紛らわしい2種類のサバ
一般的に日本で「サバ」と呼ばれる魚には、マサバとゴマサバの2種類がいます。
両種の見た目はとても似通っており、判別が難しい個体も多いです。
本記事では、元釣具屋の筆者がマサバとゴマサバの見分け方を解説し、旬や食味の違いも紹介します。
マサバとゴマサバの見分け方
まずはマサバとゴマサバの見分け方を解説します。
黒斑模様の有無
もっとも簡単な見分け方は、ゴマサバ特有の黒斑模様の有無。
ゴマサバには、体側面から腹部にかけて黒斑模様があります。ちなみに、この黒斑模様が“ゴマを散らした”ように見えることが和名の由来とされます。
ただし、個体差や鮮度によっては黒斑模様が不明瞭なことも多く、見分けるのが難しい場合も。
腹部まで黒斑模様があれば簡単にゴマサバだと判断できますが、写真のように腹部の模様がない個体も多いです。
身の断面
マサバは別名「平サバ」、ゴマサバは「丸サバ」と呼ばれるように、体型が異なります。
断面はマサバが扁平、ゴマサバが丸いとされていますが、個体の肥満度によっては紛らわしいものも多く、一概に判断するのは難しいでしょう。
棘の数
マサバは背ビレの棘の数が9〜10本、ゴマサバは10〜12本とされています。
10〜11本の場合は判断できませんが、9本以下ならマサバ、11本以上ならゴマサバと判断して良いでしょう。
ただし、写真のように最終棘が非常に小さい個体もいるので、よく観察する必要があります。
第一背ビレの長さと背ビレ同士の間隔
第一背ビレ基部の長さ(図中a)と第一背ビレから第二背ビレまでの間隔(図中b)を測定します。
第一背ビレ基部の長さ(a)が背ビレ同士の間隔(b)より長ければマサバ、短ければゴマサバです。
写真のサバは模様が少なくて一見マサバに見えますが、ヒレの間隔が広いのでゴマサバだと判断できます。
第一背ビレと体長(尾叉長)の割合
この方法がもっとも精度の高い見分け方と言われ、研究機関でも判別に用いられています。
まずは、上顎の先端から尾ビレ真ん中までの長さ(尾叉長・図中a)を計測し、次に第一背ビレ(1〜9番目の棘)の根本の長さ(図中b)を計測。
第1背ビレの根本の長さを尾叉長で割り、0.12より大きければマサバ、0.12より小さければゴマサバです。
少し面倒ですが、精度は99%以上とされます。
旬の違いと市場価格
一般的に、マサバの旬は秋〜冬、ゴマサバは夏とされています。
マサバは秋から冬にかけて脂が乗りますが、春〜夏に産卵期を迎え、繁殖活動に体力を使うので身質が落ちるのです。
一方、ゴマサバは通年脂が少なく、年間を通して食味の変化が少ないことが特徴で、マサバとの相対的な評価で夏が旬とされます。
ただし、海域やエサによって身質が大きく変わり、冬は両種とも脂が乗って美味しいと言われることも。
市場価値はマサバの方が高く、ゴマサバの2倍近い価格で流通することもある反面、マサバの味が落ちる時期にはゴマサバが高騰することもあります。
マサバとゴマサバを食べ比べてみた
マサバとゴマサバの身質や味わいの違いを検証してみました。
両種とも、2月初旬に紀伊水道(徳島-白浜間)の沖合、寒サバで有名な「ラングイ」と呼ばれるポイントで同時に釣った個体です。
釣ってすぐに下処理をして鮮度をキープできたので、刺身を食べ比べてみることにしました。
捌いてみるとマサバの方が身が白っぽく、やや脂が乗っているような印象。
それに対してゴマサバは赤みが強いです。
包丁を入れた感じでは、マサバの身がしっかりしているのに比べ、ゴマサバは少し水っぽい身質でした。
刺身で食べてみると、身質の違いによる食感の差以外は大きな違いを感じられません。
マサバの方が歯応えが良い分、やや美味しく感じる程度で、ゴマサバも味は十分に美味しいです。
筆者は食通ではありませんし、食べる人の好みで評価は分かれると思いますが、今回のジャッジとしては「僅差でマサバの勝ち」といったところでしょう。
ゴマサバは水っぽい分、身割れしやすいので刺身や〆サバには不向きだと思います。
煮付けや焼き魚、フライなど、火を通す料理は差が小さくなりそうに感じました。
サバは美味しい!
検証ではマサバの方がやや美味しく感じられましたが、獲れた時期や場所、保管状態、調理方法によっても大きく左右されます。
どちらのサバにせよ、鮮度の高い美味しいサバを食べられるのは釣り人の特権です。
ぜひ、美味しいサバを狙って釣りに行ってみてください!