他人事とは思えない、釣りに行ったまま行方不明というニュース

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「釣りに出かけたまま行方不明」という事故が、毎年起こっています。
堤防で、磯で、川で。
数日後に発見されることもあれば、そのまま見つからないこともあります。
海上保安庁の資料によると、海での釣り中に死亡・行方不明になる人は毎年100人前後です。
また、警察庁の統計では、水難事故の死者・行方不明者を行為別に見ると「魚とり・釣り」が最多となっています。
波にさらわれた、足を滑らせた、テトラの隙間に落ちた。特別な状況ではなく、ほんの一歩の踏み外しが事故につながっています。
水難事故の死者・行方不明者を行為別に見る

水難事故というと海水浴やレジャーの水遊びを思い浮かべますが、統計上の1位は釣りです。
まずは数字をもとに、釣り中に起きている水難事故の実態を確認していきましょう。
令和6年の水難による死者・行方不明者816人のうち、「魚とり・釣り」が最多の23.4%
警察庁がまとめた令和6年の水難統計では、1年間の死者・行方不明者は816人。
行為別に見ると1位が「魚とり・釣り」で23.4%、2位が「作業中」8.0%、3位が「水遊び」5.5%、4位が「水泳」5.0%でした。
「魚とり・釣り」は、2位の「作業中」の約3倍となっています。
令和7年夏も、釣り中が21.6%で1位
夏だけを取り出しても同じ傾向です。
令和7年夏期(7〜8月)の水難による死者・行方不明者は241人で、行為別1位は「魚とり・釣り」の21.6%。発生場所は海と河川で全体の8割以上を占めました。
子どもの水難は、6割以上が河川で起きている
令和6年に水難で亡くなった中学生以下は28人。
場所別に見ると河川が64.3%と最も多く、次いで海が17.9%、用水路が10.7%でした。
令和6年の中学生以下の死者に限ると、河川での事故が最も多いという結果でした。
夏休みに家族で川釣りをするときや、子どもが川で遊ぶときは、とくに注意が必要です。
晴れの日の「波浪注意報」で注意したい「うねり」という高波

風もなく、波も穏やか。そんな絶好の釣り日和に、人がさらわれる事故が起きています。
原因は「うねり」。磯やテトラに立つ人ほど、知っておいてほしい内容です。
荒れていないように見えて、陸近くでいきなり高くなる「うねり」に注意
うねりとは、遠くの台風や低気圧が生んだ波が、そのまま伝わってきたものです。
気象庁は、高いうねりは数千km離れた場所まで届くことがあると説明しています。
やっかいなのは、沖を見ても大きな波に見えないこと。
うねりは高さが低く幅の広い波が押し寄せてくるので、遠くの波を見ていても高い波が来ているように見えません。しかしうねりが陸に近づいてきて、浅い場所や岩に当たった瞬間、一気に高く立ち上がるのです。
気象庁では、天気予報とは別に波浪注意報を発表しています。海釣りに行くときは、天気と風だけで判断せず、出発前に必ず波浪注意報を確認してください。
台風の前後は、3〜4日空ける
台風本体が遠くにあっても、うねりだけが先に到達することがあります。
そして台風が通過したあとも、波が落ち着くまでには3〜4日ほどかかります。
「過ぎたから大丈夫」と考えず、台風前後の釣行は避けましょう。
川の釣り、雷の音から10分で増水することも

撮影:山根央之
川は海と違って遊泳禁止の指定がほとんどないため、自分で危険ラインを決める必要があります。
押さえておきたいのは、水深と増水の予兆の2つです。
川に立ち込むなら、水深はひざ下くらいまでが安心
安全のことを第一に考えるなら、立ち込む水深の目安はひざ下まで。
流速が秒速1mもあれば、ひざ下でも立っているだけで一苦労です。
ひざ下程度の水深でも、流れの速さや足場の状態によっては流される危険があります。
一方、腰まで浸かるような場所では、何かの拍子に滑って転ぶと、そのまま流される可能性が高まります。
カーブの外側と川の中央は、深くなりやすい
川は場所によって深さが大きく変わります。
同じ量の水を流すために、流れの速い側を深く削るからです。カーブの外側は深く、内側は浅い。直線区間なら中央が深くなります。
川に入るときは、決して油断しないこと。足元を慎重に確認しながら、無理のない範囲で楽しみましょう。
増水の予兆は、雷・冷たい空気・濁りの3段階
鉄砲水は前触れなく来るわけではありません。次の順番でサインが出ます。
| 段階 | サイン | とるべき行動 |
|---|---|---|
| 第1段階 | 雷の音が聞こえる | 上流で大雨。片付けの準備を始める |
| 第2段階 | 谷筋から冷たい空気が下りてくる | 撤収を開始し、水から上がる |
| 第3段階 | 水が濁る、草木が流れてくる | 直ちに水辺から離れ、高台へ避難する |
水が茶色くなってからでは間に合いません。
天気が荒れそうな日は釣りやマリンアクティビティを避けるのがベストですが、急な荒天時は、風の流れや気温の変化を感じ始めたら早めに片付け始めましょう。
ベテラン釣り人も要注意!慣れていても事故に遭う3つの原因

