釣り人生で、もっとも思い入れのある釣竿。

“一番思い入れのある釣竿は何ですか?”
どうも、編集長のしみけんです。
唐突に問いを投げかけてしまいましたが、みなさんはどのロッドを挙げますか?
筆者が選ぶ1本は、がまかつ社の「がま磯 アテンダー2」です。
独特の掛け心地やトルク感が素晴らしく、いろんな釣り場でいろんな魚と出会え、「この先、これ以上感情的になれる竿はない」と断言できるほど。
筆者の感情は抜きにしても、セールス面や市場に与えた影響など、どの角度から評価しても“名竿中の名竿”と言えるでしょう。
アテンダーについて

そもそもアテンダーとは、グレ竿といえば先調子が当たり前だった時代に、“粘る胴調子”という異端のコンセプトで開発されたロッドです。
初代アテンダーは2002年にデビュー。そのコンセプトに磨きをかけて「まるでワンピースロッドのように曲がる」と謳われたアテンダー2が登場したのは、2011年のことでした。
12年の時を経て

アテンダー2の登場から12年経った2023年秋、その時はようやくやってきました。
磯竿全般、ルアーロッドよりモデルチェンジの周期は長いとはいえ、相場は5・6年。
それは“自らを超えるために、情熱と技術と12年の歳月が必要だった”ということなのでしょうか……。
その進化を確かめられる機会を得たので、さっそく磯へと向かってみました!
名竿の進化に迫った2日間
Day 1

高知県の足摺岬に到着したのは、自宅を出てからちょうど6時間後でした。
四国最南端として知られるこの地は、いわずもがなの“磯釣りの楽園”。
30cm台の口太が主体となる釣り場ですが、魚影はすこぶる濃く、通年グレ釣りを楽しめます。
釣行したのは2月末。時期も時期だったので、自分の知りうる範囲でボウズのリスクが一番低いエリアを選びました。

伊佐港出船の岡野渡船さんにお世話になり、上がった磯は「大バンド」。
向かいの「小バンド」との水道部分が好ポイントです。
竿を伸ばす前にエサを撒いてみると、どうやら潮は動いておらず、北から強い風が吹きつけます。

ロッドケースの中にはピカピカのアテンダー3がズラリ。思わずニヤけてしまいます。
その中から選んだのは、前作で使い込んだ1.25号の5m。
この日のタックルは、アテンダー3 125-50にトーナメント3000SH、道糸1.75号です。

仕掛けを一投してわかったのが、前作と比べられないぐらい操作性がよくなっていること。
投入精度、ラインメンディングのしやすさ、風に煽られた時の安定感など、まったくの別物。
しかしそんな感動も束の間、仕掛けを打ち返していきますが、サシエは残りっぱなし……。

本日の1匹目は、カメラマンとして同行していたtsuki氏に。
アテンダー3 15-53を豪快に曲げてキャッチしたのは……

足摺名物のヒブダイ。
一発目のダッシュはかなり暴力的ですが、糸を一切出すことなく取り込んでいました。

立て続けに良型のイラもキャッチ。磯際はこの手の魚達の巣窟です。
ここ足摺岬、魚種を選ばなければ竿は曲がりっぱなしになります。(もれなく引きも強い)

とりあえずアテンダー曲げとくか〜。と、ちょっと仕掛けを深めに入れるとすぐにアタリが!
ウルトラASDやタフマトリックスシステムを新採用したブランクが絞り込まれます。

いつもなら「サンノジか……」というところですが、“竿の味見”という観点ではグレよりも上等な魚です。
アテンダーの減衰力をもってすれば、竿をガンガン叩くサンノジの引きも、かなり上品に伝わります。
悪路を高級SUVで走っているような感覚です。

何匹かサンノジを釣って味見をしていると……tsuki氏が釣ってはいけない魚を釣ってしまいます。
タカノハダイが釣れるのは潮が動いていない証拠ですね。

こんな時は無理に頑張らず、弁当を食べるに限ります。何回食べても磯弁は最高。
最近、コンビニでご飯を買ってくる人が増えたこともあって、磯弁を止めてしまう渡船屋さんが増えているそうです。
いつまでも美味しい磯弁を食べたいものです。

弁当を食べ終えると風が弱まったので、もう一つの本命パターン“沖向きの遠投”を試してみることに。
潮はゆっくりと東向きに流れており、先打ちしたマキエに対して仕掛けをドンピシャで合わせます。
前作よりも格段に投入精度が上がっているので、こういった釣りは本当に楽になりました。

