“飛距離”ってとにかく飛べばいいのか?

飛距離は釣果に直結する──よく耳にする言葉ですが、この“飛距離”とは具体的に何を指すのでしょうか。
「とにかく飛ばしたもん勝ちだ!」と最長距離を重要視する人もいれば、「どんな状況でもそれなりに飛ばしたい」と安定感を重要視する人もいるはずです。
筆者はルアーフィッシングでは後者こそが釣果につながる“真の飛距離”だと考えています。
飛距離は感覚で語られることが多い

飛ぶ・飛ばない論争はあちこちで巻き起こるものの、実際に飛距離を測る人は少ないですよね。
では、何を基準に語られるのか……ほとんどの場合が感覚。すなわちキャストフィール(=投げ心地)ではないでしょうか。
つまり、数値ではなく安定して飛んでいる感覚こそが評価軸になっているということです。
そして、その安定感の高さをとある“仕掛け”で実現したルアーがあるんです。
毎投「飛ぶな〜」を感じられるルアー

それが、ジャクソンの名作ミノー『アスリート』。
誰もが知る定番ルアーですが、どうやら最近のアスリートはリップにある“仕掛け”が施されているというのです。
今回はその“仕掛け”に着目し、実際に投げて飛距離も検証! キャストフィールや飛距離安定性は本当に効果として現れているのか──数値データをもとに検証していきます。
おかもち
筆者も普段から愛用するアスリート。
これまでは「なんか飛ぶな〜」くらいにしか思ってなかったのが、正直なところです。
ボルテックスジェネレーター(VG)

その“仕掛け”というのが、『ボルテックスジェネレーター』というもの。
リップに突起をつけるという構造そのものを指します。
これにより、安定して飛距離を出せるようになるそう……。
おかもち
この突起を付けただけで飛距離が伸びるなんて、なかなか信じ難いですが(笑)
飛行姿勢を安定させる

ボルテックスジェネレーター(以下、VG)という言葉、車好きの方なら耳にしたことがあるのではないでしょうか。
日本語に訳すと渦発生装置。
「渦を発生させたら飛距離落ちちゃうんじゃ?」って声も聞こえてきそうですが……実際は逆。

特定の箇所にあえて乱流を生じさせることで、物体全体の空気抵抗を逃がして飛行姿勢を安定させるのがVGなんです。
この仕組みは航空機や自動車の分野では定説で、燃費の向上や操縦安定性を高める効果が確認されています。
おかもち
ちなみに一部の自動車競技では規制の対象になったりもするようで、効果が高いのは間違いなさそうです。
サイズが大きくなるほど効果を発揮

「サイズが大きくなるほど重量を増し、飛距離が出しやすくなる」と思っている人は少なくないかもしれません。
しかし実際には、サイズが大きいほど空気抵抗も増えるため、姿勢が乱れて飛距離の安定性はかえって失われやすいのです。とくにフローティングのような比重の軽いルアーでは、その影響が顕著に表れます。
そこで効果を発揮するのが、姿勢を安定させられるVG。ルアーサイズが大きいほどその効果も際立ちます。
おかもち
ジャクソンが初めてVGを搭載したのも、17cmという大型サイズの『アスリート』でした。
効果を最も体感できるところから改良を施すのは当然ですよね。
ラフコンディションになるほど効果を発揮

風が強かったり波気立っていたりする状況では、ルアーは空中で簡単にバランスを崩しやすくなります。
とくにフローティングタイプは軽さゆえに横風の影響をモロに受け、失速やブレに直結します。
そんなときに効くのがVG。小さな乱流によってルアーがブレにくくなるため、横風の中でも安定してまっすぐ飛ばせるのです。
おかもち
つまり、無風時より荒れた状況でこそVGの真価が実感できるというわけです。
リップの強度向上にも寄与

リップに手を加えている以上、「強度面はどうなの?」と心配する方もいるかもしれません。
リップに突起を設けるということは、その部分に芯ができるということ。
設計上、強度が下がる心配はなく、むしろ折れにくくなる方に作用するので、安心して攻められる要素のひとつになっています。
おかもち
先に触れたラフコンディションでの安定性と合わせて考えると、磯などハードなシチュエーションでも相性は抜群ですね。
伝統のアクションはそのまま

