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「え!?」一緒に釣りをしていた人が、目の前で海や川に落ちたら——

「え!?」一緒に釣りをしていた人が、目の前で海や川に落ちたら——

一緒に釣りをしていた人が、目の前で海や川に落ちたら。

助けようとして飛び込んだ側が命を落とす二次事故は、今も毎年繰り返されています。

浮くものを投げる、通報する、声をかけ続ける。落水者の命をつなぐために釣り人ができる3つの行動と、陸に引き上げたあとの応急手当、救命講習の受け方までまとめました。

目次

アイキャッチ画像撮影:TSURI HACK編集部

もし目の前で人が落水したり、溺れたりしたら?

一緒に釣りをしていた家族や友人が、突然海や川に落ちてしまったら。

想像したくない場面ですが、水難事故は釣り場ではいつ起きてもおかしくない出来事です。

目の前で人が溺れていれば、「すぐに助けなきゃ」と自分も水に飛び込んでしまうかもしれません。しかし、そこで救助する側まで溺れてしまえば、助けを必要とする人が増えてしまいます。

大切なのは、自分の安全を確保したうえで、周囲に助けを求め、落水者の浮力を確保すること。派手な救助劇よりも、地味で確実な手順のほうが命をつなぎます。

万が一に備えて、目の前で人が落水したときに取るべき行動を、この機会に覚えておきましょう。

溺れた人を助けようとして水に飛び込まない

万が一、目の前で人が落ちてしまったら。そんな状況にも冷静に対処できるよう、適切な対処法を身につけておきましょう。

助けに行った人まで溺れる、二次事故が繰り返し起きている

溺れている人を見つけたとき、自分の足がしっかり着く浅場で、流れもないと確信できる状況であれば、後ろから肩口を支えて静かに岸へ寄せる方法もあります。

ただし、判断に少しでも迷いがあるなら、水に入らないのが原則です。

足が届かないような深い場所では、生身で助けに行った人まで溺れてしまう危険が一気に高まります。救助に慣れていない方は、溺れた人を見かけても、むやみに水へ入らないようにしてください。

警察庁の「水難の概況等」には、水難時の行為として「水難救助活動」という項目が設けられています。人を助けようとして、自分が亡くなった、あるいは行方不明になった方の数です。

令和2年から令和7年までの6年間を合計すると50人。令和6年だけでも14人が死亡・行方不明となっています。

足が届かない場所で溺れている人を、道具なしで助けに行くのは、水泳や体力に自信がある方でもかなり困難です。パニックになって暴れている成人にしがみつかれれば、二人とも沈んでしまう可能性があります。

プールで泳げることと、流れの中で人を運ぶことは、まったく別の話です。

参考:警察庁生活安全局生活安全企画課「令和7年における水難の概況等」

水泳の達人でも逆らうのは難しい「離岸流」

海上保安庁のウォーターセーフティガイドでは、沖へ向かう強い流れ「離岸流」について、泳ぎが得意な方でも逆らって泳ぐのは難しいと説明されています。

幅はおよそ10〜30mと狭いものの、いったん巻き込まれると、気づかないうちに沖まで運ばれてしまうのが離岸流の怖さです。

「自分は泳げるから大丈夫」と思っていても、離岸流には逆らえない可能性が高いと考えてください。

海上保安庁が示す「溺れた人を見たときの対処法」も、まずは助けを求めること、水に入らず道具を使うこと、ひとりで抱え込まないことの3点が柱になっています。

参考:海上保安庁「ウォーターセーフティガイド」

溺れている人を見つけたら、やるべき3つのこと

落水者を見つけたときに釣り人ができるのは、大きく3つだけ。順番まで覚えておけば、頭が真っ白になっても手と足が先に動いてくれます。

「浮くものを投げる」「通報する」「声をかけ続ける」

  1. 浮くものを投げる:クーラーボックス、空のバッカン、ロープ、ペットボトル
  2. 通報する:海と沿岸は118番、河川・内陸は119番
  3. 声をかけ続ける:「浮いて」「動くな」。手を挙げさせない、叫ばせない

クーラーボックスはフタを閉めるだけで立派な浮力体になります。

ペットボトルは少しだけ水を入れてキャップを固く閉めると投げやすくなると、海上保安庁の資料でも紹介されています。投げる前に「投げるよ」と声をかけ、相手の手が届く範囲を狙って下手投げするのが有効です。

玉の柄など、長いものがあれば、それを差し伸べましょう。

声をかけるときに伝えたいのは「浮いて」「無理に泳がないで」です。あわせて、十分な浮力がない状態では、手を挙げさせたり、叫ばせたりしないことも意識してください。

浮力体につかまっていない状態で手や頭を上げると、そのぶん身体が沈みます。大声を出せば肺の空気が抜けて、さらに沈みやすくなってしまいます。

そして大切なのは、決して目を離さないこと。沈んだ場合、最後に見た位置が捜索の起点になります。常夜灯やテトラの切れ目など、目印になるものと重ねて覚えておくのがポイントです。

