アイキャッチ画像出典:PIXTA
——虫画像にご注意ください——
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生き物が人を攻撃する理由

有害生物は、さまざまな理由と手段で僕たち“人”を攻撃してきます。
血を求めて寄ってくるもの、自衛のために襲いかかってくるもの、刺す奴、噛む奴、毒を飛ばす奴——そのスタイルは実に多種多様。
ほとんどは痒みや痛みで済みますが、中には毎年のように死者を出してしまう危険な生き物も存在します。
山根
この記事では、身近な川や山林で出会う可能性のある有害生物たちをピックアップしてご紹介します。
吸血系毒虫
マダニ

マダニの大きさは成長段階や吸血の有無によって大きく異なり、3mmほどのものから、吸血後は2cm近くにまで膨らむこともあります。
他の虫と違って脚が8本(幼虫は6本)あるため、比較的見分けやすいのも特徴です。
マダニには麻酔作用があるため、噛まれても痛みはほとんど感じません。
しかし、皮膚にしっかりと固着するため、自力での除去は難しく、無理に引き抜くと頭部だけが体内に残ってしまうことがあります。
山根
慣れていない場合は、皮膚科で安全に除去してもらいましょう。

マダニは日本全国に分布しており、山林はもちろん、河原の草むらなど身近な場所にも生息しています。
とくに注意したいのが、マダニが媒介する感染症です。重症熱性血小板減少症候群(SFTS)など、死亡例のある病気も報告されています。
噛まれたあとに発熱・倦怠感・嘔吐などの症状が出た場合は、早めに医療機関を受診し、「マダニに噛まれた可能性がある」と必ず伝えましょう。

草むらのような何気ない場所でも、マダニが潜んでいることがあります。
とくに鹿の姿や足跡が多いエリアでは、マダニの密度も高まりがち。
山根
ちなみに、観光地として知られる奈良公園も例外ではありません。
ヤマビル

ヤマビルは、秋田県から沖縄県までの広い範囲に分布し、4月から11月にかけて活発に活動します。
湿った山林を好んで生息しており、とくに人や動物が頻繁に通る登山道や獣道などでは遭遇のリスクが高く、注意が必要です。
ヤマビルに噛まれた場合、無理に引きはがすのはNG。牙が皮膚に残ってしまう恐れがあります。
山根
そんなときは、虫よけスプレーやヒル専用の忌避剤を吹きかけると、自らコロンと落ちてくれるので安心です。

こちらは、実際にヒルに噛まれた傷口から感染症を起こしてしまった僕の足です……。
このときは林道で車がスタックし、泥濘の中で長時間作業したことが原因で、傷口から細菌が入り込んでしまいました。
エコ・トレード ヒル下がりのジョニー ミニ
内容量 | 50mL |
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成分 | 弱アルカリ性溶剤、高級ハッカ油、エタノール、植物抽出天然エキス、増粘剤、添加物 ※ディート不使用 |
ブユ・ブヨ

出典:photo-ac(ブヨの一種)
「ブユ」あるいは「ブヨ」と呼ばれる虫は、体長1〜5mmほどの小さな吸血虫で、見た目はコバエに似ています。
蚊よりも小さく、しかも羽音を立てないため、釣りに夢中になっていると噛まれていることに気づかず、気づけば何十か所も刺されていた……なんてことも珍しくありません。

こちらは、ブヨに集中攻撃されてから約1年経った僕の足首です。あの日の痒み、いまでも思い出すとムズムズしてきます。
ブヨに噛まれると、痒みが出るまでにタイムラグがあるのが厄介なところ。数時間から2日ほど経ってから痒くなり、そこから約1週間、しつこい痒みに悩まされます。
山根
さらに、痒みが治まっても「炎症後色素沈着」と呼ばれる黒っぽい痕が残ることがあり、消えるまでに1年以上かかることも……。
アブ

アブはハエに似た姿をしており、種類によって体長は10mm〜30mmほどと幅があります。
中にはアカウシアブのように、ハチに似た模様を持つ種類もいますが、アブはハチとは違い、攻撃のためではなく吸血のために噛みついてきます。
山根
ハチは追い払おうとすると刺してきますが、アブはジッとしていると逆効果。気づかないうちにガブッとやられてしまいます。

アブの活動期は6月から9月ごろまで。他の吸血虫に比べると短めですが、大量発生しているときは手のつけようがないこともあります。
幼虫は水質の良い川に棲むため、渓流での遭遇率が高め。黒い服や、車のエンジンの熱にも集まってくる習性があります。
噛まれると「チクッ」と軽い刺激を感じることもありますが、無感覚のままやられていることも少なくありません。ブヨと同様に、腫れや痒みが長引く傾向があります。
なお、ラッシュガードなどの薄手の服は簡単に噛み破られてしまいます。
山根
僕はアブが多い渓流に行くときは、レインウェアを着るようにしています。
吸血系毒虫に共通する対策

これらの吸血生物を避けるには、ディートやイカリジンを含む虫よけ剤が効果的とされています。
僕自身、なるべく肌の露出を控え、肌だけでなく衣類・靴・バッグにも虫よけ剤をしっかり吹きかけるようにしています。
※ただし、素材によっては変色したり溶けたりすることもあるので使用は自己責任で。とくにディートとプラスチックの相性は最悪です。
山根
噛まれたあとの薬としては、ステロイド成分入りの塗り薬が適しています。僕は「ムヒアルファEX」を愛用中です。
アース製薬 サラテクトミストリッチ
内容量 | 200mL |
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有効成分 | 1本(200mL)中ディート60g |
成分 | 添加物として、ポリプロピレングリコール(PPG)、モモ葉エキス、ヒアルロン酸Na(2)、アスコルビン酸(ビタミンC)、クエン酸、クエン酸Na、香料、エタノール、精製水 |
効果 | 蚊、ブユ(ブヨ)、アブ、ノミ、イエダニ、マダニ、サシバエ、トコジラミ(ナンキンムシ)、ツツガムシの忌避 |
効果持続期間 | 概ね5~8時間持続 |
池田模範堂 ムヒアルファEX
内容量 | 15g |
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成分 | プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル(PVA)、ジフェンヒドラミン塩酸塩、ℓ-メントール、dℓ-カンフル、クロタミトン、イソプロピルメチルフェノール |
防衛型毒虫
ケムシ