ウキ下を2ヒロ半に設定した仕掛けを馴染ませ、潮に乗せてゆっくり流していくと、ウキがピュッと消し込みます。
上がってきたのは本命以上に嬉しい(本来なら)シマアジ! タモ入れした瞬間、ハリがポロリしてヒヤリ……。
針穴への負担が少ない胴調子だからこそ、間一髪でキャッチできたのかもしれません。

同じタイミングでtsuki氏もシマアジをキャッチ。
潮も良い感じに動いているし、風も緩くなったし、これはグレも釣れそう! 希望の光が見えてきた!
・・・

期待はしたものの何も起こらず、気づけばもうこんな時間。15時の磯上がりまであとわずか。
予報に反して沖から強い南風が吹き、沖向きの遠投パターンも消滅。
「楽園が今日に限っては地獄やんけ……」そんなことを思っていた時、磯際の小さな流れに気づきました!

とはいえ、流れは本当に微妙なレベルで、最悪なことに流れと風の向きがまったく同じ。
これだと、普通に流していてはウキが先行し、ウキがサシエを引っ張る形になってしまいます。
そこで、糸を止めてウキを流れないようにし、ちょっと流れ過ぎたらウキを潮上に引っ張り、とにかくサシエ先行になるよう仕掛けを操作。

すると、アタリが出ずにサシエを取られました。
「これでもまだ仕掛けを張れていないな」と思い、ハリスの真ん中にG5を追加。
そして先ほどよりブレーキを強めに掛けつつ流していくと、ウキがスルスル〜と入っていきます!

じつはここからの記憶が飛んでいて、気づいたら磯の上に倒れていました。

そんなに大きくもない“普通の口太”ですが、手が震えるぐらい嬉しかった!
釣りをしていて良かった。
ベタな表現ですが、そう思える瞬間です。

ファイングレ5号が喉奥にしっかり掛かっていました。
竿が魚の引きやショックを減衰するので、こういった細軸のハリでも躊躇なく竿で溜め切れます。

もうちょっとできれば同じ釣り方で2枚目・3枚目を狙えたかもしれませんが、無念のタイムアップ。
本当に、ラスト1投での1匹。
初日は、1匹しか釣れなかった悔しさと、狙い通りに1匹釣れた喜びが入り混ざる釣行になりました。

釣行後は馴染みの民宿へ。
美味しいご飯を食べ、お風呂に入り、初日の反省をして2日目に備えました。
Day 2

翌朝4時半、宿を出発しようとすると、玄関にお弁当(朝ごはん)と素敵なメッセージが。

2日目にお世話になったのが、大月町大浦港出船の梶原渡船さん。
大浦は全体的に磯が低く、荒れると出られなくなりますが、口太の数釣りから良型尾長も狙える良い場所だと思います。

この日は「オキギオン」という磯に渡ることになっていました。
しかし、潮位が高くて波を被っていたので、弁当船までは向かいの地方寄りの「オカギオン」で釣りをすることに。

この日もファーストヒットはtsuki氏。ブダイでした。

またしてもアテンダー3を曲げるtsuki氏。

今度はアイゴでした。

ここで筆者も釣りスタート。釣り座の右手にあるシモリに向かい、潮が良い感じに流れています!
ウキは4-B、ウキ下は2ヒロ半にセッティングしていますが、仕掛けに角度が付くので実際に釣っているタナは2ヒロ弱ぐらい。

仕掛けがシモリに差し掛かった頃にウキが綺麗に入り、アテンダー3に荷重が乗ります。
教科書通りのようなヒットです!

前作以上にモリモリのトルク感を味わい、まずまずサイズの口太をキャッチ。
コロンコロンで“いかにも寒グレ”というシルエットです。

Mシステム口太速攻7号が、上唇の皮一枚を拾ってくれていました。
これがネムリ系のハリだったら、掛かっていたかどうか怪しいですね。
また、これだけ際どい掛かり方でも、身切れさせないのはさすがアテンダー3。

グレの写真を撮り終えて仕掛けを投入すると、先ほどよりも潮が緩んでいます。
同じ仕掛けを同じように流してみると、今度はヒブダイがやってきました。
50か60ぐらいのヒブダイ程度なら、125でも楽勝です。