参考:第八管区海上保安本部「もしものときは『浮いて待て!』」

落水現場に複数人いるときの役割分担

その場に人が複数いるなら、役割分担をして動くことで、救助できる可能性が高まります。

通報する人、落水者から目を離さない人、浮くものを集めて投げる人、救助隊を誘導する人。声に出して割り振ってしまえば、動きが重複せずに済みます。

通報係が伝える内容は、どのような事故か、事故の場所、事故者の人数、通報者の名前と連絡先の4点。堤防や磯は住所での説明が難しいため、スマホの地図アプリで現在地を確認し、港名や目立つ建物を添えると伝わりやすくなります。

ひとりしかいない場合は、通報を最優先にしたうえでスピーカーホンに切り替えてください。指令員と話しながら、浮くものを投げる作業を並行できます。

救助されたあとの対応も覚えておこう

陸に引き上げられたらひと安心、というわけにはいきません。

溺れかけた身体には、そのあとにも危険が残っています。到着した救急隊に引き渡すまでの数分間、何を見て何をするのかを確認しておきましょう。

まずは意識と呼吸の確認

肩を軽くたたきながら、大きな声で呼びかけます。

目を開ける、返事をする、何らかの仕草が見られれば反応ありです。

反応がなければ、周囲へ大声で助けを求め、119番通報とAEDの手配を頼んでください。

続いて、普段どおりの呼吸ができているか、胸とお腹の動きを10秒以内に確認します。しゃくり上げるような不規則な動きは死戦期呼吸と呼ばれるもので、普段どおりの呼吸には当たりません。

迷っている時間そのものが命を削ってしまうため、判断がつかないときは呼吸なしとして扱うのが基本とされています。なお、水を吐かせようとしてお腹や胸を押す行為は、現在は推奨されていません。

参考:政府広報オンライン「応急手当の知識と技術。いざというときに備えて身につけておきましょう」、日本赤十字社「溺れた人の手当」

【意識・呼吸がある】濡れた身体を冷やさない工夫

意識と呼吸がある場合は、まず保温です。

濡れた衣服は驚くほどの速さで体温を奪うため、可能であれば脱がせてタオルで水気を拭き、乾いた衣類やエマージェンシーシートで包んでください。地面との間にタオルやレジャーシートを敷くだけでも、奪われる熱の量はぐっと減ります。

エマージェンシーシートは軽くて薄いので、タックルボックスの隅に一枚忍ばせておくと安心です。

濡れた衣服を着たままにしておくと急激に体温を奪われます。低体温症は深部体温が35度以下になった状態を指し、水温が体温より低ければ真夏でも起こり得ると報告されています。

できるだけ風に当たらない状態を作り、全身を保温してください。

参考:海上保安庁「ウォーターセーフティガイド/溺れた人を見た時の対処法」

【意識・呼吸がない】心肺蘇生

反応がなく、普段どおりの呼吸がない場合は、通信指令員の指示を受けながら胸骨圧迫を始めてください。手順は電話口で具体的に教えてもらえるので、うろ覚えでも問題ありません。

溺水による心停止は、窒息にともなう低酸素が主な原因とされています。そのため、可能であれば人工呼吸を組み合わせた心肺蘇生が推奨されています。

ためらう状況であれば胸骨圧迫だけでも構いません。何もしない時間こそが、もっとも避けたい状態です。

※本項は一般的な応急手当の考え方を紹介するものであり、医療行為を指導するものではありません。実際の対応は状況によって異なります。必ず119番通報のうえ、通信指令員の指示に従ってください。

参考:総務省消防庁「一般市民向け応急手当WEB講習」

救命講習を一度受けておくのもおすすめ

ここまで読んでいただいた内容は、頭に入れておくだけでも十分な価値があります。

ただし、文章を読んだだけで実際に手が動くかというと、それはまた別の話。胸骨圧迫の深さも、ペットボトルを投げる距離感も、一度身体で体験しておくと記憶の残り方がまるで違います。

消防署が実施している普通救命講習や、日本赤十字社の救急法・水上安全法の講習は、全国各地で定期的に開かれています。

所要時間は3時間程度のものが中心で、費用も手ごろ。釣りやマリンアクティビティを長く楽しむつもりなら、一日だけ予定を空けて、ぜひ一度、救命講習を受けることも検討してみてください。

参考:東京消防庁「応急手当講習会 救命講習のご案内」、公益財団法人 東京防災救急協会「普通・上級救命講習、応急手当普及員講習(個人向け)」

「助けるために飛び込まない」を覚えておこう

釣り場で誰かが落水したとき、私たちにできることは多くありません。

飛び込まない、浮くものを投げる、通報する、声をかけながら目を離さない。この4つを覚えているだけで、助かる可能性はぐっと上がります。

そして本当に大切なのは、自分が落水して溺れない対策と、落ちても浮ける準備です。

ライフジャケットを正しく着る、滑りにくい靴を履く、荒れた日は潔く諦める。警察庁も水難防止対策のひとつとして、釣りに行くときは必ずライフジャケットを着用するよう呼びかけています。

誰かの命を守る一番の方法は、自分が落水しないこと。次の釣行も、笑って帰れる一日にしてくださいね。


画像制作:TSURI HACK編集部

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