そもそも、バチ抜けとは?
“バチ抜け”というのは、多毛類(ゴカイやイソメ)が産卵行動のために巣穴から抜け出し、水中を漂う現象です。
バチは遊泳力が低く、産卵から戻ってきた体力のないシーバスでも捕食しやすいため、バチを求めて多くの魚が集まってきます。
ベイトフィッシュをメインに食べているハイシーズンとはアプローチが大きく異なるため、ロッド選びも非常に重要です。
バチ抜けに適したロッドとは?
そもそもバチは水中を漂っているだけなので、シーバスに襲われても小魚のように逃げることはありません。
それゆえに、シーバスは口を少し開けて軽く吸い込む程度で、バチを捕食できます。
こういった理由から、ルアーへのバイトを弾かないような、ティップ(穂先)の柔らかいロッドが必要です。
また、バチ用ルアーは細軸フックを搭載しているものが多く、ベリー(中腹)からバット(根本)にかけてもしなやかなロッドが適します。
硬いロッドはバイトを弾くことが多く、掛かったとしてもフックが伸びやすいのでバチパターンには適しません。
ロッドの選び方1. 硬さ
バチパターンには、柔らかい番手(〜MLクラス程度)を選択するのが基本です。
硬さ別にメリットや適した使い方を解説します。
超柔らかめ(ソリッドティップ)
近年は高価格帯のロッドを中心に、バチパターンに特化したソリッドティップ仕様のロッドも発売されています。
ソリッドはチューブラーよりも細く作れるため、柔らかくて食い込みが良いことが特徴です。
その反面、ティップが非常に細いので扱いには少し注意する必要があり、柔らかさゆえにルアーへアクションを加えるのには適しません。
柔らかめ(LL〜Lクラス)
一般的なシーバスロッドのラインナップの中では、柔らかい部類のLL〜Lクラスがバチ抜けには最適です。
バチ用ルアーに多い約3〜20g程度のウエイトに適し、ソリッドティップには及びませんが食い込みも優れます。
また、春先に多いマイクロベイトパターンにも使いやすいため、1本持っていると春のシーバスを攻略するのに活躍するはずです。
オールマイティ系(MLクラス)
ベストな選択肢ではないかもしれませんが、オールマイティなMLクラスもバチパターンに使えます。
とは言え、ソリッドティップやLクラスに比べると硬いので、状況によってはドラグを緩めに調整したり、フックを太軸にしたりといった工夫が必要です。
MLクラスはバチ抜けシーズンが終わってからの夏や秋のシーバスも楽しめ、汎用性の高さはトップクラスです。
バチ抜け用シーバスロッドの選び方2. 長さ
バチ抜けが起こる場所は、湾奥や運河、大型河川など、様々です。
そのため、普通のシーバスロッドと同じく、バチパターンでもフィールドに応じた長さのロッドを選ぶ必要があります。
湾奥や運河にはショートロッド(7ft〜8ft前半)
バチ抜けはとくに都市部の湾奥や運河で多く、こういった小規模な場所ではキャスト精度や取り回しが大切です。
都市部では魚がスレていることも多いので、繊細なアプローチを必要とする場面が多くなります。
その一方で飛距離はそれほど必要ないため、操作性に優れる7ft半ば〜8ft前半のロッドがおすすめです。
中規模フィールドにはミドルレングス(8ft半〜9ft)
中規模河川や湾奥のオープンエリアなど、操作性と飛距離の両立が求められる状況には、8ft半ば〜9ftまでのロッドが良いでしょう。
中規模なフィールドをメインに、運河や大規模河川にも対応する長さなので、汎用性に優れます。
また、ウェーディングをする際には、8ft半ばのレングスは取り込みがしやすいので最適です。
大規模河川や干潟にはロングロッド(9ft〜)
大規模な河川や干潟など、だだっ広いオープンエリアを効率よく探るのであれば、9ft以上のロッドがおすすめ。
その他にも、沖堤防などに多い足場の高いポイントでは、長いがゆえにルアーの操作性が良く、ファイトもしやすくなります。
また、長いロッドを立てることで、遠距離でも表層で引き波を立てながら泳がせられるので、沖の表層をゆっくり引きたい時にも重宝します。
バチ抜けに代用できるロッド
その特殊さゆえに、シーバスロッド以外にも相性の良いロッドがあります。
