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“死ぬまで引く魚”との死闘は衝撃の結末に……中米釣行記<後編>

前編では幸運にも最大クラスのトロピカルガーを手にした、怪魚ハンター山根。

しかし、その後待ち受けていたのは大きな試練だった!

目次

コスタリカからニカラグアへ

国境越えに大苦戦

コスタリカとニカラグアの国境

トロピカルガーを釣り上げた僕は、次なる目的地ニカラグア湖を目指して移動を始めました。

▼前編はコチラ

コスタリカとニカラグアの国境までは順調だったのですが、コスタリカのイミグレーション(入国管理)でGoogle翻訳を読んでくれずに大苦戦。

出国スタンプを押してもらえずに困り果てていると、ニカラグア人だという人に声を掛けられて「救世主か!?」と思いきや、これが完全にブービートラップ。

謎の男

ここはスタンプ無しで行き来できるボーダ(国境)だ。あっちのフェンス沿いに10分歩いた先はニカラグアだ。

山根

コスタリカの出国スタンプとニカラグアの入国スタンプが必要なんだけど。

謎の男

スタンプ押してもらえなかったんだろ。あの道へ行けってことだ。

山根

……。分かった。

僕がフェンス沿いの道に向かうのを確認して、謎の男は正規の道でニカラグアへ入っていきました。

結局、出国税を支払う所がイミグレと別の場所だったというオチで、謎の男が見えなくなったのを確認してから、無事コスタリカを出国。

越境に2時間以上かかった

ニカラグア入国スタンプ

予想通り、ニカラグアのイミグレもすんなりいくはずがなく……

別室でたっぷり待たされた挙句、バックパックの中身を隅々まで確認され(緊急用に隠していたUSドルまでしっかり見つかりました)、GoProが2台あることを咎められ、ニカラグアでの行程を1日単位で細かく説明させられました

Google翻訳とホテルのダミーバウチャー(予約証明書)が大活躍してくれ、最終的にはイミグレのスタッフ皆に笑顔で「ニカラグアを満喫してください!」と言われながら、クーラーがギンギンに効いたオフィスを後にします。

ボッタくられても良いから目的地へ

ニカラグアのタクシー

あれから2時間以上も経っているので、あの謎の男に見つかることはないよな……。

なんて心配もしつつ、時間も精神力も大きく消費してしまったので、ローカルバスに乗るのはやめました。

「チーノ(中国人)!」って言い寄ってきた胡散臭いタクシーに、ボッタくられているのを承知で乗車して目的地を目指します。

ニカラグア湖で聞き込み

フェリーターミナルで優しい人に出会う

ニカラグア湖の船着き場

湖畔の街に到着したら、まずは宿探しです。

トイレやシャワー共用の安宿でしたが、フロントのおじちゃんが英語を喋れたことを理由に寝床を決定。

そして、明るいうちに街へ聞き込みに出掛け、明日ニカラグア湖に連れて行ってくれるボートマンを探します。

この時、フェリーターミナルで出会った制服姿の偉そうな人がとても優しくて、ボートマンとの交渉を仲介してくれ、無事約束を取り付けられました。人の優しさに触れられるのは旅の醍醐味です。

魚屋発見

ニカラグア湖の魚市場

宿までの帰り道、魚屋を見つけてテンションが上がります。

シクリッドが数種類とアカミミガメ、ナイルティラピア(外来種)などが並んでいましたが、想像より魚種が少なかったですね。

ニカラグア湖での目標にしていたドビーシクリッドはいませんでした。

治安が良く分からない

ニカラグア湖の街並み

人通りが少ないのが多少気になりつつも、日中に歩いてみた感覚では治安は悪くなさそう。

しかし、油断した時に限ってトラブルが起きるので、晩御飯は宿の敷地内のピザ屋で済ませました。

宿泊費を節約できたのは良いですが、南京虫(トコジラミ)が怖くてこの日は電気をつけっぱなしにして眠りにつきます。

離島でトローリング

船デカい!湖広い!トローリングしかできん!

