不味かった魚を一挙ご紹介

こんにちは! 怪魚ハンター山根です。
今回は僕が興味本位で食べてきた魚の中でも、とくに印象深い“不味かった魚”を部門別にご紹介します。
ちなみに、写真は一番美味しくなかった魚のフィレなのですが、皆さん何だと思いますか? ヒントは外来種ですよ。
我慢して食べられる程度に不味かった魚
夏のニザダイ

真冬は脂が乗ってとても美味しいニザダイですが、調子にのって夏場に持ち帰って(ブダイやアイゴは美味しかったんです)磯臭い個体に当たったことがあります。
我慢して食べきれるレベルでしたが、磯臭い魚が苦手な方はこの手の魚は要注意です。
山根
かなり丁寧に処理しましたが、“そういう問題”ではありませんでした。
都市部の川で釣ったフナやウグイ

興味本位でフナやウグイを持ち帰って食べたこともあります。
美味しいものは美味しいのでしょうが(フナに関しては)、生息環境や種類によってはゲオスミン臭が酷く、ハッキリ言って不味いです。
食用として流通するものを選んで食べるべき魚かなと思います。
山根
琵琶湖の沖合で釣ったウグイの塩焼きは、あっさりしていましたがニオイは無くて旨かったです!
寄生虫が蠢くタウナギ

日本では田んぼの畔に穴をあける厄介者として知られるタウナギですが、じつは東南アジアでは食用としてポピュラーな存在なのです。
そのことを認知していたので奈良で捕まえた個体を食べようとしたのですが……
捌いてみると、赤黒い小さな線虫が沢山寄生しており、精神的に辛い食事となりました。
山根
食味自体はタイや中国で食べたものと変わらず、「味付けさえ間違えなければまぁ食えるな」ってレベルです。
直球ド真ん中で不味かった魚
ドブ川のプレコ(マダラロリカリア)

色々な魚を食べてきた中で、「もう二度と食べない」と決意した魚は、沖縄の汚い川で捕まえたマダラロリカリアというプレコの仲間。
冒頭のフィレはこの魚の鎧を剥いだものです。
言わずもがな、南米原産の外来種であり、おもに付着藻類を食べる生態を持ちます。
山根
記憶から抹消された魚がいなければ、一番不味いと感じた魚です。

生活排水が多いであろう都市型河川、野締め、鮮度不良! という悪魔の三拍子が揃ったプレコでしたが、友人Aたっての希望により実食することに。
塩焼きとフライにしたのですが、鼻から抜けるゲオスミン臭(泥とカビ臭を凝縮した感じ)が強烈。
焦ってコーラで流し込もうとしたら口の中が激臭泡まみれの大パニックに。
身質は“鳥よりの魚”といった具合で悪くないのですが、何故かゲオスミン臭とは別に鉄っぽい味がして、僕は2回口にしてギブアップでした。
山根
フライならいけると騙されました……。
大阪湾のナルトビエイ

ナルトビエイを食べた経緯は、大学時代に僕の家に居候していた友人Bが「頭骨標本を作りたい」と言い出したから。
しっかり保冷して持ち帰ったヒレの煮つけや唐揚げは、ゲオスミン臭がする程度。(プレコに比べれば全然マシ)綺麗な海だったら食べられそうな感じです。
問題は真夏の炎天下で保冷せず放置した胴体でした……。
山根
標本用ということで鮮度のことは考えていなかったんです。
そもそも大きすぎてクーラーに入らないですし……。

翌日、大学の授業を終えて帰宅すると、家の前でアンモニア臭がするではありませんか。
ガチャっとドアを開けた瞬間、クーラーの冷気に乗ってブァーっと来ました。強烈な刺激臭……。
友人が徐肉するために(勝手に)ナルトビエイの頭を鍋で煮ている真っ最中だったんですね。
山根
恐怖心より好奇心が先行し、肉を口に入れると、アンモニアで舌がピリつきました。
激マズでしたが腐っているわけでは無いのか、お腹は壊しませんでした。
漁師さんから頂いたビワコオオナマズ

学生時代、琵琶湖で研究活動をしていた関係で、漁業者の方がウナギ・スッポン狙いの延縄漁で混獲してしまったビワコオオナマズを譲っていただく機会がありました。
漁獲時には既に瀕死だったとのことで、野締めでしたがたっぷりの氷で冷やして持ち帰り。
漁獲翌日ということで鮮度も良好。琵琶湖産のイワトコナマズやマナマズは比較的美味しいので、不味くはないだろうと思っていたんですが……。

まずはフライで食べてみると、最初の数切れは「美味しくはないけど食べられるか」ってレベル。
恐怖心がなくなってパクパク食べ始めた頃に、ドカーンっと泥臭さが来ました。
慌てて飲み込むと、あまりのニオイに嘔吐反射が起こってパニックに……。
涙を流しながらすべてを再び飲み込み、原因究明に取り掛かると、黄色の脂肪が極めて臭いことが分かりました。
山根
大型淡水魚の脂肪は本当に要注意。好きな人もいるかもですが僕は苦手。
対策はしっかり火をを通して油を焼き切ることです。
想定外の不味さに驚いた魚
漂着したミズウオ

ミズウオという名前のこの魚、一見するとタチウオっぽくて美味しそうに感じますが……触るとブヨブヨです。
刺身で食べると想像以上に水っぽくて、まるでゼリーみたい。味もありません。
かと言って火を通すと際限なく縮んでとても硬くなります。
山根
臭みがないのでややインパクトには欠けますが、個人的には不味い認定したくなる魚です。
釣った日のタルイカ

釣獲翌朝のタルイカ(ソデイカ)は身がカチコチ。硬いだけならまだしも無味無臭。正直言って美味しくなかったですね。
まるで、消しゴムでも食べているかのような食感。(食べたことないけど)
「この大量の肉塊どうしよう……」って一時絶望しました。
しかし、冷凍庫でしっかり寝かせることで旨味も甘みも芳醇になって大化け!
山根
1年以上かけて美味しく食べきりました。
【番外編】不味そうだけど美味しかった魚
相模川河口のボラ

最後まで不味い魚の話ばかりでは後味悪いので、ここからは想定外に旨かった魚を少しご紹介します。
まずは、冬の相模川河口で釣ったボラの刺身。これは程よく脂が乗って、臭みも無く、大変美味でした。
山根
以来、個体と釣り場を選びながら、ボラを持ち帰るようになりました。
いつ食べても美味しいハス

個体による当たりハズレがない、美味しい淡水魚としてご紹介したいのがハスです。
肉食性が強いためか、どの時期に食べても臭みがなくて食べやすい魚と言えます。
山根
オススメは塩焼き。
コイ科の魚がこんなに美味しく食べられることに驚くはずです。
有明海のムツゴロウ

最後は干潟に棲むムツゴロウ。珍味程度の味わいだろうと思って食べてみたのですが、とくに刺身なんて他には無い旨さに驚いたんです。
赤黒い身の色に警戒しながらも頬張ると、スイカやキュウリのような爽やかな香りが。
この香りは、泥の表面についた珪藻類などの底生藻類を食べているためだと思います。
山根
鮎が美味しいのと同じ理由ですね。
必ずしも不味いわけではない。

魚の食味は生息環境、個体、処理方法、鮮度管理で大きく異なります。
そのため、必ずしもピックアップした魚種が不味いわけではないことをご理解いただければ幸いです。
きっと、アマゾン奥地の清らかな流れで育ったマダラロリカリアは、良い香りがして旨いと僕は信じて(願って)います。
撮影:山根央之