まずは柔らかめのエギングロッド。近年はソリッドティップやソフトチューブラーのエギングロッドも多く、これらは穂先が非常にしなやかなため、バチパターンにマッチします。
次に、フロートリグ等に使う強めのライトゲームロッドもおすすめ。あまり重たいルアーは使えませんが、小型ルアーの操作性と食い込みの良さは抜群です。
低価格帯のおすすめロッド(実売1万円前後)
低価格帯のロッドにはバチパターンに特化した専用ロッドはありませんが、ラインナップから柔らかめの番手を選べばバチパターンを楽しめます。
リバティクラブ シーバス 80L(ダイワ)
リバティクラブ シーバスは、ダイワから発売されているシーバス専用のエントリーモデルです。
入門者向けのロッドながら、Lクラスは繊細な穂先を備えており、とくに80Lは湾奥や運河のバチパターンには最適な1本。
28gまでのウエイトを投げられることから、バチ抜けも含めて、シーバス入門の1本としてもおすすめです。
80Lの他にも、Lクラスでは8ft6in、9ftのモデルも選べます。
ソルパラSPX-902L(メジャークラフト)
メジャークラフト ソルパラ SPX-902L
自重:-
継数:2本
仕舞寸法:-
適正ルアーウェイト:7~23g
適正ライン:6~12lb(PE 0.4~1.2号)
メジャークラフトが発売するソルパラは、各ジャンルでとくに入門者から支持が厚いロッドシリーズです。
実売価格は1万円以下ですが、カーボンの素材やガイドセッティング、グリップ周りの作りなど、どの点もしっかりとユーザーのことを考えられた作りです。
902Lはレギュラーファーストアクションに設計されているため、バチ用ルアーのような比較的軽いルアーも、誰でも投げやすいことが魅力。
9ftの長さもあるので、幅広いフィールドにも対応できます。
クロステージCRX-862L(メジャークラフト)
メジャークラフト クロステージ CRX−862L
自重:-
継数:2本
仕舞寸法:-
適正ルアーウェイト:7~23g
適正ライン:PE0.6~1.5号
同社のソルパラに比べ、ブランクにマイクロピッチクロスフォースというカーボンの補強が入っていることが特徴の人気シリーズです。
ブランクに補強が入っていることで、キャスト時のねじれが少ないので狙った所へキャストしやすく、飛距離も伸びます。
また、粘り強くて高負荷時にブランクがねじれにくいため、ランカーサイズがヒットしてもしっかり浮かせられます。
8ft6inのちょうど良い長さなので幅広い場所で扱え、実売価格も1万円前後となれば、コスパは最高クラスです。
ムーンショット90L(シマノ)
シマノ 21 ムーンショット S90L
自重:130g
継数:2本
仕舞寸法:141.1cm
適正ルアーウェイト:プラグ5~24g(ジグ MAX28g)
適正ライン:PE0.4~1.2号
大場所でも扱いやすい9ftの長さにも関わらず、自重はわずか130g。クラスを超えた軽さが魅力のロッドです。
軽さに加え、シマノ独自のハイパワーXというブランクの補強が入っていることも特徴。
ハイパワーXによってブランクの反発が強まり、ブレの収束も早くなるため、キャスティングのコントロール性能や遠投能力に長けています。
全体的にハリが強くてシャキッとしているので、河川でのドリフト釣法や大きい下げ潮の時など、ルアーのコントロール性が求められるシチュエーションにおすすめです。
クロスフィールド XRFS-802ML(アブガルシア)
アブガルシア クロスフィールド XRFS-802ML
自重:108g
継数:2本
仕舞寸法:125cm
適正ルアーウェイト:2~24g
適正ライン:PE0.8~1.5号
クロスフィールド802MLは湾奥や小規模河川にベストマッチの1本。
ティップが柔らか過ぎると、小場所でのクイックなキャストが難しくなってしまいますが、適度なハリがあるので小さく素早いモーションでピンポイントへのキャストが可能です。
また、2gからのウエイトに対応するキャパの広さは、近年多様化するバチルアーを幅広く扱えます。
中価格帯のおすすめロッド(実売2〜3万円前後)
実売価格が2万円を超えてくると、ソリッドティップを搭載したものなど、より専門性の高いロッドを選べるようになります。
ハイタイドSSD 711L+/SL(テイルウォーク)
