“雨具”は365日必携アイテム

釣りを嗜む皆さんならマストで持っているであろうレインウェアなどの雨具類。
“雨具”は雨の時に使うものを指しますが、釣りにおいては雨天だけに留まらず、着用するシーンは多岐にわたります。
とくに船釣りでは必要不可欠。
船長という仕事柄、ほぼ毎日海に出るのですが、「持っていかない日はない、または、一度も羽織らない日は僅かしかない」のがリアルといったところでしょうか。
須江
今回は、釣り船の船長目線で、僕なりの雨具の役割や必要性をお伝えしていきたいと思います。
雨具に求めるコト

雨具といってもレインウェアや長靴などあらゆるギアが存在しますが、どれも雨、風、汚れなどから身を守る、そして雨具内を快適に保つのが雨具の役割だと考えます。
例えば、肌着が濡れると体が冷えて体調を崩しかねない……ということは容易に想像できるはず。そんなことが起こらないように、中の衣類を快適な状態で保つことは最優先事項。
釣りに集中するため、また楽しむために必要不可欠な存在が雨具ということなんです。
須江
雨具の役割を例えるなら“家”。
大袈裟に聞こえるかもしれませんが、それほど雨具が重要だということです。
レインウェアの出番は雨の日だけじゃない

冒頭でも触れた通り、天気が良くてもレインウェアは持ってきてほしいのが、船長の本音です。
濡れるリスクは何も雨天時だけではありません。
飛沫を防ぐ

船では、飛沫がかかる可能性が大いにあります。
とくに風が強い日には、僕達のようなオープンデッキのガイド船では飛沫を避けることは100%不可能でしょう。
真夏でも濡れれば震えるような寒さになるため、レインウェアは通年で必須というわけです。
防寒着として

皆さんは天気予報をチェックする際、最高気温ばかりに目が行っていませんか?
毎日海に出る僕がチェックするのは最低気温です。
最高気温は上着を脱ぐことでいくらでも調整できますが、最低気温にはしっかり用意がなされていないと対応できません。
レインウェアはウィンドブレーカー代わりにもなるので、1着持っておけば雨・風どちらにも対応可能。風1mにつき体感気温1℃下がると言われているので、万が一の冷たい風に備えて防寒着としても常備しておくべきなのです。
須江
とくに船を走らせている時は、釣り中よりもかなり寒く感じるので、サッと羽織れるレインウェアがあると重宝します。
あと、夏でも夜は意外と冷えます。
高価な透湿素材が絶対!とは限らない

レインウェアといえば、水の侵入は防ぎながらも湿気は通すという透湿素材が定番です。
一見、他の素材に比べてシェアも圧倒的に見えますが、必ずしも透湿素材でないと! というわけではありません。
須江
それぞれの素材のメリットとデメリットを整理してみましょう。
透湿素材

メーカーによって素材の名称が異なりますが、◯◯テックス的な名前が付いていることが多い透湿素材。
基本的に耐水圧が高いほどに高価な傾向にあります。
メリット | 蒸れない 高い防水性能を持ちながらも中の湿気を逃すというのが最大のメリット。レインウェアの中が蒸れずに雨の中でも快適に釣りができます。気温が高い時にとくにメリットを感じるので暑い時期におすすめの素材です。 |
---|---|
軽い 軽くて疲れにくいのが透湿素材のメリットでもあります。長時間釣行ではウェアの重さが地味に負担になります。ウェアが軽いことで疲労を軽減でき、釣りへの集中力が持続できるわけです。 | |
携行性に優れる 小さく収納できるというのも透湿素材のメリットです。雨予報ではないけれど船に持ち込んでおきたい、という場面でも嵩張りにくいです。 | |
デメリット | 経年劣化で濡れる 透湿素材は撥水効果が無くなると内部に水が浸みてきます。防水スプレー等でメンテナンスをすれば撥水効果を一時的に復活させることはできますが、経年劣化を避けることはできません。 |
圧力がかかると濡れる 水は通さないけど湿気は通すというのが透湿素材のメリットですが、やはり完全防水とはいきません。圧力がかかると新品でも濡れてしまいます。とくに座ることが多いお尻部分は濡れやすいと言えます。 |
非透湿素材