1.5号ハリスを擦られていましたが、傷ついたハリスを飛ばされにくいのもアテンダー3の強み。

潮が緩んだことにより、仕掛けが立ち気味の状態で深く入ったからヒブダイが食ったのかも。
ということで、ウキ下を2ヒロに詰め、ハリスの中間に打っていたG4を道糸の直結部分に移動させるも……。
仕掛け&釣り方を海に合わせるスピードが遅いと反省です。

tsuki氏はヘダイを連発させていました。
この男、グレ以外の魚は全部釣りそうな勢いです。

10時の弁当船で本命の「オキギオン」にやってきました。
かなり雰囲気のある磯ですが……
同じところに仕掛けを入れても、毎投ウキが違うところに運ばれ、潮がフラフラした状態です。

仕掛けを流せる感じでもないので、ここはオーソドックスに、サラシの切れ目でマキエと仕掛けを合わせてみます。
仕掛けは入るものの潮がフラフラなので、直結部分とハリスの中間にG5を打ち、張りを作ることを意識。

仕掛けが馴染み、ウキのヘッドが抑え込まれた直後ぐらいに、ウキをスパーンと消し込む爽快なアタリが!

そんなに大きくはないものの、真っ青な美しい尾長でした。
このサイズがいっぱい釣れるとおもしろいんですけどね。

その後はダツが釣れたり、サンノジが釣れたり。
なかなか同じパターンで連発とはいきません。

陽が射してくると、アテンダー3の鮮やかなグラフィックが際立ってきます。
天気は選べませんが、晴れている日に使いたくなる竿ですね。

サラシの先を狙うと、良型イサキが釣れました。これは嬉しいお土産です。
イサキが2ヒロ半で釣れたので、すぐにウキ下を2ヒロに詰めて同じポイントを狙ってみましたが、不発。

ここで弁当タイム。
とくにだし巻きと煮物が◯。

相変わらず潮は綺麗に流れず、沖を釣るにも根拠がないので、最後は磯際に賭けることにしました。
鏡の縁と足元からのサラシがぶつかるあたりに、仕掛けを馴染ませます。
仕掛けが馴染むと潜る流れを捉え、2ヒロから徐々にウキが沈み……50cmほど仕掛けを入れたところで海中のウキに動きが!

アワセを入れるとアテンダー3に重量感が乗り、それっぽいシャープな引き味が右手に伝わります。
これもそんなに大きくありませんが、なんとか絞り出した1匹は嬉しいものです。

しかし、この後はグレからの反応を得られず、2日目はグレ3枚の釣果で終えることになりました。
このあたりに来始めてから過去イチで渋い釣果でしたが、アテンダー3の使い心地も含め、とても楽しい2日間だったと思います。
帰りも6時間の旅路ですが、また明日にでも来たいと思えるフィールドです。
やっぱりグレ釣りはおもしろい。
アテンダー3をインプレッション

ここからは2日間使い込んだアテンダー3をインプレッションしていきます。
さらに進化した粘り腰

大きく曲がって粘る“アテンダーらしさ”は、前作からさらに昇華されていました。
ウルトラASDやタフマトリックスシステムの恩恵か、前作よりもねじれ剛性が高く、1本の芯が通ったようなシャープな粘り強さを感じます。
とくに魚が横走りし始めた時や方向転換した時に、ねじれる感覚がほぼなく、やりとり中の荷重変化が非常に少なくなったのが印象的。
意図せぬ荷重抜けが起こらないため、魚への追従性がさらに高まり、淀みなくトルクが溢れます。

竿さえ立て過ぎなければ、息継ぎをするようなトルクの谷がなく、全域でフラットトルク。
普通の磯竿だと弾性が失われるような浅い角度においても、アテンダー3は減衰が機能し、そこからトルクが立ち上がってきます。
“伸される”という状態が、一般的なロッドよりも2つも3つも先にあるような感覚です。
やはり、アテンダーは磯際にめっぽう強い!

