残念すぎる魚の名前の由来をご紹介します

魚の名前を調べてみると、じつにさまざまな由来があることに気づかされます。
そんな中でも、とりわけ残念な……可哀そうな……、命名をされた魚たちをご紹介。
上の写真はチチブという魚ですが、その由来には驚くこと間違いなしですよ。
山根
このチチブを見て、皆さんなら何を連想しますか?
昔の人の気分になって考えてみてください。
分かりやすいが安直すぎるネーミング
オジサン

まずは手始めに、一度聞いたら忘れられないくらい安直なネーミングをされた魚たちをご紹介しましょう。
立派な口髭が特徴のこの魚は、オジサンという名前が与えられています。
ちなみに、“お爺さん”がなまってオジサンになったというのが定説です。
ドクウツボ

こちらは2m以上にまで成長し、世界最大級のウツボとして知られるドクウツボ。
その名の通り、生息する地域によってはシガテラ毒を有する毒魚です。
ちなみに、英名はGiant moray(巨大ウツボ)……。どちらも、安直で分かりやすいネーミングですね。
アカグツ

赤い靴のような魚だからアカグツと思いきや……。この魚は引っ掛け問題、つまりちょっとややこしいんです。
古い言葉でカエルを意味する“クク”が転訛して“クツ”となったと言われており、カエルの中でもヒキガエルが由来となっているのではないかとされています。
山根
個人的にアカグツはそんなに残念な感じはしないんですが、面白いネーミング&形なので紹介させていただきました。
モドキシリーズ|似ている魚がいるが故に……
マハタモドキ

似た者どうしのため、“モドキ”という名前を付けられてしまう魚もいます。
例えば、マハタモドキというこの魚。マハタと見比べるとまさに瓜二つのそっくりさんです。
白い横模様について、尾鰭から2番目の横帯が明瞭なのがマハタモドキの特徴の1つ。

こちらは尾鰭から2番目の白い横帯が途切れているのでマハタというわけです。
モドキというネーミングが可哀そうかどうかはさておき、マハタとマハタモドキはたしかに間違えてしまうくらい似ています。
タナゴモドキ

一方で、「ちょっとモドキと名付けるには見た目が違いすぎるんじゃないの……」って魚がいるのも事実です。
この魚はエンパイアガジョンというタナゴモドキの仲間。たしかに、体色の鮮やかさはタナゴのように見えなくもないですが……。
背ビレの数や口の大きさ(歯もあるし)など、じっくり観察するとタナゴの仲間ではないことは簡単に分かります。

こちらは、タナゴの仲間であるキタノアカヒレタビラ。ちなみに、タナゴはコイ目、タナゴモドキはスズキ目に分類されます。
山根
個人的な感想ですが、タナゴモドキに対してもっと個性的な名前を付けてほしかったですね。
ウッカリカサゴ

こちらはカサゴとよく似た、ウッカリカサゴという名前の魚です。
モドキはありきたりなので、ちょっと変化球チックな命名をしたんじゃないかって想像させられますよね。
カサゴとの見分け方の1つとして、ウッカリカサゴの体表にある斑点には、縁取りがあることが挙げられます。
山根
他にも“ダマシ”や“ニセ”というワードを与えられた魚もいますよ。
名前の由来が悲しすぎる魚
チチブ|陰茎魚

ハゼ釣りやテナガエビ釣りで、必ずといって良いほど掛かってくるチチブ(左)やヌマチチブ(右)。
ここで冒頭のクエスチョンの答え合わせです!
この魚たちの名前の由来はなんと、子供の陰部。すなわちオ〇ン〇ンなんです(笑)
語源は高知県の呼び名であり、“チチ”は子供の陰茎、“ブ”は魚という意味があるそうです。
山根
高知県以外にも陰部に関係する呼び名があるのだとか。
綺麗で可愛らしい魚なんですけどね。
クサウオ|つまらない魚

ぼくの手のひらでくるんと丸まっているこの可愛らしい魚はクサウオです。
名前の由来は、臭いとか草ではなく、石川県の“つまらない”を意味する“くさい”という方言とされています。
個人的には愛くるしくって素敵な魚(この魚を釣るために遠征した程)だと思うんですが……。
山根
食べると水っぽくて美味しくないことが原因かもしれません。
カスザメ|利用価値のないサメ

利用価値のない食材をカス(糟や粕)と呼び捨てたりしますが、この魚はまさにそんな存在だったのでカスザメと呼ばれるようになったそうです。
それならさぞかし不味いのかと思いきや、軟骨魚類としては比較的美味しい部類に該当します。
ちなみに、英名はエンジェルシャーク。魚体が天使のように見えることが由来です。
山根
和名は市場の姿、英名は生きている姿が由来となっていることが多いと感じます。
ぼくは「英名の方がセンスあるな」って感じますが、いかがでしょうか?
カッコいいかと思いきや、ちょっと残念な魚
ヤマノカミ

九州に生息するヤマノカミというこの魚。“山の神に捧げていた魚”が由来で、ここまでは超カッコ良く聞こえるのですが、話はもう少し続きます。
山の神様は醜い女神様であり、彼女より綺麗な人が山に入ることで怒り狂い、山が荒れてしまったそうです。
そこで、女神様よりも不細工な魚としてヤマノカミを捧げることで、自分より醜いものがあると安心させていたとされています。
山根
つまり、ヤマノカミという一見カッコいい名前を持ちながら、その由来は“女神様より醜い魚”という意味だったんですね。
スカイゲイザー

最後に海外の魚を1つだけ。英名、その発音、意味も含めてすべてがカッコいいのに、実際に釣ってみると姿かたちは「やや名前負けしている」と感じたこの魚をご紹介させてください。
名前はSkygazer(スカイゲイザー)、意味は“空を見つめる者”といったところでしょう。名前を理由に釣ってみたいと感じた魚です。
ルアーに好反応を示す面白いターゲットであることに違いないのですが、原産地の中国大陸ではやや外道的なキャラであることが否めません。
山根
人間も、“キムラタクヤ”と名付けられたらちょっとプレッシャーかもしれません(笑)

ちなみに、スターゲイザーという魚もいますが、こちらはミシマオコゼのこと。
山根
やはり英名はカッコ良く、名前を付けるセンスがあるのかも。
どんな魚にも魅力はある

最後は少々脱線気味になってしまいましたが、残念な名前の由来を持つ魚をご紹介いたしました。
今回は標準和名に絞っておりますが、地方名に目を向けるともっと酷い呼び名も……。
個人的にはどんな魚にも何かしら魅力があると思っているので、見下すような名前はあまり好きではありませんね。
一方で、そういった名前が付けられるということは、人の生活にとりわけ近い存在だった証とも言えるでしょう。
撮影:山根央之