テイルウォーク ハイタイド SSD 711L+/SL
自重:120g
継数:2本
仕舞寸法:124cm
適正ルアーウェイト:5~24g
適正ライン:PE0.5~1.2号
7ft11inのショートレングスに設計されており、港湾や湾奥周りなどの小場所で活躍する1本です。
小場所は魚とアングラーの距離が近いことも多く、それゆえにバイトを弾きやすいのですが、ソリッドティップによって食い込みの良さを確保しています。
ファーストテーパーに設計されていることもあって操作性が良く、ティップでわずかな変化も捉えられる感度も魅力。
ソリッドティップを搭載した専門性の高いロッドでありながら、定価19,000円はテイルウォークならでは。
アルジェント UX GARGUS-902LML(オリムピック)
オリムピック アルジェント UX 21GARGUS-902LML
自重:143g
継数:2本
仕舞寸法:142cm
適正ルアーウェイト:5~21g
適正ラインPE ~1.2号
繊細なティップと強靭なベリー・バットを持ち合わせた、操作性の良いレギュラーファーストテーパーのモデルです。
大きなバチが抜けている時に多用する重めのルアーを遠投でき、干潟や大河川といった大場所のオープンエリアに最適。
バチ抜け以外にも、ワーミングや中小型のプラグとも相性が良く、汎用性の高さも魅力でしょう。
実売価格は2万円以下ですが、高級感溢れるデザインとワンランク上のスペックを備えたコスパの高さが人気の理由です。
ディアルーナ S86L-S(シマノ)
シマノ ディアルーナ S86L-S
自重:108g
継数:2本
仕舞寸法:133cm
適正ルアーウェイト:3~21g
適正ライン:PE0.3~1号
ディアルーナは初心者から上級者まで幅広い層から人気のシリーズです。
その中でも、S86L-Sはソリッドティップを搭載しており、シリーズの中でもっともバチパターンに適した1本。
ソリッドティップはシマノ独自のタフテックで、食い込みを損なわない程度に張りがあり、操作性も両立させています。
自重はわずか108gで、トータルバランスが非常に優れたシーバスロッドです。
グランデージSTD 83L(アピア)
アピア グランデージSTD 83L
自重:145g
継数:2本
仕舞寸法:130.2cm
適正ルアーウェイト:5~21g
適正ライン:PE0.6~1号
アピアが発売するグランデージは汎用ルアーロッドシリーズですが、STD 83Lはバチパターンに最適な1本。
バチに特化したロッドではありませんが、癖の無い扱いやすいブランクとしなやかなチューブラーティップを備えており、エントリーモデルからのステップアップに強くおすすめしたいロッドです。
自重145gは8ft3inのLクラスにしては少し重めですが、4000番ボディのリールを合わせると非常にバランスが良くなります。
良く言えば程よい重厚感のあるロッドで、実売価格3万円以内とは思えないクオリティです。
高価格帯のおすすめロッド(実売4万円前後〜)
売価格4万円を超えてくると、さらに専門性を高めたロッドや、最上級のテクノロジーが投入されたロッドが並びます。
ラブラックスAGS 86ML(ダイワ)
ダイワ ラブラックス AGS 86ML
自重:112g
継数:2本
仕舞寸法:133cm
適正ルアーウェイト:7~35g
適正ライン:PE0.6~1.5号
AGSというダイワ独自のカーボンガイドを採用した、自重112gの軽量なシーバスロッド。
バチ抜けで使う軽くて細いシンキングペンシルは飛ばないものも多いのですが、AGSならではの振り抜きの良さと、キャスト後の収束の早さによって飛距離を伸ばせます。
また、ロッドを立てて巻くことが多いバチパターンでは、この軽さとAGS特有の持ち重り感の少なさは大きなアドバンテージとなるでしょう。
スワットSW842S-LML (テンリュウ)
天龍 スワット SW842S-LML (Tidal Walker)
自重:130g
継数:2本
仕舞寸法:131cm
適正ルアーウェイト:~30g
適正ライン:~16ポンド(PE~1.2号)
SWATシリーズは、老舗ロッドメーカー天龍のハイエンドシーバスロッドです。
軽くはないものの、繊細なティップとコシのあるベリー・バットを備えていて、負荷がバットへスムーズに移行するのでランカーサイズも難なく寄せられます。