ニカラグア湖での釣り

約束の10分前に港に行くと、昨日の偉そうな人とボートマンが僕を待っていてくれました。

海外で時間前行動は奇跡です!

朝から釣りに行けそうなので一安心ですが、交渉段階でニカラグア湖の離島まで行きたいとリクエストしてしまったのが仇となり、めちゃくちゃデカい船が用意されていました……。

この船だと釣り方はトローリングになりそうですが、釣れれば手段は何でも良いのでOKです。

幸先よくドビーシクリッドをキャッチ

ドビーシクリッドの幼魚

離島に到着し、早速クランクベイトを船で曳いてみると、すぐに魚がヒットしてきました。

最初の5mくらい抵抗するだけで、残りの30mは船が動いていることもあって、湖面を魚がグルングルン回転しながら上がってきます。

引きは弱かったですが、上がってきたのは大本命のドビーシクリッド!!

また1つ目標達成です。

湖上警察の検問にビビる

ニカラグアの湖上警察

ドビーシクリッドの数釣りを楽しんでいると、自動小銃で武装した警察が近寄ってきました。

カメラをオフにしろと言われ、小心者の僕はヒヤヒヤ。

しかし、船検証やフィッシングライセンス的なものをボートマンがしっかり持っていたため、咎められることはありませんでした。

憧れの発色個体に感動

ドビーシクリッドの発色個体

湖上警察とのやり取りの後すぐに、引っ手繰るような強いアタリが。

ギュギュギュッと竿を絞り込み、GoProのスイッチを押している間にブッシュに潜られてしまいます。

引いて緩めてしていると上手く外れてくれ、一気にリールを巻いて寄せると発色抜群の成熟したオスでした!

エメラルドグリーンと紫色に輝くデコッパチ。また一つ、目標が思い出に変わりました!