非透湿素材とはPUやPVCと呼ばれる素材で、ビニールカッパやゴムガッパと呼ばれるようなレインウェアを指します。
ハードな使用にも耐えることから元々漁師の方がメインで使用していたレインウェアです。
メリット | 完全防水 湿気を通さない代わりに完全に水を通さないのが非透湿素材最大のメリット。嵐のような雨でも決して水を通すことはありません。絶対に濡れたくない方や、大雨予報、一日中雨が降り続く日におすすめの素材。座ってお尻が濡れることもありません。 |
---|---|
補修が容易 針が刺さった、魚の棘が刺さったなど、レインウェアに穴が空いてしまうことは釣りをする以上避けることはできません。非透湿素材は穴が空いているところがわかりやすく、接着剤やテープなどで穴を塞ぐだけと補修も容易です。 | |
丈夫で汚れにくい 非透湿素材は非常に丈夫でハードな使用にも耐えます。また汚れても水をかければサッと洗い流すことができるのでメンテナンスも容易。イカ釣りなどの墨がかかってしまう釣りにも相性抜群です。 | |
デメリット | 蒸れる 湿気を通さないので、中はかなり蒸れます。とくに夏場は不快に感じやすいです。沖縄等の気温が高い地域は、春秋でも暑くて蒸れに悩まされるでしょう。 |
重い 素材が重く、長時間の釣行は疲れを感じます。とくにパンツはサロペットタイプのものが多く、肩ベルトによって肩凝りを感じてしまうことも考えられます。 |
素材選びは適材適所が理想

スペック上では、透湿素材の方がレインウェアとして明らかに高性能です。
しかし、実際のフィールドでは非透湿素材の方が適している状況も多々あります。
可能であれば、季節や天候に合わせて適材適所で素材を使い分けてあげるのがベストです。
須江
おおまかにですが、個人的には夏は透湿素材、夏以外は非透湿素材というような使い分けをしています。
安いものを短期間で買い換えるという手も

適材適所で使い分けるとは言ったものの、レインウェアは高価なものばかりです。
僕は仕事柄それなりのものを着用していますが、なかなかレインウェアまで良いものを揃えられないという方も多いのではないでしょうか。
しかし、良い(高価な)レインウェアが必要かと問うと、決してそういったわけでもないと思っています。

肘や膝などの可動部の劣化、シームテープの剥離、魚の棘や釣り針の刺し傷など、釣りをしている以上レインウェアはダメージを避けることができません。同時にメンテナンスもそれなりに必要になります。
「レインウェアは劣化が付きもの」これは高級品でも安価品でも同じです。
そこで安価なレインウェアを短期間で買い替えた方が良いかもしれないという説。例えば、5万円のレインウェアを購入したとして、どのくらい着用できるのでしょうか。
使用状況にもよりますが、5年も着用できれば十分だと思います。その場合、1年当たり1万円ほどのコスト。その間も劣化はどんどん進行していきます。
1万円のレインウェアを毎年買い換えれば、同じ期間を劣化が少ないまま良い状態で着続けられますよね。
もちろん、同等の劣化具合で比べた場合は安価品に勝ち目はありませんが、新品に近い状態でそれなりの耐水圧を持っていれば安価品でも十分に水を弾いてくれます。
「高級品を長く着るのか、安価品を短期間で買い替えるのか」で考えると、安価なレインウェアにも十分メリットがあると言えるのではないでしょうか。
須江
劣化が進んでいる高級品よりも、綺麗な安価品の方がレインウェアとして機能する場合が多いということです。
5,000円を切るレインウェアなんかも出てきているので、チェックしてみてもいいかもしれませんね。
雨の侵入は簡単には防げない【2枚重ねのすゝめ】

レインウェアを着たからといって中の衣類が絶対に濡れないというわけではなく、素材のところでも言及した通り、劣化や圧力による水濡れは免れません。
でも、できる限りの水濡れ対策は講じたいですよね。
僕の場合、大雨予報または1日降り続く予報など、雨ががっつり降るよっていう時は透湿素材の上に非透湿素材を重ね着しています。
外側が非透湿なので内側のレインウェアは濡れますが、さらに内側に着ている衣類はある程度快適な状態に。
雨天の長時間釣行においては、現状この方法が最も快適だと思っています。
須江
アイランドクルーズの船長陣にとって、雨天時の2枚重ねは定番なんです。
なぜ2枚重ねるのか、1枚では防げない水濡れシーンと共に解説していきます。
フードからの侵入は防げない

どんなに優れたレインウェアでも雨が侵入してくる可能性は拭えません。ジップや縫い目からの侵入、圧力による侵入など……。
そこで、レインウェアの2枚重ねが効果的。万が一、外側から雨が侵入しても中のレインウェアで防いでくれるというわけです。
これだけ対策しても露出している顔、フード内からは雨が侵入してしまいます。
奥の手としてほっかむり(タオルで頭を覆って顎の下で結ぶ)も併せて行うと、侵入しようとする雨をタオルが吸収してくれて、ほぼ完璧に雨の侵入を防ぐことができます。
どうしても起きてしまう劣化対策に