ケムシは「刺される」というより、その毒毛に触れることで痒みや痛みが発生します。
つまり、ケムシ本体がいなくても、風に乗って飛んできた抜け毛に触れて被害に遭うこともあります。野山だけでなく、洗濯物に付着することもあるため注意が必要です。
症状は種類によって異なりますが、刺された瞬間はほとんど痛みを感じません。時間が経つにつれて、1〜2日をピークに腫れや痒み、痛みが現れます。
その後も症状は1〜2週間ほど続くことがあります。
山根
とくに毒毛が付着した衣類を着てしまうと、体のあちこちで症状が出てしまうこともあるので要注意です。
ムカデ

肉食性のムカデは、獲物を捕らえるために鋭い牙と強い毒を持っています。そして、それらは外敵から身を守る自衛手段としても使われます。
例えば、靴の中に潜んでいることに気づかず足を入れてしまったり、植木鉢を持ち上げたときに触れてしまったりして、噛まれるケースがあります。ただし、ムカデのほうから積極的に襲ってくることはほとんどありません。
これまで紹介してきた毒虫とは異なり、ムカデに噛まれるとその瞬間から激しい痛みがあります。痛みは数時間で治ることが多いですが、腫れや痒みは数日間続きます。
山根
ムカデは主食のゴキブリと同じく、わずかな隙間からでもスルリと室内に侵入してきます。
ハチ

ハチもムカデと同様に、自衛のために攻撃してくるタイプの毒虫です。そのため、刺激を与えないことがなにより大切です。
ハチが嫌う黒や紺色の衣類は避け、巣には近づかないようにしましょう。
もし刺されてしまった場合は、近くに巣がある可能性もあります。顔を刺されないよう注意しながら、速やかにその場を離れ、安全な場所へ移動してください。
ミツバチに刺されたときは、まず傷口を確認しましょう。針が残っていれば、すぐに取り除く必要があります。
山根
ただし、針の根元にある毒嚢(どくのう)には触れないよう注意してください。
▶︎全身症状が出たら皮膚科で指導を受ける

患部は、まず清潔な流水でしっかり洗い流しましょう。その後、抗ヒスタミン剤を含むステロイド軟膏を塗布します。
痛みは数時間から2日ほどで治まることが多いですが、痒みは1週間程度続く場合があります。
万が一、刺されてから1時間以内に全身症状(じんましん・頭痛・吐き気・息苦しさなど)が現れた場合は、アレルギー反応の可能性があります。すぐに病院を受診してください。
山根
アレルギー検査の結果、陽性と判定された場合は、アナフィラキシーショックに備えて「エピペン」という補助治療剤が処方されることがあります。
動物も危ないです
マムシ

虫以外で遭遇率の高い危険生物のひとつに、マムシが挙げられます。
保護色でジッとしていることが多いため、気づかずに踏んだり触ったりして噛まれる事故が、毎年のように発生しています。
もし噛まれてしまった場合は、迷わず119番通報してください。迅速な対応が命を守ります。
山根
僕自身、マムシを踏みそうになったり、うっかり掴みかけたりした経験が一度や二度ではありません。
とくに印象的だったのは、崖を登っていたとき。手をついたわずか15cm横にマムシがいて、生きた心地がしませんでした……。
イノシシ

川釣りはもちろん、地磯へのエントリー中にも遭遇する可能性があるのがイノシシです。万が一攻撃を受けた場合、致命的な怪我につながることもあります。
イノシシは体格が大きく、直線的に突進してくる性質を持つため、上半身よりも太もも内側の血管を守る動作(例えば脚を閉じるなど)を取ったほうが良いとされています。
臆病な性格のため、基本的には向こうから人を避けてくれますが、それでも年間数十件の人身被害が報告されていることを忘れてはいけません。
山根
とくに注意が必要なのは、子連れの個体や、人里に現れてパニックを起こしているイノシシです。
熊

熊による被害は近年、山間部に限らず市街地でも増加傾向にあります。
防衛本能による攻撃だけでなく、まれに狩猟本能に基づいて襲ってくるケースもあり、非常に厄介です。
山根
熊除けの鈴だけでなく、熊撃退スプレーも携帯しておくと、いざというときに身を守る手段になります。
UDAP 熊撃退スプレー ホルスター付き
内容量 | 224g |
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噴射距離 | 約9m |
噴射時間 | 約7秒 |
安全装置 | 尽き |
ホルスター | 尽き |
対象 | ヒグマ |
身近な場所にも現れるかもしれません

今回は、日本に住んでいれば誰もが遭遇しうる、身近な危険生物について簡単にご紹介しました。
どの生き物も、できれば出会いたくはないものですが、個人的にいちばん怖いと思っているのはマムシです。遭遇率も高く、致死率も低くはありません。
毎年1000人以上が咬まれ、そのうち10人前後が命を落としています。
ちなみに、熊による年間の死者数は、2023年が最多で9名。やっぱり熊も同じくらい恐ろしい存在ですね……。
こうした生き物たちは、山や川だけでなく、私たちのすぐそばにも現れることがあります。
山根
皆さんも、身近な自然に潜む危険にはくれぐれもご注意ください。