そして釣りを終えて港に戻ると、なんとあの偉そうな人がカリブ海行きのチケットを手配して待っていてくれたのです。

どうやら、数日おきにしか出船しない航路ゆえに前日には売り切れることもあるらしく、ホントに良い人でした。

カリブ海の村で大嵐を体験

9時間のロングドライブ

満員の船

翌早朝、ニカラグア湖からサンフアン川を下ってカリブ海の村に向かうボートに乗り込みます。

満員で立ち乗り客もいて、乗り切らない荷物は屋根の上。心配通りに途中でクーラーボックスが落水するハプニング……。きっと、毎回何か落としているんでしょうね。

国境沿いの川ということもあり、ミリタリーステーション(駐屯地)が多くて頻繁に船が止まるため、目的地まで9時間近くかかりました

河畔の安宿に転がり込む

カリブ海の小さな街

これだけ奥地にくれば、ド田舎かと思いきや……

道に車こそありませんが、携帯も繋がるし、電気も水道もあって、立派な村というか小さな街でした。

唯一の宿と目星をつけていた場所に空室があったので一安心。

夕方には、宿の人が呼んでくれたターポン釣りが得意というボートマンとも交渉が成立し(超高額で)、いよいよターポンへの挑戦が始まります

大っ嫌いな音で目を覚ます

ターポンを釣るための船

深夜、スコールが天井を叩く音で目が覚め、外を見ると桁外れの雨量です。

雨は朝まで降り続き、明け方には部屋が雨漏りし始めました。

海は大荒れなので中止かと思いきや、中止でも半値を払ってほしいとせがまれます。

どうも、この立派なターポンバイト号(船)は借り物らしく、「レンタル代だけでも払ってくれ」とのこと。

結局、この日は半値を払い、短時間だけ川でシクリッド釣りをすることに。

とても綺麗なシクリッドが釣れたし、操船技術がピカイチなのはよく分かったので、海況が落ち着いたらターポン釣りをお願いすることになりました。

ターポンが釣れない

カリブ海へ出船するも……

カリブ海に出船する画像

快晴、無風。

期待に胸膨らませ、大金をはたき、満を持してカリブ海に出船しました。

シャッドテールワーム(6in)のジグヘッドリグをリフト&フォールさせるらしく、教わった通りに誘い続けるものの、何も起こらないまま時間だけが過ぎていきます。

海産ナマズ1匹で終了

カリブ海のナマズ

コスタリカとの国境ギリギリまで行ってみたり、波がブレイクするシャローを攻めたり、ディープ、河口、トローリング……。

ボートマンも必死に走り回ってくれましたが、ハマギギ系のナマズが1匹釣れただけで、ターポンはおろかスヌークやジャック(GT的な魚)すらヒットせず、夕暮れを迎えました。

そして、釣り用の財布は空っぽに

陸っぱりで悪あがき

カリブ海のビーチフィッシング

資金を使い切って途方にくれていると、村の釣り人がビーチフィッシングに誘ってくれました。

スヌークとジャック狙いらしいのですが、なんでも、年末にターポンの群れに当たって1日で5本も掛かったとか。

「最近は時化ているから期待しないでね」って言われましたが、藁にもすがる思いでついていくことに。

往復4kmほどの区間を案内してもらいながら、時間の限り投げまくりました。

コスタリカへ戻る決断

完全敗北を悟りました

ショアプラッキングロッドとルアー

ビーチではナマズすら釣れない坊主に終わり、さすがに心がポッキリと折れてしまいました。

中米で釣りたい魚、出会いたい生き物はまだ他にもある。そして、所持金もギリギリだし……。

ターポンを潔く諦め、予定通りの定期船でコスタリカへと戻ることを決断をします。

9時間の船旅(再び)

サンフアン川を走る船

サンフアン川を進む船の中で、コスタリカでの動き方と後に控えていたコロンビアの旅路を改めてイメージします。

コロンビアの旅程を短くし、今後予定していたボートからの釣りをすべて陸っぱりに変えれば、もう1日、あの場所でターポンを狙えるんじゃないか……。

そして、僕はガーの楽園に戻ってそこでターポンを狙うことにしたのです。

ちなみに、帰りのニカラグアの国境越えは、イミグレのスタッフ達が僕のことを覚えていてくれて、5分もかからずに通過できました(笑)

ターポンだけでお願いします

ターポンの生息する川の写真

道中のATMで現金を引き出し、ガーの楽園に無事に到着。

突然戻ってきた僕に宿の人たちはビックリしていましたが、事情を説明すると同情してくれました。

この川での釣りは、エコツアーの貸し切りプランなので料金は高額。資金はもう限界なのでチャンスは1日だけです。

手段もサイズも選ばない? それなら、フライを使ってくれ。ルアーの10倍釣れるんだ。

僕は迷うことなくレンタルタックルにフライを結びました。

死ぬまで引き続ける魚

フライにヒットするもブレイク

ターポンのヒットシーン

陽が昇った頃、水面直下をスイッスイッと進むフライが突然吸い込まれました。

咄嗟に竿を立ててアワセを入れると、とんでもない衝撃が走ります!

しかし、わずか一瞬で痛恨のラインブレイク

僕のアワセが強すぎたのか、ラインの結び方が悪かったのか……。それともレンタルタックルが……。

泣いても笑ってもラスト4時間。最後は納得のいく形で終わりたかったので、フライではなくルアーで狙わせてもらうことにしました。

千載一遇のチャンス到来

定位するターポン

ターポンはピラルクやガーと同じく肺を使って空気呼吸をする魚なので、時折水面を割る姿が確認できます。

大きなオーバーハングの下でターポンのブレス(呼吸)があり、水深が浅いせいか表層で巨大なターポンが定位しているのが見え隠れしています。

フェザージグ、ミノー、トップ、クランク、ワーム……ガイドにいたってはフライを投入し始めますが、まったく反応しません

水面でのたうつ巨大魚

ターポンのジャンプ

僕はいつも、お守り替わりの超食わせ系ルアーとしてジョインテッドクロー178を持っていくようにしているんです。

フックを太いものに交換し、オーバーハングの下でS字を描かせると……ゴンッ!!

