釣りを理由に移住するリアル

「毎日釣りがしたいから海の近くで暮らしたい」と、釣り人ならそう願ったことは一度はあるはずです。なにを隠そう僕もそう願い、移住をした人間です。
生まれは愛知県ですが、現在は四国・徳島県に住んでいます。移住を決めた理由は、ただ一つ。「もっと釣りがしたかった」から。
一方で、願いはするけど見知らぬ土地への移住には高いハードルを感じるかもしれません。
「仕事はどうする?」「生活は成り立つ?」「人間関係は大丈夫?」といった不安はどうしてもつきまといます。
しかし、移住は正しいステップを踏めば決して難しくありません。
KOBAYASHI
この記事では移住を実現した僕が、実際に辿ったプロセスと、移住のリアルを公開します。
計画よりまずは動く

オーストラリア在住時の筆者
僕は2014年に徳島県へ移住をしましたが、直前まで住んでいたのはオーストラリア。そこでも毎日釣り三昧でした。
そして「日本の田舎はどうなっているんだろう」という好奇心だけで帰国。一台の車に荷物を押し込み、あてのない旅に出たのが始まりです。
その時、具体的なプランなんてものは一つもありませんでした。年を重ねた今なら絶対にやらないような無謀なスタートでした(笑)。
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しかし、自ら動かなければ、何も起きないのは間違いなく、計画よりも先に動くことで僕の場合は移住が実現できたように思います。
短期滞在施設でお試し住み

無計画ではありましたが、唯一事前に予約をして活用したのは、各市町村やNPO法人などが運営していた短期滞在施設です。
車中泊でなければ、いきなり家を借りて定住するのでもなく、僕は旅の途中で6箇所ほどの施設を渡り歩きました。
短期滞在施設のルールはバラバラです。移住を条件に安価に貸してくれるところもあれば、一泊数千円や一ヶ月単位で貸してくれるところもあり、このあたりは管理団体によって大きく変わってきます。
僕が利用したのは10年以上前でしたが、短期滞在施設を導入している各市町村はまだまだ少なく、かつどこもかなり安価に借りることができ、移住の手立てに非常に役に立ちました。
短期滞在施設で重要なのは、「その町の朝と夜のリアル」を肌で知れることです。観光客としてではなく、生活者としてその土地に馴染めるか。
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それを確かめるための、いわば“実戦訓練”の場とも言えました。
人と交流をすることを意識する

短期的に滞在することが決まったら、人と交流することを意識し、積極的に行っていました。
具体的には、地元の商店で買い物をしたり、漁港や釣り場で隣にいる人に声をかけたり、地域のイベントや集まりがあれば顔を出したりするようにしていました。
田舎では“見慣れない顔”はすぐに気づかれます。それを逆手にとって、「釣りが好きで来ました」と自分から話しかけると、大抵の人は驚くほど親切に接してくれました。
こうした何気ないやり取りの中から、空き家の情報や仕事の話、地域の暗黙のルールなど、ネットでは絶対に出てこない情報が自然と集まってきます。
移住の成否を分けるのは、結局のところ“人とのつながり”です。
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短期滞在の間にどれだけ顔を覚えてもらえるかが、その後の定住に直結すると身をもって感じました。
移住の一番のネック「仕事」

移住する際に一番ネックとなってくるのは、やはり仕事です。地方になればなるほど求人の選択肢は狭まり、そもそも募集自体が少ないのが現実。
都市部のように「求人サイトで探して応募する」という感覚が通用しない場面も多く、自分でなにかしらの仕事をつくる覚悟は持っておいた方がいいと思います。
僕自身、雇われる前提で移住先を探していたら、おそらく選択肢はほとんど残らなかったはずです。
一方で、今はリモートワークという働き方が当たり前になりつつあります。
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場所を選ばずにできる仕事を持っていれば、移住のハードルは僕が動いた頃(12年前)よりもかなり下がるのではないでしょうか。
地域おこし協力隊という制度

僕は“地域おこし協力隊”を利用し、今住んでいる町に移住できました。
地域おこし協力隊とは、総務省が2009年度から実施している制度です。ざっくり言えば、都市部に住んでいる人が地方に移住し、自治体から委嘱を受けて地域の活性化に関わる活動をする、というものです。
活動内容は自治体によってさまざまで、僕の場合は情報発信といった自分のスキルを活かせるミッションでした。
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報酬を得ながら地域に入り込み、人間関係を築き、暮らしの基盤をつくる時間をもらえたことは、今振り返っても大きかったです。
その後、フリーランスとして独立

そして移住から2年後、僕は任期終了後にフリーランスとして独立しました。当時、地方ではIT系のスキルを持つ人材が圧倒的に不足していたので、それだけで仕事をつくることができました。
都市部では当たり前にできる人がいることでも、地方では重宝される。このギャップが、独立直後の大きな追い風になりました。
ただし、今は状況が変わりつつあります。AIの進化によって制作系の仕事のあり方が急速に変わる一方で、現場で体を動かせる人間の価値が上がっています。
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農業や漁業といった一次産業に携われる人材は引く手あまたとなるかもしれません。
移住してもうすぐ12年

気づけば、移住してからもうすぐ12年が経ちます。時季に合わせてターゲットを定めて海に出る。そんな日常がここでは当たり前になりました。
移住後に結婚をし、娘を授かったことで釣行回数は一時より減りましたが、釣りに出かけようと思えばいつでも出かけられる環境は、12年経った今でも本当に最高だと感じています。
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あてもなく車を走らせながらした“あの決断”は、間違いなく人生で一番いい選択だったと思っています。
失敗を恐れずにまずは動いてみる

まとめると僕の移住までの流れは「まず動く→短期滞在でお試し→人と交流する→仕事を見つける」というステップでした。
振り返ってみると、どのステップも準備してから進んだわけではなく、走りながら考えていたというのが正直なところです。
これはあくまでも僕のケースなので、すべての人に当てはまるとは言えません。家族がいる人、今の仕事を簡単には辞められない人、それぞれに事情があるのは当然です。
ただ、一つだけ確信を持って言えるのは、移住の成否を決めるのは“人”だということ。どんなに環境が良くても、そこに信頼できる人がいなければ暮らしは続きません。
逆に、人とのつながりさえあれば、仕事も住まいも情報も驚くほど自然と集まってきます。
もし移住を少しでも考えているなら、まずはその土地に足を運んで、できる限り多くの人と会ってみてください。
KOBAYASHI
ネットで調べるだけでは絶対に見えないものが、そこにはあります。
撮影:DAISUKE KOBAYASHI
