ”でした。
チヌ特有の味があるわけではありませんが、粒の量が多くてパスタとよく絡むのでおすすめです!
パスタソースは冷凍しておくと少しの間は日持ちしますよ。
白子のホイル焼き

アルミホイルに包んだ白子をグリルかオーブンで焼けば、ホイル焼きのできあがり。
シンプルに、ポン酢に付けて食べてみます。

白子らしいクリーミーさはあるものの、予想よりもかなりあっさりしていました。
今まで食べてきたタラやグレに比べると、濃厚さは少ないですね。
コッテリ好きの筆者的には、「ちょっと物足りないな〜」というのが正直な感想です。
白子の味噌漬け焼き

あっさりしたものにはコッテリした味付けを。
ということで、味噌とみりん、砂糖を混ぜたものに一晩漬け込み、味噌漬けにしてみました。

ホイル焼きの要領で焼けば、表面はこんがり、中はふんわりした状態に。
味噌の濃厚さと香ばしさに白子の風味が絡み、相性は抜群!
少し手間はかかりますが、酒の肴にするなら味噌漬け焼きがおすすめです。
肝も食べてみた

捌いている時に美味しそうに見えたので、ついでに肝も食べてみました!
やはり血抜きが甘かったせいか、ちょっと血が回ってしまっています。

醤油、生姜、砂糖、酒、みりんで、しっかりめに甘辛く煮込んでみました。
意外と鶏の肝に似ていて、かなりあっさりした味わいです。
あまり量が取れないのが難点ですが、たくさん釣れたら煮付けにする価値はあると思いますよ!
料理次第で美味しく食べられます!

真子も白子も、他の魚に比べるとあっさり系の味わいでした。
悪くいうと濃厚さと旨味には欠けますが、良くいうとクセが無く、料理次第でかなり美味しく食べられます。
産卵期の乱獲を推奨するわけではありませんが、ぜひ季節限定の味を楽しんでみてくださいね。
撮影:tsuki