撮影:DAISUKE KOBAYASHI
事故に遭うのは初心者だけではありません。
むしろ釣り歴が長い人ほど「自分は大丈夫」と考えて、危険な行動をとりやすくなります。
原因1:ライフジャケットをつけない
海上保安庁のまとめによると、令和6年にマリンレジャー中の事故で死亡・行方不明となった人のうち、ダイビング中を除く約9割がライフジャケットを着用していませんでした。
また、過去10年間の海中転落による死者・行方不明者を見ても、ライフジャケットを着用していた人は11.3%にとどまっています。
「慣れているから大丈夫」「自分に限って落ちることはない」という油断が、重大な事故につながることがあります。釣り場では経験の長さにかかわらず、必ずライフジャケットを着用しましょう。
原因2:慣れているからこそ注意したいウェーディング
大物狙いのウェーディング、楽しいですよね。
でも、ウェーディングに慣れている釣り人こそ、気をつけたいポイントがあります。
それは、慣れているからこそ「底の形はだいたい同じだろう」と思い込んで、つい気がゆるむこと。
川底は、増水のたびに削られたり埋まったりして形を変えています。ちょっと前まで膝下だった場所が、いつのまにか底が削れていて腰の高さになっていることも珍しくありません。
さらに、足元の石に付いた苔やぬめりも厄介です。 日没後は水中が見えにくくなるので、危険度はさらに上がり、思わぬところですべってしまうことも。
流れのある水中では、一度でも足が底から浮けば、そこから流されるリスクが大きく高まります。水深が膝下でも起こりますし、腰まで浸かっていればなおさら注意が必要です。
原因3:単独釣行なのに、行き先を誰にも伝えていない
行方不明という結果につながる大きな要因が、発覚の遅れです。
浮いて待てば時間は稼げますが、誰も探し始めなければ意味がありません。
家族や友達に、釣り場の地名と帰宅予定時刻を伝えておく。それだけで捜索開始が何時間も早まり、落水しても助かる確率が上がります。
子連れの釣りで注意するのは、到着後すぐ・水深・干潮時刻

出典:PhotoAC
夏休みに子どもとのファミリーフィッシングを考えている方は、より細やかな安全対策を心がけましょう。
事故は釣り場に到着してから10分以内に起こるケースが多い
海でも川でも、事故は到着直後に集中します。
子どものテンションが高いことに加え、大人がタックルの準備や設営で目を離す時間と重なるためです。
到着したら、何よりも先に水辺の状況を確認します。そのうえで、大人の目が届く範囲から子どもが出ないよう、安全に遊べる場所を決めましょう。
自分の釣りの準備を始めるのは、安全確認と子どもへの説明を終えてからです。
子どもには水深が浅く見えやすい
光の屈折によって、水底は実際の深さの7割程度に見えます。
さらに目線が低いほど浅く見えるため、子どもにはもっと浅く見えています。だから、足がつくと思って安易に入水し、溺れる事故が多発してしまうのです。
子どもと川や海で遊ぶときは、「水中は、想像以上に深いこと」をしっかりと伝えておきましょう。
さらに、透明度が高いほど危険度が上がることも覚えておきたいポイントです。濁っていれば慎重に入りますが、澄んでいると迷わず入ってしまい、思わぬ事故につながるリスクが高まります。
大潮の干潮時は、子どもの水難事故に注意
大潮の干潮時は、沖まで歩いて行けるため子どもの水難事故が多発します。
「急な深み」にはまる危険に加え、潮が満ちて戻れなくなる「取り残され」が起きやすいからです。
潮位は6時間で最大3mほど動き、驚くほど速く水位が上がります。「行きは足首だったのに、帰りは腰の深さ」になっているのが取り残されの典型です。
対策は出発前に「地名+潮見表」を検索し、「何時に引き返すか」を事前に決めておくこと。釣り人にとって潮見表は魚の活性を読むためのものですが、家族の命を守るためにも必ずチェックしましょう。
釣りは無事に帰ってこそ楽しめる

釣りの水難事故は、荒天時や特殊な場所だけで起きるものではありません。
穏やかに見える海に届くうねり、突然の川の増水、いつも歩いている場所の急な深み。さらに「慣れているから大丈夫」という油断が、事故につながることもあります。
とくに大切なのは、危険な状況になってから対処するのではなく、釣りを始める前にリスクを減らしておくことです。
天気だけでなく波浪情報や潮位を確認する。ライフジャケットを着用する。単独釣行なら行き先と帰宅予定時刻を家族に伝える。子どもと一緒なら、釣りの準備より先に周囲の安全を確認する。
どれも難しいことではありませんが、そのひと手間が事故を防ぐことにつながります。
釣りは、無事に帰ってこそ楽しめるもの。慣れた場所でも油断せず、安全を最優先に楽しみましょう。