何年も同じレインウェアを使っていれば、どこかに穴や劣化は生じてしまうものです。
2枚重ねにしておけば穴が空いている箇所を下のレインウェアがブロックしてくれるので、穴が空いたレインウェア同士でも雨が侵入するリスクはかなり減ります。
座れば圧力でお尻部分が浸みる

圧力がかかることで浸みてしまう代表的な箇所といえば、お尻ではないでしょうか。
ポイントの移動等で座っている時間が長いと、お尻部分が濡れる可能性は大。
そこで、ボトムスの2枚重ねも効果的です。
朝露だけでも濡れる可能性があるので、雨天以外でもボトムスのみ2枚重ねにするのはアリだと思います。
須江
2枚重ねは多少嵩張るかもしれませんが、快適性は段違いなのでやる価値は大アリ!
雨天でも釣りに集中できることで釣果も伸びるはずですよ!
雨の日は頭や足元の対策も入念にすべし

ここまではレインウェアのことばかり触れてきましたが、レインウェアだけでは雨対策としては不十分です。
雨具として必須なレインウェア以外のアイテムを紹介していきます。
帽子

雨の中でも視界を確保するためにツバがついた帽子が必須。最近は、雨天にもぴったりな透湿素材を使用した帽子もよく見受けられます。
キャップorハットという選択肢になりますが、それぞれにメリットとデメリットがあります。
テイルウォーク TWフラットバイザーキャップ BK×BK
キャップであれば、丈夫なツバが前方向に付いているため雨が目に当たらず視界をしっかり確保できます。
フードを被ってしまえば風に飛ばされる心配もありません。ただし、フードを被ることで周りの音や船長からのアナウンスが聞こえづらくなる点は注意が必要です。
ヘリーハンセン レインハット
ゴアテックス等の透湿素材のハットであれば、フードを被らなくても頭部を雨から守ることができます。
フードを被らないことで周りの音も聞こえやすく、フードを伝ってレインウェアの中に水が入ることもなく快適です。
ただし、ツバが風に弱く、風が吹くとほぼ機能を失い濡れてしまいます。
フットウェア

雨の日は足元も重要。濡れないようにするか、もしくは濡れてもいいのかで、選択肢は長靴かサンダルのいずれかという選択肢になります。
気温で使い分けるのが僕のセレクト術です。
双進 RBB デッキブーツ
海でのスタンダードフットウェアは長靴です。
雨の日に関わらず夏以外は常に長靴を履いています。足が冷えず寒くもならないので、暑すぎる日以外は長靴を履くのがベターです。
あまりにも丈が長いと鬱陶しいのでショートのデッキブーツがおすすめ。ちなみにEVA素材のもの、もしくはソールが生ゴムのものを選ぶと船が汚れないので船長が喜びます。
リバレイ RBB ノンスリップデッキサンダル
濡れてもいい状態のセレクトはサンダルです。
夏季は長靴だと暑いので梅雨が明けたらサンダルで僕も過ごします。ただ足は冷えますし、足とサンダルの接点が滑る場合もあるので決して安全とは言えません。
必ずグリップ力があって足先が隠れているものをセレクトしましょう。
リバレイ RBB ウォータープルーフソックス
普段のスニーカーのまま快適に過ごしたいという方は防水のソックスもアリです。
靴はそのままで足が濡れずに雨の日を過ごすことができます。
ただ靴自体は濡れてしまうので、予備の靴があることが前提のセレクトです。
その他
ダイワ ロングリストガード DA-9921
リストガードやレインカフスと呼ばれるこのアイテム。レインウェアの袖口の上から装着することによって、袖口からの水の侵入を防いでくれます。
ロッドを立てるような状況だと、ロッド→リール→手を伝って袖口から腕に向かって水が侵入してきます。
レインウェアの袖口をストラップで閉めていたとしても、気づいたら中の袖口が濡れているなんてことも考えられるので、あると便利です。
雨具で快適に!釣果も上向きに!

得てしてですが、海の生き物は人間が辛い状況ほど元気です。風が強い、雨が強い、そんな時ほどよく釣れます。
この辛い状況をいかに克服するか、もちろん釣りの部分で工夫が必要です。
雨具はそんな厳しい状況で釣りに集中するために必要不可欠なギア。釣具と同等、いや、釣具以上にこだわって選んでみても良いのかもしれません。