反射的に鋭くフッキングすると、巨大ターポンがジャンプ!

そして、水中に潜ろうとして頭が川底についてしまっているのか、2度3度と尾びれを大きく水上に持ち上げてのたうっています。

走って飛んで

倒木を潜るターポン

滑稽な光景でしたが、1秒後に激闘が始まることくらい百も承知。

正気を取り戻したターポンは、下流に向かって倒木を潜り抜けながら、疾走とハイジャンプを繰り返します。

幸運を武器に危機を回避していく

ターポンの呼吸

倒木に道糸が絡んだり観光船にラインを引っ掛けられそうになったり

何度も訪れる危機的状況を奇跡的に回避し、1本の釣り糸で巨大なターポンと繋がっていることに幸せを感じながら慎重にファイトします。

死ぬまで引き続ける魚

ターポンを岸まで誘導する

“Big tarpon will fight to the death. (デカいターポンは、死ぬまで引き続ける)”

ファイトタイムが1時間を遥かに超えた頃、アメリカの釣り番組で昔に聞いたフレーズと同じ言葉をガイドに掛けられ、ハッとしました。

少々強引にターポンを引き寄せ、ガイドがターポンの口を捕まえ、すかさずフックを外そうとします

山根

ちょっと待って!カメラが止まっているんだ!写真も撮りたい!

ガイド

早くしないとターポンが弱りすぎてしまうぞ。

山根

ファーストターポンなんだ!入水写真を撮らせてほしい。

ガイド

分かった。いったん魚を離すぞ。急いで浅瀬まで船で引っ張ろう。

最後は呆気なく

ターポンに逃げられた瞬間

ガイドはターポンを案じるが故に焦っていたと思います。

入水してターポンを保持しようとしてくれましたが、上顎の鋭利な部分にリーダーが挟まっている状態でラインを引いてしまい、プツンッと100lbのリーダーが切れてしまいました

数年ぶりに悔しくて号泣

号泣する怪魚ハンター

悔しさと悲しさに耐えきれず崩れ落ちる僕と、元気に泳ぎ去るターポンを見届けて「ハハハッ!」と笑うガイド。

それもそのはず。ガイドの認識では、リーダーに触って魚の口を掴んだ時点でキャッチなのです。

僕の価値観は、まだまだ欧米の価値観には追い付けていないようで、涙が止まりません。

しばらく経っても立ち直れない僕をガイドが慰めてくれました。

ガイド

お前はあんな巨大なターポンを倒木だらけの川で釣り上げたんだぜ!胸を張れよ!

山根

(泣)

ガイド

この川で2m/100lb越えのターポンをコントロールできるアングラーは滅多にいないぜ!

山根

(泣)

ガイド

悪かったな。写真を撮れなくて……。

山根

お前は悪くない!最高のガイドだよ。本当にありがとう。良い経験ができたって思うよ。

今、俺は幸せだよ。

エピローグ

ターポンの生息地

正直言って、ターポンという魚を相手にここまで感情的になれるとは思っていませんでした。

トロピカルガーやドビーシクリッドに比べて生息域が格段に広いターポンは、この先の人生で何度だってリベンジの機会はあるはずです。

そんなことは分かっていたはずなのに、なんでだろう。

カリブ海が辛かったから? 読者の皆さんにターポンの姿を見せたかったから? 想定以上にお金と時間を使っていたから? ガイドと価値観のギャップがあったから? 自分の手でランディングすれば良かったと後悔したから?

僕は、“This is Fishing”という魔法の言葉を使うことでしか、この日の感情を説明できませんでした。

撮影:山根央之

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