中古リールについて
新品を買うよりも安く買えたり、廃版製品を買えたりと、魅力にあふれる中古リール。しかし中古である以上、トラブルがつきものです。中古リールの実態に迫りましょう。
判断できるのは外見と動作だけ
中古リールを買う際、外見と動作の確認しかできません。つまりリール内部の状態を確認する術がないということです。
中身が見えないリスク
きれいで正常に動作するリールであっても、壊れていることがあります。代表的な例を挙げると、“パーツの固着”。
劣化した油や塩の結晶でパーツ同士が固着し、場合によっては分解ができず“メンテナンス・修理”が一切できないこともあります。
オーバーホール・修理に出す覚悟
程度差はありますが、“中古リール=劣化したリール”です。新品に比べて経年劣化が進み、ひょっとすると故障寸前の状態かもしれません。
「壊れたら直そう」という気持ちを持っておくべきでしょう。
パーツの供給停止問題
シマノ・ダイワは、パーツの保有期間が廃版後6年で、それ以降はパーツが欠品していきます。
2014年式のシマノ『ステラ』を例に挙げると、2018年に廃版になったので、2024年まではパーツの保有が約束されています。
それ以降は在庫を供給するのみで、再生産はされません。パーツの在庫がなくなると修理不能品となり、メーカーでの修理・オーバーホールが受けられなくなります。
改造リール
高価なカスタムパーツが付いたリールを、お得な値段で買えますが、デメリットも把握しておきましょう。
社外パーツが入ったリールは、メーカーでの修理・オーバーホールが受けられません。メーカーに預ける際は、社外パーツをすべて取り外す必要があります。
カスタムパーツによっては性能が下がったり、クセが強くなっている個体もあり、知識がない限りは避けた方が無難でしょう。
プレミア化
中古リールの中には、さまざまな理由で、定価よりも高い価格で取引される機種もあります。
エリアトラウトで高い評価を得た、ダイワの『シルバークリークZ』や『05イグジスト ハイパーカスタム』は代表例。
製造から10年以上たってから、10万円を超える価格で取引されたものもありました。
中古リールの注意点<スピニングリール>
スピニングリールは複雑な構造のため、しっかりと現物を確認して吟味したいところ。中古スピニングリールの注意点を集めてみました。
全体の雰囲気から前オーナーを想像
まずは全体を眺め、各部の傷や使用感を確認しながら、前オーナーの使用環境を想像しましょう。
リールフットなどの避けられない傷は仕方がありませんが、置き傷には注目。ローターやボディのエッジに傷が多いリールは、地面に置いて使われていたことが分かります。
対照的に“おしり”の部分に傷が少ない個体は、かなり丁寧に扱われていたと想像できるでしょう。
スプールエッジの傷・歪み
スプールの傷や歪みは、使用上の不都合に直結します。まず注意すべきはスプールエッジの傷で、ラインブレイクにつながるので、絶対に避けましょう。
スプールは外圧によって簡単に変形します。表面が波打っていないか、歪みがないかチェックしましょう。
ラインローラーの回転
ラインローラーは常に海水にさらされるパーツで、塩噛みによる回転不良を起こします。しかしラインローラーの不良は、ラインを通してリールを巻かなければ分かりません。
可能であれば、お店に了解を得たうえで、持参した糸でラインローラーを動かしてみましょう。ベアリングの不良に起因するため、パーツ交換で直るケースが多いです。
メインシャフトの歪み
メインシャフトの歪みは、致命的な欠陥です。ハンドルを回したときに上から見ると、スプールにブレが生じているはず。
周りのパーツにも悪影響を与え、いわゆる“修理しても直らない”状態に陥ります。スピニングリールでは必須のチェックポイントでしょう。
ドラグの動作
ドラグの動作もしっかりと確認しましょう。ノブを回すことで、ドラグが締まる・緩まるかをチェック。ドラグワッシャがすり減るとドラグの効きが甘くなります。
これとあわせてドラグ音が鳴るかも確認しておきましょう。スプール内の音出しピンがなくなり、音が出なかったり、ムラがあったりする個体があります。
ベールの動作・ベール下がり
ベールの開閉動作は必ず確認しておきましょう。長年使われたリールは、内部のスプリングが劣化し、ベールの戻りが悪くなります。
古くなったダイワリールによくみられる、『ベール下がり』。ベールアーム部の摩耗に起因するといわれ、ベールがローター側へ傾く現象。
スプールへのラインの巻き取りが偏り、ライントラブルの原因です。同じ機種が複数個あれば、傾きがないか見比べてみましょう。
ワンウェイクラッチ
こちらも古くなったダイワリールに多い、“ハンドル逆転現象”。原因はボディ内部にあるワンウェイクラッチの故障です。
厄介なのが中途半端に壊れている個体で、ハンドルが特定の場所に来た時だけ、逆転する個体があります。
さまざまなハンドル位置で逆転がないか調べ、少しだけローターに逆方向の力を掛けてみましょう。
ローターナット
スピニングリールは、メインシャフト部の防水をすることができません。メインシャフトを伝って海水が侵入し、ローターナットに達します。
メンテナンスがされていないリールは、ローターナットや内部のボールベアリングに錆が発生。錆によって固着し、メンテナンスに支障が出る場合も。
ローターナットに傷があるものは、ユーザーによって分解されている可能性があります。
中古リールの注意点<ベイトリール>
ベイトリールは単純でシンプルな構造です。しかしパワーゲームで酷使されたリールも多いので、しっかりと目利きをすることが大切。ベイトリールの注意点を確認してみましょう。
全体の雰囲気から前オーナーを想像
スピニングリール同様に全体をチェックしますが、注意すべき傷は“ボディ上部の傷”。ボディ上部が地面に接すると、スプールから砂が内部に入ります。
スプールの回転
スプールの回転と、歪みがないかを見ます。回転中に変なブレがないかをチェックしましょう。スプールやスプールシャフトが変形していると、干渉音が発生するはずです。
クラッチの動作
とくに海で使われたリールは、クラッチの動作確認は欠かせません。すこし前のベイジギングリールは、塩噛みと電解によって、クラッチが固着することが多くありました。
ドラグの動作
長期間にわたってドラグを締めたままにすると、ドラグ部分が固着します。ワッシャの摩耗によって効きがあまくなるため、ドラグの出だしと締まり具合をチェックしておきましょう。
ブレーキの動作
遠心ブレーキ・マグネットブレーキ・メカニカルブレーキを動作させましょう。故障することは少ないですが、念のために確認しておくことをおすすめします。
ワンウェイクラッチ
スピニングリール同様に、ワンウェイクラッチの故障でハンドルが逆回転します。ベイトリールはワンウェイクラッチの故障が多いため、さまざまなハンドル位置で逆転がないか調べましょう。
ハンドルの歪み
無理な力を掛けたり、落としたりするとハンドルが曲がることがあります。巻いているときに違和感やブレがないかを確認しておきましょう。
改造歴
スピニングリールに比べて、改造された個体が多いベイトリール。とくにスプールやブレーキユニットのカスタムには注意が必要です。
極端なチューニングによって、汎用性が低いものや扱いにくいリールも。やはりリスクは高いといえるでしょう。
中古リールは楽しい
中古リールの魅力はオンリーワンとの出会いではないでしょうか。最高の出会いのためには、じっくりと観察することが大切。リールの声に耳を傾けてみましょう。