また、天龍ロッド特有の粘るブランクは魚を不用意に暴れさせず、細軸フックを搭載したバチ抜け用ルアーとも好相性です。
バチパターンだけでなく、通年で使用頻度の高い10cmクラスのプラグを使いやすく、港湾部のランガンにも最適。
モアザンブランジーノ EX AGS 87LML(ダイワ)
ダイワ モアザン ブランジーノEX AGS 87LML
自重:97g
継数:2本
仕舞寸法:135cm
適正ルアーウェイト:5~30g
適正ライン:PE0.6~1.5号
ダイワのフラッグシップシリーズがモアザンブランジーノEX。8ft7inで自重はわずか97gと、圧倒的な軽さとそれによる感度が特徴です。
同社のルビアスエアリティやイグジストのLT3000番を合わせれば、タックルの総重量が300gを下回り、操作性や感度を追求するアングラーにとっては強力な武器となります。
軽いから華奢という訳ではなく、反発力とトルクも兼ね備えており、30gまでのルアーをキャストできて大型のシーバスも浮かせられます。
ロッドの捻れによるキャスト時の軌道のブレも徹底的に排除されていて、圧倒的なキャスタビリティによる繊細なゲーム展開が可能です。
ゼファー アバンギャルド ZAGS-88ST ソリッドソリューションGRT88(エバーグリーン)
エバーグリーン ゼファー アバンギャルド ZAGS-88ST
自重:137g
継数:2本
仕舞寸法:-
適正ルアーウェイト:3~18g
適正ライン:4~10lb
ソリッドティップ特有の繋ぎ目でのパワーロスや負荷の一点集中を無くし、継ぎをまったく感じないほど綺麗に曲がり込む、繊細な1本です。
キャスト時もファイト時もティップからベリー、バットへと負荷移動がスムーズに行われ、ソリッドティップでありながら非常に高いキャスタビリティーとファイト中の安定感を誇ります。
また、ソリッド部分はバチパターン特有の浅いバイトを取れる一方で、張りを強めにすることでルアーにアクションを加える釣り方にも対応。
岸釣りはもちろん、波にラインを取られやすいウェーティングでも真価を発揮します。
SilverStream 81 Stiletto(リップルフィッシャー)
リップルフィッシャー シルバーストリーム 81 Stiletto
自重:126g
継数:2本
仕舞寸法:127.5cm
適正ルアーウェイト:7~28g
適正ライン:PE0.6~1.2号
高弾性カーボンのみをブランクスに採用し、感度を徹底的に追求したロッドです。
バチ抜けに高弾性カーボン(高反発)と聞くと、ミスマッチに感じるかもしれませんが、それを十分カバーできる感度がこのロッドの魅力。
バチパターンは表層をただ巻くだけだと思われがちですが、微妙な流れの違いを感じ取れるか、感じ取れないかで釣果が変わるシビアな一面もあります。
とくに河川のバチ抜けは、流れの変化や水押しなどを敏感に捉えてアジャストする必要があり、そんな繊細な釣りにドンピシャでハマる1本です。
エクスセンスジェノスS87L +/F(シマノ)
シマノ エクスセンス ジェノス S87L+/F
自重:109g
継数:2本
仕舞寸法:134.5cm
適正ルアーウェイト:4~28g
適正ライン:PE 0.4~1.2号
エクスセンスジェノスシリーズの中で、最短&最軽量のモデルがS87L+/F。
自重107gの軽さによる操作性に加え、8ft7inという丁度いいレングスはバチ抜けシーズンの立ち回りには最適。
また、シマノ独自のカーボンモノコックグリップは、金属的な張りがあるブランクスと相まって、ルアーからのインフォメーションを鮮明にグリップまで伝えてくれます。
ファーストテーパーに設計されているのでフッキングスピードが速く、バチシーズン特有のショートバイトを瞬間的に掛ける釣りも可能です。
フィールドと釣り方に応じた選択をしよう!
“バチ抜け用のシーバスロッド”と一口に言っても、専門性の高いモデルから汎用性が高いモデルまで様々。
「ロッドで釣果が変わるのか?」と思うかもしれませんが、違いが顕著に現れるのがバチパターンの特徴です。
フィールドの規模感やルアーサイズ、釣り方に応じたロッドセレクトができれば、釣果は自ずと付いてくるでしょう!