やりとり中に「良いな」と思ったのが、ちょっと凝った形状のリアグリップ。

肘当てでのホールド力もよく、肘で押すような形で溜め切れます。

リアグリップを持ち、突き出すような形で溜める時もフィット感がGOOD。
重いのに軽い

正直に言いましょう、アテンダーは軽い竿ではありません。
125-50で比較すると、グレ競技4が190g、アテンダー2が218g、アテンダー3が247g。
磯竿の中ではヘビー級で、前作から約30g重くなっています。
ですが、持った時の“体感の重さ”はほとんど変わらないように感じました。
じつはこれには根拠があって……

まずは穂先。
アテンダー3には先短設計が導入されており、125-50の場合は穂先(#1)が前作より7cm短くなっています。
「穂先の7cmなんてわずかでしょ」って思うかもしれませんが、穂先は5m先にある重量物(ソリッド)なのでその影響は数字以上です。

2点目がグリップ周り。
アテンダー2は1.5号までがスライドシートでしたが、アテンダー3は近年主流の全号数スクリューシートです。
じつはこのスクリューシート、スライドシートよりも重たいのをご存じでしょうか?
つまり、先端のソリッドを短くし、手前のグリップが重くなったことで、重心位置が手元に寄って自重以上に軽く感じるわけです。
最大のネガが消えた

一投して感動したのが、アテンダーとは思えないほどの投入精度。
アテンダー2のネガは“魚を掛けるまで”、とくに仕掛けの投入精度だったと思います。
グレ競技やインテッサと比べるとかなり大きな差があり、軽くて高重心なウキを使うとそれが顕著でした。

しかし、アテンダー3はまるで先調子のようなキャストフィールで、バシバシキャストが決まります。
おそらく、短いソリッドやタフマトリックスシステムによる剛性アップが効いているのでしょう。
全遊動や沈め釣りをする方は、先打ちしたマキエに対して仕掛けを合わせることが多いと思いますが、そういった釣りは劇的に精度が高まると思います。
遠投釣法への適性も向上

遠投も非常にしやすくなりました。
単純に飛ぶというよりは、遠投してピンスポットを撃つのがとてもイージー。
とくに低号数のアテンダー2はキャスト後の竿ブレが大きかったのですが、3はブレを収束させるのが早く、糸抜けもかなり良くなりました。
近年は沖の潮を狙ったり、エサ取りを避けたり、沖の湧きグレを狙ったりするために、大きなウキを使って遠投するケースも増えていると思います。
そういった意味では、より現代的な釣り方にフィットする竿になっているのではないでしょうか。
糸捌きも軽快

低負荷時の曲がりが少なく、後方重心になったことで、ラインメンディングも格段にしやすくなっています。
今回の釣行は、風が強くて道糸を煽られたり、滑る上潮にウキを引っ張られたりと、ラインメンディングの頻度が非常に高かったため、アテンダー2に比べてかなり釣りが楽でした。
釣りの精度が高くなるし、なにより難しい状況でストレスが少なくなるのは嬉しいですね。
風への耐性が向上

もうひとつ驚かされたのが、強風下での挙動。
アテンダー2は号数が低くなるほど、強い風に煽られると竿が曲がってしまい、操作しにくくなるのが難点だと感じていました。
しかし、アテンダー3はその難点が解消されており、風の中でも竿がパシっと張って風を切ってくれます。
単純に持っているのも楽ですし、強風下でも仕掛けを操作しやすいのは大きなメリットだと感じました。
コスメにもこだわりが溢れる

アテンダー3は装飾面でもこだわられています。

監修した松田稔氏いわく「釣りしてて楽しくなる感じがええ。状況が悪くて魚が釣れんときも、癒されるように」とのこと。

がまかつの象徴でもある玉口のデザイン。ハイエンド系は3本帯、それ以外は2本帯だとご存じでしょうか?
アテンダーもついに、インテッサ・マスターモデルと並んで3本帯になりました。
さらに、赤色部分はマスターモデルと同じテイストのメタリックレッド系の色合いです。

デザインのコンセプトは“魚が宇宙に飛んでいく”だそう。
発想がモード過ぎます。
アテンダーが好き。

“アテンダー2の良さを磨き、ネガを徹底的に潰したロッド”
これがアテンダー3だと思います。前作ユーザーの筆者としては、とくにネガが消えたことに感動しました。
アテンダー2愛用者の方は、劇的な進化に驚くはず。他の竿を使っている方は、ぜひアテンダー3のトルク感を味わってみてもらいたいですね。
実売13万円は安くありませんが、間違いなく値段以上の納得感はあると思います。
撮影:tsuki / TSURI HACK編集部
sponsored by:がまかつ
がまかつ がま磯 アテンダー3 125-50
がまかつ がま磯 アテンダー3 125-53
がまかつ がま磯 アテンダー3 15-50
がまかつ がま磯 アテンダー3 15-53
がまかつ がま磯 アテンダー3 175-50
がまかつ がま磯 アテンダー3 175-53