一般的にルアーの飛距離性能を向上させるには、重心移動システムなど内部構造を抜本的に変える必要があります。
ところが、それでは設計全体に影響が及び、“別物のルアー”になってしまうことも少なくありません。
その点、ジャクソンのVGはリップ形状に突起をつけるだけで完結。既存のアクションはそのままに、安定した飛距離を叩き出すことができるのです。
おかもち
釣れっぷりはそのままで、飛距離だけ伸ばせる……って、メリットしかなくない??
VGのデメリットは……

ここまでだとメリットしかなさそうなVG。しかし、釣具たるもの必ずメリットとデメリットが存在します。
ルアーも例外ではなく、たとえば飛距離を優先すればアクションが犠牲になるなど──何かを得れば何かを失ってしまうものです。
しかし、VGはそうではありません。
内部構造をいじらずリップの突起だけで効果を生み出すため、アクションやレンジに影響を与えず、既存の性能をそのままに飛距離の安定性だけを高められる。
つまり「新たなデメリットを生まない」のが、VGの真骨頂といっても過言ではないのです。
おかもち
「じゃあ、リップがないルアーは無理か〜」と思ったあなた!
リップレスルアーのVG開発も進めているようですよ!
VGの飛距離を検証してみた

ということで、VGの効果は本物なのか。とあるサーフで検証を行なっていきます。
今回検証するのは下記3モデル。
- アスリート17FSV
- アスリート+14SVG
- アスリート+12SVG

突起を削った“実質VG無し”のものを用意し、VG無しとVG有りを5投ずつ行なって平均飛距離を比較。
キャスト後、糸ふけを取った状態でデプスチェッカーを取り付け回収。巻き取り量=飛距離とします。

使用タックル
- 10ft9inのシーバスロッド(ルアーキャパ:8〜52g)
- 4000番のSWリール
- PEライン1.5号 + フロロリーダー16lb
おかもち
当日は向かい風10m以上。釣り人がほぼいないというスーパーラフコンディションです(笑)
ラフコンディションほど効果を発揮するならば、検証にはもってこいか……
【検証】アスリート 17FSV

まずは初めてVGが搭載された17cmのアスリート(26.5g)から検証スタート。
17cmはミノーの中でもかなり大型。加えてフローティングタイプは比重が軽いため、どうしても風の影響を受けやすいルアーと言えます。
アスリート 17FSV(VG無し)

- 32.0m
- 33.6m
- 37.5m
- 33.0m
- 34.1m
平均:34.06m
アスリート 17FSV(VG有り)

- 39.2m
- 36.0m
- 39.3m
- 36.4m
- 37.7m
平均:37.72m
ラフコンディションすぎて多少バラツキは出てしまいましたが、VG有りの方が平均3.66mの飛距離アップという結果になりました。
とにかく印象的だったのが、VG有りの一投目。キャストフィールが明らかに良かった感触が鮮明に残っています。
17cmフローティングという不利な条件下でも、VGの手応えをしっかり感じられました。
【検証】アスリート+ 14SVG

次に検証を行うのはアスリート+14SVG。シンキングタイプで自重は30gです。
先ほどの17cmよりもシルエットが小さいかつ重いので、より飛距離が欲しかったり、広範囲を探りたい時に使用することが多い14cmのミノーです。
アスリート+ 14SVG(VG無し)

- 39.6m
- 37.0m
- 41.9m
- 33.0m
- 33.1m
平均:36.92m
アスリート+ 14SVG(VG有り)

- 39.9m
- 43.9m
- 39.6m
- 42.2m
- 40.2m
平均:41.16m
17FSVよりも飛んでいますね。
VGの有無で比較しても、VG有りの方が約3mほど伸びるという結果になりました。
【検証】アスリート+ 12SVG

最後に検証するのは、アスリート+ 12SVG。こちらもシンキングタイプで自重は21gです。
全国的に使用頻度が高いのがこのサイズ感ではないでしょうか。
使用頻度が高いサイズなだけに、キャスタビリティはとても気になるところです。
アスリート+ 12SVG(VG無し)

- 26.3m
- 30.3m
- 28.8m
- 26.7m
- 34.1m
平均:29.24m
アスリート+ 12SVG(VG有り)

- 31.5m
- 33.6m
- 32.8m
- 29.8m
- 32.0m
平均:31.98m
最長飛距離はまさかのVG無しの方で叩き出してしまいましたが(笑)
平均飛距離はVG有りの方が2.74m伸びるという結果となりました。
サイズが小さくなったこともあり純粋にキャストがしやすくなっていますが、VG有りのばらつきは今回の検証の中で一番小さく、非常に安定したキャスタビリティを備えていることがわかりました。
おかもち
VG無しでも十分な飛距離が叩き出せるポテンシャルを持っているということですよね。
VGの効果は確かだった!

10m以上の向かい風という過酷な状況だったため、全体的に飛距離は控えめですが……
しかし、今回検証したすべてのサイズでVG搭載モデルの方が、平均飛距離はしっかり伸びる結果になりました。
特筆すべきはその安定性。キャストごとのばらつきが小さく、常に安定したキャストが可能であることがデータからも裏付けられました。
キャストフィールの違いは歴然
今回の検証を通じて、とにかく印象的だったのがVGのキャストフィールの良さ。
VG無しと比べると確実に良くなっていて、毎投とても気持ち良いフィーリングで投げられました。
とくに、リリース直後の感覚の違いは顕著。
VG無しは、リリース直後からルアーのブレが大きく、空気抵抗をバシバシ受けているのに対し、VG有りの方は飛行姿勢が安定し、スーッと沖に飛んでいく感覚がはっきりとありました。
おかもち
VGの最大の強みは確実にこのキャストフィール。
検証前は「リップの突起だけでホントに効果があるのか?」と少し不安でしたが、一投ずつしただけでも効果をはっきりと感じられました。
【延長戦】穏やかな状況下だと…

ちなみに、別日の穏やかなタイミング(無風〜向かい風1m以内)で、今回検証したルアーをちょっとだけ投げてみました。
飛距離は総じて25〜30mほど伸び、14SのVG有りで平均70mほど。VG無しでも70m近く飛ばせることはありましたが、VGの安定感はやっぱり健在。
余計なブレがなく、ストレスフリーに投げ続けられました。
おかもち
VG無しでもしっかり飛ばせるのは、アスリートの実力の高さ。
ですが、常に“飛んでいるな〜”という感覚を得られるのは確実にVGです。
何投も続ける実釣シーンでは、この安定感が必ず大きなアドバンテージになるでしょう。
リアルな現場でこそ武器になる!

今回は数投のみで検証しましたが、実際は何十投、何百投するのが釣りというもの。
いつ訪れるかわからないチャンスを確実にモノにするためにも、安定して遠くに飛ばせるというVGは確実に武器になるはずです。
今回検証に使用したルアー以外にも、北海道エリアで定番のアスリート12SS / 14SSや、青物狙いで人気のピンテールチューンなどVG搭載モデルも着実に増えてきています。
アクションはそのままに、安定した飛距離をプラスしたVG。ラインナップも充実してきているので、ぜひ皆さんのメインフィールド・ターゲットに合わせて、その効果を体感してみてくださいね!
撮影:おかもち
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ボルテックスジェネレーター搭載ルアー
ジャクソン アスリート 17FSV
サイズ | 170mm |
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自重 | 26.5g |
ジャクソン アスリート 17SSV
サイズ | 170mm |
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自重 | 30g |
ジャクソン アスリート+ 105FVG
サイズ | 105mm |
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自重 | 12.5g |
ジャクソン アスリート+ 105SVG
サイズ | 105mm |
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自重 | 17g |
ジャクソン アスリート+ 12FVG
サイズ | 120mm |
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自重 | 18g |
ジャクソン アスリート+ 12SVG
サイズ | 120mm |
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自重 | 21g |
ジャクソン アスリート+ 14FVG
サイズ | 140mm |
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自重 | 24g |
ジャクソン アスリート+ 14SVG
サイズ | 140mm |
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自重 | 30g |
ジャクソン アスリート 12SSV
サイズ | 120mm |
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自重 | 19g |
ジャクソン ピンテールチューン+ 170SVG
サイズ | 170mm |
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自重 | 53g |
ジャクソン デセプション 135
ジャクソン シャロースイマー
サイズ | 125mm |
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自重 | 17.5g |